Fred Fiedler(フレッド・フィードラー)は1950年代からリーダーシップ理論の開発を始め、
1967年に”Contingency Theory of Leader Effectiveness.”を提言しました。
これがフィードラー理論です。
この理論以前は、以下の2つの理論が主流でした。
・特性アプローチ:優れたリーダーにはどのような資質があるか
・行動アプローチ:優れたリーダーは具体的にどのような行動をとっているか
そこの登場したのが、状況アプローチ(Contingency)です。
Fiedlerは、状況に合わせてリーダーシップ戦略を変えなければならないことをこの理論で指摘しました。
この理論の構造は「2種類のリーダーシップスタイル」と「3つの状況要因」の組み合わせです。
1つずつ見ていきましょう。

1. 自身のリーダーシップスタイルの確認
Fiedlerはリーダーを「タスク志向」か「人間関係志向」かという2種類に分類しました。
「タスク志向のリーダー」は仕事および組織の目的達成にもっと焦点を合わせ、
「人間関係志向のリーダー」はメンバーとの相互信頼、尊敬、信頼といったポジティブな関係構築に焦点をあてます。
そして、LPC(Least Preferred Coworker)スケールを用いることで、自身がどちらのリーダーシップのタイプなのかを確認できます。
これは、「一緒に働くことが最も苦手だった同僚」を1人選んでもらい、
その人について下図の各項目毎に評価し、スコアを足し算します。
LPC

総スコアが高ければ、「人間関係志向のリーダー」(64点以上)
総スコアが低ければ、「タスク志向のリーダー」(57点以下)
の可能性が高くなります。(58点〜63点はミドルとされます)
苦手な同僚に対しても好意的に評価すると人間関係を重視し、
逆に避けるような態度をとると人間関係よりもタスク重視ということですね。

2.状況要因の確認
次に、以下の質問にYes/No(○/×)で回答し、自身の置かれている組織の状況を把握します。
①メンバーとの関係:メンバーとの関係性は良いですか?
②タスク構造   :あなたの仕事は明確で構造化されていますか?
③権限の強さ   :チームに対して強い権限がありますか?
これらの回答から、マトリクス状にまとめられた表から組織の状況、ポジションが分かります。
そして、各状況に対して効果的なリーダーシップのあり方を当てはめているのが、
「フィードラー理論」ということになります。
これらをまとめて図式したものがこちらです。
fiedler

こちらを見ながら、改めて理論について実例を基に考察してみましょう。
まず、状況が良くも悪くもない中間の時は、人間関係志向型のリーダーシップが効果的で、
状況が良い時と悪い時はタスク志向型のリーダーシップが効果的であることが分かります。
タスク志向型が状況が良い時も悪い時も効果的というのは不思議な感じもしますね。
例えば、その日集まったメンバーでタスクをこなす就活のグループワークをイメージしてみましょう。
この時、人間関係もできていなければタスクも構造化されていません。
限られた短い時間の中で成果を最大化するには、人間関係構築に時間をかける余裕はありません。
短期決戦の場合は、人間関係よりもタスクを優先する方が結果が出やすいということになります。
一方、泊りがけの研修等長い時間をかけてチームでタスクに当たる場合、
人間関係の構築に力を注ぐと良いチームになり、その結果成果が出やすくなっていきます。
そして、人間関係も構築でき、タスクも構造化されている、組織として良い状態にある場合は、
再度タスク志向型が適していることになります。
これは、それ以上人間関係構築に時間・労力を注ぐよりも、タスクに集中した方が成果が出やすいということを示しています。
結論としては、人間関係もタスク構造化もどちらも大事ですが、状況に応じてどちらに注力すべきかが変わり、効果的なリーダーシップも変化する、というのがこの理論のポイントとなります。

上記を参考に、自身のリーダーシップスタイルを知り、3つの状況要因から自組織を把握し、
その状況に適したリーダーシップを理解し、発揮すると、成果は上がりやすくなるかもしれません。

ただし、厳密に言うといくつか批判もあるようです。
例えば、LPCスケールはリーダーシップの能力を計測する尺度として統計的な信頼度は高くはないそうです。
また、柔軟性の欠如についても指摘があります。
フィードラーは、人のリーダーシップは基本的に固定であるため、
状況に適さないリーダーシップを持つリーダーがいた場合、
「リーダーが変わる」ではなく「リーダーを取り替える」ことを推奨しています。
これは、リーダーシップは学習することで開発・習得できるという考え方と真っ向から対立します。
これらの点に留意し、1つの参考として柔軟な活用していただけたらと思います。