今回は、企業内で学びを促進するために学習をプロジェクト化、つまりPBL(Project-based Learning)化すすることについてまとめられた論文をレビューします。
論文はこちら(被引用数:76件 (2023年5月17日時点))
Poell, R. F., & Van der Krogt, F. J. (2003). Project‐based learning in organizations: towards a methodology for learning in groups. Journal of Workplace Learning, 15(5), 217-228.
企業で働く従業員は日々の業務や研修などから様々な学びを得ています。
しかし、組織として効率的・効果的に学習を促進する体制が十分にとれている企業は多くはありません。
そこで、筆者らが提案しているのが、学習をプロジェクト化し、PBL(Project-based Learning)として学習を組織化しようという試みです。
当論文では、「プロジェクトと学習プロジェクトの違い」「学習プロジェクトの3つのフェーズ」「学習プロジェクトの4つのタイプ」等の項目でまとめられています。めちゃ勉強になりました。
(分かりやすいように、以下に図式してまとめています)
職場で個々の学習や日常業務の改善などをPBLとして実施するのは大賛成。
多くの企業で学習プロジェクトがバンバン立ち上がり、スムーズに展開されていけば、結構な組織開発になるのではと思いました。
こういう方面での活動も今後どんどんやっていきたいなぁ。
以下、ポイントのまとめです。
【プロジェクトで学習を体系化する理由】
①PJで学習を体系化することで、参加者は学習のユニークな性質を発見し、ユニークなアプローチが必要であることを認識する
②以前は個人で何かを作ることができたが、現在は相互依存と相互接続により人々が一緒にそのプロセスを経ることが必要になっている
③体系的な作業を可能にし、自己の資質を高められる
【プロジェクトの段階】
1. 開始:クライアントとプロジェクトリーダーの協議により、コンセプト、問題、課題をまとめた文書を策定
2. 定義:プロジェクトグループは、そのアイデアの詳細な策定に取り組み、クライアントや他の人々と契約を締結
3. 設計・準備:契約書をさらに推敲し、プロジェクトの詳細な行動計画を作成
4. 実行:プロジェクト計画を実行し、プロジェクトの結果を出す
5. 評価とフォローアップ:結果を恒久的な変化につなげることに焦点を当てる
・参加者は、学習目標を達成するために、協力し、相互作用する
・参加者はプロジェクトの進捗状況に基づき、計画や必須条件を改良していく
・PJの特徴として、クライアントの品質要求を満たすため、目指す結果をできるだけ詳細に表現する
・詳細な成果物の策定は、有効性と効率性を高め、プロジェクトチームが進捗状況を把握し、計画を修正することを容易にする(Weiss & Wysocki, 1992; Wysocki, Beck, Crane, &Hudson, 2000)。
【学習プロジェクト(Learning project)の性質】
体系的な学習プログラムは、プロジェクトとして捉え、組織化することができる。
このようなプロジェクトを学習プロジェクトと呼ぶ(Poell, 1998; Van der Krogt, 1998)。
学習プロジェクトとは
「自分自身の成長や仕事に関連するテーマについて、体系的に共に学びたいと考えている参加者で構成され、そのために必要な正当性と資源を獲得したグループである」
【プロジェクトと学習プロジェクト(Learning project)の比較】
【学習プロジェクトの3つのフェーズ】
学習プロジェクトのフェーズは「オリエンテーション」「学習」「継続」の3つに整理されています
図としてまとめたのがこちらです。
ただ、全ての学習プロジェクトがこの体系的な方法で実行される必要はないとも述べられています。
学習プロジェクトを構成するさまざまなサブフェーズを説明することで、学習者が普段は考えもしないような活動に、より明確に注意を払うきっかけになって欲しいということで、このフェーズが提示されています。
また、オリエンテーションの段階は文献上多くの注目を集めている一方、学習プロジェクトの実行、その最適化と継続は、これまであまり注目されてこなかったことにも言及しています。
どんなにうまく設計されたプロジェクトであっても、実行中に組織やプロジェクトの文脈、学習者の認識や関心などに予想外の変化が起こり、それを考慮しなければならず(Kessels, 1999)、
学習プロジェクトの実行中に最適化するという問題は、この10年間、より一般的な継続的改善の概念がむしろ普及しているにもかかわらず、文献ではあまり見かけない(Cf. De Lange-Ros, 1999)とのことで、プロジェクトを実行する中で最適化していくことが重要だと述べられています。
【学習プロジェクトの4つのタイプ】
最後に、学習プロジェクトについて4つのタイプにまとめられています。
以下にイラストも入れてまとめました。
このように4つに分類、モデル化してくれると、各組織において様々な方法で学習プロジェクトを立ち上げる際に非常に参考になると思います。
ざっと概観すると、左から右にかけて実践していることが多いように感じました。
個人的には、「水平・有機的な学習PJ」は自組織でもやってみたいと思いました。
(というかやらなければと思いながらなかなか働きかけられていない)
ちなみに、上記の4つのモデルの学習プロジェクトでは、「オリエンテーション」「学習」「継続」の各フェーズでどのような活動を行うかはモデルによって大きく異なることには留意すべきだそうです。
そして、どのモデルについても、学習プロジェクトの参加者間の関係を形成することが、開発の重要な鍵の1つであるとも述べられています。
「他者とともに学ぶ」プロジェクト型学習の土台には、やはり関係性が土台としてありそうです。
学習をプロジェクト化することで、組織的取り組みとし、更に学びが業務にきちんと転移するまでが考えられていて収穫多き論文でした。
企業の人事の育成担当やマネージャー層に特にオススメです。
論文はこちら(被引用数:76件 (2023年5月17日時点))
Poell, R. F., & Van der Krogt, F. J. (2003). Project‐based learning in organizations: towards a methodology for learning in groups. Journal of Workplace Learning, 15(5), 217-228.
企業で働く従業員は日々の業務や研修などから様々な学びを得ています。
しかし、組織として効率的・効果的に学習を促進する体制が十分にとれている企業は多くはありません。
そこで、筆者らが提案しているのが、学習をプロジェクト化し、PBL(Project-based Learning)として学習を組織化しようという試みです。
当論文では、「プロジェクトと学習プロジェクトの違い」「学習プロジェクトの3つのフェーズ」「学習プロジェクトの4つのタイプ」等の項目でまとめられています。めちゃ勉強になりました。
(分かりやすいように、以下に図式してまとめています)
職場で個々の学習や日常業務の改善などをPBLとして実施するのは大賛成。
多くの企業で学習プロジェクトがバンバン立ち上がり、スムーズに展開されていけば、結構な組織開発になるのではと思いました。
こういう方面での活動も今後どんどんやっていきたいなぁ。
以下、ポイントのまとめです。
【プロジェクトで学習を体系化する理由】
①PJで学習を体系化することで、参加者は学習のユニークな性質を発見し、ユニークなアプローチが必要であることを認識する
②以前は個人で何かを作ることができたが、現在は相互依存と相互接続により人々が一緒にそのプロセスを経ることが必要になっている
③体系的な作業を可能にし、自己の資質を高められる
【プロジェクトの段階】
1. 開始:クライアントとプロジェクトリーダーの協議により、コンセプト、問題、課題をまとめた文書を策定
2. 定義:プロジェクトグループは、そのアイデアの詳細な策定に取り組み、クライアントや他の人々と契約を締結
3. 設計・準備:契約書をさらに推敲し、プロジェクトの詳細な行動計画を作成
4. 実行:プロジェクト計画を実行し、プロジェクトの結果を出す
5. 評価とフォローアップ:結果を恒久的な変化につなげることに焦点を当てる
・参加者は、学習目標を達成するために、協力し、相互作用する
・参加者はプロジェクトの進捗状況に基づき、計画や必須条件を改良していく
・PJの特徴として、クライアントの品質要求を満たすため、目指す結果をできるだけ詳細に表現する
・詳細な成果物の策定は、有効性と効率性を高め、プロジェクトチームが進捗状況を把握し、計画を修正することを容易にする(Weiss & Wysocki, 1992; Wysocki, Beck, Crane, &Hudson, 2000)。
【学習プロジェクト(Learning project)の性質】
体系的な学習プログラムは、プロジェクトとして捉え、組織化することができる。
このようなプロジェクトを学習プロジェクトと呼ぶ(Poell, 1998; Van der Krogt, 1998)。
学習プロジェクトとは
「自分自身の成長や仕事に関連するテーマについて、体系的に共に学びたいと考えている参加者で構成され、そのために必要な正当性と資源を獲得したグループである」
【プロジェクトと学習プロジェクト(Learning project)の比較】
【学習プロジェクトの3つのフェーズ】
学習プロジェクトのフェーズは「オリエンテーション」「学習」「継続」の3つに整理されています
図としてまとめたのがこちらです。
ただ、全ての学習プロジェクトがこの体系的な方法で実行される必要はないとも述べられています。
学習プロジェクトを構成するさまざまなサブフェーズを説明することで、学習者が普段は考えもしないような活動に、より明確に注意を払うきっかけになって欲しいということで、このフェーズが提示されています。
また、オリエンテーションの段階は文献上多くの注目を集めている一方、学習プロジェクトの実行、その最適化と継続は、これまであまり注目されてこなかったことにも言及しています。
どんなにうまく設計されたプロジェクトであっても、実行中に組織やプロジェクトの文脈、学習者の認識や関心などに予想外の変化が起こり、それを考慮しなければならず(Kessels, 1999)、
学習プロジェクトの実行中に最適化するという問題は、この10年間、より一般的な継続的改善の概念がむしろ普及しているにもかかわらず、文献ではあまり見かけない(Cf. De Lange-Ros, 1999)とのことで、プロジェクトを実行する中で最適化していくことが重要だと述べられています。
【学習プロジェクトの4つのタイプ】
最後に、学習プロジェクトについて4つのタイプにまとめられています。
以下にイラストも入れてまとめました。
このように4つに分類、モデル化してくれると、各組織において様々な方法で学習プロジェクトを立ち上げる際に非常に参考になると思います。
ざっと概観すると、左から右にかけて実践していることが多いように感じました。
個人的には、「水平・有機的な学習PJ」は自組織でもやってみたいと思いました。
(というかやらなければと思いながらなかなか働きかけられていない)
ちなみに、上記の4つのモデルの学習プロジェクトでは、「オリエンテーション」「学習」「継続」の各フェーズでどのような活動を行うかはモデルによって大きく異なることには留意すべきだそうです。
そして、どのモデルについても、学習プロジェクトの参加者間の関係を形成することが、開発の重要な鍵の1つであるとも述べられています。
「他者とともに学ぶ」プロジェクト型学習の土台には、やはり関係性が土台としてありそうです。
学習をプロジェクト化することで、組織的取り組みとし、更に学びが業務にきちんと転移するまでが考えられていて収穫多き論文でした。
企業の人事の育成担当やマネージャー層に特にオススメです。
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