「100点とったらご褒美に●●買ってあげる」
「売上目標達成でボーナス●万円」
いわゆるニンジンをぶら下げるという方法ですが、これを学校や職場で導入しているところもあるかと思います。
しかし、この手法には副作用があるということを忘れてはいけません。
元々、ご褒美がなくてもやる気満々で勉強や仕事に打ち込んでいた人にとっては、そのご褒美により勉強や仕事そのものに対するモチベーションがなくなってしまうかもしれないのです。

これを、ソーヤー効果(The Sawyer Effect)と言います。
壁のペンキ塗りという退屈な仕事を、楽しい仕事と見せることで「僕にもやらせて!」とペンキ塗りを手伝ってくれる友達を増やしていったというトム・ソーヤーの物語から来ています。
楽しい遊びが退屈な仕事に変わってしまうこと、またはその逆で、
退屈な仕事が楽しい遊びに変わること、を意味します。


1970年代に、Mark Lepper, David Greene, Richard Nisbettの3人の学者は、小学校の絵画のクラスを3つに分け、モチベーションに関する調査を行いました。
最初のグループには青いリボンのついた自分の名前が入った賞をプレゼントすると事前に伝えました。
2つ目のグループは、最初のグループと同じ賞を渡しますが、事前には伝えませんでした。(サプライズ)
3つ目のグループは、賞は渡さず、賞の存在についても伝えませんでした。

2週間後、これらの3つのグループの絵画の自由時間を観察しました。
2つ目のグループ(サプライズ)と3つ目のグループ(何もなし)はこれまでと同じように絵画に熱心に取り組んでいました。
ところが、1つ目のグループ(賞があると事前に伝え渡した)は明らかに怠けたり、居眠りしたり、ブロックで遊んだりするようになったのだそうです。
これは、絵を描くという内発的動機づけが、青いリボンの賞という外発的動機づけにかき消されてしまったことを意味しています。
換言すると、絵を描くことが楽しくそれ自体が目的だったものが、賞が目的化したことで楽しさを感じなくなってしまったということです。
賞罰は短期的(ニンジンを見ている間)には効果があるかもしれませんが、長期的には逆効果となる可能性も高いということに留意しておく必要があることを、この研究は教えてくれます。

ソーヤー効果の背景には、内発的/外発的動機づけモチベーション3.0、などが大きく関連していますので、是非合わせて読んでみてください。
sawyer