人材開発・組織開発コンサルティング 第1・2章に続き、第3章をまとめます。
第3章は、「人材開発」についてまとめられた章です。
人材開発の定義・位置付けに始まり、基礎概念として、人材開発に関連する様々な理論の紹介、
そして、実際に企業で行われる代表的な人材開発について記載されています。
この章だけでも1冊の本にできそうな情報量ですが、非常に分かりやすく端的にまとめられています。
企業の人事育成担当等、「人の育成」に関わる方にとっては、特に必読の章かと思います。
企業の人材開発の全体像や関連する重要な概念(学術理論)についての理解が得られ、人材開発施策を考える上で非常に役立つと思います。
個人的に印象的だったのは、OJTが「理論・概念の不全」に悩まされていたという点。
OJTに限らず、それを説明する言葉(ボキャブラリー:語彙)がないと、なかなか状況が掴めず、施策の実践まで至らないということなんだと思います。
ちょうど第2章でまとめた中の「理論とは何か」(理論の作られ方)を思い出しながらなるほどと思いました。
曖昧で漠然とした状況を、科学の力で概念化、理論化し、分かりやすく紐解いていく。
既に先人が生み出してくれた「状況を見やすくする理論」は使わない手はないですね。
また、「学び温泉」や「ワークショップ温泉」という言葉には、教育に携わる者としてドキっとしました。
学んだというだけでは不十分。その先に、経営や現場にインパクトを起こしてこそ、価値がある。
第3章は、「人材開発」についてまとめられた章です。
人材開発の定義・位置付けに始まり、基礎概念として、人材開発に関連する様々な理論の紹介、
そして、実際に企業で行われる代表的な人材開発について記載されています。
この章だけでも1冊の本にできそうな情報量ですが、非常に分かりやすく端的にまとめられています。
企業の人事育成担当等、「人の育成」に関わる方にとっては、特に必読の章かと思います。
企業の人材開発の全体像や関連する重要な概念(学術理論)についての理解が得られ、人材開発施策を考える上で非常に役立つと思います。
個人的に印象的だったのは、OJTが「理論・概念の不全」に悩まされていたという点。
OJTに限らず、それを説明する言葉(ボキャブラリー:語彙)がないと、なかなか状況が掴めず、施策の実践まで至らないということなんだと思います。
ちょうど第2章でまとめた中の「理論とは何か」(理論の作られ方)を思い出しながらなるほどと思いました。
曖昧で漠然とした状況を、科学の力で概念化、理論化し、分かりやすく紐解いていく。
既に先人が生み出してくれた「状況を見やすくする理論」は使わない手はないですね。
また、「学び温泉」や「ワークショップ温泉」という言葉には、教育に携わる者としてドキっとしました。
学んだというだけでは不十分。その先に、経営や現場にインパクトを起こしてこそ、価値がある。
「人が学び、変われたか」「経営・現場にインパクトがあったか」という2点については(特に後者は)常に意識していなければいけないと感じました。
以下、メモ
以下、メモ
第3章:人材開発の理論と実践
1.人材開発とは何か?
(1)人材開発の定義と位置付け
・学問的定義「組織の戦略の実現や目標達成のために、組織メンバーの必要となるような知識、スキル、コンピテンシー、信念を提供し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援すること」(HALL, 1984)
・人材開発は「組織の戦略の実現や目標達成のために」行われる「合目的的(目的を持った)」な活動
・単に学びを促すことではなく、学びは手段であって目的ではない
(2)日本企業における人材開発
(2)日本企業における人材開発
日本企業はこれまで「内部労働市場」を発達させた人事管理を維持している
・内部労働市場(Make型):人に変わってもらう(Change)
・内部労働市場(Make型):人に変わってもらう(Change)
・外部労働市場(Buy型):人に替わってもらう(Replace)
2.人材開発の基礎概念
(1)組織社会化
組織が目標達成をするために、新しく加わったメンバーに対して、必要な知識や信念や態度といったものを獲得できるようにし、その組織の一員、一人前にしてしまうこと・予期的社会化:組織に参入する前に、内定者や内定者教育が実施される
・社会化エージェント:組織社会化の促進者
・プロアクティブ行動:新規参入者自らが、現在の職場環境を改善したり、新しい環境を構築したりしつつ、自らを社会化していく自発的な行動
・新規参入者がプロアクティブ行動をとるかとらないか
・新規参入者がプロアクティブ行動をとるかとらないか
①管理職によっていかにサポートされるか
②本人のパーソナリティ
③本人の持つ自己効力感や責任感
(2)組織再社会化
いったん「前職の組織の色」を抜き、「新たな組織の色」に染め直すこと
・中途採用者に提供したい4つの支援
①セーフティ・ネット支援(精神支援)
②ネットワーク支援(人脈・知識の媒介支援)
③フィードバック支援(内省支援)
④メンタリング支援(業務支援)
・上司からどのようなサポートが中途採用者の成果発揮に繋がるのか
・成果①馴染みの速さ
・0.158:①セーフティ・ネット支援(精神支援)
・0.065:③フィードバック支援(内省支援)
・0.135:④メンタリング支援(業務支援)
・成果②個人のパフォーマンス
・0.079①セーフティ・ネット支援(精神支援)
・0.071②ネットワーク支援(人脈・知識の媒介支援)
・0.079①セーフティ・ネット支援(精神支援)
・0.071②ネットワーク支援(人脈・知識の媒介支援)
・同僚からどのようなサポートが中途採用者の成果発揮に繋がるのか
・成果①馴染みの速さ
・0.199①セーフティ・ネット支援(精神支援)
・0.066②ネットワーク支援(人脈・知識の媒介支援)
・0.080④メンタリング支援(業務支援)
・成果②個人のパフォーマンス
・0.102①セーフティ・ネット支援(精神支援)
・0.084②ネットワーク支援(人脈・知識の媒介支援)
・中途採用者が自ら関係をつくりにいく行動も重要 ・Help-Seeking:助けてほしいと援助を要請する
・Feedback-Seeking:自らフィードバックをもらいにいく
・関係を保つためのプロアクティブ行動
・関係作り行動:挨拶をする/気軽な話題を話す
・伝える行動:はっきり伝える/自分の考えを述べる
・関係を維持する行動」相手の話を聞く/相手の立場を考える
→成果①馴染みやすさ:組織にはすぐ馴染めた、仕事のやり方にはすぐ慣れた ・アンラーニング:過去には通用したが、現在は通用しないやり方や知識を捨て、学び直すこと
(3)経験学習
人は、(1)挑戦を含むような経験(背伸びの経験)を積み重ね、(2)そこで起こった出来事を内省することを通して、自分の能力・スキルを高めることができる、と考える、人材開発の中でも最も基礎的かつ普及している理論の一つ
・100年以上前の思想家ジョン・デューイがルーツ、人間を「知識やスキルを受動的に伝達される存在」というよりも、「能動的に環境(他者・物事)に働きかける存在」として捉えた
・デイビッド・コルブ教授が経験学習サイクルとしてまとめ、ビジネス界で普及(1900年代)
①具体的経験(経験する):人材開発の世界では、「個人が現有能力(今持っている能力)を超えて、こなさなければならない、挑戦的な業務経験・職務」
②内省的観察(振り返る):「経験をした個人が、いったん、実践・事業・仕事現場を離れ、自らの行為・経験・出来事の意味を、俯瞰的な観点、多様な観点から振り返ること、意味づけること」を指す
③抽象的概念化(マイノウハウづくり):自らの具体的経験を内省することを通して、それらを一般化・概念化・抽象化し、他の状況でも応用可能な知識やルール、ルーティン(決まりきったやり方)を、自らつくり上げることを指す
④能動的実験(やってみる・試してみる):経験学習プロセスでは、経験を通して構築されたマイノウハウ・マイルールがアクション(実践)に移されてこそ意味がある
・経験学習の理論は、日本には2000年代に輸入され、2010年代になって急速に普及した (4)職場学習(Workplace Learning)
「人の学習は、職場における経験と意図的な内省、それらを支える、人々との関わりにある」と考える一連の理論群
・最大の特徴
・人の学習は、社会的なものであり、人は個人だけでは学べない
・人間の学習は、文脈(仕事をする職場・現場)と切り離して考えることはできない
・人間の学習は、公式の学習機会や教室だけで生起するのではなく、インフォーマルな現場で生起する
・「何を学ぶか」も重要ですが、同時に「誰と学ぶか(誰に支えられて学ぶのか、どのような人間関係の中で学ぶのか)」や、「どういう現場(職場風土の中)で学ぶのか」といったことが問われる
・OJTは、それを説明する「理論・概念の不全」に悩まされていた。OJTを語る言葉(ボキャブラリー:語彙)がなかった。言葉の不在は実践の実用化を阻害する
・1990年代後半、「経験学習」や「職場学習」などの領域が生まれ、研究が進められ、ブラックボックスだった職場に、様々な概念が持ち込まれる
・職場には3種類の支援がある
①業務支援:教えること、助言すること
②内省支援:客観的な意見を良い、振り返りを促す
③精神支援:励まし、褒める(感情のケア)
・職場における日々のビジネスパーソンの成長を、状況・文脈などに紐づけ、具体的には、ビジネスパーソンが居合わせる社会的関係の網にスポットライトを当てるのが、職場学習
(5)越境学習
人が組織内外を往還しながら、組織外での学びを組織内の業務に還元する概念
「組織内部での学びや変化」には「過剰適応」や「能動的惰性」も獲得してしまうという課題もある
・越境学習とは「人が、組織内外を往還しながら、組織の外で学んだ内容を組織内の業務に還元する概念」
・2020年代に入り、法政大学の石山教授らにより、越境学習入門が執筆、広く知られるように
(6)研修転移(Transfer of Learning)
研修で学んだ内容が、現場で実践され、成果を上げること
・1970年代より、教授(教えること)や教材を体系的に生み出す実践的技法である「教授設計理論」(インストラクショナルデザイン)
・教授(教えること)や教材を体系的に生み出す実践的技法
・教授設計理論:ADDIE(アディー)モデル
①Analysis:分析
②Design:設計
③Development:開発
④Implementation:実装
⑤Evaluation:評価 ・研修転移(Transfer of Learning):研修で学んだ内容が、現場で実践され、成果を上げること
・かつては、研修に学習効果を期待せず「人との出会いの場」「一時的な休憩の場」と見なす向きもあった
・現在では、参加者やその上司や現場の人たちをどう巻き込むのか、といった事前準備から、授業・教材・ファシリテーションなどの研修デザイン、現場に戻ったあと実践につなげるための働きかけまで、研修で学んだことが現場で活かされるよう、トータルな設計が求められる
・現在では、参加者やその上司や現場の人たちをどう巻き込むのか、といった事前準備から、授業・教材・ファシリテーションなどの研修デザイン、現場に戻ったあと実践につなげるための働きかけまで、研修で学んだことが現場で活かされるよう、トータルな設計が求められる
(7)オンライン学習
・オンライン学習は「対面学習と同等か、それよりも学習効果は高い」というのが研究者の間での緩やかな合意
・コスト面等のメリットもある反面、コミュニティづくりには向かない等の限界もある
(8)リーダーシップ開発
「リーダーシップを発揮できる人材を、いかにつくり出す(Develop)ことができるか」ということを研究する新たな領域
・リーダーシップ研究:「リーダーシップとは何か?」を明らかにすることに焦点
・リーダーシップ開発研究:「リーダーシップを発揮する人材をいかに育てるか」に注力
・手法:様々存在し、最も現場で実践されているのは、「経験学習型リーダーシップ開発」
①人をリードする経験(チームで動く経験)を積み、②そうした経験の振り返り(リフレクション)を行うことを通して、リーダーシップを開発していく
具体的には、
①リーダーシップを開発したい個人を集めた異種混合のチームをつくり
②容易に成し遂げることができないようなタフな課題解決をチームに迫り
③チームでやりとりをしながら成果を創出させる
タフな課題解決に取り組む間、チームの内部では、様々な葛藤が起き、メンバー同士のやりとりが生まれる
④俯瞰的に振り返って内省を行ったり
⑤チームメンバーから様々なかたちで相互にフィードバックを行ったりする
3. 企業における代表的な人材開発の実践
(1)キャリアステージに応じて行われる人材開発
・従業員のキャリア(職位・ポジション・年齢など)に応じて、その発達ステージに応じた学習内容を学んでもらうための人材開発・日本型雇用システムのプロセスの各ステージにおいて、職位や職能に応じた階層別の人材開発
①新人研修
・組織社会化を実現するための手段
・日本の高等教育機関では、即戦力としてすぐに働けるような職業的知識・スキルの教育訓練をあまり行っておらず、教育機関と仕事領域の「接続」部分に大きなギャップが生じている
・新人を「守り過ぎて」しまい、かえって仕事の中での成長実感が得られず、離職につながるといった問題も指摘されている
②内定者研修
(1)入社後すぐに戦力化できるよう、入社前から必要な知識やマインドセットの獲得を目指す (2)組織社会化の時期を少しでも早めることで内定辞退を防止し、人材を引き留める
③管理職研修
・典型:2〜3日で新任管理職が集められ、社長の講話、事業の方向性の説明があり、管理職としての心構えが伝えられ、評価者研修(考課者研修)が行われ、最後にハラスメント研修やコンプライアンス研修があって終わる
・2000年代からコーチング研修が加わり、2010年代以降1on1研修やフィードバック研修なども
・本来、管理職になる前から行われるべきであるが、管理職になってはじめて管理職の仕事を教えられる
④リーダーシップ開発研修
・1番多いのは実践と学習を組み合わせた「アクションラーニング型研修」
・典型:参加者にチームを組ませ、自社の事業・経営課題を(個人ないしはチームで)分析させ、どのように改善・改革していくかについての課題解決を行わせ、役員・社長の前で発表させる
・そのプロセスの中で、360度フィードバックの機会を設けたり、ピアフィードバックがなされたりして、参加者は自己のリーダーシップや課題解決に関してリフレクションを行う
・一皮むける経験:タフな仕事のアサインを行いながら、将来のリーダーになる人を計画的に育成する方法
・リーダーシップパイプライン:一般社員から係長、課長、部長、事業部長・・と次世代のリーダーを安定的かつ継続的に得られる仕組み
⑤オンボーディング施策
ビジネスパーソンが現場で実行できる、新規参入者の「迎え入れ」および「定着」のための施策の総称
(2)OJT:管理職によって現場で行われる人材開発
(2)OJT:管理職によって現場で行われる人材開発
・人々の能力形成の中心地は、たった数時間、長くても数十時間の研修が行われる「研修室」ではない
・1on1ミーティングとは、部下と上司が高頻度に面談を行うことで、経験学習の鍵となる「リフレクション」を促す取り組み
・短いスパンで面談を行うため、経験学習サイクルを急ピッチで回すことができる
・かつて「OJT」という名のもと、各企業の現場で様々なかたちで行われていた人材開発は、理論や概念を用いて要素分解されることで、解像度高く可視化され、その全貌が明らかになってきている
(3)社会課題・経営課題解決のための人材開発
この10年ほどの間に、人事・人材開発の仕事は一気に高度化した。ビジネス環境の変化、社会情勢の変化に応じて生じる様々な社会課題について、政府や社会から「要請」が出され、各社において人と組織の観点から、そうした課題への対応が求められるようになった。
・人的資本経営 :(1)人材をコストとしてではなく「目には見えにくい資産」として捉え、(2)企業戦略に合致したかたちで、人の能力向上への積極的な「投資」を行い、(3)その情報を継続的に定量化しつつ、市場に開示していくことを目指す
・新たに降ってきた「人的資本経営」という社会課題を、自社の文脈に当てはめ、どのようにして自社の経営課題として落とし込むのか、何をどうするかを議論し、決定し、実行し、評価する、この一連の営みこそが、人事・人材開発担当者の新しい仕事として求められるように
・かつて研修の実施こそが中心であった人材開発担当者の仕事は、より高度な課題解決に変化
2.人材開発の理論と実践
第3章のまとめ
1.そもそも「人材開発」とは?
・人材開発は「組織の戦略の実現や目標達成のために、組織メンバーの必要となるような知識、スキル、コンピテンシー、信念を提供し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援すること」と定義される。すなわち、「人が学ぶというプロセス」を「手段」として用いて、経営・現場にインパクトをもたらす営み
・人材開発では、「人が学び、変われた」という「学習軸」と、「経営にインパクトを与えられた」という「経営軸」の両方を意識するひつようがある。いずれか一つでも欠けたら「人材開発」とは呼べない
・内部労働市場型で、かつ、新卒一括採や長期雇用という雇用慣行が根強い日本企業においては、「内部」の人に「変わってもらう(Changeしてもらう)」ための手段として、人材開発が重要な役割を持つ
2.人材開発の理論と実践
・日本では、ここ20年余りで人材開発の知識や役割が蓄積され、「組織社会化」「組織再社会化」「経験学習」「職場学習」「越境学習」などの概念で、企業・組織における人の学びが説明されるようになってきた
・日本企業では、キャリアステージに応じて行われる、いわゆる階層別研修(特に新人研修)が大部分を占めていたが、現在は、現場のOJTや社会課題解決のための人材開発のニーズが高まってきている
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