今回は、"The Development Pipeline"について考察します。
きっかけは、こちらの書籍"Handbook of HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT"
この本の勉強会で「コーチング」の章の担当になったので読み進めていたところ、
The Development Pipelineという聴きなれない概念が出てきたので調べてみることにしました。
日本語だと「開発パイプライン」とかって呼ばれるんでしょうか。
調べてみたのですが、日本語訳が見つからなかったので英語のまま記載しました。
では内容について見ていきます。

"The Development Pipeline"
こちらは、2006年にGoogleのDirector of Executive Coaching & Leadershipである
David Petersonによって提唱されました。
これは、従業員育成のためのツールで、学習にとって必要な要素を家の中を走るパイプに例えて表現したものです。
リーダーシップパイプラインという概念もありますが、それとはちょいと異なります。
従業員の成長を促すには、5つの必要条件があります。
その5つを連結したパイプで表現しているわけですね。
パイプの各部分がしっかり開いていればいるほど、成長は促され、
逆に詰まりがあったり狭かったりすると、そこが原因で成長が阻害される。
そういった形で成長の詰まりポイントを見つけるためのツールになります。 
その5つがこちらです。左から右に流れる形となっています。
development_pipeline
では1つずつ見てみましょう。

①Insight(インサイト:洞察力)

ここが開発の出発点です。
従業員自身が変化や成長が必要だと自覚していなかったり、
自覚はあってもそのために何が必要かを理解していなければ成長効果は低くなります。
授業員が自分自身でそれに気づく、そのインサイト(洞察力)がまず必要です。

②Motivation(モチベーション)

2つ目は、自己啓発に必要な時間とエネルギーをどの程度投資できるかの度合いであるモチベーションです。
変わりたいと思っていても、その変化を起こすのに必要なモチベーションを持っていなければ、行動を起こすことはあまり期待できません。
モチベーションの源泉は人によって異なりますし、時期や環境によって変化したりもするので、
確認し管理することは容易ではありませんが、いずれにしても重要なポイントです。

③Capability(能力)

3つ目は、能力です。
その人が開発に必要なスキルと知識をどの程度持っているか、ということです。
パイプラインの中で研修やトレーニングが機能するのは主にこの部分です。
逆に言うと、ここ以外の部分では効果は非常に限定的であるとも言えます。
研修会社や講師はこの部分を見定めるのが非常に重要だということになります。

④Real-World Practice(実世界での実践)

4つ目は、実世界での実践です。
これは、新しいスキルを職場で試す機会がどの程度あるか、を意味します。
新しいスキルは実践しなければ本当の意味で身につきません。
リーダーやマネージャーは、そのような機会を見つけ経験資源を付与する必要があります。
これは、リーダーシップパイプラインの概念と非常に重なる部分があります。
将来の様々なポジションでリーダーシップを発揮するためには、
早い段階からリーダーシップを発揮する経験が積める機会提供をすることが重要ということです。

⑤Accountability(アカウンタビリティ:説明責任)

最後の5つ目は、アカウンタビリティです。
これは、変化や結果について内部・外部に説明する仕組みがどの程度あるか、ということです。
成長の度合いを測定したり、報告するような機会があれば、そこに向けて頑張れますよね。
そのような機会をどのように作るかという環境整備についても考慮する必要があります。

これらの5つのポイントが大きく開いていると、従業員の成長はグングン促進されますが、
どこかに詰まりがあると、そこが原因で成長は阻害されてしまいます。
興味深いのは、最も狭い部分の流れが全体の流れに影響を与えるという点です。
これは、ザ・ゴールで説明されているTOCのボトルネックの考え方そのものです。
したがって、5つの観点から従業員育成の流れ全体を把握し、
ボトルネックであろう部分から手を入れて改善していくことが、
パイプライン全体、すなわち育成をより効果的にしていくことに繋がります。

コーチングでもよく使われているフレームだそうですので、
私もどこかの機会で意識して使ってみようと思います。授業にも使えそう。

ちなみに、

の中で紹介されているので、良かったらご覧になってみてください。