先日、21世紀型スキルについてまとめたところですが、
どちらも海外でできた概念で日本はどうなの?という声も出そうなので、
21世紀型スキル的な日本の概念+αについてまとめてみようと思います。

(新)社会人基礎力

社会人基礎力は、2006年に経済産業省が提唱した
「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」です。
3つの能力、12の能力要素としてまとめられています。
※これについては詳細にまとめられたものは多数ありますので、簡潔に箇条書きで以下に記載します。
◆能力:前に踏み出す力(アクション)
・主体性
・働きかけ力
・実行力
◆能力:考えぬく力(シンキング)
・課題発見力
・計画力
・創造力
◆能力:チームで働く力(チームワーク)
・発信力
・傾聴力
・柔軟性
・状況把握力
・規律性
・ストレスコントロール力

2017年、人生100年時代に沿った内容にするために、
上記に新たに3つの視点(目的、学び、統合)を加えた
”新・社会人基礎力”が提唱されます。
3つの視点を詳しく書くと、
◆目的(どう活躍するか):自己実現や社会貢献に向けて行動する
◆学び(何を学ぶか)  :学び続けることを学ぶ
◆統合(どのように学ぶか):多様な体験・経験、能力、キャリアを組み合わせ、統合する 
図式したものがこちらです。(経済産業省の説明資料より
shin-shakaijinkisoryoku
新しいバージョンに変化したポイントとして2つの点に注目しました。
1つ目は対象者。社会人基礎力は、学生から社会人へのフェーズ変化時にスムーズに移行できるようにという狙いで開発されたものなので、対象者は社会に出る前の学生でした。
対して、新・社会人基礎力は社会人も対象に含まれています。人生100年時代になると、1つの職場で働くだけでなく、様々な事を学び続け、学ぶと働くを繰り返していくようになります(リカレント教育)。
また仕事も兼業・副業は当たり前で様々な職場をパラレルに動きながら様々な仕事をこなしていく可能性が高くなります(マルチステージ)。
multistage
このような時代背景から、新・社会人基礎力では、学生だけでなく社会人までが対象に含まれました。
社会人も新・社会人基礎力を意識して学び続ける必要があるということですね。
そして2つ目は、学び続けるために必要な自己認識とリフレクションです。新たに加えられた「目的、学び、統合」の3つの視点を持ち学び続けるためには、自己認識をしっかりと行いながらリフレクションし、改善していく必要があります。自己認識については、21世紀型スキルでも出てきていたので、やはり見ているところは共通するものがあるなと感じました。

さぁ、では21世紀型スキルと新・社会人基礎力を比べてみましょう。
今回は、「KSAVEモデル」と言われている、知識(Knowledge)、技能(Skills)、態度(Attitude)、価値(Values)、倫理(Ethics)の枠組みを採用しました。
 21stSkills_shakaijinkisoryoku
こうして比べてみると70%くらいは同じことが述べられていることがわかるかと思います。
◆価値・倫理:
世界を知り、自分自身がどのような価値感を持ち、どう人生を生きていくかを考えるのがこのフェーズ。新・社会人基礎力で出てきた3つの視点の目的がこれに当たると思います。
◆態度:
態度については、新・社会人基礎力の中で”主体性”が出てきます。企業が学生に求める能力でもコミュニケーション能力と並んでツートップを張る主体性。それだけ大事な要素の1つだと思います。
7つの習慣の第1の習慣も”主体性を持って始める”ですから、間違いなく大事な態度ですね。
21世紀型スキルでは、価値・倫理の生き方を考える中に内包されているのかもしれません。
◆知識・能力:
思考法、チームワーク、コミュニケーションあたりは共通の概念ですね。古典的に長く大事だと言われてきているものでしょう。
対して、学ぶことの学習やメタ認知は比較的新しい要素だと思います。
また、ストレスコントロール力が新・社会人基礎力のみにあり、
仕事のツール(情報・ICTリテラシー)は21世紀型スキルのみにあります。
どちらも大事な概念かと思います。

以上。今回は21世紀型スキルと新・社会人基礎力を比較してまとめてみました。
海外で考えられていることと日本で考えられていること、そう大きな違いはないことが分かるかと思います。
ただ、仕事のツール(情報・ICTリテラシー)については日本もしっかりと意識していないと、諸外国との差が大きくなってしまうように思います。
今でさえICT教育は諸外国の発展途上国の方が進んでいたりしますので、この点はマストでしょう。
これらの視点を大事に持ちながら、学生への授業も行っていきたいと思います。

ちなみに、ここからはおまけですが、21世紀型スキルと新・社会人基礎力だけでなく、
WHOのライフスキルと7つの習慣も合わせて比較表を作ってみました。
ご興味のある方は合わせてどうぞ。
compare_all

こうして見てみると、ライフスキルは思考法とコミュニケーション、ストレスマネジメントが中心です。
20年前のものなので、最先端のテクノロジー的なことが抜けているのと、キャリア観についての視点がないですね。換言すると古典的に大事だと言われていた社会で必要なスキルについて述べらているのだと感じます。
また、7つの習慣は、人生に向き合う態度(①主体性)、どのような人生を送るかというキャリア観(②終わりを思い描くことから始める)、計画力(③優先事項)、コミュニケーション(④Win-Win、⑤まず理解、⑥シナジー)という部分は21世紀型スキルや新・社会人基礎力と通ずる部分があります。
⑦刃を研ぐ、つまり肉体、精神、知性、社会・情緒を日々磨く、という部分は迷いましたが、改善していくという点で、新・社会人基礎力の自己認識とリフレクションと同系列として整理しました。
刃を研ぐという意識で日々過ごし、正しい自己認識とリフレクションができていれば、正しく効率的に成長していけると思います。
まだまだ比較したい概念はありますが、キリがないので今回はこの辺で。

-以下、メモ-

ライフスキル

ライフスキルは、1997年にWHO(世界保健機構)が提唱・定義した概念で、
「日常の様々な問題や要求に対し、より建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」を指します。
読み書き算盤等の基礎を身に付けた上で、社会で求められるスキルセットという印象です。
以下のように5つの領域、10のスキルに分類されます。
・目標設定スキル(創造的思考、批判的思考)
・意思決定スキル(意思決定スキル、問題解決スキル)
・自己認識(自己認識、共感性)
・ストレスマネジメント(感情対処、ストレス対処)
・コミュニケーション(効果的コミュニケーション)