21世紀型スキルは、これからの社会で活躍するために必要なスキルや能力、態度などをまとめた概念です。
ATC21が提唱したと簡潔にまとめているところが多いですが、実際は多くの国や組織が21世紀型スキルについて独自の観点でまとめています。
そこで、今回はその中で最もメジャーなもの2つピックアップし比較・整理したいと思います。
21世紀型スキルの提唱元としては、主に以下の2つが有名です。
P21(Partnership for 21st Century Skills)
ATC21s(Assessment and Teaching of Twenty-First Century Skills Project)


P21(Partnership for 21st Century Skills)

P21(Partnership for 21st Century Skills)とは2002年にアメリカで設立された非営利団体です。
全ての子どもたちが21世紀に相応しい教育を受けられるように、とマイクロソフト、インテル等ICT企業、アメリカ教育省、教育団体の連携によって生まれました。
2000年ごろまでは、教育とは、”いかに知識や情報を詰め込むか”ということにフォーカスしていました。
しかし、時代の変化とともにそれらは必要ではあるが十分ではない。
新たな技術、社会経済、人口動態等の変化に対応するための教育システムが必要だと多くの人たちが気づき始めます。
実際に、アメリカのFortuneの500企業への調査から、古典的な3R(Reading、Writing、Arithmetic)よりも、チームワークや問題解決能力、対人スキル(Interpersonal Skills)などの方が重要であることを見出します。
企業が考える働く上で必要なスキルリストの詳細はこちらの8p目にありますがここでは割愛します。

ではP21が提唱する21世紀型の全体像を見ていきましょう。(日本語訳もつけました)
p21
こちらの図が全体像ですが、21世紀型スキルは半円の外側の3つの部分(青、オレンジ、紫)になります。
◆Life & Career Skills(人生とキャリアのスキル)
◆Learning & Innovation Skills(学習とイノベーションのスキル)
◆Information, Media & Technology Skills(情報、メディア、テクノロジースキル)

これらを細かく見ていくとこのようになります。
◆Life & Career Skills(人生とキャリアのスキル)
 ・Flexibility & Adaptability(柔軟性と適応性)
 ・Initiative & Self-Direction(自発性と主体性)
 ・Social & Cross-Cultural Skills(社会と異文化スキル)
 ・Productivity & Accountability(生産性と管理能力)
 ・Leadership & Responsibility(リーダーシップと責任感)

◆Learning & Innovation Skills(学習と変革のスキル)
 ・Critical Thinking(批判的思考)
 ・Communication(コミュニケーション)
 ・Collaboration(コラボレーション)
 ・Creativity(クリエイティビティ)

◆Information, Media & Technology Skills(情報、メディア、テクノロジースキル)
 ・Information Literacy(情報リテラシー)
 ・Media Literacy(メディアリテラシー)
 ・ICT(Information, Communications & Technology)Literacy(ICTリテラシー)

ただ、上記のスキルだけがあれば良いというものではなく、それらを支える土台としての知識やスキルも必要であると述べており、それが、緑のKey Subject(主要科目)- 3Rと21st Century Themesになります。
3Rとは、日本語でも”読み書きそろばん”という言葉があるように、
Reading(読み), Writing(書き), Arithmetic(算)のことです。

21st Century Themes(21世紀のテーマ)は以下になります。
-Global Awareness(国際感覚)
-Financial, Economics, Business & Entrepreneurship Literacy(金融、経済、ビジネス、起業リテラシー)
-Civic Literacy(市民リテラシー)
-Health Literacy(健康リテラシー)
-Environmental Literacy(環境リテラシー)

この他、下部の4つのボックスにあるのがサポートシスムテムです。
スタンダードとなる仕組みを作るだけでなく、評価や指導法、専門的な開発や学習環境も作っていく必要があると述べられています。

ATC21s(Assessment and Teaching of Twenty-First Century Skills Project)

続いて、ATC21s(Assessment and Teaching of Twenty-First Century Skills Project):21世紀型スキルの評価と学びのプロジェクトです。
こちらは、マイクロソフト、インテル、シスコシステムズなどがスポンサーとなり、世界中の教育、政治、ビジネスに関わる人達の協力で2009年に発足。
21世紀に必要なスキルの教育、学習、測定を支援することで、グローバルな教育改革を行うことを目的としたプロジェクトです。
こちらのプロジェクトでは、21世紀型スキルは以下のように定義されています。
ATC21
日本語訳するとこうなります。

◆思考の方法(Ways of Thinking)
 ・創造力とイノベーション
 ・批判的思考、問題解決、意思決定
 ・学ぶことの学習、メタ認知(認知プロセスについての知識)
◆働く方法(Ways of Working)
 ・コミュニケーション
 ・コラボレーション(チームワーク)
◆仕事のツール(Tools for Working)
 ・情報リテラシー
 ・情報通信技術のリテラシー(ICTリテラシー)
◆世界の中で生きる方法(Skills for Living in the World)
 ・地域と国際社会での市民性
 ・人生とキャリア
 ・個人と社会における責任(異文化の理解と異文化への適応力含む)

こうして2つの21世紀型スキルを比べてみると極めて近いことが述べられていることが分かります。
分かりやすいように表にまとめてみました。 
21st_skills

ほぼほぼ同じ事柄が若干異なる枠組みで述べられているだけですね。
どちらでも述べられている要素は間違いなく今後の教育に重要な要素で、片方でしか述べられていない要素も含めて網羅して考えると、「21世紀に相応しい教育」が見えてくるのではないかと思います。 

大きく変化する社会構造。
そんな未来を強くしなやかに生きる力を子ども達が育める教育を学校・教職員は考え提供していく義務があります。 
21世紀型スキルはその授業設計のために必須の概念だと思います。
教育関係者の方々は是非ご覧になり、授業等に活用してみてください。