Howard Earl Gardnerによって提唱された「多重知能理論(Multiple Intelligences Theory)」、通称MI理論について簡単にまとめます。
1983年に、Frames Of Mind: The Theory Of Multiple Intelligencesが出版され、その中で初めて発表されました。
MI理論は、人間の知能は単一ではなく複数あり、それらを複合的に働かせているという考え方になります。
MI理論と対照的な考え方にあるのがIQです。
かなり昔から知能を測るものとして有名なIQですが、これは人間の頭の良さを1つの指標でまとめたもので、各教科に相関・共通する一般知能(general intelligence)という考え方をベースにしています。
Gardnerも昔はIQの考え方を信用していたとTEDで語っています。
しかし、様々な子ども達や脳に損傷を負った患者を観察していると、何かに秀でた人は他のことでも秀でているわけではないということに気づきます。
そこから知能は複数あるという着想を得て、後にMI理論として持論をまとめられていくことになります。
「IQテストは、主に言語能力と論理的数学的能力のみしか測定していない。知能は他にもありまっしゃろ!」と、MI理論という一石を投じたわけですね。
そんなこんなで1983年に登場したMI理論は、当初は以下の7つの知能の枠組みとして提唱されました。
①言語的・言語的知能(Linguistic Intelligence)
②論理数学的知能(Logical-Mathematical Intelligence)
③空間的知能(Spatial Intelligence)
④身体運動的知能(Bodily-Kinesthetic Intelligence)
⑤音楽的知能(Musical Intelligence)
⑥対人知能(Interpersonal Intelligence)
⑦自己理解知能(Intrapersonal Intelligence)
その後、1999年にIntelligence Reframed: Multiple Intelligences for the 21st Centuryが出版され、この中で、
・博物学的知能(Naturalistic intelligence)
・霊的知能(Spiritual intelligence)
・実存的知能(Existential intelligence)
の3つが新たに検討され、博物学的知能が8つ目として追加されました。
この8つの知能を図でまとめたのがこちらになります。

8つの知能についてそれぞれ見ていきます。説明は、Checkley(1997)や以下のTedEdの動画を参考に記載してます。
①言語的・言語的知能(Linguistic Intelligence)
言葉と言語の理解や表現に優れた能力のこと。
この知能が高い人は、母国語や、他言語を使って人を理解し、自分の考えを表現することができる。
平均以上の知能レベルを持つ専門家の例として作家や弁士がある。
②論理数学的知能(Logical-Mathematical Intelligence)
論理的思考や数学的な問題解決に優れた能力のこと。
科学者は、数学者と同じように数字を操ることができるため、論理的数学的知性に強い人々の例である。
③空間的知能(Spatial Intelligence)
空間的な認識や図形的な表現に優れた能力のこと。
空間的知能を持つ人は、画家、彫刻家、建築家、チェスプレイヤーやパイロットなどが代表例。
空間的知性は、解剖学や位相幾何学のような特定の科学でよく使われる。
④身体運動的知能(Bodily-Kinesthetic Intelligence)
身体全体または特定の部位を使用して何かを作り出したり、問題を解決したり、イベントで身体の動きを伴うスキルを発揮したりする能力のこと。
この知能が高いプロフェッショナルの例としては、アスリートやダンサー、工芸家が挙げられる。
⑤音楽的知能(Musical Intelligence)
音楽の理解や演奏に優れた能力のこと。
音楽的知能が高い人は、音楽のパターンを聴き取り、認識し、記憶する能力が高い。
彼らは音楽で考え、音楽が頭から離れない。
ガードナーは『Frames of Mind』の中で、音楽的知性は他の知性よりも早く出現すると指摘している。
⑥対人知能(Interpersonal Intelligence)
他人との関係構築やコミュニケーションに優れた能力のこと。
この知能が高い人は、他人の気分や意図、欲求を察知することができる。
この知能は、教師、臨床医、営業マンなど、人と接する機会の多い人には特に重要である。
⑦自己理解知能(Intrapersonal Intelligence)
自己の感情や思考を理解する能力のこと。
自分自身への理解を深めることは、対人知性の強い人の特徴である。
発達した対人知性によって、人は経験に対して自分がどう反応するかを予測し、有益な経験を選ぶことができるようになる。
また、自分が遭遇するかもしれない困難に気づくこともできる。
⑧博物学的知能(Naturalistic intelligence)
生き物を区別する能力のこと。
この知能が高い人は、岩や草だけでなく、植物、鉱物、動物を分類するのが得意である。
一見、現在の社会では必要がないように思われるかもしれないが、商業の世界で行うことは全てこの知性を利用している。
ちなみにTEDEdで本人の口から語られているのも見ることができます。
ここでは8つの他に、教育知能(teaching(pedagogical) intelligence)や実存的知能(existential intelligence)についても言及されています。
「人にうまく教えることのできる」教育知能(teaching intelligence)、自分はどのくらいあるんだろう。
もっともっと伸ばしたいなぁ。
MI理論の概要は掴めたと思うので、今後は、この理論をどのように教育として展開していくかについても調べてみようと思います。
特にMI理論×PBLの論文もあるようなので、まずはそれは読んでみよう。
【参考文献】
Checkley, K. (1997). The first seven... and the eighth a conversation with Howard Gardner. Educational leadership, 55, 8-13.
Davis, K., Christodoulou, J., Seider, S., & Gardner, H.(2011). The theory of multiple intelligences. In RJ Sternberg & SB Kaufman (Eds.), Cambridge Handbook of Intelligence, 485-503.
Gardner, H. (1983). Frames of mind: The theory of multiple intelligences. New York, NY: Basic BooksGardner, H. (1999). Multiple intelligences for the 21st century. New York, NY: Basic Books
1983年に、Frames Of Mind: The Theory Of Multiple Intelligencesが出版され、その中で初めて発表されました。
MI理論は、人間の知能は単一ではなく複数あり、それらを複合的に働かせているという考え方になります。
MI理論と対照的な考え方にあるのがIQです。
かなり昔から知能を測るものとして有名なIQですが、これは人間の頭の良さを1つの指標でまとめたもので、各教科に相関・共通する一般知能(general intelligence)という考え方をベースにしています。
Gardnerも昔はIQの考え方を信用していたとTEDで語っています。
しかし、様々な子ども達や脳に損傷を負った患者を観察していると、何かに秀でた人は他のことでも秀でているわけではないということに気づきます。
そこから知能は複数あるという着想を得て、後にMI理論として持論をまとめられていくことになります。
「IQテストは、主に言語能力と論理的数学的能力のみしか測定していない。知能は他にもありまっしゃろ!」と、MI理論という一石を投じたわけですね。
そんなこんなで1983年に登場したMI理論は、当初は以下の7つの知能の枠組みとして提唱されました。
①言語的・言語的知能(Linguistic Intelligence)
②論理数学的知能(Logical-Mathematical Intelligence)
③空間的知能(Spatial Intelligence)
④身体運動的知能(Bodily-Kinesthetic Intelligence)
⑤音楽的知能(Musical Intelligence)
⑥対人知能(Interpersonal Intelligence)
⑦自己理解知能(Intrapersonal Intelligence)
その後、1999年にIntelligence Reframed: Multiple Intelligences for the 21st Centuryが出版され、この中で、
・博物学的知能(Naturalistic intelligence)
・霊的知能(Spiritual intelligence)
・実存的知能(Existential intelligence)
の3つが新たに検討され、博物学的知能が8つ目として追加されました。
この8つの知能を図でまとめたのがこちらになります。

8つの知能についてそれぞれ見ていきます。説明は、Checkley(1997)や以下のTedEdの動画を参考に記載してます。
①言語的・言語的知能(Linguistic Intelligence)
言葉と言語の理解や表現に優れた能力のこと。
この知能が高い人は、母国語や、他言語を使って人を理解し、自分の考えを表現することができる。
平均以上の知能レベルを持つ専門家の例として作家や弁士がある。
②論理数学的知能(Logical-Mathematical Intelligence)
論理的思考や数学的な問題解決に優れた能力のこと。
科学者は、数学者と同じように数字を操ることができるため、論理的数学的知性に強い人々の例である。
③空間的知能(Spatial Intelligence)
空間的な認識や図形的な表現に優れた能力のこと。
空間的知能を持つ人は、画家、彫刻家、建築家、チェスプレイヤーやパイロットなどが代表例。
空間的知性は、解剖学や位相幾何学のような特定の科学でよく使われる。
④身体運動的知能(Bodily-Kinesthetic Intelligence)
身体全体または特定の部位を使用して何かを作り出したり、問題を解決したり、イベントで身体の動きを伴うスキルを発揮したりする能力のこと。
この知能が高いプロフェッショナルの例としては、アスリートやダンサー、工芸家が挙げられる。
⑤音楽的知能(Musical Intelligence)
音楽の理解や演奏に優れた能力のこと。
音楽的知能が高い人は、音楽のパターンを聴き取り、認識し、記憶する能力が高い。
彼らは音楽で考え、音楽が頭から離れない。
ガードナーは『Frames of Mind』の中で、音楽的知性は他の知性よりも早く出現すると指摘している。
⑥対人知能(Interpersonal Intelligence)
他人との関係構築やコミュニケーションに優れた能力のこと。
この知能が高い人は、他人の気分や意図、欲求を察知することができる。
この知能は、教師、臨床医、営業マンなど、人と接する機会の多い人には特に重要である。
⑦自己理解知能(Intrapersonal Intelligence)
自己の感情や思考を理解する能力のこと。
自分自身への理解を深めることは、対人知性の強い人の特徴である。
発達した対人知性によって、人は経験に対して自分がどう反応するかを予測し、有益な経験を選ぶことができるようになる。
また、自分が遭遇するかもしれない困難に気づくこともできる。
⑧博物学的知能(Naturalistic intelligence)
生き物を区別する能力のこと。
この知能が高い人は、岩や草だけでなく、植物、鉱物、動物を分類するのが得意である。
一見、現在の社会では必要がないように思われるかもしれないが、商業の世界で行うことは全てこの知性を利用している。
ちなみにTEDEdで本人の口から語られているのも見ることができます。
ここでは8つの他に、教育知能(teaching(pedagogical) intelligence)や実存的知能(existential intelligence)についても言及されています。
「人にうまく教えることのできる」教育知能(teaching intelligence)、自分はどのくらいあるんだろう。
もっともっと伸ばしたいなぁ。
MI理論の概要は掴めたと思うので、今後は、この理論をどのように教育として展開していくかについても調べてみようと思います。
特にMI理論×PBLの論文もあるようなので、まずはそれは読んでみよう。
【参考文献】
Checkley, K. (1997). The first seven... and the eighth a conversation with Howard Gardner. Educational leadership, 55, 8-13.
Davis, K., Christodoulou, J., Seider, S., & Gardner, H.(2011). The theory of multiple intelligences. In RJ Sternberg & SB Kaufman (Eds.), Cambridge Handbook of Intelligence, 485-503.
Gardner, H. (1983). Frames of mind: The theory of multiple intelligences. New York, NY: Basic BooksGardner, H. (1999). Multiple intelligences for the 21st century. New York, NY: Basic Books
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