校長や教師のスクール・リーダーシップが生徒の学業成績に与える影響についてメタ分析した論文のレビューです。
論文はこちら(被引用数:4,850件 (2024年4月27日時点))
Robinson, V. M., Lloyd, C. A., & Rowe, K. J. (2008). The impact of leadership on student outcomes: An analysis of the differential effects of leadership types. Educational administration quarterly, 44(5), 635-674.
学習者のリーダーシップをいかに育むのかという観点の論文は多数ありますが、当論文はスクール・リーダーシップ、すなわち校長や教員のリーダーシップがいかに生徒達の学業に影響を与えるのかをメタ分析した論文です。
このような研究は非常に少ないようで、大変興味深く読ませていただきました。
目的:
・異なるタイプのリーダーシップが生徒の学業面および非学業面の成果に与える相対的な影響を調べること
研究デザイン:
・校長や教員のリーダーシップと生徒の成果との関係について発表された27の研究から得られた知見をメタ分析
・1つ目のメタ分析では、変革的リーダーシップとインストラクショナル・リーダーシップが生徒の学業成績に及ぼす影響を比較
・2つ目のメタ分析では、帰納的に導き出された5つのリーダーシップの実践が生徒の学業成績に及ぼす影響を比較
結果:
【1つ目のメタ分析】
また、著者らは、インストラクショナル・リーダーシップを共有するための強力な能力と変革的リーダーシップに関連する資質が組み合わされた「統合型(integrated)」リーダーシップが、数学と社会科の両方において、生徒の学習の知的質を最もよく予測すると結論づけています。
変革型とインストラクショナル・リーダーシップを統合したモデルは以下の論文に書かれているようですので、機会があればまた読んでみます。
Marks, H. M., & Printy, S. M. (2003). Principal leadership and school performance: An inte- gration of transformational and instructional leadership. Educational Administration Quarterly, 39(3), 370-397.r />
【2つ目のメタ分析】
続いて、リーダーシップとアウトカムの関係に関する研究で用いられたリーダーシップの尺度に含まれる調査項目をリストアップ、分析し、共通する5つのリーダーシップの次元について導き出しています。
以下のTABLE2でまとめられた5つの次元について、端的にまとめます。
5つの次元は、以下の通りです。
①目標と期待の確立
・学習目標、基準、期待事項の設定、伝達、監視を含む
・目標を明確にし、コンセンサスを得るために、職員やその他の人々がそのプロセスに参加する
②戦略的リソース提供
・リソースの選択と配分を優先的な教育目標に合わせることを含む
・スタッフの採用を通じて適切な専門知識を提供することも含まれる
③教育とカリキュラムの計画、調整、評価
・定期的な授業参観や、形成的・総括的なフィードバックの提供を通じて、授業のサポートと評価に直接関与する
④教師の学習と能力開発の促進と参加
・公式または非公式の専門的学習を推進するだけでなく、教師とともに直接参加するリーダーシップ
⑤秩序ある支援環境の確保
・外部からの圧力や中断を減らし、教室の内外で秩序ある協力的な環境を確立することで、授業と学習の時間を守る
まとめると、明確な目標を立て、教職員をそのプロセスに巻き込み、戦略的に人員や教育資源を配置し、教育カリキュラムを改善し続け、教師の能力開発を促進し、教室内外で秩序ある環境を作り教師を守る、といった感じです。どれも納得です。
この5つの次元のより詳細な内容については、以下にメモとして残しておきます。
次元3:教育とカリキュラムの計画、調整、評価(Planning, coordinating, and evaluating teaching and the curriculum.)
次元4:教師の学習と能力開発の促進と参加(Promoting and participating in teacher learning and development.)
次元5:秩序ある支援環境の確保(Ensuring an orderly and supportive environment)
スクール・リーダーシップやインストラクショナル・リーダーシップという概念は新しい発見でした。
論文はこちら(被引用数:4,850件 (2024年4月27日時点))
Robinson, V. M., Lloyd, C. A., & Rowe, K. J. (2008). The impact of leadership on student outcomes: An analysis of the differential effects of leadership types. Educational administration quarterly, 44(5), 635-674.
学習者のリーダーシップをいかに育むのかという観点の論文は多数ありますが、当論文はスクール・リーダーシップ、すなわち校長や教員のリーダーシップがいかに生徒達の学業に影響を与えるのかをメタ分析した論文です。
このような研究は非常に少ないようで、大変興味深く読ませていただきました。
目的:
・異なるタイプのリーダーシップが生徒の学業面および非学業面の成果に与える相対的な影響を調べること
研究デザイン:
・校長や教員のリーダーシップと生徒の成果との関係について発表された27の研究から得られた知見をメタ分析
・1つ目のメタ分析では、変革的リーダーシップとインストラクショナル・リーダーシップが生徒の学業成績に及ぼす影響を比較
・2つ目のメタ分析では、帰納的に導き出された5つのリーダーシップの実践が生徒の学業成績に及ぼす影響を比較
結果:
【1つ目のメタ分析】
変革型リーダーシップ、インストラクショナル・リーダーシップ、その他のリーダーシップが生徒の学業成績に与える影響について、平均効果量の推定値と標準誤差を示したものが図1でまとめられています。
この図の通り、インストラクショナル・リーダーシップが生徒の学業成績に及ぼす平均的な効果は、変革型リーダーシップの3~4倍であることが示されました。
インストラクショナル・リーダーシップという概念自体を初めて聞いたので、もうちょっと調べてみたいと思う面もあるものの、変革型リーダーシップとこれほど差があることに驚きました。
※論文ではこの理由として以下のような内容が述べられていました
・インストラクショナル・リーダーシップは、変革型リーダーシップと比較して、リーダーシップ指標と結果変数がより一致していることがより強いリーダーシップ効果をもたらしていると考えられる
・変革型リーダーシップは、スクールリーダーシップの教育的な仕事よりも、リーダーとフォロワーの関係に重点を置いており、こうした関係の質は生徒の成果の質を予測できない
・同僚同士のチーム作りや、忠実で団結力のあるスタッフの育成、感動的なビジョンの共有等のリーダーシップの実践は、変革型リーダーシップの尺度よりも、インストラクショナル・リーダーシップの尺度の方がよく捉えることができる
この図の通り、インストラクショナル・リーダーシップが生徒の学業成績に及ぼす平均的な効果は、変革型リーダーシップの3~4倍であることが示されました。
インストラクショナル・リーダーシップという概念自体を初めて聞いたので、もうちょっと調べてみたいと思う面もあるものの、変革型リーダーシップとこれほど差があることに驚きました。
※論文ではこの理由として以下のような内容が述べられていました
・インストラクショナル・リーダーシップは、変革型リーダーシップと比較して、リーダーシップ指標と結果変数がより一致していることがより強いリーダーシップ効果をもたらしていると考えられる
・変革型リーダーシップは、スクールリーダーシップの教育的な仕事よりも、リーダーとフォロワーの関係に重点を置いており、こうした関係の質は生徒の成果の質を予測できない
・同僚同士のチーム作りや、忠実で団結力のあるスタッフの育成、感動的なビジョンの共有等のリーダーシップの実践は、変革型リーダーシップの尺度よりも、インストラクショナル・リーダーシップの尺度の方がよく捉えることができる
また、著者らは、インストラクショナル・リーダーシップを共有するための強力な能力と変革的リーダーシップに関連する資質が組み合わされた「統合型(integrated)」リーダーシップが、数学と社会科の両方において、生徒の学習の知的質を最もよく予測すると結論づけています。
変革型とインストラクショナル・リーダーシップを統合したモデルは以下の論文に書かれているようですので、機会があればまた読んでみます。
Marks, H. M., & Printy, S. M. (2003). Principal leadership and school performance: An inte- gration of transformational and instructional leadership. Educational Administration Quarterly, 39(3), 370-397.r />
【2つ目のメタ分析】
続いて、リーダーシップとアウトカムの関係に関する研究で用いられたリーダーシップの尺度に含まれる調査項目をリストアップ、分析し、共通する5つのリーダーシップの次元について導き出しています。
以下のTABLE2でまとめられた5つの次元について、端的にまとめます。
5つの次元は、以下の通りです。
①目標と期待の確立
・学習目標、基準、期待事項の設定、伝達、監視を含む
・目標を明確にし、コンセンサスを得るために、職員やその他の人々がそのプロセスに参加する
②戦略的リソース提供
・リソースの選択と配分を優先的な教育目標に合わせることを含む
・スタッフの採用を通じて適切な専門知識を提供することも含まれる
③教育とカリキュラムの計画、調整、評価
・定期的な授業参観や、形成的・総括的なフィードバックの提供を通じて、授業のサポートと評価に直接関与する
・教師へのフィードバック、クラスや学年を超えた全校的な調整と学校目標との整合によるカリキュラムの直接監督
④教師の学習と能力開発の促進と参加
・公式または非公式の専門的学習を推進するだけでなく、教師とともに直接参加するリーダーシップ
⑤秩序ある支援環境の確保
・外部からの圧力や中断を減らし、教室の内外で秩序ある協力的な環境を確立することで、授業と学習の時間を守る
まとめると、明確な目標を立て、教職員をそのプロセスに巻き込み、戦略的に人員や教育資源を配置し、教育カリキュラムを改善し続け、教師の能力開発を促進し、教室内外で秩序ある環境を作り教師を守る、といった感じです。どれも納得です。
この5つの次元のより詳細な内容については、以下にメモとして残しておきます。
次元1:目標と期待の確立(Establishing goals and expectations)
・12件の研究のうち7件が、目標と期待の重要性を示すエビデンスを提供している
・平均効果量は0.42で中程度に大きい
・目標設定は、すべてのリーダーシップの次元と同様に、教師や、場合によっては保護者の仕事に焦点を当て、調整することで生徒に間接的な効果をもたらす
・目標が影響力のある調整メカニズムとして機能するには、学校や学級の日課や手順に組み込まれる必要がある(Robinson, 2001)
・成功するリーダーシップは、対面的な関係を通して、また、教師の仕事のやり方を構造化することによって、教育や学習に影響を与える(Ogawa & Bossert, 1995)
・このリーダーシップの側面における人間関係の重要性は、成績の良い学校の指導者は、目標や期待を伝え(Heck et al., 1990; Heck et al., 1991)、学業成果を地域社会に知らせ、学業成果を認める(Heck et al., 1991)ことに重点を置く傾向があることからも明らかである
・学校目標に関するスタッフのコンセンサスの度合いが、同じような高業績校と低業績校を区別する重要な要因であるというエビデンスもある(Goldring & Pasternak, 1994)
・インストラクショナル・リーダーシップの研究では、変革型リーダーシップの研究よりも、学校指導者がどの程度一般的な方向性を示したかよりも、指導者が特定の目標にどの程度重点を置いているかを教師に報告させるような指導指標が多く含まれていた
・インストラクショナル・リーダーシップの研究では、リーダーシップ指標と結果変数がより一致していることが、変革型リーダーシップと比較して、より強いリーダーシップ効果をもたらしていると考えられる
・Leithwood and Jantzi (2006)は、イギリスの全国的な読み書き・計算能力改革における変革的リーダーシップの役割について論じており、教師の変化の程度は、識字能力と計算能力のいずれにおいても生徒の学力向上とは関係がないことを明らかにした
・リーダーシップ研究者は、単に不特定多数の変化やイノベーションを促進する程度に焦点を当てるのではなく、リーダーがどのような変化を促し、促進するかにもっと強く焦点を当てるべきであるという
・平均効果量は0.42で中程度に大きい
・目標設定は、すべてのリーダーシップの次元と同様に、教師や、場合によっては保護者の仕事に焦点を当て、調整することで生徒に間接的な効果をもたらす
・他の次元のどれよりも、指導者の方向性を定める役割が生徒の学業成績に直接的な影響を与えることがわかった
・目標は、多くのタスクが同じように重要であり、圧倒されるように見える環境において、目的と優先順位の感覚を提供する
・明確な目標は、注意と努力を集中させ、個人、グループ、組織がフィードバックを使ってパフォーマンスを調整することを可能にする
・生徒の背景要因をコントロールした場合、リーダーシップは、明確な学業目標や学習目標をどの程度重視するかによって、生徒に違いをもたらし(Bamburg & Andrews, 1991; Brewer, 1993; Heck et al., 1991)、この効果は、指導者が学業目標を最優先にしていない学校でも見られた・明確な目標は、注意と努力を集中させ、個人、グループ、組織がフィードバックを使ってパフォーマンスを調整することを可能にする
・目標が影響力のある調整メカニズムとして機能するには、学校や学級の日課や手順に組み込まれる必要がある(Robinson, 2001)
・成功するリーダーシップは、対面的な関係を通して、また、教師の仕事のやり方を構造化することによって、教育や学習に影響を与える(Ogawa & Bossert, 1995)
・このリーダーシップの側面における人間関係の重要性は、成績の良い学校の指導者は、目標や期待を伝え(Heck et al., 1990; Heck et al., 1991)、学業成果を地域社会に知らせ、学業成果を認める(Heck et al., 1991)ことに重点を置く傾向があることからも明らかである
・学校目標に関するスタッフのコンセンサスの度合いが、同じような高業績校と低業績校を区別する重要な要因であるというエビデンスもある(Goldring & Pasternak, 1994)
・インストラクショナル・リーダーシップの研究では、変革型リーダーシップの研究よりも、学校指導者がどの程度一般的な方向性を示したかよりも、指導者が特定の目標にどの程度重点を置いているかを教師に報告させるような指導指標が多く含まれていた
・インストラクショナル・リーダーシップの研究では、リーダーシップ指標と結果変数がより一致していることが、変革型リーダーシップと比較して、より強いリーダーシップ効果をもたらしていると考えられる
・Leithwood and Jantzi (2006)は、イギリスの全国的な読み書き・計算能力改革における変革的リーダーシップの役割について論じており、教師の変化の程度は、識字能力と計算能力のいずれにおいても生徒の学力向上とは関係がないことを明らかにした
・リーダーシップ研究者は、単に不特定多数の変化やイノベーションを促進する程度に焦点を当てるのではなく、リーダーがどのような変化を促し、促進するかにもっと強く焦点を当てるべきであるという
・目標設定という文脈では、指導者や指導者育成の研究者が注目すべきは、指導者の動機づけや指示だけではなく、それらの活動の教育的内容や、生徒の意図する成果との整合性であることを意味する
・目標設定の重要性は、Witziersら(2003)が報告した、リーダーシップが生徒の学業成績に与える直接的な影響に関する研究のメタ分析結果からも示唆されている
次元2:戦略的なリソース提供(Resourcing strategically)
・「戦略的」という言葉は、リーダーシップの活動が、指導目的に沿ったリソースの確保に関するものであることを示すものであり、リソースの確保に関するリーダーシップのスキルそのものを示すものではない(資金調達、助成金申請、企業との提携などのスキルの指標として解釈すべきではない)
・7件の研究では、校長が人員配置や教育資源に関する決定を通じて、生徒の学力にどのような影響を与えることができるかを示すエビデンスが示された
・この側面に関する11の指標の平均効果量は標準偏差0.31であり、この種のリーダーシップが生徒の学業成績に間接的にわずかな影響を与えることを示唆している
・2つの管轄区域を対象とした研究では、カリフォルニア州の学校では、指導者の教育資源確保能力と生徒の学力との間にわずかな関係がみられ、マーシャル諸島の学校を対象としたもう1つのサンプルでは大きな関係がみられた(Heck et al., 1991)
・マーシャル諸島でより強い結果が得られたのは、教育資源が比較的乏しいという状況を反映している
・アメリカの小学校20校を対象とした2つ目の研究では、校長による教師選考のコントロールと学業目標の野心との間に興味深い相互作用が見られた(Brewer, 1993)
・高い学業目標を持つ校長の場合、校長自身が現職の職員を任命した割合が高い学校では、生徒の学業成績が高く学業目標の低い校長では、その逆であった
・これらの知見は大雑把なものであり、学校指導者が、資源の採用と配分を特定の教育学的目標に結びつけるために必要な知識や技能について、もっと知る必要がある。
・7件の研究では、校長が人員配置や教育資源に関する決定を通じて、生徒の学力にどのような影響を与えることができるかを示すエビデンスが示された
・この側面に関する11の指標の平均効果量は標準偏差0.31であり、この種のリーダーシップが生徒の学業成績に間接的にわずかな影響を与えることを示唆している
・2つの管轄区域を対象とした研究では、カリフォルニア州の学校では、指導者の教育資源確保能力と生徒の学力との間にわずかな関係がみられ、マーシャル諸島の学校を対象としたもう1つのサンプルでは大きな関係がみられた(Heck et al., 1991)
・マーシャル諸島でより強い結果が得られたのは、教育資源が比較的乏しいという状況を反映している
・アメリカの小学校20校を対象とした2つ目の研究では、校長による教師選考のコントロールと学業目標の野心との間に興味深い相互作用が見られた(Brewer, 1993)
・高い学業目標を持つ校長の場合、校長自身が現職の職員を任命した割合が高い学校では、生徒の学業成績が高く学業目標の低い校長では、その逆であった
・これらの知見は大雑把なものであり、学校指導者が、資源の採用と配分を特定の教育学的目標に結びつけるために必要な知識や技能について、もっと知る必要がある。
次元3:教育とカリキュラムの計画、調整、評価(Planning, coordinating, and evaluating teaching and the curriculum.)
・9件の研究において、この次元の80の指標が示され、このタイプのリーダーシップは生徒の成果に中程度の影響を与えることが示された(ES = 0.42)
・業績の高い学校の指導者は、授業や教師の計画、調整、評価に個人的に関与していることで、業績の低い学校の指導者と区別される
・このリーダーシップの次元には、相互に関連する4つの下位次元が関与している
①成績の良い学校の教師は、指導者が生徒の学力にどのような影響を与えるかを含め、指導上の問題について同僚同士で積極的に議論している(Heck et al., 1991)
②業績の高い学校の指導者は、指導プログラムを積極的に監督し、調整していることが特徴的で、スクールリーダーと職員が協力して指導を見直し、改善する。この考え方は、インストラクショナル・リーダーシップの共有(Shared instructional leadership)と呼ばれている(Heck et al., 1990; Heck et al., 1991; Marks & Printy, 2003)。業績の高い学校では、リーダーシップは、業績の低い学校に比べて、学年を超えたカリキュラムの調整により直接的に関与しており、これには、学年を超えた読解の指導目標の進展などの活動が含まれる(Heck et al., 1991)
③指導者が授業観察とその後のフィードバックにどの程度関与しているかも、成績の良い学校と関連していた。このような学校の教師は、指導者が明確な指導基準を設定し、それを遵守していると報告し(Andrews & Soder, 1987; Bamburg & Andrews, 1991)、定期的な授業観察が指導の改善に役立っていると報告している(Bamburg & Andrews, 1991; Heck, 1992; Heck et al.)
④成績の良い学校では、スタッフが生徒の学習状況を組織的に把握し(Heck et al., 1990)、テスト結果をプログラム改善のために活用することに重点が置かれていた(Heck et al., 1991)。成績の良い学校では、指導者は教師と直接協力し、教師と授業の計画、調整、評価を行っている。また、教師が有益であると評価するような評価を提供し、生徒の学習状況をモニターし、その結果を教育プログラムの改善に活用している。尚、校長の影響力の平均効果量は、小学校では標準偏差1.1であったのに対し、高校では0.42であった。このことは、指導者による授業やカリキュラムの監督が、高校よりも小学校でより大きな影響力を持つことを示唆している。
・業績の高い学校の指導者は、授業や教師の計画、調整、評価に個人的に関与していることで、業績の低い学校の指導者と区別される
・このリーダーシップの次元には、相互に関連する4つの下位次元が関与している
①成績の良い学校の教師は、指導者が生徒の学力にどのような影響を与えるかを含め、指導上の問題について同僚同士で積極的に議論している(Heck et al., 1991)
②業績の高い学校の指導者は、指導プログラムを積極的に監督し、調整していることが特徴的で、スクールリーダーと職員が協力して指導を見直し、改善する。この考え方は、インストラクショナル・リーダーシップの共有(Shared instructional leadership)と呼ばれている(Heck et al., 1990; Heck et al., 1991; Marks & Printy, 2003)。業績の高い学校では、リーダーシップは、業績の低い学校に比べて、学年を超えたカリキュラムの調整により直接的に関与しており、これには、学年を超えた読解の指導目標の進展などの活動が含まれる(Heck et al., 1991)
③指導者が授業観察とその後のフィードバックにどの程度関与しているかも、成績の良い学校と関連していた。このような学校の教師は、指導者が明確な指導基準を設定し、それを遵守していると報告し(Andrews & Soder, 1987; Bamburg & Andrews, 1991)、定期的な授業観察が指導の改善に役立っていると報告している(Bamburg & Andrews, 1991; Heck, 1992; Heck et al.)
④成績の良い学校では、スタッフが生徒の学習状況を組織的に把握し(Heck et al., 1990)、テスト結果をプログラム改善のために活用することに重点が置かれていた(Heck et al., 1991)。成績の良い学校では、指導者は教師と直接協力し、教師と授業の計画、調整、評価を行っている。また、教師が有益であると評価するような評価を提供し、生徒の学習状況をモニターし、その結果を教育プログラムの改善に活用している。尚、校長の影響力の平均効果量は、小学校では標準偏差1.1であったのに対し、高校では0.42であった。このことは、指導者による授業やカリキュラムの監督が、高校よりも小学校でより大きな影響力を持つことを示唆している。
次元4:教師の学習と能力開発の促進と参加(Promoting and participating in teacher learning and development.)
・リーダーは、リーダーとして、学習者として、あるいはその両方として、学習に参加する
・このような学習の文脈は、フォーマルなもの(職員会議や専門能力開発)とインフォーマルなもの(具体的な指導上の問題についての話し合い)の両方がある
・この次元について、6つの研究から17の効果量が算出され、平均効果量は0.84となった。これは大きな効果であり、スクールリーダーに対して、学校の「指導的学習者」である教師と積極的に関わるよう呼びかけることを、実証的に裏付けている
・生徒の背景因子をコントロールした場合、学校の指導者(通常は校長)が教師の学習や能力開発に積極的に参加していると報告するほど、生徒の成果は高くなる。(Andrews & Soder, 1987; Bamburg & Andrews, 1991)
・高業績校の指導者はまた、指導や指導上の問題に関する非公式な職員討議に参加していると教師から説明される傾向が強い(Heck et al., 1990; Heck et al., 1991)
・校長はまた、職員から指導上のアドバイスの情報源とみなされる可能性も高い
・これは、校長が、同じような成績の低い学校にいる職員よりも、指導上の問題についてより身近で、より知識が豊富であることを示唆している
・インストラクショナル・リーダーシップ理論ではなく、ソーシャルネットワークを用いたある研究では、教師が自分の指導について誰に助言を求めるかを尋ねた(Friedkin & Slater, 1994)
・成績の良い学校では、校長が助言者として指名される確率が有意に高かったが、一方で、教師が校長を個人的に親しい友人として認識したり、話し合いに参加したりする程度は、学校の成績と有意な関係はなかった
・著者らは、指導上のアドバイスや専門知識の情報源として認識される指導者は、スタッフから尊敬され、その結果、スタッフの指導方法に大きな影響力を持つことを示唆している
・校長が学校のコミュニケーションネットワークにおいて中心的な立場にあることは、校長の助言が学校全体に調整的な影響を与える可能性が高いことを意味する(Friedkin & Slater, 1994)。
・このような学習の文脈は、フォーマルなもの(職員会議や専門能力開発)とインフォーマルなもの(具体的な指導上の問題についての話し合い)の両方がある
・この次元について、6つの研究から17の効果量が算出され、平均効果量は0.84となった。これは大きな効果であり、スクールリーダーに対して、学校の「指導的学習者」である教師と積極的に関わるよう呼びかけることを、実証的に裏付けている
・生徒の背景因子をコントロールした場合、学校の指導者(通常は校長)が教師の学習や能力開発に積極的に参加していると報告するほど、生徒の成果は高くなる。(Andrews & Soder, 1987; Bamburg & Andrews, 1991)
・高業績校の指導者はまた、指導や指導上の問題に関する非公式な職員討議に参加していると教師から説明される傾向が強い(Heck et al., 1990; Heck et al., 1991)
・校長はまた、職員から指導上のアドバイスの情報源とみなされる可能性も高い
・これは、校長が、同じような成績の低い学校にいる職員よりも、指導上の問題についてより身近で、より知識が豊富であることを示唆している
・インストラクショナル・リーダーシップ理論ではなく、ソーシャルネットワークを用いたある研究では、教師が自分の指導について誰に助言を求めるかを尋ねた(Friedkin & Slater, 1994)
・成績の良い学校では、校長が助言者として指名される確率が有意に高かったが、一方で、教師が校長を個人的に親しい友人として認識したり、話し合いに参加したりする程度は、学校の成績と有意な関係はなかった
・著者らは、指導上のアドバイスや専門知識の情報源として認識される指導者は、スタッフから尊敬され、その結果、スタッフの指導方法に大きな影響力を持つことを示唆している
・校長が学校のコミュニケーションネットワークにおいて中心的な立場にあることは、校長の助言が学校全体に調整的な影響を与える可能性が高いことを意味する(Friedkin & Slater, 1994)。
次元5:秩序ある支援環境の確保(Ensuring an orderly and supportive environment)
・インストラクショナル・リーダーシップには、学業上・社会上の重要な目標を達成できるような環境をスタッフと生徒の双方に整えることも含まれる
・秩序ある環境では、教師は指導に集中でき、生徒は学習に集中できる
・8件の研究から42の効果量から導き出され、平均効果量は0.27と小さかった
・効果的な学校のリーダーシップは、社会的期待や規律規範を明確にし、一貫して実施することによって、安全で協力的な環境を確立することに重点を置き、それを成功させることによって際立つことが示唆される(Heck et al., 1991)
・教師、保護者、生徒を対象にしたある研究(Heck, 2000)では、安全、快適、配慮されていると感じる度合いについて、3つのグループすべてに一貫した報告があり、これらの反応が肯定的であればあるほど、学校の質は高くなり、生徒の背景要因をコントロールした場合の学力レベルも高くなる
・成績の良い学校の指導者は、成績の悪い学校の指導者よりも、教育関係者や保護者からの不当な圧力から教師を守ることに、有意に成功していると教師は判断しており(Heck, 1992; Heck et al., 1991)、この知見は、特に高校で顕著であった
・秩序があり、協力的な環境は、スタッフの対立に迅速かつ効果的に対処できる環境でもある
・ある研究では、対立を長引かせるのではなく、対立を発見し解決する校長の能力は、数学における生徒の学習成績と強く関連していた(Eberts & Stone, 1986)
・もう1つの変数は、教師と校長の対立を発見し解決する能力に関する認識の違いを測定するもので、成績の高い学校と低い学校をさらに強く区別した
・秩序ある環境では、教師は指導に集中でき、生徒は学習に集中できる
・8件の研究から42の効果量から導き出され、平均効果量は0.27と小さかった
・効果的な学校のリーダーシップは、社会的期待や規律規範を明確にし、一貫して実施することによって、安全で協力的な環境を確立することに重点を置き、それを成功させることによって際立つことが示唆される(Heck et al., 1991)
・教師、保護者、生徒を対象にしたある研究(Heck, 2000)では、安全、快適、配慮されていると感じる度合いについて、3つのグループすべてに一貫した報告があり、これらの反応が肯定的であればあるほど、学校の質は高くなり、生徒の背景要因をコントロールした場合の学力レベルも高くなる
・成績の良い学校の指導者は、成績の悪い学校の指導者よりも、教育関係者や保護者からの不当な圧力から教師を守ることに、有意に成功していると教師は判断しており(Heck, 1992; Heck et al., 1991)、この知見は、特に高校で顕著であった
・秩序があり、協力的な環境は、スタッフの対立に迅速かつ効果的に対処できる環境でもある
・ある研究では、対立を長引かせるのではなく、対立を発見し解決する校長の能力は、数学における生徒の学習成績と強く関連していた(Eberts & Stone, 1986)
・もう1つの変数は、教師と校長の対立を発見し解決する能力に関する認識の違いを測定するもので、成績の高い学校と低い学校をさらに強く区別した
スクール・リーダーシップやインストラクショナル・リーダーシップという概念は新しい発見でした。
そして、スクール・リーダーシップと生徒の成果との関連性を検討した研究は30件に満たないほど少ないという事実にも驚きました。これについては、Robinson(2006)が、リーダーシップ研究がいかに教育や学習から根本的に切り離されているかを示していると指摘しています。
研究が少ないということは、おそらく適切なリーダーシップを発揮できていない学校が多いということでもありそうです。
研究が少ないということは、おそらく適切なリーダーシップを発揮できていない学校が多いということでもありそうです。
生徒・学生のリーダーシップばかり注目していましたが、教員側のリーダーシップに着目してみるのも面白そうだなと感じました。色々調べてみよう。
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