アリゾナ州立大学の学部と大学院で実施されているPPBLについて紹介された論文をレビューします。
論文はこちら(被引用数:330件 (2023年6月9日時点))
Wiek, A., Xiong, A., Brundiers, K., & Van der Leeuw, S. (2014). Integrating problem-and project-based learning into sustainability programs: A case study on the School of Sustainability at Arizona State University. International Journal of Sustainability in Higher Education, 15(4), 431-449.
まず、この論文では、問題解決型学習とプロジェクト型学習を統合したPPBL(problem-and project based learning)というモデルを実施していて、それがユニークな点として目に留まりました。
加えて、2つのPBLを統合したPPBLモデルについては、実際に授業を行う上でも非常に参考になる部分がありました。
アリゾナ州立大学でのPPBLの具体的な事例を読んでみると、まぁレベルの高いこと。
私が一教員として個人で担当しているPBLの授業とは、全学的に組織的に実施しているという点で大きな違いがありました。
例えば、図2で描かれているように、学部のPPBLプログラムは、4年間の学位課程で4段階のPPBLに徐々に触れていくモデルとなっています。
個人ワークからチームワークへ、ステークホルダーとの関わりも情報を受ける側から協調的相互作用へ、そして、現実世界との関わりが以下のように段階的により濃くなっていきます。
・世界を引き込む(ドキュメンタリーやゲストスピーカーなど)
・世界を訪れる(フィールドトリップなど)
・世界をシミュレーションする(対話型交渉ゲームなど)
・世界と関わる(現実世界での課題解決、成果物の作成)
確かに、PBLは高い教育効果があるとされる一方、実施内容は多岐に渡り、かつ高度なものも多いので、1つの授業で完結させるには学生の負荷が非常に大きく、十分に学びを吸収できないまま終わってしまう可能性があることは薄々感じていました。
この問題を解消するためには、本論文のように、戦略的に全体像を描き、複数の授業を有機的に繋ぎ、最終的にプロジェクトに取り組み成果を出すという流れの学習環境を作る必要があると思いました。
※思い返すと、自分が通っていた大学院はこのようなコース設計になっていたように思います。
めちゃくちゃ良い事例を実際に体験できていたことを今噛み締めています。
そして、上述のような学部レベル、全学レベルでのPBLの実現のためには、組織体制も整える必要があります。
実際、アリゾナ州立大学の組織的取り組みとしては以下のようなものが書かれていました。
・コミュニティ・ユニバーシティ・リエゾン:研究者と学外で活動する専門家や一般人(コミュニティパートナーや企業、行政、市民社会のステークホルダー)をつなぎ、PPBLを促進
・PBLリサーチアシスタント/ティーチングアシスタント:PPBL実践のカタログ化と統合、ソースリストと教育資料の作成、PPBL製品とプロセスの紹介を通じて、サステナビリティプログラムにおけるPPBLに関する組織の知識と実践を促進
・アドバイザリーボード(諮問委員会):PBLのカリキュラムやコース構築に関して、指導者や教員に戦略的かつ実践的なアドバイスを提供
・インセンティブと報酬:教員給与や時間給の学生への資金援助
・出版物:教員と学生は、PPBLに関する学術レポートや査読付き学術論文を作成するよう奨励されている
いやぁ、良いPBLの実践に向けてまだまだやることはありますね。
まずは、大学トップ層にPBLの価値を認識してもらうところがスタートになるかなと思います。
その上で、必要なサポート体制や制度などを徐々に構築していく。
ひいては、全学的な取り組みとして、カリキュラム構成なども変わっていくと良いなと思います。
アリゾナ州立大学レベルまで改革していくには、かなりの労力と時間がかかりそうです。
それでも、より良い学習環境の構築のために、少しずつでも前進していきたいですね。
【高等教育機関におけるPPBL実施の3つの課題】Whitmerら(2010)
・研究者個人レベル:この分野で成功する研究・教育のモデルが相対的に不足
・学問分野レベル:査読や評価制度が研究活動を過小評価し、教員にPPBLを実施するインセンティブを与えていない
・組織レベル:大学における在職期間と昇進の仕組みの大半は、研究と教育が必要とする関係、信頼、ネットワーク構築などの追加的な努力を認識していない
論文はこちら(被引用数:330件 (2023年6月9日時点))
Wiek, A., Xiong, A., Brundiers, K., & Van der Leeuw, S. (2014). Integrating problem-and project-based learning into sustainability programs: A case study on the School of Sustainability at Arizona State University. International Journal of Sustainability in Higher Education, 15(4), 431-449.
まず、この論文では、問題解決型学習とプロジェクト型学習を統合したPPBL(problem-and project based learning)というモデルを実施していて、それがユニークな点として目に留まりました。
problem-and project-based learning、以下PPBLの主な特徴は、生徒が主体となって、現実世界の問題に焦点を当て、利害関係者が関与することもある協働学習である(Savery, 2006; Stauffacher et al., 2006; Brundiers et al., 2010; Brundiers and Wiek, 2011)以前、2つのPBLの違いと共通点についてレビューしたことがありますが、本論文でもそれらの概念整理がされており、より解像度が高まりました。
サービスラーニングとは対照的に、PPBLは複雑な問題を解決するための探究型研究に学生を参加させる。
加えて、2つのPBLを統合したPPBLモデルについては、実際に授業を行う上でも非常に参考になる部分がありました。
アリゾナ州立大学でのPPBLの具体的な事例を読んでみると、まぁレベルの高いこと。
私が一教員として個人で担当しているPBLの授業とは、全学的に組織的に実施しているという点で大きな違いがありました。
例えば、図2で描かれているように、学部のPPBLプログラムは、4年間の学位課程で4段階のPPBLに徐々に触れていくモデルとなっています。
個人ワークからチームワークへ、ステークホルダーとの関わりも情報を受ける側から協調的相互作用へ、そして、現実世界との関わりが以下のように段階的により濃くなっていきます。
・世界を引き込む(ドキュメンタリーやゲストスピーカーなど)
・世界を訪れる(フィールドトリップなど)
・世界をシミュレーションする(対話型交渉ゲームなど)
・世界と関わる(現実世界での課題解決、成果物の作成)
確かに、PBLは高い教育効果があるとされる一方、実施内容は多岐に渡り、かつ高度なものも多いので、1つの授業で完結させるには学生の負荷が非常に大きく、十分に学びを吸収できないまま終わってしまう可能性があることは薄々感じていました。
この問題を解消するためには、本論文のように、戦略的に全体像を描き、複数の授業を有機的に繋ぎ、最終的にプロジェクトに取り組み成果を出すという流れの学習環境を作る必要があると思いました。
※思い返すと、自分が通っていた大学院はこのようなコース設計になっていたように思います。
めちゃくちゃ良い事例を実際に体験できていたことを今噛み締めています。
そして、上述のような学部レベル、全学レベルでのPBLの実現のためには、組織体制も整える必要があります。
実際、アリゾナ州立大学の組織的取り組みとしては以下のようなものが書かれていました。
・コミュニティ・ユニバーシティ・リエゾン:研究者と学外で活動する専門家や一般人(コミュニティパートナーや企業、行政、市民社会のステークホルダー)をつなぎ、PPBLを促進
・PBLリサーチアシスタント/ティーチングアシスタント:PPBL実践のカタログ化と統合、ソースリストと教育資料の作成、PPBL製品とプロセスの紹介を通じて、サステナビリティプログラムにおけるPPBLに関する組織の知識と実践を促進
・アドバイザリーボード(諮問委員会):PBLのカリキュラムやコース構築に関して、指導者や教員に戦略的かつ実践的なアドバイスを提供
・インセンティブと報酬:教員給与や時間給の学生への資金援助
・出版物:教員と学生は、PPBLに関する学術レポートや査読付き学術論文を作成するよう奨励されている
いやぁ、良いPBLの実践に向けてまだまだやることはありますね。
まずは、大学トップ層にPBLの価値を認識してもらうところがスタートになるかなと思います。
その上で、必要なサポート体制や制度などを徐々に構築していく。
ひいては、全学的な取り組みとして、カリキュラム構成なども変わっていくと良いなと思います。
アリゾナ州立大学レベルまで改革していくには、かなりの労力と時間がかかりそうです。
それでも、より良い学習環境の構築のために、少しずつでも前進していきたいですね。
【高等教育機関におけるPPBL実施の3つの課題】Whitmerら(2010)
・研究者個人レベル:この分野で成功する研究・教育のモデルが相対的に不足
・学問分野レベル:査読や評価制度が研究活動を過小評価し、教員にPPBLを実施するインセンティブを与えていない
・組織レベル:大学における在職期間と昇進の仕組みの大半は、研究と教育が必要とする関係、信頼、ネットワーク構築などの追加的な努力を認識していない
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