1000件以上引用されているPBL(Project-based Learning)のレビュー論文についてレビューします。
論文はこちら
Kokotsaki, D., Menzies, V., & Wiggins, A. (2016). Project-based learning: A review of the literature. Improving schools, 19(3), 267-277.

世界中のPBL論文のレビューから、PBLの特徴・定義、初等・中等・高等教育における実践例と効果、PBLの促進要因、教師のPBLサポート要因等についてまとめられています。
基本的に、PBLは初等〜高等教育まで幅広く実施されており、本論文の中でも様々な教育効果がまとめられていました。
しかし、それらの多くの研究が実験群・統制群に分けた調査を行なっていないことから、エビデンスとしては弱いということも指摘されていました。

個人的に希望となる発見だったのは、PBLにかけるリソースについての考察。
これまで、(自身の体験からも)PBLは従来型の授業に比べて、多大なリソース(お金や時間)がかかると思い込んでいました。
しかし、テクノロジーを活用することで、従来型教育に比べて必ずしも大きなコスト高になるわけではないことが述べられていました。
生徒がプロジェクトの設計と開発のプロセスに快適に取り組み、プロセス全体を記録し、デジタル形式で簡単に作品を共有することができると述べられており(Patton, 2012)、成績の悪い学生も良い学生もPBL環境で知識を構築できることが分かっている(Erstad, 2002)のだと。
テクノロジーの活用についてはもっともっと工夫が必要だと思いました。

また、教師が教室でPBLをサポートする方法としてまとめられた、7つの包括的なテーマと18のサブテーマの分類も大変参考になりました。
これは、計43の質問からなる半構造化インタビューから導かれたもの。
当論文では、7つのテーマのみの紹介だったため、こちらはまた別でまとめようと思います。

加えて、エビデンスベースから導いた、PBLを成功させるための6つの推奨事項についても参考になりました。
特に、「教授と探求ワークのバランス」には注意したいです。
全部が講義形式なのは従来型教育の問題点として言うまでもありませんが、全てを探求ワークにしてしまうとそれはそれでコケてしまう可能性があります。
まずは、講義で知識を付与し、ある程度成長した後に、探求ワークやグループワークへと展開する。これは、知識付与については従来型教育の方が効果が高いこともあるという前回レビューした論文とも通ずるものがありました。

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