リーダーシップ開発研修についての論文335本をメタ分析した論文をレビューします。
論文はこちら(被引用数:710件 (2024年5月15日時点))
Lacerenza, C. N., Reyes, D. L., Marlow, S. L., Joseph, D. L., & Salas, E. (2017). Leadership training design, delivery, and implementation: A meta-analysis. Journal of applied psychology, 102(12), 1686.
1951~2014年の組織におけるリーダーシップ開発研修についての355本の論文をメタ分析しています。
類似の内容のメタ分析を行った論文は過去にもいくつかあるようですが、以下の2点が当論文との差別化ポイントとのこと。
・調査論文数(過去に発表された最大のメタ分析の論文の3倍以上)
・リーダーシップ研修プログラムの効果に関するモデレーター数(8⇨15)
当論文では、メタ分析によって、リーダーシップ開発研修のブラックボックスを解き明かし、以下の2つの大きな問いに挑んだ内容となっています。
(a)リーダーシップ研修プログラムはどの程度効果的なのか?
(b)効果を最大化するためには、リーダーシップ研修プログラムをどのように設計、実施、実施すべきなのか?
結果についてはこのような形となりました。
(a)リーダーシップ研修プログラムはどの程度効果的なのか
リーダーシップ研修は従来考えられていたよりもはるかに効果的であり、有用性と満足感の認識、学習、職務への転移、組織の成果、部下の成果の改善につながることが示唆されました。
これは、「リーダーシップ研修が、リーダーシップ開発に失敗する1番の理由である」というMyatt(2012)の論調に真っ向から対立する結果でした。(個人的には嬉しい内容)
また、120の効果量のうち、7つを除くすべての効果量がゼロから有意に異なる正の値であり、リーダーシップ研修は、その設計、実施、実施要素にかかわらず、成果を改善する可能性が高いことが示されたました。
(b)効果を最大化するためには、リーダーシップ研修プログラムをどのように設計、実施、実施すべきなのか?
今回の結果から、最も効果的な内容となるリーダーシップ研修のポイントが述べられています。それは、
・研修プログラムがニーズ分析に基づき
・フィードバックを取り入れ
・複数の実施方法(特に実践)を用い
・間隔をあけて研修セッションを実施し(Spacing Effect)
・現場に近い場所で実施し
・自己管理ではない対面式で実施する
場合であるとのことです。表8でまとめられていたので、日本語訳しました。
この結論に行きつくまでに、12個の仮説に対する調査があり、以下に簡潔にまとめます。
(⚪︎×△は文章の内容から森が独断で付けています)
リーダーシップ研修の設計、提供、実施
Kirkpatrick(1959)の研修評価に従い、以下の4点で仮説を立てています。
・反応:仮説1a:LS研修プログラムは、研修生の反応にプラスの効果をもたらす
・学習:仮説1b:LS研修プログラムは、情意的、認知的、技能的な学習効果にプラスの効果をもたらす
・転移:仮説1c:LS研修プログラムは、訓練された感情、認知、スキルに基づく概念の転移をもたらす
・成果:仮説1d:LS研修プログラムは、組織と部下の成果にプラスの影響を与える
⇨⚪︎:リーダーシップ研修は、反応(0.63)、学習(0.73)、転移(0.82)、結果(0.72)の改善に効果的であることを示した。
トレーニングデザイン
仮説2:ニーズ分析に基づくLS研修プログラムは、ニーズ分析に基づかないプログラムよりも、研修生の再行動(H2a)、学習(H2b)、転移(H2c)、成果(H2d)において大きな改善を示す。
⇨⚪︎:ニーズ分析を含む研修プログラムは、ニーズ分析なしと報告された研修プログラムに比べて、学習と転移の両面で有意に強い効果を示した。
・研修の受講方針(Training attendance policy)
仮説3:自主的なリーダーシップ研修プログラムは、非自主的な研修プログラムよりも、受講者の反応(H3a)、学習(H3b)、転移(H3c)、成果(H3d)を高める
⇨△:学習は有意差なし、転移は自主的な参加の方が有意に強い効果、成果は非自主的な方が有意に強い効果
・スペーシング効果
仮説4:複数の研修セッションにまたがるLS研修プログラムは、1回の研修セッションでまとめられた研修プログラムと比較して、反応(H4a)、学習(H4b)、転移(H4c)、成果(H4d)に対してより大きな効果をもたらす
⇨⚪︎:複数のセッションにまたがるトレーニング・プログラムの方が、1回のまとまったトレーニング・セッションを含むトレーニング・プログラムよりも、有意に大きな効果量を示した。(仮説4cと4dは支持)しかし、学習についての有意差はなく、仮説4bは支持されなかった(仮説4aは調査できなかった)。
・研修生のリーダーシップのレベル
仮説5:ローレベルのリーダーに実施されたリーダーシップ研修プログラムは、ミドルレベルやハイレベルのリーダーに実施された研修プログラムよりも、反応(H5a)、学習(H5b)、転移(H5c)、成果(H5d) に大きな効果を示す。
⇨△:ローレベルのリーダーに提供された研修プログラムは、ハイレベルやミドルレベルのリーダーに提供された研修プログラムよりも、転移について有意に高い効果量が見られた。ハイレベルとミドルレベルのリーダーとの間には、有意な転移差はなかった。学習と成果については、ハイとミドル、ハイとロー、ミドルとローに有意差はなかった。
・研修講師
仮説6:自己管理型のリーダーシップ研修プログラムは、社内外のトレーナーによる研修プログラムよりも、反応(H6a)、学習(H6b)、転移(H6c)、成果(H6d)に対する効果が弱い。
⇨△:社内インストラクターを通じて提供されたプログラムは、自分で実施したプログラムよりも学習効果が有意に強いことが示された。しかし、外部講師によるプログラムと内部講師によるプログラム、または自己管理型プログラムと外部講師によるプログラムの間には、学習に関して有意差は見られなかった。さらに、外部講師によって提供されたプログラムは、自己管理型プログラムよりも、転移に関して有意に強い効果と関連していた。しかし、自己管理型プログラムと内部トレーナーによって提供されたプログラムの間には有意な差はなかった。また、社外トレーナーによるプログラムと社内トレーナーによるプログラムとの間でも、転移に有意差は見られなかった。最後に、成果については、自分で実施した研修プログラムと、社内トレーナーまたは社外トレーナーが実施した研修プログラムとの間に有意差はなかった。また、社外トレーナーによるプログラムと社内トレーナーによるプログラムとの間でも、成果に差は見られなかった。
トレーニングの提供および実施の特徴
・提供方法
仮説7:実践的手法のみを取り入れたリーダーシップ研修プログラムは、情報提供や実演的手法のみを取り入れた研修プログラムと比較して、研修生の反応(H7a)、学習(H7b)、転移(H7c)、成果(H7d)に対してより大きな効果をもたらす。
⇨△:情報ベースのプログラムは、実践ベースの方法を用いたプログラムよりも、学習に対して有意に強い効果を示したが、成果については逆のパターンが生じ、転移については有意な差は認められなかった。
仮説8:情報提供、実演、実践の3つの方法を取り入れたリーダーシップ研修プログラムは、1つの方法(例:情報提供のみ)または2つの方法(例:実演と情報提供)のみを取り入れた研修プログラムと比較して、反応(H8a)、学習(H8b)、転移(H8c)、成果(H8d)に対してより大きな効果を示す。
⇨⚪︎:情報、実演、実践を取り入れた研修プログラムは、情報のみのプログラムや実践を取り入れたプログラムよりも、学習に対して有意に大きな効果量を示した。同様に、3つの提供方法すべてを利用したプログラムは、情報提供と実践ベースの方法の両方を取り入れたプログラムと比較して、学習により強い効果を示した。しかし、情報、実演、実践を取り入れたプログラムを、情報と実演を利用したプログラムと比較した場合、学習における有意差は認められなかった。
転移については、情報、実演、実践をベースとした方法を取り入れたプログラムは、実践のみを取り入れたプログラム、および情報をベースとしたプログラム と比較した場合、有意に強い効果を示した。これと同じパターンが、3つの転移方法すべてを用いたプログラムを、情報と実践に基づく方法の組み合わせを用いたプログラム、実演と実践に基づく方法と比較した場合にも見られた。
成果については、3つの方法すべてを取り入れたプログラムは、情報ベースの方法のみを用いたプログラムと比較して、より強い効果量を示した。しかし、情報、実演、実践を利用したプログラムは、情報と実践を利用した介入と比較して有意差はなく、また実践のみを利用したプログラムも同様であった。
・フィードバック
仮説9:フィードバックの使用を報告しているリーダーシップ研修プログラムは、フィードバックの使用を報告していないプログラムと比較して、研修生の反応(H9a)、学習(H9b)、転移(H9c)、成果(H9d)に対してより大きな効果を示す。
⇨△:フィードバックを含むプログラムは、フィードバックを含まないプログラムに比べて、転移に対する効果量が有意に高かったが、学習、成果については有意差はなかった。
仮説10:360度フィードバックの使用を報告するリーダーシップ研修プログラムは、単一ソース・フィードバックと比較して、研修生の反応(H10a)、学習(H10b)、転移(H10c)、成果(H10d)に大きな効果を示す。
⇨×:360度フィードバックを使用するプログラムと、単一ソースのフィードバックを使用するプログラムとの間に有意な差が見られなかった。
・トレーニングの場所
仮説11:オンサイトで開催されるプログラムは、オフサイトのプログラムと比較して、研修生の反応(H11a)、学習(H11b)、転移(H11c)、成果(H11d)に大きな効果を示す。
⇨△:オンサイトで実施された研修プログラムは、オフサイトで実施された研修プログラムよりも、成果に対して有意に強い効果を示したが、学習、転移については有意差はなかった。
・研修の設定
仮説12:対面式のリーダーシップ研修プログラムは、バーチャルな研修プログラムよりも、研修生の肯定的な反応(H12a)、学習(H12b)、転移(H12c)、成果(H12d)をより大きく向上させる。
⇨△:対面式プログラムの方が、バーチャル・プログラムよりも、転移に関して有意に強い効果量を示したが、学習に関しては有意差はなかった。なお、一次研究の数が少ないため、この仮説は成果や反応、成果を評価することができなかった。
ここまで。
学びてんこ盛りの非常に良い論文でした。
本論文を読むだけでも、リーダーシップ開発研修のポイントをいくつも押さえることができると思います。
早速、チームでも共有させていただきました。どんどん実践に反映させていこう。
Table 9については、効果的な研修デザインの具体例が示されていますので、こちらも定期的にチェックして頭に叩き込もうと思います
【メモ】
Lacerenzaら(2017)の調査結果によると、学識経験者と実務家のチームによって評価されたリーダーシップ研修プログラムは、学識経験者や業界の専門家のみによって評価された研修プログラムと比較して、有意に高い学習効果と転移効果を示した。
【リーダーシップのtrickle-up/down effect】
・trickle-up effect:リーダーシップの向上が組織レベルに広がる効果
・trickle-down effect:リーダーシップの向上が部下に波及する効果
論文はこちら(被引用数:710件 (2024年5月15日時点))
Lacerenza, C. N., Reyes, D. L., Marlow, S. L., Joseph, D. L., & Salas, E. (2017). Leadership training design, delivery, and implementation: A meta-analysis. Journal of applied psychology, 102(12), 1686.
1951~2014年の組織におけるリーダーシップ開発研修についての355本の論文をメタ分析しています。
類似の内容のメタ分析を行った論文は過去にもいくつかあるようですが、以下の2点が当論文との差別化ポイントとのこと。
・調査論文数(過去に発表された最大のメタ分析の論文の3倍以上)
・リーダーシップ研修プログラムの効果に関するモデレーター数(8⇨15)
当論文では、メタ分析によって、リーダーシップ開発研修のブラックボックスを解き明かし、以下の2つの大きな問いに挑んだ内容となっています。
(a)リーダーシップ研修プログラムはどの程度効果的なのか?
(b)効果を最大化するためには、リーダーシップ研修プログラムをどのように設計、実施、実施すべきなのか?
結果についてはこのような形となりました。
(a)リーダーシップ研修プログラムはどの程度効果的なのか
リーダーシップ研修は従来考えられていたよりもはるかに効果的であり、有用性と満足感の認識、学習、職務への転移、組織の成果、部下の成果の改善につながることが示唆されました。
これは、「リーダーシップ研修が、リーダーシップ開発に失敗する1番の理由である」というMyatt(2012)の論調に真っ向から対立する結果でした。(個人的には嬉しい内容)
また、120の効果量のうち、7つを除くすべての効果量がゼロから有意に異なる正の値であり、リーダーシップ研修は、その設計、実施、実施要素にかかわらず、成果を改善する可能性が高いことが示されたました。
(b)効果を最大化するためには、リーダーシップ研修プログラムをどのように設計、実施、実施すべきなのか?
今回の結果から、最も効果的な内容となるリーダーシップ研修のポイントが述べられています。それは、
・研修プログラムがニーズ分析に基づき
・フィードバックを取り入れ
・複数の実施方法(特に実践)を用い
・間隔をあけて研修セッションを実施し(Spacing Effect)
・現場に近い場所で実施し
・自己管理ではない対面式で実施する
場合であるとのことです。表8でまとめられていたので、日本語訳しました。
この結論に行きつくまでに、12個の仮説に対する調査があり、以下に簡潔にまとめます。
(⚪︎×△は文章の内容から森が独断で付けています)
リーダーシップ研修の設計、提供、実施
Kirkpatrick(1959)の研修評価に従い、以下の4点で仮説を立てています。
・反応:仮説1a:LS研修プログラムは、研修生の反応にプラスの効果をもたらす
・学習:仮説1b:LS研修プログラムは、情意的、認知的、技能的な学習効果にプラスの効果をもたらす
・転移:仮説1c:LS研修プログラムは、訓練された感情、認知、スキルに基づく概念の転移をもたらす
・成果:仮説1d:LS研修プログラムは、組織と部下の成果にプラスの影響を与える
⇨⚪︎:リーダーシップ研修は、反応(0.63)、学習(0.73)、転移(0.82)、結果(0.72)の改善に効果的であることを示した。
トレーニングデザイン
仮説2:ニーズ分析に基づくLS研修プログラムは、ニーズ分析に基づかないプログラムよりも、研修生の再行動(H2a)、学習(H2b)、転移(H2c)、成果(H2d)において大きな改善を示す。
⇨⚪︎:ニーズ分析を含む研修プログラムは、ニーズ分析なしと報告された研修プログラムに比べて、学習と転移の両面で有意に強い効果を示した。
・研修の受講方針(Training attendance policy)
仮説3:自主的なリーダーシップ研修プログラムは、非自主的な研修プログラムよりも、受講者の反応(H3a)、学習(H3b)、転移(H3c)、成果(H3d)を高める
⇨△:学習は有意差なし、転移は自主的な参加の方が有意に強い効果、成果は非自主的な方が有意に強い効果
・スペーシング効果
仮説4:複数の研修セッションにまたがるLS研修プログラムは、1回の研修セッションでまとめられた研修プログラムと比較して、反応(H4a)、学習(H4b)、転移(H4c)、成果(H4d)に対してより大きな効果をもたらす
⇨⚪︎:複数のセッションにまたがるトレーニング・プログラムの方が、1回のまとまったトレーニング・セッションを含むトレーニング・プログラムよりも、有意に大きな効果量を示した。(仮説4cと4dは支持)しかし、学習についての有意差はなく、仮説4bは支持されなかった(仮説4aは調査できなかった)。
・研修生のリーダーシップのレベル
仮説5:ローレベルのリーダーに実施されたリーダーシップ研修プログラムは、ミドルレベルやハイレベルのリーダーに実施された研修プログラムよりも、反応(H5a)、学習(H5b)、転移(H5c)、成果(H5d) に大きな効果を示す。
⇨△:ローレベルのリーダーに提供された研修プログラムは、ハイレベルやミドルレベルのリーダーに提供された研修プログラムよりも、転移について有意に高い効果量が見られた。ハイレベルとミドルレベルのリーダーとの間には、有意な転移差はなかった。学習と成果については、ハイとミドル、ハイとロー、ミドルとローに有意差はなかった。
・研修講師
仮説6:自己管理型のリーダーシップ研修プログラムは、社内外のトレーナーによる研修プログラムよりも、反応(H6a)、学習(H6b)、転移(H6c)、成果(H6d)に対する効果が弱い。
⇨△:社内インストラクターを通じて提供されたプログラムは、自分で実施したプログラムよりも学習効果が有意に強いことが示された。しかし、外部講師によるプログラムと内部講師によるプログラム、または自己管理型プログラムと外部講師によるプログラムの間には、学習に関して有意差は見られなかった。さらに、外部講師によって提供されたプログラムは、自己管理型プログラムよりも、転移に関して有意に強い効果と関連していた。しかし、自己管理型プログラムと内部トレーナーによって提供されたプログラムの間には有意な差はなかった。また、社外トレーナーによるプログラムと社内トレーナーによるプログラムとの間でも、転移に有意差は見られなかった。最後に、成果については、自分で実施した研修プログラムと、社内トレーナーまたは社外トレーナーが実施した研修プログラムとの間に有意差はなかった。また、社外トレーナーによるプログラムと社内トレーナーによるプログラムとの間でも、成果に差は見られなかった。
トレーニングの提供および実施の特徴
・提供方法
仮説7:実践的手法のみを取り入れたリーダーシップ研修プログラムは、情報提供や実演的手法のみを取り入れた研修プログラムと比較して、研修生の反応(H7a)、学習(H7b)、転移(H7c)、成果(H7d)に対してより大きな効果をもたらす。
⇨△:情報ベースのプログラムは、実践ベースの方法を用いたプログラムよりも、学習に対して有意に強い効果を示したが、成果については逆のパターンが生じ、転移については有意な差は認められなかった。
仮説8:情報提供、実演、実践の3つの方法を取り入れたリーダーシップ研修プログラムは、1つの方法(例:情報提供のみ)または2つの方法(例:実演と情報提供)のみを取り入れた研修プログラムと比較して、反応(H8a)、学習(H8b)、転移(H8c)、成果(H8d)に対してより大きな効果を示す。
⇨⚪︎:情報、実演、実践を取り入れた研修プログラムは、情報のみのプログラムや実践を取り入れたプログラムよりも、学習に対して有意に大きな効果量を示した。同様に、3つの提供方法すべてを利用したプログラムは、情報提供と実践ベースの方法の両方を取り入れたプログラムと比較して、学習により強い効果を示した。しかし、情報、実演、実践を取り入れたプログラムを、情報と実演を利用したプログラムと比較した場合、学習における有意差は認められなかった。
転移については、情報、実演、実践をベースとした方法を取り入れたプログラムは、実践のみを取り入れたプログラム、および情報をベースとしたプログラム と比較した場合、有意に強い効果を示した。これと同じパターンが、3つの転移方法すべてを用いたプログラムを、情報と実践に基づく方法の組み合わせを用いたプログラム、実演と実践に基づく方法と比較した場合にも見られた。
成果については、3つの方法すべてを取り入れたプログラムは、情報ベースの方法のみを用いたプログラムと比較して、より強い効果量を示した。しかし、情報、実演、実践を利用したプログラムは、情報と実践を利用した介入と比較して有意差はなく、また実践のみを利用したプログラムも同様であった。
・フィードバック
仮説9:フィードバックの使用を報告しているリーダーシップ研修プログラムは、フィードバックの使用を報告していないプログラムと比較して、研修生の反応(H9a)、学習(H9b)、転移(H9c)、成果(H9d)に対してより大きな効果を示す。
⇨△:フィードバックを含むプログラムは、フィードバックを含まないプログラムに比べて、転移に対する効果量が有意に高かったが、学習、成果については有意差はなかった。
仮説10:360度フィードバックの使用を報告するリーダーシップ研修プログラムは、単一ソース・フィードバックと比較して、研修生の反応(H10a)、学習(H10b)、転移(H10c)、成果(H10d)に大きな効果を示す。
⇨×:360度フィードバックを使用するプログラムと、単一ソースのフィードバックを使用するプログラムとの間に有意な差が見られなかった。
・トレーニングの場所
仮説11:オンサイトで開催されるプログラムは、オフサイトのプログラムと比較して、研修生の反応(H11a)、学習(H11b)、転移(H11c)、成果(H11d)に大きな効果を示す。
⇨△:オンサイトで実施された研修プログラムは、オフサイトで実施された研修プログラムよりも、成果に対して有意に強い効果を示したが、学習、転移については有意差はなかった。
・研修の設定
仮説12:対面式のリーダーシップ研修プログラムは、バーチャルな研修プログラムよりも、研修生の肯定的な反応(H12a)、学習(H12b)、転移(H12c)、成果(H12d)をより大きく向上させる。
⇨△:対面式プログラムの方が、バーチャル・プログラムよりも、転移に関して有意に強い効果量を示したが、学習に関しては有意差はなかった。なお、一次研究の数が少ないため、この仮説は成果や反応、成果を評価することができなかった。
ここまで。
学びてんこ盛りの非常に良い論文でした。
本論文を読むだけでも、リーダーシップ開発研修のポイントをいくつも押さえることができると思います。
早速、チームでも共有させていただきました。どんどん実践に反映させていこう。
Table 9については、効果的な研修デザインの具体例が示されていますので、こちらも定期的にチェックして頭に叩き込もうと思います
【メモ】
Lacerenzaら(2017)の調査結果によると、学識経験者と実務家のチームによって評価されたリーダーシップ研修プログラムは、学識経験者や業界の専門家のみによって評価された研修プログラムと比較して、有意に高い学習効果と転移効果を示した。
【リーダーシップのtrickle-up/down effect】
・trickle-up effect:リーダーシップの向上が組織レベルに広がる効果
・trickle-down effect:リーダーシップの向上が部下に波及する効果
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