宇宙教育分野でのイノベーション活動にPBLを導入した研究論文をレビューします。
注目するのは、PBLにより、技術面の学習だけでなく、ジェネリックコンピテンシーや横断的スキル(Transversal skills)も向上しているという点。

論文はこちら(被引用数:135件 (2024年2月15日時点))
Rodríguez, J., Laverón-Simavilla, A., del Cura, J. M., Ezquerro, J. M., Lapuerta, V., & Cordero-Gracia, M. (2015). Project Based Learning experiences in the space engineering education at Technical University of Madrid. Advances in Space Research, 56(7), 1319-1330.

【要約】
マドリード工科大学(UPM)が、欧州宇宙機関(ESA)がスペインに設置した国際宇宙ステーションでの科学実験の運用を支援するセンターであるスペイン利用者支援・運用センター(E-USOC)と協力して、2009/10年度より実施している宇宙教育分野におけるイノベーション活動についての記述。
これらの活動は、UPM航空宇宙工学科の最終学年に組み込まれている。

実験室が作られ、学生は実証衛星を使って超小型衛星のサブシステムを検証・統合する。
それと並行して、学生たちはProject-based Learning(PBL)のトレーニングプロセスに参加し、グループに分かれて宇宙ミッションの概念設計を開発する。
各グループの1人がプロジェクトマネージャー、もう1人がミッション設計、残りの1人が衛星のサブシステムの設計を担当する。
卒業論文を作成する学生の協力を得て地上局を設置し、将来の学生がトレーニングセッションを行い、衛星との通信方法、テレメトリの受信方法、データの処理方法などを学ぶことができるようにした。

これらの技術が工学の学習に与える影響を評価するため、2学期間に渡っていくつかの調査が行われた。
この調査では、特定の能力およびジェネリックコンピテンシーの習得、ならびにこれらの学習方法の使用に関する学生の満足度を評価した。

調査結果と講師の見解から、PBLは学生のモチベーションを向上させ、成果を上げることができることがわかった。
技術的なトレーニングだけでなく、横断的スキル(Transversal skills)も向上していた。
※横断的スキル(Transversal Skills)とは、生活や仕事のさまざまな場面で活用できるスキルのこと。
「横断的」という言葉は、これらのスキルが異なるタスクや職務の役割を横断することを意味する。

ただし、この方法論(PBL)は従来型の教育よりも講師の献身的な活動が必要である。