『リンゲルマン効果(Ringelmann Effect)』とは、「集団で共同作業をする場合、人数の増加とともに一人あたりの仕事効率が低下する」現象のこと。
これは、1913年に論文発表したフランス人のリンゲルマン(Maximilien Ringelmann)の名前から来ています。
リンゲルマン効果を考えるにあたり、KravitzとMartin(1986) の論文を考察してみます。
まずはこちら
table2
KravitzとMartin(1986) より引用
これは、1〜8人グループそれぞれに綱引きをさせて、その力を測定したものです。
右の「Total」は「集団で引く力の総和」ですので、人数が増える毎に上がっていますが、
真ん中の「Furnished per worker(1人当たりの力)」は、人数が増える毎に下がっていることが分かります。
そう。人数が増える毎に、1人当たりの仕事効率は低下するのです。これが「リンゲルマン効果」です。

では、なぜ人が増えるにつれて1人あたりの生産性は下がってしまうのでしょうか。
答えは皆薄々感じているかと思いますが、手を抜く人が現れるためです。
これを「社会的手抜き」と言います。
大勢で荷物を運ぶ際、こっそり力を抜いている人っていますよね。(自分もですが)正にそれです。
人数が増えるにつれて社会的手抜きが増えるという論理で考えると、大企業は手抜きの巣窟となっていると言ってもいいでしょう。
大企業病という言葉がありますが、それは「リンゲルマン効果」で説明ができそうですね。

ちなみに、上記のように集団により手抜きをする人が現れたり、協調できずにかえって非効率になったりすることで生じる損失のことをProcess Loss(プロセス・ロス)と言います。
そして、その逆、つまり集団により相乗効果等で得られる利益のことを、Process Gain(プロセス・ゲイン)と言います。

プロセス・ゲインは、リンゲルマンの調査でも一部垣間見ることができます。それがこちら。
Table3
KravitzとMartin(1986) より引用
これは、様々な2人組での綱引き調査の結果です。
力の異なる被験者2人(Subject1&2)が単独で出せる力を合計したのがSum(合計)。
そして、2人で引っ張った際に実際に出た力が、右のDyadic performanceです。
全体の平均で見ると、Sumの平均は160.8kg、2人で引っ張る平均は143.2kgと、
やはり1人より2人の方がプロセスロスは起こっていますが、その逆も一部あることが確認できます。
つまり、2人で引く方が個々の力の総和よりも高くなっておりプロセスゲインが生じている場合もあるということです。

このように、組織に人が増えていくと「社会的手抜き」が増え、「プロセスロス」が生じ、1人あたりの生産性が低下していきます。これが「リンゲルマン効果」です。
そうならないために、特に人数の多い組織においては、「プロセスロス」を減らし「プロセスゲイン」がより多く生じるような組織づくりを戦略的に行なっていく必要があります。
人は集まるだけでは手抜きが起こるのが自然と考えた方が良さそうです。

【参考文献】
Kravitz, D. A. And Martin. B.(1986) Ringelmann Rediscovered : The original article. Journal of Personality and Social Psychology. 50(5) pp936-941