人材開発・組織開発コンサルティング、第1,2,3章に続き、第4章をまとめます。
第4章は「組織開発」についての章です。
組織開発の定義、日本企業における位置づけ(役割)、手法等について簡潔にまとめられています。

現在の日本は、「組織の多様性が増していること」や「リモートワーク等の増加」により、組織に求心力が求められるようになってきています。
悲しいかな、組織は放っておくと人数の増加に伴い、一人当たりの生産性が減少する傾向にあります。(リンゲルマン効果)
そうならないためには意図的に組織に働きかける必要があり、そのような背景から「組織開発」に注目が集まっています。
プロセスロス(損失)を防ぎ、プロセスゲイン(利益)を増やす。それを可能にするのが組織開発です。

では、どうすれば「組織開発」ができるのでしょうか。
手法として、まず、基本の3ステープ「①見える化(What?)、②ガチ対話(So What?)、③未来づくり(Now What?)」が紹介されています。
「①見える化」の対象は、「目に見えているコンテント」ではなく、「プロセス(目に見えないもの、人々の意識にのぼりにくいもの)」です。(※氷山モデル参照)
そして、見える化するやり方として、「組織調査による見える化」と「組織の未来をあぶりだす見える化」の大きく2種類に分け、様々な手法等が解説がされています。
「①見える化」の次には、「②ガチ対話」「③未来づくり」と続くように、
どちらの手法においても、見える化しただけでは組織は変わりません。
組織で「対話」がなされることが最も重要だとして、5章は締め括られていきます。

組織の生産性について頭を抱えている管理者や人事の方々は多いのではないでしょうか。
日々の業務に忙殺される中でも、少しだけ立ち止まり、普段自分たちが抱えている思いを見えていない部分から見える部分に引っ張り出し(見える化)し、それについて皆で対話をすることで、組織はより良く変わっていく可能性を有している。それが「組織開発」です。
試してみる価値は大いにあると思います。
HRDOD4
以下、メモ

第4章:組織開発の理論と実践

1.組織開発とは何か

(1)組織開発の定義

計画的で、組織全体を対象にした、トップによって管理された、組織の効果性と健全さの向上のための努力であり、行動科学の知識を用いて組織プロセスに計画的に介入することで実現される(Beckhard, 1969)

【組織開発の3ステップ】
①見える化(What?):組織調査などの手段を用いて、組織の抱える課題を「見える化」し
②ガチ対話(So What?):「見える化」した課題に組織メンバー全員で向き合い、「対話」を重ね
③未来づくり(Now What?):自分たちの組織のあり方を自ら決めていく実践
この3プロセスを通して、意図的に「組織をWorkさせようと試みること(組織を機能させて、成果を創出できるようにすること)

(2)なぜ組織開発が必要なのか 

組織開発とは、組織のことを折に触れてケアして、プロセスゲインを最大化し、プロセスロスを防止するための、意図的な取り組み
・プロセスロス:複数人が集まる組織・集団において生じる損失・非効率性のこと
プロセスロスが起きてしまう原因の一つには「そもそも、人が集団になると社会的手抜きが生まれやすい」ということがある
・リンゲルマン効果:人数が増えれば増えるほど、一人当たりの仕事量が落ちてしまう効果
・プロセスゲイン:組織メンバーの中に生まれる相互支援や強みの相乗効果によって、組織メンバーの総量以上の利益(Gain)が生じる状態

(3)組織開発のニーズの高まり

日本においても、組織開発のニーズが高まってきている背景
(1)組織の多様性が増していること
(2)在宅勤務・リモートワークなどが広がり、組織の中に「遠心力(バラバラになろうとする力)」が増している
組織開発は、組織の求心力を高めるための方法の一つ

2.組織開発の「見える化」の手法

(1)コンテントとプロセス

・コンテント:仕事・タスク・行動など、「仕事をなしていく中で、目に見えやすいもの(人の意識にのぼりやすいもの)」
・プロセス:人々のコミュニケーションの仕方、意思決定のされ方、役割分担のなされ方など、「仕事をしていく中で、目に見えないもの(人々の意識にのぼりにくいもの)」 
①コミュニケーション:やりとりの様子、誰が誰に
②意思決定のされ方:どのように? 決定への納得は?
③目標の共有:同じものを目指しているか? 腹落ちしているか?
④役割分担:明確に共有されているか? 負担の偏りは? 相補っている?
⑤手順や進め方:共有されているか?
⑥リーダーシップ:誰の影響が強い? どのように影響しているか?(課題達成/関係の維持?)
⑦暗黙の決まり事:どのようなルールがあるか? その影響は?
⑧雰囲気や風土:話しやすいか? 自由か? 硬いか?
⑨お互いの関係性:信頼は? 競争的/協力的? パワー関係は?

組織開発の「見える化」によって可視化される対象とは、「プロセス

組織開発の「見える化」には「組織調査による見える化」と「組織の未来をあぶり出す見える化」がある

(2)組織調査による見える化

従業員調査、職場調査、職務満足度調査、ストレスチェックなどの、各種の組織調査(Survey:サーベイ)を用いて、組織のプロセスを見える化し、組織開発を行うこと
サーベイフィードバック(Survey Feedback)とも言われる
組織調査自体が組織を変えるわけではない。結果が、現場にフィードバックされ、人々の対話を導いてこそ、組織を変えるリソースとなりうる

(3)組織の未来をあぶりだす見える化 

職場のメンバー同士で未来を語ることからはじまる組織開発
ネガティブな部分には目を向けず、組織の理想の状態について、皆が語ることで、その姿を「あぶり出して」いき、見える化する
「組織の未来をあぶり出す見える化」は、職場とは少し離れた場所で、オフサイトミーティングやワークショップ、合宿といったかたちで行われることが多い

【代表的手法】
AI(アプリシエーティブ・インクワイアリ)
・ディビッド・クーパーライダー教授が開発し、2000年代に普及
・4Dサイクル
 ①Discovery(強みの発見)
 ・ハイポイント・インタビュー
 ・最高の瞬間を聞き合い、組織やチームの勝ちや強みを見出す
 ②Dream(理想の状態)
 ・組織やチームの強みや内在する可能性をもとに、自分たちの理想の未来の姿、どうなりたいかを話し合い、寸劇や絵、制作物などで表現
 ③Design(目指す状態の明確化)
 ドリームで表現した理想的な未来の状態を、具体的な言葉に落とし込み、「わたしたちは○○します」などと声明文にして表す
 ④Destiny(定着化)
 理想的な未来の状態を実現させるために、誰が何をするのか、今後取り組んでいくアクションプランを考える
※AIについては、「ポジティブ・チェンジ~主体性と組織力を高めるAI~」の書籍などがあります 

フューチャーサーチ
・マーヴィン・ワイスボードとサンドラ・ジャノフが1987年に提唱
・各ステークホルダーにつき、8人のグループ×8の64人で実施
①過去を振り返る:個人・組織・グルーバルのレベルで年表を作り上げる
②現在:マインドマップを用いて、今、何が起きているのか、参加者全員で現状認識を共有
 その後、現状の自分たちについて誇りに思うことと、できなくて申し訳なく思うこと(プラウド&ソーリー)について対話
③未来:グループごとに理想的な未来の姿を描き、その様子を寸劇で表現し、望ましい未来の状態をリスト化
 その後、全員で何を目指すのかという共通の価値観「コモングラウンド」の明確化を行う
 未来の姿のリストを分類していきながら話し合い、合意された一つのまとまりを「コモングラウンド」として明文化し、宣誓文をつくる
最後に、合意した「コモングラウンド」に対して「アクションプラン」を考え、全体発表

オープンスペース・テクノロジー
・ハリソン・オーウェンが1995年に提唱
・コーヒーブレイクのように、参加者が自分の話したいことを話したい相手と話すことができる、主体的で自然な対話
①議題を出し合う:似たようなものはまとめて、話し合いのテーマを絞り込む
②マーケットプレイス:いつ、どこでその議題について話し合うか、テーマと時間と場所をマーケット・プレイスと呼ばれる表に貼り出す
③セッションに参加:興味のある議題について話されているセッションへと足を運、話し合いに参加。別のセッションに移るのも自由
④全体への共有:話し合いの内容は議事録やレポートなどの形で残し、全体セッションで共有される
⑤全体セッション:全体セッションでは、より優先するべきテーマは何かを絞り込み、優先テーマについてのアクションプランを話し合う
※オープンスペーステクノロジーについては「オープン・スペース・テクノロジー ~5人から1000人が輪になって考えるファシリテーション~」の書籍などがあります 

ワールドカフェ
・アニータ・ブラウンとディビッド・アイザックスによって1995年に提唱
・オープンでリラックスしたカフェのような空間でこそ、知識や知恵が創発される
第1ラウンド:1グループ4人でテーブルに座り、問いについて自由に話し合う
 1人がホストとして残り、他のメンバーは別のテーブルに移動
第2ラウンド:各グループで話されたことを共有したあと、新たなテーマについて話し合う
第3ラウンド:第1ラウンドのグループに戻り、再び新たなテーマについて話し合う
全体共有:3つのラウンドを通して考えたことや気づいたことを「ハーベスト(収穫)」として全体共有
※ワールドカフェについては「ワールド・カフェをやろう!」の書籍などがあります

3.人材開発と組織開発は「車の両輪」である

人材開発と組織開発の共通点
①「経営・現場にインパクトを与える」ために行われる働きかけ
②「人々の学習」というメカニズムに働きかけ、組織が掲げる目標や戦略への同期(アライン)を成し遂げる
ラストワンマイルの実現を人々に「変わってもらうこと(行動変容)」で成し遂げる
③対話をすること
よき人材開発は組織開発とともにあり、よき組織開発は人材開発とともにある

コラム:何も生み出さない不毛なサーベイフィードバック

組織調査のデータは、それを見る人が、自分の周囲に対して、何らかの働きかけやアクションをとることが決められるレベルの、より細かい集団単位に対して、フィードバックされなければ意味がない
5〜10人程度の、普段、管理職や従業員の方々が日常を過ごしている社会集団の単位で、組織調査の結果がフィードバックされなければ、現場のアクションにはつながらない

第4章のまとめ

1.そもそも組織開発とは?

・組織開発の定義は多様で、多くの変数が含まれるが、その営みの本質を捉えると「組織をワーク(Work:適切に動き、成果を出す)させるための意図的な働きかけ」と定義することができる
企業の経営においては、組織開発も、人材開発と同様に「経営にインパクトを与える」ための「手段」として位置づけられる
・組織は放っておくと「ワーク(Work:適切に動き、成果を出す)」しなくなるという特徴を持つ。加えて、組織内の多様性が増し、ビジネスのスピードが加速する現代社会において、「組織をワークさせるための意図的な働きかけ(組織開発)」の必要性はますます高まっている

2.組織開発の原理と実践

・組織開発とは、(1)組織調査などの手段を用いて、組織の抱える課題を見える化し、(2)見える化した課題に組織メンバーが向き合い、対話を重ね、(3)自分たちの組織のあり方を自ら決めていく、という3つのステップで、組織の課題解決を図るアプローチの総称である
・組織開発には、大きく分けて「組織調査による見える化」と「組織の未来をあぶり出す見える化」の2つのやり方があるが、いずれにせよ、組織メンバーの「対話」がなされることが最も重要である