コーチングのモデルの1つである『PRACTICE Coaching Model』 についてまとめます。
コーチングのモデルで最も有名なものとしてGROWモデルがありますが、それ以外にもLibriのPOSITIVEモデルやJacksonとMcKergowのOSKAR モデル等様々なものがあり、PRACTICE Coaching Modelもその中の1つです。

このモデルは、Wasikの7Step問題解決モデルをベースにし、Stephen Palmerが発展させて作成しました。
ちなみにWasik (1984) のモデルは以下となります。
①Problem identification:課題特定
②Goal selection:ゴール選択
③Generation of alternatives:選択肢作成
④Consideration of consequences:結果の検討
⑤Decision making:意思決定
⑥Implementation:実施
⑦Evaluation:評価

WasikのモデルとPRACTICEモデルを比べてみると極めて似ていることが分かります。
一応、違いとしてPRACTICEモデルには以下のような点があると言われています。
・コーチはクライアントについてより早く知るためにクライアントが自分自身について話す機会を設ける
・Scaling questionを用いて各ステップで状況を定量的に把握する

以下に、PRACTICEの頭文字からくる7つのステップと、代表的な問いかけをまとめます。
PRACTICE_Model

①Problem identification:課題特定 

最初のステップは、クライアントの課題を明確にすることです。
コーチは、問題だけでなく、クライアントを真に理解することに時間をかけます。
「あなたが議論したい問題や課題、懸念、トピックは何ですか?何を変えたいですか?」
「それが問題でない場合の例外はありますか?」
「状況が改善されたかどうかは、どのように判断しますか?」
「自分1人でその問題を解決する能力は0から10の範囲でどの程度ですか?」
「明日の朝、目が覚めて、この問題がもはや存在しないと想像できますか?」

②Realistic and relevant objectives:現実的で適切な目標 

第2ステップは、問題に関する適切で具体的な目標を立てることを中心に展開します。
しばしばSMART Goalを設定することがありますが、必ずしも必要ではありません。
「何を達成したいですか?」
「SMARTゴールを設定しましょう」
「その目標は測定可能ですか?」

③Alternative solutions:代替案

第3ステップは、幅広い選択肢の中から解決策を見出します。
このフェーズではクライアントのことを急かさず、できるだけ多くの代替案を出してもらいましょう。
多くの選択肢を出すことで、より広い解決策のイメージを抱くことができます。
「選択肢は何がありますか?」
「選択肢を書いてみましょう」

④Consideration of consequences:結果考察

第4ステップは、各解決策に関する結果の検討です。
それぞれの解決策を実行した際、何が起こり得るかを調査、検討します。
結果にはポジティブとネガティブの両方ありますが、どちらも調査する必要があります。
その解決策がどれだけ効果的か、1〜10段階でチェックします。
「解決策はどの程度有効ですか?」

⑤Target most feasible solution:最良の解決策を目指す

第5ステップでは、最も実現可能性の高い選択肢に焦点を当てます。
リソース、時間、機会、リスク等、解決策に影響を与える要因をできるだけ考慮して選択します。
「ここまでで可能な解決策を考えてきましたが、最も実現性の高い、あるいは実用的な解決策は何でしょうか?」
「他にどんな選択肢があるでしょう」 
「クライアントは解決策に対して心地よく感じているだろうか」

⑥Implementation of Chosen solution:選択した解決策の実施 

第6ステップでは、前のステップで選択した解決策を実行に移します。
より簡単に実行できるよう、アクションを細かく分割し、Step by Stepのプランに落とし込みます。
このプロセスは、クライアントが主導する必要があります。
自分で決めたものではないと、なかなか実行されない可能性があるためです。
「選択した解決策を実行するために、マネジメント可能なステップにブレイクダウンしましょう」

⑦Evaluation:評価

最後のステップは、コーチングプロセス全体が成功したかどうかの評価です。
ここでも1〜10の尺度を使用します。
プロセスがどのように行われたのかを振り返り、クライアントが目標達成に向けて正しい道を歩んでいるかどうかを確認します。
「この期間、どの程度うまくいったと思いますか?」
「何を学びましたか?」
「もっとコーチングが必要ですか?」
「議論すべき別の問題はありますか?」

以上がPRACTICEコーチングモデルになります。
コーチングに関わっていらっしゃる方は、引き出しは多い方が良いと思いますので、
このモデルについても知っておいて損はないかと思います。
個人的には、様々なフェーズで10段階で定量評価するのは応用しやすい方法だと思いました。


【参考文献】
Palmer, S. (2011). Revisiting the P in the PRACTICE coaching model. The Coaching Psychologist, 7(2), 156-158.Wasik, B. (1984). Teaching parents effective problem-solving: A handbook for professionals. Unpublished manuscript. Chapel Hill: University of North Carolina.