自己調整学習についての古典的な論文をレビューします。

論文はこちら(被引用数:7,711件 (2024年3月25日時点))
Zimmerman, B. J. (1989). A social cognitive view of self-regulated academic learning. Journal of educational psychology, 81(3), 329. 

「自己調整学習(Self-regulated learning)」とは何でしょうか?
Zimmermanは以下のように説明しています。
・一般的に、生徒は、メタ認知的、動機づけ的、行動的に能動的に自分の学習過程に参加している程度に自己調整的であると言うことができる(Zimmerman, 1986, 1989)
・自己効力感に基づき、学習目標を達成するために特定の戦略を用いて学習すること

色々と印象的なことも多かったのですが、その中でも「三項相互関係(Triadic reciprocality)」と「14種類の自己調整学習戦略」「自己効力感」についてまとめようと思います。

三項相互関係(Triadic reciprocality)
学生の自己調整学習は、「個人」「環境」「行動」の3つのプロセス間の相互因果関係を前提としているそうで、以下のように図式化されています。
figure1
自己調整学習は個人のプロセスのみで決定されるのではなく、環境的、行動的な出来事から相互に影響を受けると仮定されており、それが上記の図で示されています。
3つの要素について個別に見ていきます。

まず「個人」についてですが、ここでは「隠れた自己調整(covert self-regulation)」が働いています。
論文では、スペイン語のpanと英語のbread(「パンはフライパンで焼かれる」)を関連付ける精緻化ストラテジーが紹介されていました。暗記しやすくするためのコツは色々と自然にやってたりしますよね。他にも様々な「隠れた自己調整」があるのか気になりましたが、当論文では他の事例の記載はなかったので、機会があれば調べてみたいと思います。

次に「行動」です。
例として、数学の宿題が挙げられていました。間違った部分がないか自身でチェックするという自己評価戦略使用し、その結果、正確さやチェックを続ける必要があるかどうかという情報が能動的フィードバックを通して得られ、自己調整していきます。行動してみることで、うまくいかないポイントが分かり、その点を修正していくというイメージでしょうか。
また、以前に正解したか・うまくいったかということにも影響を受けるそうです。過去に解けた問題であれば、今回も解けるだろうと自己効力感が高まるということなのでしょう。

最後に「環境」です。
ここでは、自宅を集中できる学習スペースに整えるということが挙げられていました。騒音を除去し、適切な照明を配置し、書き物をする場所を確保するといった、部屋を変化させることを環境操作戦略というそうです。このように環境を創ったり(部屋を改造)、集中できるカフェに行くなどの物理的な戦略もあれば、励ましをもらえる人を周りに置くなどの人の面からの環境戦略もあるそうです。
そして、その環境が学習支援に有効であるかがフィードバックされ、環境戦略を継続的に使用するかどうかを決定していきます。

学習者がこれらの3つのタイプの影響をそれぞれ戦略的にコントロールできる場合、その学習者は自己調整されていると言えるそうです。
また、この理論では、学問的自己効力感の信念と、自己観察、自己判断、自己反応という3つのサブプロセスが中心的な役割を果たすと仮定しています。続いて見ていきます。

自己効力感(Self-efficacy)
自己効力感とは、特定の課題に対して、指定されたスキルを達成するために必要な行動を組織し、実行する自分の能力についての認識のこと(Bandura, 1986)。
自己効力感は、自己調整学習に影響する重要な変数であると仮定されています。
自己効力感が高い学生は、低い学生に比べ、より質の高い学習戦略と学習成果の自己モニタリングを示しているそうです。
また、学生自身の自己効力感の認知は、課題の持続性、課題選択、効果的な学習活動、技能習得、学業達成度などの学習成果と正の関係があるそうです。
自己調整学習ができる学生を育成しようと考えるなら、自己効力感を高めることも忘れてはいけないポイントなようです。

次に、この自己調整の3つのサブプロセスについてです。
自己調整のサブプロセス(Subprocesses in self-regulation)
自己調整には3つのサブプロセス、自己観察、自己判断、自己反応が相互に関与する(Bandura, 1986)
例では以下の文章が書かれていましたが、直訳だとちょっと分かりづらいですね。
「自分のスピーチの録音テープを聴く(自己観察)は、修辞的スキル習得の進歩に関する(自己判断)に影響を与えると想定され、そのような自己判断が、その後の自己指導的練習を続ける意欲(自己反応)を決定すると予想される」
端的に言うと、自己を観察・メタ認知し、今の学習戦略が適切かを判断し、その後修正すべきかどうかなどの反応に繋がっていくということなのかと思いました。


最後に、「自己調整学習戦略」についてです。
自己調整学習戦略とは、学習者の主体性、目的、道具性の認識を伴う、情報やスキルの習得に向けた行動やプロセスのことを指します。
ZimmermanとMartinezPons(1986)は、高校生が一般的な学習状況で14種類の自己調整学習戦略を使用していることを発見し以下のようにまとめています(Table1)
これらの戦略の使用は学習者に自己効力感の知識を提供し、その知識は、その後の戦略の選択と実行を決定するそうです。
table1
Table.1に記述されている14の自己調整学習戦略の有効性は、上述の三項相互関係モデルに基づいて説明できるとも述べられていて、以下のように当てはめられています。(各戦略の目的は、生徒の(a)個人的機能、(b)学業行動パフォーマンス、(c)学習環境の自己制御を改善することである)
・個人的調整:「②整理と変更」「③目標設定と計画」「⑧リハーサルと暗記」
・行動的調整:「①自己評価」「⑦自己解決」
・環境的調整:「④情報を求める」「⑥環境構造」「⑨〜⑪社会的援助を求める」「⑫〜⑭記録の見直し」
正直、②は環境な気がしましたし、⑫〜⑭は行動な気もして、若干整理に違和感はありました。そして⑤についての言及はありませんでした。
ただ、こういう形で自己調整学習戦略をリスト化してくれるのはありがたいです。
自分自身に対してもそうですし、学生の学習支援という点でも活用していきたいです。

ここまで。
自己調整学習の古典的論文ということで、若干情報が古い部分はあるかもしれませんが、原典であるベースの理論に触れられて良かったです。ここを起点に最近の論文についても読んでみたいと思います。

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