オーセンティックラーニング(Authentic Learning)についてまとめます。
Authenticは「真正」や「本物」を意味し、真正の学びとも言われます。
最近、オーセンティック・リーダーシップのようにAuthenticという言葉が様々なところで使用されていますね。
それだけ本物ではないものが増えているということなのでしょうか。。

さて、オーセンティックラーニングについては、定義は様々あるようですが、
ざっと概観したところ以下のような感じかと思います。

実社会で必要となる知識や技能などを実社会の問題やプロジェクト等に関わる活動の中で獲得する教育アプローチ"

エンゲストロームが、学校での学びが社会から遮断されていることを
学習のカプセル化」として問題視しましたが、正にそれに対する解決策という印象を持ちました。
私自身、ずっと前から学校と社会の間の隔たりには大きな課題感を感じていたので、
この溝を埋めようとする考え方には非常に共感するものがあります。

1,500近く引用されているこちら Authentic Learning for the 21st Century: An Overview
を参考に、メリット、例、基準についてまとめてみます。

オーセンティックラーニングの特徴

・学習者が興味を持つ、真正の、実世界の課題中心
・探索や探求に積極的に取り組む
・多くの場合学際的(複数の分野の内容を統合)
・学習者が興味を持つような問題/課題設定
・実社会の人や組織と共に何かを創り上げる(成績だけでなく、それ自体に価値がある)
・社会的な議論、コーラボレーション、リフレクションの機会を持つ
・フィードバックにより学習者は内省的になり、学びを深める
・重要なタイミングで指導の足場がけとなるテクニックを用いる
・十分なリソースが利用可能
・学習評価は、現実の世界と同様の評価を反映するため、学習課題の中にシームレスに統合(Authentic Assessment)
・1つの正しい答えではなく、解決策や結果には多様性がある
・学習プロセス及び最終的な学習成果物を明確にする機会が提供される

オーセンティックラーニングのメリット

・学習内容により興味関心を持ち、意欲的に学習する可能性が高くなる
・大学、キャリア、成人期において成功するためのより良い準備をすることができる
・様々な環境、活動、視点に触れることができる
・理論的な知識を教室の外の世界で応用することができるようになる
・他者と協力し、問題解決と専門的なスキルを実践する機会を持つ
・高次の思考スキルを使う
・長い議論に耐える忍耐力を養う
・分野や文化の境界を越えて働くための柔軟性を養う

オーセンティックラーニングの例

・Simulation-Based Learning:シミュレーション、ロールプレイによる学習
・Student-Created Media:生徒が作成するビデオやWebサイト、アプリ等のメディア
・Inquiry-Based Learning:探求学習(フィールドワーク、ケーススタディ、調査、個人・グループ・研究プロジェクト等)
・Peer-Based Evaluation:学習者同士で建設的なフィードバック提供し合う
・Working with Remote Instruments:リモート機器との連携
・Working with Research Data:自分でデータ収集したり、独自調査を行う
・Reflecting and Documenting Achievements:学習プロセスのメタ認知。ジャーナルやポートフォリオが学習を振り返る際に有効となる
・Project-Based Learning(PBL):プロジェクト学習。課題設定から解決までの一連のプロジェクト。

5つの基準:Five Standards of Authentic Instruction

Center on Organization and Restructuring of SchoolsがAuthenticな指導の5つの基準(Five Standards)という枠組みを制定しています。
5つの基準について、1〜5点のスケールで評価することで、どれだけAuthenticな教育が実践できているかを確認できるというものです。

①高次の思考(Higher-Order Thinking)
学習者が高次の思考を使用しているか。
高次の思考とは、総合、一般化、説明、仮説、結論や解釈に至るまで、情報やアイデアの意味や含意を変化させるような思考のこと。

②知識の深さ(Depth of Knowledge)
学習者の知識と理解に深さがあるか。
「議論展開、問題解決、説明構築、その他比較的複雑な理解を伴う」とき、知識は深いとみなされる。
体系的で関連づいた指導により深い理解に繋がる。

③世界との繋がり(Connectedness to the World)
現実の社会問題を扱ったり、個人の経験や知識を応用できているか。
実社会と繋がることで、一般的な学習の文脈を超えて、価値や意味を持つ。
 
④実質的な会話(Substantive Conversation)
内容を学び、理解するためのコミュニケーションの度合い。
高水準の会話は3つの特徴がある。
・高次の思考を含んだ十分な相互作用
・台本通りでない、コントロールされていないアイデアの共有
・テーマやトピックの全体的な理解を促進する

⑤達成のための社会的支援(Social Support for Student Achevement)
学習コミュニティの修練度。
社会的支援の高いコミュニティには3つの特徴がある。
・コミュニティの全ての人に高い期待が寄せられる
・相互尊重の風土がある
・全員が参加している


この5つの基準を自分自身のPBLの授業に当てはめて考えてみたところ、③以外はまだまだ足りないなと痛感しました。
⑤チームの修練度も④コミュニケーションのレベルもまだまだ上げていきたいし、
②深い知識に繋がる①高次な思考をもっと促すような仕掛けがもっと必要。
オーセンティックラーニングな授業に向けて、もっと磨きをかけていきたいですね。
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