先日、大学院でデューイとフッサールについて考察する授業がありました。
教育や人材開発・組織開発のルーツを辿って考え方ことは今までほぼなかったので非常に興味深く受講していました。
忘れないように自分でも整理のためにまとめておこうと思います。

今日は、ジョン・デューイ(John Dewey)についてまとめます。
Dewey

デューイは、アメリカの哲学者で、1859年に生まれ1952年に亡くなりました。
デューイが生きた時代の教育の考え方は、「どれだけ知識を頭に詰め込まれるか」というものが主流でした。
そこに「真実の教育は、経験を通して生じる」と、アンチテーゼを投げかけます。
「教師と教科書中心」ではなく「児童と経験中心」が大事だという主張したわけです。
これが経験学習の始まりであり、後年、コルブが経験学習モデルとして応用し、ビジネス界に普及させていくことになります。
デューイの教えについて、個人的に重要だと思う点を以下にまとめます。
 

「経験」と「内省」

"We don't learn from experience. We learn from reflecting on our experience. "
「我々は経験から学ぶのではない。経験を振り返ることから学ぶのだ」
という氏の言葉にもあるように、Reflective Thinking(内省思考)の重要性についても語られています。
学校における振り返りのない経験学習、職場におけるやりっぱなしの仕事、振り返りのない研修
そういったケースは多くはないでしょうか?
経験から学びを受け取るためには、意識的に「内省」の時間を増やすことが重要です。
「内省が経験を学習とより深い洞察へと導くのだ」と主張し、
内省として以下のプロセスに取り組む必要があると述べています。

①当惑(Perplexity):問題に直面した時に出てくる提案やアイデアに応じる
②精緻化(Elaboration):類似した過去の経験を参照
③仮説(Hypotheses):いくつかの仮説を立てる
④仮説比較(Comparing hypotheses):仮説の中に一貫性を見出す
⑤行動(Taking action):仮説を選択し行動する
これらのプロセスを経て「習得の満足感や楽しさ」を経験するのが大事である

また、内省思考を習慣化する3つの態度について以下のように述べています。
①オープンマインドで偏見を持たない(Openmindedness, freedom from prejudice)
②心から夢中になる or 興味を持つ(Wholeheartedness or absorbed interest)
③結果に対して責任を負う(Responsibility in facing consequences) 


衝動

学習には衝動が大事であるとも述べています。
衝動なき経験学習はやらされ経験学習です。
まずは、学習者の衝動を喚起するところから始めましょう。
デューイはこの衝動を以下の4つに分類しています。
①社会的本能:話したい
②構成的衝動:つくりたい
③探究の本能:やってみたい、試したい
④表現的衝動:表現したい

ちなみに、以下の図は、コルブがデューイの経験学習モデルを図式化したものですが、衝動から始まっていることが見て取れます。
衝動⇨環境の観察⇨過去に得た知識との探索⇨過去に得た知識との意味づけ⇨新たな衝動、というサイクルです。
dewy
Experiential Learning(1984)より引用

学校と社会の接続・相互作用 

学校は抽象的概念を学ぶだけでなく、小型の社会として、社会との接続点を増やすべきであると述べ、それを以下のようにモデル化しました。
dewey_school_model

The School and Society (1900)より引用


このモデルでは、真ん中に図書館(Library)があり、その周辺四隅に、衣(Textile industries)、食(Kitchen)、住(Dining room)、商売(Shop)が配置され、また、外部「ビジネス」「家庭」「庭・自然」とも接続する形の構造です。
様々なものが有機的に繋がり、そこで沸き起こる衝動を、中心の図書館で調べ学習する、というデザインです。
更にデューイは、このモデルを反映した実験学校(Laboratory School)を1896年に設立しています。
125年も前にこの構想を描き学校にしていたことに驚愕しました。
しかしながら実際は運営が難しく1903年に閉校しています。
これは特に教員の確保が困難であり、コストが原因だったようです。
日本の教育現場においても社会との接続や、経験学習やアクティブラーニングが大事だと言われ続けてながらも大きな広がりが見られていないのはここに問題があるのかもしれません。

私も大学で産学官連携のPBL型の授業をしていますが、やはり同じ様な課題を感じています。
毎年行政や約10社の企業と交渉しながらプログラムを編んでいくのはなかなかに骨が折れます。
ですが、その困難を超えた先に生み出せる価値があるというのもまた真実かと思います。
デューイが未来に描いた教育の理想像、そのエッセンスを学び自身の授業にも反映していきたいと思います。

【参考文献】 
デューイ, J. D., 1957, 『学校と社会』(宮原誠一訳), 岩波文庫
デューイ, J. D., 2004, 『経験と教育』(市村尚久訳), 講談社
Dewey, J. (1900) The School and Society. University of Chicago Press.
Dewey, J. (1933) How We Think: A Restatement of Reflective Thinking to the Educative Process. Boston: D. C. Heath. (Original work published in 1910)
Kolb, D. A.(1984) Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development, Prentice Hall.