体育の授業に関する問題解決型学習(Problem-based Learning)とプロジェクト型学習(Project-based Learning)のレビュー論文について考察します。

論文はこちら(被引用数:9件 (2023年9月13日時点))※2021年の新しい論文です
Naviri, S., Sumaryanti, S., & Paryadi, P. (2021). Explanatory Learning Research: Problem-Based Learning or Project-Based Learning?. Acta Facultatis Educationis Physicae Universitatis Comenianae, 61(1).

当論文は、2015年から2020年までの過去5年間の体育の授業に関する問題解決型学習(Problem-based Learning)とプロジェクト型学習(Project-based Learning)についての論文をレビューした文献研究です。
各論文で記載された内容から、両PBLの特徴、長所、短所がそれぞれまとめられています。
体育の授業に関するPBLの論文は読んだことがなかったので興味深く読みました。

まず、体育の授業の意味や意義について深く考えたことがなかったので、それ自体が学びでした。
例えば、以下のような内容が引用されていました。
・Junaedi & Wisnu(2016)は、体育には、すなわち、身体活動を優先し、調和のとれたバランスのとれた身体的、精神的、社会的、感情的な成長と発達のための健康的な生活を育む教育全般の一部という意味があることを明らかにした(Burhaein 2017a; Burhaein, Ibrahim & Pavlovic 2020)。
・体育、スポーツ、健康は、国民教育の目標を達成するために体系的に計画された身体活動、スポーツ、選択された健康を通じて、体力、運動能力、批判的思考力、社会性、推論、情緒の安定、道徳的行動、健康的なライフスタイルの側面、清潔な環境の導入の側面を発達させることを目的とする教育全体として不可欠な部分である(Burhaein, Phytanza & Demirci 2020; Phytanza & Burhaein 2020)。
・Soedjatmiko(2015)は、体育学習を通して、生徒の人格やモラルの形成が可能であり、体育学習によって通常形成される人格は、責任感、創造性、負けを認めることなどであると説明している。
・体育は生徒の人格形成に影響し、労働倫理、コントロール、目標設定における管理の取り決め、勤勉さ、責任感、スポーツマンシップ、協調性、リーダーシップなどが含まれる(Burhaein 2017b; Opstoel et al. 2020; Pramantik & Burhaein 2019)。

このように、体育は身体面だけでなく、モラル、協調生、目標管理、責任感等様々な側面から性格・人格の形成、思考力の向上に効果があることが分かります。

しかし、 体育を実施する際、「施設」「子どもの能力・意欲」など学習の阻害要因となるものがあります。
そして、後者の阻害要因をクリアするために効果的なアプローチとして、問題解決型学習とプロジェクト型学習があると説明されています。 
これは、個人的に非常に興味があり学んでいるプロジェクトアドベンチャーにも通ずるものがあると感じました。
「直面する課題解決やプロジェクトの遂行のために、仲間と協力しながら、方法やスキルを学び、実践し、振り返り、学びを得ていく」
単なる体育の授業(単に運動するだけ)ではこのような側面は少なく、これがPBLにもPAにも共通する優れた学習プロセスなんだろうなと。自分にとって、これは大きな気づきでした。

そして、2つのPBLの「特徴」「長所」「短所」についてもそれぞれまとめられていました。
分かりやすいように、翻訳したものを表にしてみました。
PE-PBL

長所に関しては、他の科目学習のPBLの場合と遜色ないように感じましたが、短所については、「施設やインフラが必要」という点は特に体育において顕著な問題だと思いました。
PAの場合も専用のコースがあれば、非常に効果の高い学びの機会が提供できますが、それがない場合は、学校の中でコースと近い経験ができるような環境を作る必要があります。

最後に、筆者は、プロジェクト型学習よりも問題解決型学習の方が良いと言及しています。
理由は、問題解決型学習では、生徒が自身に起こる問題や障害を特定することができ、さらに、問題の解決について考えることが求められ、教師と話し合うことができ、結果として、批判的思考力が向上し、問題解決における能力と自信を最大化するため、とのこと。
これらはプロジェクト型学習にも当てはまるものも多いので、なぜ問題解決型学習の方が優れていると言えるのかがあまり判然としませんでした。
しかしながら、著者は、2つの学習アプローチ・モデルについて詳細な研究レビューを行うことも提案しており、今後このあたりはより明確になっていくのではないかと思いました。

本論文で紹介されている体育のPBLの論文もまた個別に読んでみようと思います。

--以下、プライベートモード)にて翻訳版をメモしてます---

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