2000年~2011年までの世界中のPBL(Project-based Learning)についてのレビュー論文についてレビューします。
論文はこちら(被引用数:284件 (2023年7月8日時点))
Holm, M. (2011). Project-based instruction: A review of the literature on effectiveness in prekindergarten. River academic journal, 7(2), 1-13.
PBLの背景、定義に始まり、学習効果や効果を高める教師のスキルなどについてまとめられています。
新たな発見や印象的だった部分について端的にまとめます。
【PBLのネガティブな側面】
PBLは様々な学習効果があり、その効果も高い、というのが総括的な意見にはなっていますが、否定的な意見を述べる研究者もいます。
それは、生徒中心のアプローチに固執することが非効率さを生み、学習効果に繋がらない可能性があるという指摘です。
実際に私もPBLを実践する中で感じているところでした。
これに対して、Blumenfeld, et al. (1998)は、「最適な学習のためには教師の関与と指導が必要である」と結論づけています。
生徒中心ということでほったらかしにするのではなく、プロジェクトの成功に必要な知識や情報の付与や、チームの関係性づくり、タイムリーな介入、などを教師がうまくできなければ、PBLは失敗してしまう可能性があるということは、常に意識しておきたいです。
【PBLと従来型授業の学習効果の比較】
PBLは、知識とスキルの両面で従来型授業に比べて高い効果があるということもメタ分析から導き出されています。
知識面では、以前読んだ論文、たとえば、Chen & Yang(2019)でも、PBLは従来型授業に比べ、生徒の学力向上に効果があることが示唆されていました。
今回は、それに加え、プロセスやグループのスキル開発、情報リテラシーのスキルといった分野でも高い効果があると考察されています。
そして、その効果に繋がる要素として、生徒の態度が従来型授業よりも肯定的になるということも示されています。
生徒は、能動的で実践的なアプローチを楽しみ、教科に対する認識も向上するというわけです。
【未就学児に対するPBL】
今までは小学生以上に対してのPBLの研究論文ばかり読んできましたが、今回のメタ分析では未就学児に対するPBLについての記述もありました。
プロジェクトベースの指導は、従来の指導よりも、言語と概念の発達においてより大きな成長をもたらすことが示されているとのこと(Aral, Kandir, Ayhan & Yasir, 2010; Bicacki & Gursoy, 2010)。
これは興味深いので是非読んでみようと思います。
うちの学校法人は幼稚園・保育園も運営しているので、園児に向けたPBLの開発についても興味が出てきました。
【勉強が苦手な生徒への影響】
PBLでは、アカデミックな領域では輝かない生徒も学習意欲が向上し、知識共有ができただけでなく、懲戒処分の必要性が減少したとも報告されています。
また、PBLの学業面での効果は、成績中位から下位の生徒に対して最も顕著であったそうです。
「従来型の学校の勉強が苦手な生徒にも高い効果がある」これは嬉しい発見でした。
個人的にですが、テストによる学業成績という1つのものさしで生徒を評価することへの違和感は以前からずっと抱いていました。
そういった環境下では勉強ができない生徒は低く評価され、自信を失い、劣等感を抱いてしまいます。
「そんな自信を失った勉強嫌いな学生に、何とかして自信を持ってもらい、知識とスキルを身につけ、活躍できる人材として社会に送り出したい」これは私が大学で中で抱いていた想いでした。
PBLは勉強が苦手な学生にも光を当て、活躍の機会を与えられる。
今後も武器として大いに活用していきたいです。
【PBLの成功に寄与する教師のスキル】
Duncan and Tseng(2010)は、学級管理能力、コンテンツ知識、学習目標を設定する能力、困難を予測する能力、必要に応じて生徒をサポートする意欲、個人差への理解、生徒との交流に対する積極的で励まし合えるアプローチなどがすべて重要であることを明らかにした、との記述がありました。
結構色々なことが求められますね。しかもそれらを同時並行的に行なっていく必要があります。
このように指導方法、提供する教材や資料、指導の準備や計画の立て方など、多くのことがPBLでは求められるため、「そこまでの変化はできない」と、多くの教師が不安を表明しているという事実もあります。
PBLが様々な教育現場に普及していくためには、教師が抱く上記の不安を払拭する必要があります。
この点の課題についても、今後解決できるように色々と研究を進めていきたいと思いました。
論文はこちら(被引用数:284件 (2023年7月8日時点))
Holm, M. (2011). Project-based instruction: A review of the literature on effectiveness in prekindergarten. River academic journal, 7(2), 1-13.
PBLの背景、定義に始まり、学習効果や効果を高める教師のスキルなどについてまとめられています。
新たな発見や印象的だった部分について端的にまとめます。
【PBLのネガティブな側面】
PBLは様々な学習効果があり、その効果も高い、というのが総括的な意見にはなっていますが、否定的な意見を述べる研究者もいます。
それは、生徒中心のアプローチに固執することが非効率さを生み、学習効果に繋がらない可能性があるという指摘です。
実際に私もPBLを実践する中で感じているところでした。
これに対して、Blumenfeld, et al. (1998)は、「最適な学習のためには教師の関与と指導が必要である」と結論づけています。
生徒中心ということでほったらかしにするのではなく、プロジェクトの成功に必要な知識や情報の付与や、チームの関係性づくり、タイムリーな介入、などを教師がうまくできなければ、PBLは失敗してしまう可能性があるということは、常に意識しておきたいです。
【PBLと従来型授業の学習効果の比較】
PBLは、知識とスキルの両面で従来型授業に比べて高い効果があるということもメタ分析から導き出されています。
知識面では、以前読んだ論文、たとえば、Chen & Yang(2019)でも、PBLは従来型授業に比べ、生徒の学力向上に効果があることが示唆されていました。
今回は、それに加え、プロセスやグループのスキル開発、情報リテラシーのスキルといった分野でも高い効果があると考察されています。
そして、その効果に繋がる要素として、生徒の態度が従来型授業よりも肯定的になるということも示されています。
生徒は、能動的で実践的なアプローチを楽しみ、教科に対する認識も向上するというわけです。
【未就学児に対するPBL】
今までは小学生以上に対してのPBLの研究論文ばかり読んできましたが、今回のメタ分析では未就学児に対するPBLについての記述もありました。
プロジェクトベースの指導は、従来の指導よりも、言語と概念の発達においてより大きな成長をもたらすことが示されているとのこと(Aral, Kandir, Ayhan & Yasir, 2010; Bicacki & Gursoy, 2010)。
これは興味深いので是非読んでみようと思います。
うちの学校法人は幼稚園・保育園も運営しているので、園児に向けたPBLの開発についても興味が出てきました。
【勉強が苦手な生徒への影響】
PBLでは、アカデミックな領域では輝かない生徒も学習意欲が向上し、知識共有ができただけでなく、懲戒処分の必要性が減少したとも報告されています。
また、PBLの学業面での効果は、成績中位から下位の生徒に対して最も顕著であったそうです。
「従来型の学校の勉強が苦手な生徒にも高い効果がある」これは嬉しい発見でした。
個人的にですが、テストによる学業成績という1つのものさしで生徒を評価することへの違和感は以前からずっと抱いていました。
そういった環境下では勉強ができない生徒は低く評価され、自信を失い、劣等感を抱いてしまいます。
「そんな自信を失った勉強嫌いな学生に、何とかして自信を持ってもらい、知識とスキルを身につけ、活躍できる人材として社会に送り出したい」これは私が大学で中で抱いていた想いでした。
PBLは勉強が苦手な学生にも光を当て、活躍の機会を与えられる。
今後も武器として大いに活用していきたいです。
【PBLの成功に寄与する教師のスキル】
Duncan and Tseng(2010)は、学級管理能力、コンテンツ知識、学習目標を設定する能力、困難を予測する能力、必要に応じて生徒をサポートする意欲、個人差への理解、生徒との交流に対する積極的で励まし合えるアプローチなどがすべて重要であることを明らかにした、との記述がありました。
結構色々なことが求められますね。しかもそれらを同時並行的に行なっていく必要があります。
このように指導方法、提供する教材や資料、指導の準備や計画の立て方など、多くのことがPBLでは求められるため、「そこまでの変化はできない」と、多くの教師が不安を表明しているという事実もあります。
PBLが様々な教育現場に普及していくためには、教師が抱く上記の不安を払拭する必要があります。
この点の課題についても、今後解決できるように色々と研究を進めていきたいと思いました。
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