PBLのモデルにも様々ありますが、今回はエドビジョン型PBL型についてまとめます。
エドビジョン(Edvision)とは、ミネソタ・ニューカントリースクール(MNCS: Minnesota New Country Schoool)というアメリカのチャータースクールで開発したPBL普及の支援組織として、様々な活動を展開している全米初の教員協同組合のことです。
ちなみに、ここのプロジェクト・ ベース学習は、ゲイツ財団の支援も得ており、実践を見にきたゲイツ財団の担当者が、”The Coolest School in America!”と思わず叫び、同名の本が出てという話まであります。


ちなみに、このエドビジョン型PBLを普及させるために設立されたのが日本PBL研究所です。
私自身もこちらの講座で学ばせていただき、PBL認定アドバイザーの資格を取得させていただいたところです。

では、このエドビジョン型PBLの中身について見ていきます。
日本PBL研究所の初代理事長の上杉賢士先生による著書であるこちらを参考にまとめます。


【エドビジョン型PBLのアウトライン】
プロセスの全体像はこんな感じです。1つひとつ見ていきます。
edvisionPBL_process

①評価基準の作成・掲示

入学と同時に、「学校を卒業するまでに身に付けるべきこと」として
「州の履修基準(Profile of Learning)」と「自律学習のための評価基準」の2つが渡されます。
州の履修基準は日本で言うところの学習指導要領のようなもの。
一方、自律学習のための評価基準は、学校の独自基準でルーブリックで作成されています。
これらが最初の提示されることで、目指すべき目標に向かって子ども達はプロジェクトに取り組み、学びを得ていきます。

②問題の設定・焦点化

取り組むプロジェクトテーマを決定します。
ここで大事なのが「本人の興味・関心」
学習者の興味や関心・ニーズが尊重されることで、プロジェクトに取り組む強い動機づけとなります。

③企画立案

テーマが決まると、次は追求のための計画づくり。
「知っていることは何か」、「調べなければならないことは何か」、「どのようにして情報収集するか」などを考慮し、時間軸も含めた計画を練っていきます。
ちなみに、計画のための企画書(Proposal Form)も用意されています。
※学習者の年齢や経験を考慮して、内容は異なる

④追求

企画が固まると追求のフェーズに入ります。
追求の方法はテーマにより千差万別です。
MNCSでは1プロジェクトに100時程度が標準とされ、卒業段階では300時間程度のシニアプロジェクトに取り組むようです。
ただ、最初はより小さなプロジェクトから始めたり、上級生がサポートしたりして、徐々に大きなプロジェクトに自力で取り組むようにしているそうです。

⑤結果の整理・まとめ

評価会議に向けた準備として、プロジェクトの結果を整理してまとめます。
評価会議では専門家やアドバイザーなどにアドバイスをいただける機会なので、
プロジェクトの成否だけでなく、①で設定した評価基準に照らし合わせてどうだったかという視点も含めて結果をまとめていきます。

⑥評価基準に即した振り返り

プロジェクトが適切に終了したと判断した時、評価チームが招集され、評価会議が開催されます。
この会議の設定は学習者自らが行います。
参加者は、評価を受ける生徒とアドバイザー、生徒のプロジェクトをよく知っている他のグループのアドバイザー、プロジェクトを支援してくれた専門家等です。
①で作成した評価基準に照らし合わせて振り返りが行われ、
「どうすればこのプロジェクトがもっと良くなるか」という視点でアドバイスをもらいます。

⑦プレゼンテーション

エドビジョン型PBLでは、プレゼンは夜に開催されるのが通例で、「Presentation Night」と呼ばれるそうです。
保護者や地域住民の参加を可能にするために夜に開催するのだそうです。この考えがステキ。 


以上がざっとですが、エドビジョン型PBLのアウトラインです。
軽く本を読むだけでもかなりワクワクする授業であることが伝わってきました。
是非実際の現場をいつか見てみたいです。

そして、日本の教育現場にもこういった学びが広がっていけば良いなと思います。
総合的な学習(探求)の時間などに、このエドビジョン型PBLのエッセンスは十二分に活用できると思いますので、是非参考にしていただけたらと思います。