ユタ州立大学名誉教授のM. David Merrillが提唱した「インストラクションの第一原理(First Principles of Instruction)」というものがあります。
これは、どのように学習の場を設計すれば学習効果が高まるのかというインストラクショナルデザイン(Instructional Design)、教授設計の1つの理論です。
課題を中心に全部で5つのフェーズに分けて構成されています。
Merrill
Merrill(2002)を参考に日本語訳し作成

課題中心(Problem-Centered) 

学習者が実社会の問題解決に取り組むことで、学習が促進される。
・タスクを見せる(Show task)
 学習者が取り組むタスクの例を見せる。
・タスクレベル(Task level)
 学習者が課題やタスク、実施内容のレベルに魅力を感じていることを確認する。
・課題の進行(Problem progression)
 課題の進行に合わせて教えていく。

活性化(Activation)

学習は、既存の知識が新しい知識の基礎として活性化されることで促進される。
・過去の経験(Previous experience)
 学習者が持つ知識や経験をタップする(アクセスする)。 
・新たな経験(New experience)
 タスクが魅力的で興味があり本質的であることを確認する。
・構造(Structure)
 基本的な問題から始め、学習の足場がけ(scaffolding)を作る。

例示(Demonstration) 

新しい知識が学習者に示されると、学習が促進される。
・例示(Demonstration consistency)
 デモ付きのコンテンツ、学習成果の例を示す。
・学習者のガイダンス(Learner guidance)
 アイデア、コンセプト、視点を複数の方法で提供する。
・関連性のあるメディア(Relevant media)
 メディアが効果的な学習を促進する。

応用(Application)

学習は、新しい知識を学習者が応用することで促進される。
・一貫性のある練習(Practice consistency)
 学習成果を確認しながら、アクションを調整する。
・コーチングを減らす(Diminishing coaching)
 学習者の自立を促すため、コーチングを徐々に減らす。
・様々な問題(Varied problems)
 学習した内容を様々な場面で活用する機会を提供する。

統合(Integration)

新しい知識が学習者の世界に統合されると、学習が促進される。
・私を見て!(Watch me)
 学習者が学んだことを実演したり、シェアする機会を提供する。
・リフレクション(Reflection)
 成長を確認するためのリフレクションの機会を設ける。
・創造(Creation)
 学習者が学んだことを実生活に活用するよう支援する。

教えることに従事されている方は、この理論を自身の教授活動に当てはめて考えてみると、 改善すべき点が見えてくるかと思います。
私自身も、自分の授業をこの理論を参考にいくつか改善してみました。
例えば、英語の授業だとこんな感じ。
(現実の課題解決)アルバイトで外国人のお客さんの対応ができるようになろう
(活性化)英語で言えなかったのはどんな文章?思いつくところまで書いてみよう(過去の知識)
     例えばこういう言い方はできたかもしれないね(新しい知識、例示)
(応用) じゃあこんなケースだとどう英語で言えるかな?(様々な問題)
(統合) 今日学んだことを実際にアルバイトでどのように活かすかイメージしてみよう(創造)
また全体的には、学習者のレベルに合う形で徐々に難易度を上げていく設計をすること、
教えることやコーチングを徐々に減らし、自己調整的な学習態度を育むことなどもポイントかと思います。
ざっと考えてみましたが、まだまだ応用できる点はたくさんあると思うので、
このフレームワークを頭に入れながら色んな教授設計の改善に活用しようと思います。
教育に関わる方は是非参考にされてみてはいかがでしょうか。

 【参考文献】
Merrill, M. D. (2002). First Principles of Instruction. Educational Technology Research and Development. 50(3), 43-59.
Merrill, M. D. (2009). First Principles of Instruction. In C. M. Reigeluth & A. Carr (Eds.), Instructional Design Theories and Models: Building a Common Knowledge Base (Vol. III). New York: Routledge Publishers.