先日、"Handbook of HUMAN RESOURCE DEVELOPMENT"の勉強会で
「Chapter 24:コーチング」の章を担当しました。
結構な分量でしたが、組織コーチング(Organizational Coaching)の基礎をなす様々な理論やそこから派生したモデル、使用される場面や効果等、全体像をイメージすることができました。
エグゼクティブコーチングと異なり、こちらのコーチングプロバイダーは社内の人材です。
「成人発達理論」「認知・行動心理学」「存在論」「ポジティブ心理学」の4つです。
Authentic Happiness Coaching: AHC
①コーチングと他の組織開発手法との違い
結構な分量でしたが、組織コーチング(Organizational Coaching)の基礎をなす様々な理論やそこから派生したモデル、使用される場面や効果等、全体像をイメージすることができました。
すぐに忘れてしまうと思うので、ここでもまとめておこうと思います。
まず、全体像のイメージとして組織コーチングの概念をフレームワーク化したものから見てみましょう。
本書のp.403にある"Figure 24.1 Model of Organizational Coaching"に日本語で諸々追記し作成しました。
最も下にあるブルーの部分が、組織コーチングの理論的視座で、大きく4つの学術的な理論があります。
そしてその上のオレンジが、それらの理論を土台として生まれたコーチングのモデルやプロセスです。
本書のp.403にある"Figure 24.1 Model of Organizational Coaching"に日本語で諸々追記し作成しました。
最も下にあるブルーの部分が、組織コーチングの理論的視座で、大きく4つの学術的な理論があります。
そしてその上のオレンジが、それらの理論を土台として生まれたコーチングのモデルやプロセスです。
その上に様々なスキル、態度があり、最上部の2つの柱が実際に組織コーチングで行われている2つの形態(エグゼクティブコーチングとワークプレイスコーチング)を示しています。
では1つずつ見ていきましょう。
まず組織コーチングの2つの形態からです。
では1つずつ見ていきましょう。
まず組織コーチングの2つの形態からです。
組織コーチングの2つの形態
エグゼクティブ・コーチング(Executive Coaching)
2つあるうちの1つ目はエグゼクティブコーチングです。
これは、通常、中堅以上のマネージャー層に対して組織外のプロコーチによって行われます。
コーチングの種類は以下の3つがありますが、多くの場合これら全てに取り組みます。
これは、通常、中堅以上のマネージャー層に対して組織外のプロコーチによって行われます。
コーチングの種類は以下の3つがありますが、多くの場合これら全てに取り組みます。
①スキル:リハーサル(練習)とフィードバックを通じて、必要なスキルや行動を学ぶ(プレゼン、コミュニケーション、セールス、交渉などのスキル等)
②パフォーマンス:特定の期間にパフォーマンスを向上させることに重点を置く。ネガティブな業績評価や特定の業績問題の後に選択される介入である場合があります。
③能力開発:視点獲得(相手の立場で物事を考える)、意味づけ、EQ(心の知能指数)、チームとの関係等
ワークプレイス・コーチング(Workplace Coaching)
上司や人事等組織のメンバーから部下等の従業員に提供されるコーチングです。
次の3つのカテゴリーのいずれかに分類されます。
①マネジメントコーチング:管理職が従業員の育成を指導
②人事コーチング:人事担当者が従業員の業績や行動上の問題について指導
③学習・開発コーチング:職場学習のプロが、従業員個人と組織双方の戦略的ビジネスニーズを満たすスキルや行動を開発するために従業員を指導
コーチングのモデル・プロセス
次にオレンジ色のコーチングのモデル・プロセスです。この後、ブルーの理論的視座の部分で各理論に紐づく様々なコーチングのモデルやプロセスが出てきますが、ここではエグゼクティブ・ワークプレイスどちらの場合でも一般的に使用されているコーチングのステップについて紹介されています。
①役割を明確にする:組織と従業員に対する自身の役割を決め、期待値とガイドラインを設定する。②土台を作る:コーチング関係の指針となる合意書を作成。機密保持、ロジスティックス、進展がない場合や意見の相違がある場合の対処法について説明。
③パートナーシップを共創する:コーチは信頼を築き、より高いレベルの理解、洞察、行動につながる言葉を使います。コーチングの成功の鍵は、コーチが傾聴を通じて行動を促し、パワフルな質問をし、学習を促す能力です。
④コーチングデータの収集と分析:従業員に関するデータを収集、分析し、長所と改善点を探る。360度評価やインタービューを通して、長所や育成の必要性を明らかにする。
⑤コーチングデータのフィードバック:収集したデータの要約を、前向きな行動を促すような形で従業員に伝える。効果的なコーチングは、定性・定量データを分析し、それをポジティブな方法でフィードバックして、受容を促す。
⑥目標を設計し、進捗を確認する:クライアントが目標に基づいた行動計画を作成し、その達成に向けた進捗を行動計画で確認できるよう協力。
⑦コーチングミーティングを実施する:従業員はコーチングミーティングの議題を設定し、コーチは評価プロセスを含む構造とプロセスを提供する。
組織コーチングの理論的視座
組織コーチングの基礎として頻繁に使われる理論が紹介されています。「成人発達理論」「認知・行動心理学」「存在論」「ポジティブ心理学」の4つです。
1つずつ見ていきましょう。
そのためには、主体と客体を区別する能力が高まると、世界の複雑さをより理解できるようになり、
そのような成長は「変容(transformation)」 と呼ばれます。
主体客体インタビュー(Subject-Object Interview:SOI)成人発達理論
真の成長には、知識やスキルを獲得するだけでなく、視点や考え方の質的転換が必要です。そのためには、主体と客体を区別する能力が高まると、世界の複雑さをより理解できるようになり、
そのような成長は「変容(transformation)」 と呼ばれます。
キーガンが開発した当ツールは、使いやすく内容も豊富ですが、ツールの習得に何時間もかかることに加え、実施と採点に数時間を要する点がネックだと言われています。
詳しくは、「なぜ人と組織は変われないのか」のp38.39に紹介されていますので、ご参照ください。
Developmental Coaching Dialogue (Goodman, 2002)
コーチがクライアントの思考と行動の変化を生み出すための反復プロセス。4ステップで構成されます。①意味を問う:クライアントが問題やジレンマをより深く理解できるような質問をします。"How"と"What"質問を多く使用。
②新しい視点を構築する:クライアントの現状を確認し、その問題に対して別の見方ができるかもしれないという考えを紹介する。
②新しい視点を構築する:クライアントの現状を確認し、その問題に対して別の見方ができるかもしれないという考えを紹介する。
③橋渡しをする:コーチは、従業員が変化に伴う喪失に備えることができるよう、古い考え方や行動の側面を識別して保持し、それによって前進を促す。
④行動を展開する:構成主義・開発主義の視点からは、クライアントの思考を不安定にすることはあっても、恐怖心を与えない形で行動を促します。
認知・行動心理学(Cognitive/Behavioral Psychology)
認知・行動心理学は、オペラント条件付けのような古典的なものに始まり、非常に幅広くの学術的な知見が書かれていました。全ては書ききれませんので、抜粋して以下に記載します。
認知から行動までの連続した4つのステップ(哲学者カント)
認知行動コーチング(Cognitive/Behavioral Coaching:CBC)
・「虎を見た、危険だと思った、怖いと思った、逃げた」
・このアプローチでは、思考、感情、行動の間の関連性が強調されます。
「状況に与える意味によって自分自身を決定する」(アドラー)
・認知の視点を説明
「いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。われわれは自分の経験によるショック-いわゆるトラウマ-に苦しむのではなく、経験の中から目的に適うものを見つけ出す。自分の経験によって決定されるのではなく、経験に与える意味によって、自らを決定するのである。そこで、特定の経験を将来の人生のための基礎と考える時、おそらく。何らかの過ちをしているのである。意味は状況によって決定されているのではない。我々が状況に与える意味によって、自らを決定するのである。」
(人生の意味の心理学(上))※テキスト外
ABC理性感情療法(RET)モデル(エリス,1979)
ABC3つに焦点を当て、信念(B)を論理的に書き換え、正しい解釈ができるよう導く治療的アプローチ。
経験そのものではなく、信念が感情を引き起こすとし、その信念が
「非合理的思考(Irrational Belief)」をしていた場合に、そこをアプローチして治療する。
・A:出来事(Activating Event)
・B:信念(Belief)
・C:結果(Consequence)
「認知の歪み」認知療法
「認知の歪み」は治療やコーチングの文脈で「思考エラー(thinking error)」と呼ばれる
思考エラーは「不十分または不適切なデータに認知的に焦点を当て、非論理的な結論を導き、不正確な推論を行い、ほとんどまたは全く経験的証拠なしに予測された結果を基にする処理のエラー」と定義される。
一般的な思考エラーには、以下のようなものがある。
・①思考察知(関連情報なしに結論を出すこと):例えば、"残業をしなければクビになる"など。
・②All or Nothing思考:"彼女はいつも遅刻する"など、"優秀 "か "最悪 "かといった極端な基準で経験を評価すること。
・③"彼はあのプロジェクトでもっと良い仕事をするべきだった"など、"should"や "must "を使うような要求、硬直した考え方、柔軟性に欠けた考え方。
認知・行動心理学に基づくコーチングモデル・プロセス
「クライアントが現実的な目標を達成できるように、認知行動学の枠組みの中で、認知、行動、イメージ、問題解決のテクニックや戦略を組み合わせて行う統合的アプローチ」
初期のCBCは認知行動療法(CBT)やエリスのRETの原理と実践に影響を受けていましたが、最近のCBCはマインドフルネスなどの構成主義の哲学を利用しています。
マインドフルネス
「気づき」「注意」「時間(現在への集中)」「受容」の4つの重要な要素があるとされ、瞑想や感覚への気付きのエクササイズを通じて、コーチングに取り入れられています。
3段階の行動訓練法(B.F.スキナー)
①目標や望ましい行動を定義する
②開始点(現在の動作)を定義する
③他のすべての行動を無視しながら、望ましい方向への各ステップを強化する
開発パイプライン(The Development Pipleline)(ピーターソン, 2002)
個人と集団が共に成長するための必要条件と十分条件をパイプラインの形で示しています。
コーチがクライアントに最大の価値を提供できるのはどこかを判断するのに役立ちます。
こちらの記事でまとめています。
GROW モデル (Whitmore, 2009)
GROWモデルは、行動コーチングのモデルとして最もよく知られています。
4つのステージからなり、従業員が自分自身や自分の行動の影響、行動の可能性を理解するのを助けるように設計されています。
こちらの記事でまとめています。
COACHモデル(Bianco-Mathis, Nabors, & Roman, 2002)
GROWモデルに、現状と、行動の選択と実施における選択の役割を強調する2つの新しいステージを追加しました。
-C: current situation:現状
-O: objective, goal, future picture:目標、ゴール、将来イメージ
-A: alternative actions:代替案
-CH: choice; move to action:選択、行動へ
PRACTICEモデル (Palmer, 2007)
目標の探索とSMARTゴールの設定を統合したフレームワーク。
各フレーム毎に代表的な問いかけと合わせて、
各フレーム毎に代表的な問いかけと合わせて、
こちらの記事でまとめています。
ソクラテス式問答法
認知コーチングの基本的な技法の一つとされています。
正解を求めるのではなく、どんどん質問を重ねることで思考を刺激し、自己認識を高める手法。
正解を求めるのではなく、どんどん質問を重ねることで思考を刺激し、自己認識を高める手法。
こちらの記事でまとめています。
行動科学(Argyris, 1983)
行動科学は、私たちの行動の根底にある理由を考察・探求するための手法で、
コーチング、メンタリング、コンサルティング、組織開発などに大きな影響を与えています。
SengeのThe Fifth Discipline (1990) は、Argyrisのアイデアの多くを、Sengeが"organizational learning disabilities" と呼ぶものに移し替えました。
組織的学習障害は、従業員が自分の業績と組織的目標の達成を妨げている思考パターンを特定し、それについて考えることを支援する言語を、コーチに提供するメタファーである。
メンタルモデル
メンタルモデルとは、「個々人が無意識に抱いている固定観念」のこと。
Senge(1992)はメンタルモデルが「新しい洞察の受容を妨げる」と述べている。
コーチは、クライアントが自分のメンタルモデルを認識し、振り返り、仮定と推論を検証する対話を行うことを支援します。
こちらの記事でまとめています。
推論のはしご(Ladder of inference)
メンタルモデルを表面化させるための対話ツールが推論のはしごです。
これはデータや出来事から、推論、結論、行動に至るまでのプロセスを見える化するものです。
この梯子には、下から順に5つのステップがあります。
①画像や言葉などの感覚的なデータ
②選択したデータと焦点
③選択したデータに関する推論
④私たちの結論
⑤結論に基づいて取る行動
※「学習する学校」のp.162で詳しく説明されています。
存在論(Ontology)
「存在論とは、存在の本質や現実の構造といった問題を含む、存在一般に関する科学」(Oxford Companion to Philosophy)フェルナンド・フローレスが初めて "オントロジー・コーチング(ontological coaching)という言葉を使い、この視点の第一の創始者となりました。
存在論的の中心的には、マトゥラーナの言語観があります。
これは、言語は、私たちが現実を構築する際に積極的な役割を果たし、意味を生成するプロセスであるインタープリテーションを伴う、つまり、言語が現実を創造するという考え方です。
これは、オントロジー・コーチングの中心にあり、「言語行為(speech acts)」と呼ばれます。
存在論に基づくコーチングモデル・プロセス
オントロジー・コーチは、クライアントの「あり方」が行動を促すと考え、気分、感情、生理機能、言語などを探り、変化を支援します。
オントロジー・コーチングのステップ
①コーチングの関係を確立する
コーチは、クライアントにとって本当に重要なことに耳を傾けます(目標や成果ではなくてもOK)。
コーチは聴きながら以下のような質問を自分自身に投げかけます。
「私はどのように聞いているのだろう」、「語られていることにどんな意味を持たせているのだろう」
「どうしてこんな風に聞いているのだろう」、「どんな悩みがあるのだろう 」
「クライアントがこのような話し方をするのはどのような懸念があるのだろう」
②対応すべきクライアントの関心事と生活の”破綻(breakdown)“の程度を確認する
”破綻(breakdown)"という言葉は、生活の流れの中断を意味します。
破綻は、良いことも悪いこともあり、思考や行動の習慣を問うことを促します。
③クライアントが自己のあり方を創り出すために使っている言語、気分、感情、生理機能を探求する
オントロジーコーチングでは、ジョン・サール(1970)の研究からフローレスとソロモン(2003)が開発した、以下の「言語行為」を定義しています。
・宣言(Declaration):将来の行動を決定する権威者による声明。
・アサーション(Assertion):観察から得た過去に関する事実の記述。事実とするのは、人々の間で共有された合意。
・依頼すること(Request):他の人に何かを依頼すること。
・申し出る(Offer):条件付きで誰かのために何かをしてあげると言うこと。
・約束する(Promise):行動に対する相互の約束。約束は、要求と承諾、または申し出と受諾からなる。
オントロジーコーチングでは、感情、気分、生理機能も重要な要素として扱われます。
例えば、オントロジーコーチは、クライアントが言葉や感情で望んでいる変化と姿勢が一致するように、(許可を得て)従業員の身体に働きかけることがあります。
ポジティブ心理学(Positive Phycology)
ポジティブ心理学では、人間の欠陥や病理といったネガティブな部分ではなく、強み、ビジョン、希望等のポジティブな面に注目します。
特に、エグゼクティブ・コーチングのポジティブ心理学に関して、Kauffman(2009)は、ポジティブ感情、フロー、希望、強みの4つの領域を強調しています。
また、フレデリクソンの研究(2001)では、ポジティブな感情は免疫機能や回復力を向上させ、長寿や幸福の予測因子となる可能性が示唆されています。
ポジティブ心理学で扱う要素には以下のようなものがあります。
幸福
これは健全な機能の重要な構成要素であると考えられています(Freire,2013)。
幸福な人は不幸な人に比べて、より役に立ち、創造的で、親和的で、利他的であることが研究で示されています(Biawas-Diener & Dean, 2007)。
フロー
フローについてはこちらの記事でまとめています。
コーチは、この概念を、従業員が職場でより高いレベルのパフォーマンスを達成できるようにするためのツールとして使用します。
希望
Kauffman (2006)によると、希望のレベルが高い人ほど、代替手段を探し、主体性の感覚を維持する傾向があり、障害にうまく対応することができるようです。
Kauffman (2006)によると、希望のレベルが高い人ほど、代替手段を探し、主体性の感覚を維持する傾向があり、障害にうまく対応することができるようです。
希望には、主体性の感覚(目標を達成することが可能であるという感覚)と代替手段を見つけるという2つの変数があります(Snyder, 2000)。
コーチは、従業員との目標設定や行動計画の検討の中で、これらの能力を伸ばすことを支援します。
ヒューマン・ エージェンシー(Human Agency)
「Human Agencyとは、目的意識と反省的・創造的行動を通じて、環境を決定し、そこから意味を生み出す個人の能力」(Houston, 2010)
「自分自身の成長をコントロールできるという信念」
中村(2011)は、コーチングが、 従業員の個人的な資源と、従業員が生活または働く環境から受けるポジティブな影響を構築することで、従業員のヒューマン・エージェンシーを高められると述べています。
これらのポジティブな概念(幸福、強み、希望、フロー、エージェンシー)は、ポジティブ心理学の科学的研究とコーチングの実践の相乗効果を示しています。
今後、エグゼクティブコーチやワークプレイスコーチは、ポジティブな視点に基づいた目標設定と行動を可能にするメソッドを開発していくことになるでしょう。
ポジティブ心理学に基づくコーチングモデル・プロセス
ポジティブ心理学をコーチングに応用し、幸せを育むことを目的にセリグマン(2002)が開発。
幸福への3つの道筋を述べています
①感情を通して (The Pleasant Life)
②社内外の活動との連携を通して (The Engaged Life)
③個人的な意味を通して (The Meaningful Life)
セリグマンによれば、楽しい人生よりも、従事する人生、意味のある人生の方が、より大きな人生満足をもたらすそうです。
エンゲージメントを高めるためのコーチングでは、内発的なやりがいを感じることに焦点を当てます。
しかし、それだけでは十分でないことが多く、意味や目的を見出し、より大きな要因とつながることが、より大きな幸福につながるとされています。
生きる意味などですかね。オーセンティック・リーダーシップと繋がる部分もありそうです。
ポジティブ心理学のツールでは以下の2つが紹介されています。
どちらも実施してみた感想などを別記事で書いています。
どちらも実施してみた感想などを別記事で書いています。
組織コーチングの課題と傾向
最後に組織コーチングの課題と傾向について以下の3点が述べられていました。①コーチングと他の組織開発手法との違い
組織環境でコーチングを行うプロのコーチの仕事と、組織開発 (OD) や人材開発 (HRD) の専門家が組織の変化を促進する手段としてコーチングを利用する際の違いなどが明確でない問題があります。
Brown and Harvey (2006)によると、OD実践者の約80%は、自己主導的な学習と成長を促進するために、シャイン (1969) のプロセスコンサルティングの方法を用いており、これは多くのコーチングのアプローチに反映されています。
プロセスコンサルティングとコーチングの違いは、プロセスコンサルティングの介入の大部分がグループに対して行われることです。Scheinは、このようなプロセスを「ファシリテーション」(1969年)と呼びました。
他には、コーチングとセラピーの境界については、さらなる研究が必要と言われています。
心理的訓練を受けていないエグゼクティブコーチが不健康な行動を不用意に強化してしまう潜在的な危険性は、コーチングの文献で頻繁に取り上げられていますが、組織コーチングにおけるメンタルヘルスの問題に関する実証的研究はほとんどありません。
②組織コーチングの効果の評価方法
2000年以降、コーチングの評価に関する研究は非常に増えてきていますが、コーチングの成果を評価する際に、行動観察の手法や「ハード(hard)」パフォーマンス指標(例えば、生産性の向上や業績目標の達成度など)を適用している研究は数少ないと言われています。
360度フィードバック評価はよく知られていますが、Greif(2013)は、その違いや方向性によってポジティブまたはネガティブな反応を引き起こすため、結果指標として問題があると論じています。
代替案として、Greifは、Bass and Avolio (1990)によるMLQ:Multifactor Leadership Questionnaireスケールなど、信頼性が高く検証されたリーダーシップ行動尺度を推奨しています。
コーチングの投資対効果(ROI)の確認を求めることがありますが量的な評価だけでなく、質的な手法と組み合わせて、文脈に応じた豊富な情報や事例を取り入れることを推奨されています。
③組織コーチングに文化をどのように統合するか
コーチングモデルには、文化に関する知識、特にグローバルな視点からの知識を体系的に統合する必要があります。
Rosinski (2003) は、効率的な目標設定を促進し、従業員の自己理解を可能にする手段として、「グローバルスコアカード」を作成しています。
これは、コーチングの補助として、従業員に影響を与える様々な文化的観点を取り入れるのに役立ちます。
ふぅ、えらい長いまとめになってしまいました。
これまでコーチングの学術的なバックグラウンドを網羅的に勉強できていなかったので、とても良い気づきになりました。
学術的理論と実践の往還はやっぱり大事ですね。
ふぅ、えらい長いまとめになってしまいました。
これまでコーチングの学術的なバックグラウンドを網羅的に勉強できていなかったので、とても良い気づきになりました。
学術的理論と実践の往還はやっぱり大事ですね。
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