「サービス・ラーニング」を類似する教育手法と区別する視点を提供した論文をレビューします。
大学院の修士課程の際にもこちらは読みましたが、改めてまとめようと思います。
論文はこちら(被引用数:1,823件 (2023年10月19日時点))
Furco, A. (1996). Service-learning: A balanced approach to experiential education.
奉仕活動を含む体験教育には、様々な手法が存在しますが、その中で「サービス・ラーニング」とは何かを明確に区別する定義や概念が求められていました。
そこにアプローチしたのがこちらの論文になります。
まず、他の手法と区別するために「サービス」と「学習」という2つの軸があります。
サービスと学習のどちらも同じ比重で両取りを目指すものがSERVICE-LEARNINGであり、
それらのどちらか/どちらもが欠けてしまうと成り立たないとFIGURE1で示されています。
また、「サービス」と「学習」という目標軸(焦点)に加えて、
「恩恵を受ける人」が学生なのか、サービスの提供先である地域や組織なのか、という視点を加えたものが以下のFIGURE2で示されています。
これによると、焦点がサービスと学習の両方にしっかりと当てられていて、
学生にもサービスの受取者である地域や組織にも利益が提供できたとき、
それは「サービス・ラーニング」になるという考えが示されています。
その他の教育手法についても1つづつ見ていきます。
ボランティア(VOLUNTEERISM)
コミュニティー・サービス(COMMUNITY SERVICE)
コミュニティー・サービスとは、一方的な奉仕であるボランティア活動に学習要素が加わったものです。
そのため、ボランティアよりもより学びに仕組み、学生の取り組みが含まれます。
ボランティアやコミュニティ・サービスの主な目的は、利他主義と慈善の心を育み、大義を推進することですが、コミュニティ・サービスでの活動を通して、大義に効果的に対処するために必要なことを学ぶことができます。
例としては、休暇中に家のない人に食べ物を提供する活動、リサイクル、飢餓の認識、環境改善などが挙げられていました。
コミュティ・サービスが学業とより一体化し、学生が大義に関連する様々な問題に対して知的談話を行うようになると、連続体の中心に近づき、よりサービス・ラーニングに近いものになっていきます。
次は逆側の学習第一の視点から見ていきます。
大学院の修士課程の際にもこちらは読みましたが、改めてまとめようと思います。
論文はこちら(被引用数:1,823件 (2023年10月19日時点))
Furco, A. (1996). Service-learning: A balanced approach to experiential education.
奉仕活動を含む体験教育には、様々な手法が存在しますが、その中で「サービス・ラーニング」とは何かを明確に区別する定義や概念が求められていました。
そこにアプローチしたのがこちらの論文になります。
まず、他の手法と区別するために「サービス」と「学習」という2つの軸があります。
サービスと学習のどちらも同じ比重で両取りを目指すものがSERVICE-LEARNINGであり、
それらのどちらか/どちらもが欠けてしまうと成り立たないとFIGURE1で示されています。
また、「サービス」と「学習」という目標軸(焦点)に加えて、
「恩恵を受ける人」が学生なのか、サービスの提供先である地域や組織なのか、という視点を加えたものが以下のFIGURE2で示されています。
これによると、焦点がサービスと学習の両方にしっかりと当てられていて、
学生にもサービスの受取者である地域や組織にも利益が提供できたとき、
それは「サービス・ラーニング」になるという考えが示されています。
その他の教育手法についても1つづつ見ていきます。
ボランティア(VOLUNTEERISM)
ボランティア活動は、提供されるサービスに主眼が置かれている考え方です。
参加学生は、その過程で何かを学び、何らかの利益を得るかもしれませんが、これらの結果は明らかに偶然であり、意図的なものではない、とされています。
例としては、病院でのアルツハイマー病患者の相手をするものが挙げられていました。
このボランティア活動がより定期的になり、学生たちがアルツハイマー病についての学習に重点を置くようになると、このプログラムは連続体の中心に向かって、よりコミュニティ・サービス(あるいはサービス・ラーニング)に近くなっていきます。
例としては、病院でのアルツハイマー病患者の相手をするものが挙げられていました。
このボランティア活動がより定期的になり、学生たちがアルツハイマー病についての学習に重点を置くようになると、このプログラムは連続体の中心に向かって、よりコミュニティ・サービス(あるいはサービス・ラーニング)に近くなっていきます。
コミュニティー・サービス(COMMUNITY SERVICE)
コミュニティー・サービスとは、一方的な奉仕であるボランティア活動に学習要素が加わったものです。
そのため、ボランティアよりもより学びに仕組み、学生の取り組みが含まれます。
ボランティアやコミュニティ・サービスの主な目的は、利他主義と慈善の心を育み、大義を推進することですが、コミュニティ・サービスでの活動を通して、大義に効果的に対処するために必要なことを学ぶことができます。
例としては、休暇中に家のない人に食べ物を提供する活動、リサイクル、飢餓の認識、環境改善などが挙げられていました。
コミュティ・サービスが学業とより一体化し、学生が大義に関連する様々な問題に対して知的談話を行うようになると、連続体の中心に近づき、よりサービス・ラーニングに近いものになっていきます。
次は逆側の学習第一の視点から見ていきます。
インターンシップ(INTERNSHIPS)
インターンシップは、主に、特定の研究分野に関連する問題の学習または理解を深める実地体験を学生に提供する目的で、学生が奉仕活動に従事するものです。
学生の学業や職業能力を高めるための技能や知識を習得することに主眼が置かれ、受け入れ先である営利/非営利団体等に向けたサービスの提供という視点は薄いです。
インターンシップは、学生が個人で申し込む場合は、基本的に企業側は採用という目的の下実施していることが多いですが、学校の授業の一環として協力してもらう場合などでは、協力はしたけども企業側のメリットはほぼなかったというケースが散見されるのが実情かと思います。
ここに、受入先企業等にどのような恩恵をお届けできるかを重視するようになればなるほど、連続体の中心に近づき、フィールド教育やサービス・ラーニングに近づいていきます。
学生の学業や職業能力を高めるための技能や知識を習得することに主眼が置かれ、受け入れ先である営利/非営利団体等に向けたサービスの提供という視点は薄いです。
インターンシップは、学生が個人で申し込む場合は、基本的に企業側は採用という目的の下実施していることが多いですが、学校の授業の一環として協力してもらう場合などでは、協力はしたけども企業側のメリットはほぼなかったというケースが散見されるのが実情かと思います。
ここに、受入先企業等にどのような恩恵をお届けできるかを重視するようになればなるほど、連続体の中心に近づき、フィールド教育やサービス・ラーニングに近づいていきます。
フィールド教育(FIELD EDUCATION)
フィールド教育プログラムは、正規の学業と完全には統合されていないものの、関連した共同カリキュラムの奉仕活動の機会を学生に提供するものです。
学生の研究分野に対する理解を深めることを主目的とし、同時に提供される奉仕活動にも重点を置いています。
例としては、教育学部の学生が、学生教師として教壇に立ち、教えるスキルを磨き、教えるプロセスについて学ぶことが挙げられていました。
奉仕活動に長期的に取り組むため、学生は、自分の奉仕活動が奉仕を受ける人々にどのような恩恵をもたらすかを意識的に考えます。
サービスを受ける人のためになるようにという意志があることは確かですが、フィールド教育プログラムの焦点は、学生が学業を最大限に学べるようにすることであるとされています。
「生徒中心(中略)または青少年中心(中略)の、双方向的で体験的な教育を重視した、さまざまな効果的な教授法を採用することを可能にする学習方法」(ASLER, 1994)例としては、教育学部の学生が、学生教師として教壇に立ち、教えるスキルを磨き、教えるプロセスについて学ぶことが挙げられていました。
奉仕活動に長期的に取り組むため、学生は、自分の奉仕活動が奉仕を受ける人々にどのような恩恵をもたらすかを意識的に考えます。
サービスを受ける人のためになるようにという意志があることは確かですが、フィールド教育プログラムの焦点は、学生が学業を最大限に学べるようにすることであるとされています。
サービス・ラーニング(SERVICE-LEARNING)
最後に登場するのが、「学習」と「サービス」を同時に実現するサービス・ラーニングです。
サービスを提供する側とサービスを受ける側の双方に等しく利益をもたらすと同時に、提供されるサービスと行われる学習の双方に等しく焦点を当てることを意図している点で、他の体験型教育アプローチとは一線を画していると述べられています。
以下、メモサービスを提供する側とサービスを受ける側の双方に等しく利益をもたらすと同時に、提供されるサービスと行われる学習の双方に等しく焦点を当てることを意図している点で、他の体験型教育アプローチとは一線を画していると述べられています。
そのため、プログラムは学術的な視点を含み、サービスが学習を高め、学習がサービスを高めるよう奉仕活動を科目に統合し、設計しなければいけません。
例としては、医学部進学を目指す学生が、老化生理学のコースで学んだ理論やスキルを、地元の高齢者センターで高齢者の移動介助に生かすことが挙げられていました。
高齢者に必要とされるサービスを提供することを目的としながら、同時に、男女でどのように老化が異なるのか、身体の老化が運動能力にどのような影響を与えるのか、高齢者はどのように可動域や運動能力の低下に対処すればよいのかを、学生がよりよく理解することも目的としています。
その結果、サービスを提供する学生と、サービスを受ける高齢者の両方に意図的に利益をもたらす、というわkです。
このバランスこそが、サービス・ラーニングを他のすべての体験型教育プログラムと区別する点です。
サービス・ラーニングの概念をよりクリアにしてくれる良き論文でした。
そして、「サービス」と「学習」の両軸が大事であるという考え方は、PBLにも通ずるものがあるなとも思いました。
PBL(Project-based Learning)では、実社会でのプロジェクトに取り組む中で、学生が学びを深めていきますが、「プロジェクト」が成功することで、その恩恵が協力先の企業や地域にも届いているか、という視点と、そのプロジェクトを通して学生に学びがあったかという2つの視点は強く持っておきたいです。
学校での学びを社会で実際に活かし、社会に貢献するプロジェクト(授業)をいかに設計、実行できるか。
引き続き、この文脈の中で格闘していきます。
高齢者に必要とされるサービスを提供することを目的としながら、同時に、男女でどのように老化が異なるのか、身体の老化が運動能力にどのような影響を与えるのか、高齢者はどのように可動域や運動能力の低下に対処すればよいのかを、学生がよりよく理解することも目的としています。
その結果、サービスを提供する学生と、サービスを受ける高齢者の両方に意図的に利益をもたらす、というわkです。
このバランスこそが、サービス・ラーニングを他のすべての体験型教育プログラムと区別する点です。
サービス・ラーニングの概念をよりクリアにしてくれる良き論文でした。
そして、「サービス」と「学習」の両軸が大事であるという考え方は、PBLにも通ずるものがあるなとも思いました。
PBL(Project-based Learning)では、実社会でのプロジェクトに取り組む中で、学生が学びを深めていきますが、「プロジェクト」が成功することで、その恩恵が協力先の企業や地域にも届いているか、という視点と、そのプロジェクトを通して学生に学びがあったかという2つの視点は強く持っておきたいです。
学校での学びを社会で実際に活かし、社会に貢献するプロジェクト(授業)をいかに設計、実行できるか。
引き続き、この文脈の中で格闘していきます。
【サービス・ラーニングの定義】
「学生が意図的な学習目標を持ち、経験を通じた学びを積極的に振り返る、注意深く監視されたあらゆる奉仕経験」(National Society for Experiential Education, 1994)
「生徒が実際の地域社会のニーズに応える思慮深く組織された奉仕活動への積極的な参加を通して学び、成長する方法である。生徒の学業カリキュラムに組み込まれたり、内省のための構造化された時間を提供したり、学習を教室を越えて地域社会に広げたりすることによって、学校での教えを強化する」(Corporation for National and Community Service, 1990)
「生徒が実際の地域社会のニーズに応える思慮深く組織された奉仕活動への積極的な参加を通して学び、成長する方法である。生徒の学業カリキュラムに組み込まれたり、内省のための構造化された時間を提供したり、学習を教室を越えて地域社会に広げたりすることによって、学校での教えを強化する」(Corporation for National and Community Service, 1990)
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