子ども・青年を対象とした社会性と情動のコンピテンシーを測定するための尺度を開発・評価した論文をレビューします。
論文はこちら(被引用数:215件 (2024年9月12日時点))
Zhou, M., & Ee, J. (2012). Development and validation of the social emotional competence questionnaire (SECQ).
近年、社会性や情動のコンピテンシーを育む社会情動的学習(SEL:Social emotional learning)は、基礎教育における重要な要素として、教育者や研究者の注目を集めています。
子ども達に適切な介入を行うためには、まず、社会情動的能力(SEC:social emotional competence )を適切に計測する必要があり、当論文では、そのために必要なSECに関する信頼性が高く妥当な尺度の開発と評価についてまとめられています。
作成された尺度、SECQ(Social-Emotional Competence Questionnaire:社会情動的コンピテンスに関する質問紙)は、子どもや青年(3年生から12年生(日本では高校3年生)が、自分自身や他者をどのように意識しているか、また、家庭、学校、地域社会といった状況に、個人的、社会的、倫理的にどのように対応しているかを評価するために作成されました。
尺度のベースとなったのは、CASEL (Collaborative for Academic, Social, and Emotional Learning) モデル(2008)。これは、社会的・情緒的コンピテンスの最も重要な側面をカバーする、まとまりのある包括的なSELモデルであり、理論的世界と実践的世界の架け橋として機能するため採用したそうです。
CASEL(2008)モデルを下敷きに尺度を開発し、信頼性や妥当性等々について分析した結果、有効な尺度として有望であることが示されました。
・研究1:構成概念妥当性のエビデンスを提供するために確認的因子分析
・研究2:小学生のサンプルに最も適合するモデルが、中等学校のサンプルデータで検証できるかを検証
・研究3:異なるサンプルで信頼性を再現できるかどうかを検討
・研究4:SECの測定値を学業成績と関連付けることで、測定値の予測的妥当性を証明
細かな結果については以下の通り。
作成された尺度:SECQはこちら。(Appendixに載せてくれていました)
論文はこちら(被引用数:215件 (2024年9月12日時点))
Zhou, M., & Ee, J. (2012). Development and validation of the social emotional competence questionnaire (SECQ).
近年、社会性や情動のコンピテンシーを育む社会情動的学習(SEL:Social emotional learning)は、基礎教育における重要な要素として、教育者や研究者の注目を集めています。
子ども達に適切な介入を行うためには、まず、社会情動的能力(SEC:social emotional competence )を適切に計測する必要があり、当論文では、そのために必要なSECに関する信頼性が高く妥当な尺度の開発と評価についてまとめられています。
作成された尺度、SECQ(Social-Emotional Competence Questionnaire:社会情動的コンピテンスに関する質問紙)は、子どもや青年(3年生から12年生(日本では高校3年生)が、自分自身や他者をどのように意識しているか、また、家庭、学校、地域社会といった状況に、個人的、社会的、倫理的にどのように対応しているかを評価するために作成されました。
尺度のベースとなったのは、CASEL (Collaborative for Academic, Social, and Emotional Learning) モデル(2008)。これは、社会的・情緒的コンピテンスの最も重要な側面をカバーする、まとまりのある包括的なSELモデルであり、理論的世界と実践的世界の架け橋として機能するため採用したそうです。
CASEL(2008)モデルを下敷きに尺度を開発し、信頼性や妥当性等々について分析した結果、有効な尺度として有望であることが示されました。
・研究1:構成概念妥当性のエビデンスを提供するために確認的因子分析
・研究2:小学生のサンプルに最も適合するモデルが、中等学校のサンプルデータで検証できるかを検証
・研究3:異なるサンプルで信頼性を再現できるかどうかを検討
・研究4:SECの測定値を学業成績と関連付けることで、測定値の予測的妥当性を証明
細かな結果については以下の通り。
・初等・中等学校の両方のサンプルを使用し、CFAの結果、両サンプルとも概ね許容できるモデル適合を示した
・しかし、モデル内の5因子に対する各項目の因子負荷量は、特に小学校サンプル(Study1)では0.55~0.60が大半を占めたのに対し、中学校サンプル(Study2)では0.60~0.70が大半を占め、同様の所見は、内的一貫性係数においても観察された ※尺度開発の目的で使用されるクロンバックのアルファ推定値は、.70以上であるべき(Nunnally & Bernstein, 1994)
・2つの中等学校サンプル(研究2と研究3)の尺度はカットオフ・スコアの要件を満たしており、それぞれの尺度の項目の均質性を示唆している(Henson, 2001)が、小学校のサンプル(研究1)では、3つの下位尺度(自己認識、自己管理、関係管理)がカットオフ・スコアを下回った
・これらの下位尺度の信頼性が低いのは、項目の生成や尺度構成に問題があるのではなく、むしろ、子どもたちが自己と他者を区別することによって、感情的な状況や学業的な状況にどのように対処するかという度合いに関する質問に答えることに困難があることを明らかにしている可能性があると我々は主張する
・しかし、モデル内の5因子に対する各項目の因子負荷量は、特に小学校サンプル(Study1)では0.55~0.60が大半を占めたのに対し、中学校サンプル(Study2)では0.60~0.70が大半を占め、同様の所見は、内的一貫性係数においても観察された ※尺度開発の目的で使用されるクロンバックのアルファ推定値は、.70以上であるべき(Nunnally & Bernstein, 1994)
・2つの中等学校サンプル(研究2と研究3)の尺度はカットオフ・スコアの要件を満たしており、それぞれの尺度の項目の均質性を示唆している(Henson, 2001)が、小学校のサンプル(研究1)では、3つの下位尺度(自己認識、自己管理、関係管理)がカットオフ・スコアを下回った
・これらの下位尺度の信頼性が低いのは、項目の生成や尺度構成に問題があるのではなく、むしろ、子どもたちが自己と他者を区別することによって、感情的な状況や学業的な状況にどのように対処するかという度合いに関する質問に答えることに困難があることを明らかにしている可能性があると我々は主張する
・SECの様々な領域における小学生の得点は、それほど強くはないが、教科の成績と正の相関があった
・さらに回帰分析の結果、女児の人間関係管理は他のSEC構成要素よりも学業成績の強い予測因子であることが示された
一方、注意すべき点としても3点述べられています。
・さらに回帰分析の結果、女児の人間関係管理は他のSEC構成要素よりも学業成績の強い予測因子であることが示された
一方、注意すべき点としても3点述べられています。
①SECにはCASEL(2008)が提示したもの以外に、別の運用方法がある。同じ名前の構成概念でも、モデルによって概念化が異なる可能性がある。
②SECQは、親や同僚、教師からの客観的な尺度を用いず、生徒からの限られた自己報告項目で評価した。面接、観察、行動測定などの別の評価技法を用いれば、本研究の結果を実証するために、他の具体的な要因を明らかにできる可能性がある。複数の尺度、情報源、構造、文脈による評価は、児童・青少年の社会情緒的機能に関する判断の信頼性に寄与するであろう(Bracken, Keith, & Walker, 1998)
③この尺度はシンガポールの小中学生を対象に検証されたものであるため、他の文化圏の生徒を対象としたより異質なサンプルでこの結果を再現する必要がある。
②SECQは、親や同僚、教師からの客観的な尺度を用いず、生徒からの限られた自己報告項目で評価した。面接、観察、行動測定などの別の評価技法を用いれば、本研究の結果を実証するために、他の具体的な要因を明らかにできる可能性がある。複数の尺度、情報源、構造、文脈による評価は、児童・青少年の社会情緒的機能に関する判断の信頼性に寄与するであろう(Bracken, Keith, & Walker, 1998)
③この尺度はシンガポールの小中学生を対象に検証されたものであるため、他の文化圏の生徒を対象としたより異質なサンプルでこの結果を再現する必要がある。
作成された尺度:SECQはこちら。(Appendixに載せてくれていました)
社会情動的コンピテンシーを計測する際には是非参考にさせてもらいます。

【CASELモデルの2つのレベル】
◆自己管理
・自分自身の衝動や感情を管理する能力に関するもの
・感情の自己調整は、親密な人間関係を築き、仕事で成功し、身体の健康を維持するために重要
・感情を刺激するような遊びの状況で自分の感情体験を管理できる子どもは、仲間関係でより成功する(Hubbard and Coie, 1994)
・対照的に、そのような経験を建設的に管理する方法なしに、日常的に激しい感情を経験する子どもは、しばしば社会的に不適切な行動をとり、仲間内での地位が低くなる危険性がある(Eisenberg et al., 1995)
・学校生活においても、感情をコントロールできない生徒は、明晰に物事を考えることができず、成績も上がりにくい(Weissberg & Elias, 1993)
◆社会的認識
・他人の合図、感情を読み取り、適切に対応する能力のこと(Frey, Hirschstein, & Guzzo, 2000)
・共感と密接に結びついており、他者の感情状態を共有することで、その人とよりよく関わることができる能力である(Eisenberg, 1986)
・共感性とは、思考や感情を解釈する際に、他者の視点を理解し、複雑な問題の繊細さを認識し、あいまいさを明らかにしようとする能力
・研究によると、共感的な子どもは、注意集中力、知覚感受性、抑制的制御(Miller & Jansen op de Haar, 1997)、利他的行動(Ukegawa, 1996)、親社会的行動(Litvack-Miller, McDougall, & Romney, 1997)をより多く示す傾向がある

【CASELモデルの2つのレベル】
・個人内レベル:自分の感情を理解し調整すること
・個人間レベル:他者の感情を理解し、他者との関係を築き、責任ある意思決定を行うスキル
【CASELモデルの5つの領域】
・自己認識、社会認識、自己管理、人間関係管理、責任ある意思決定の5つの領域がある
・個人間レベル:他者の感情を理解し、他者との関係を築き、責任ある意思決定を行うスキル
【CASELモデルの5つの領域】
・自己認識、社会認識、自己管理、人間関係管理、責任ある意思決定の5つの領域がある
◆自己認識
・自分自身の長所や短所、感情や情動を認識・識別し、それらが自分のパフォーマンスにどのように影響するかを理解するスキルが含まれる(Beland, 2007; Zins & Elias, 2006)
・自己開発における特定の段階を示す認知能力である(Asendorpf & Baudonnière, 1993)
・自分の長所や感情を自覚している生徒は、内省的である可能性が高く、それゆえに自分自身の状態を認識し、感情的な反応の理由を明確にすることができる
・Carver and Scheier (1981)が主張したように、自己認識の状態は、自己調整メカニズムに関与するために必要
・生徒が自分の感情をメタ認知的に認識できるように育つことができれば、感情をよりよく自己制御できるようになり、その結果、人生においてより責任ある意思決定ができるようになる可能性が高い。
・自分自身の長所や短所、感情や情動を認識・識別し、それらが自分のパフォーマンスにどのように影響するかを理解するスキルが含まれる(Beland, 2007; Zins & Elias, 2006)
・自己開発における特定の段階を示す認知能力である(Asendorpf & Baudonnière, 1993)
・自分の長所や感情を自覚している生徒は、内省的である可能性が高く、それゆえに自分自身の状態を認識し、感情的な反応の理由を明確にすることができる
・Carver and Scheier (1981)が主張したように、自己認識の状態は、自己調整メカニズムに関与するために必要
・生徒が自分の感情をメタ認知的に認識できるように育つことができれば、感情をよりよく自己制御できるようになり、その結果、人生においてより責任ある意思決定ができるようになる可能性が高い。
◆自己管理
・自分自身の衝動や感情を管理する能力に関するもの
・感情の自己調整は、親密な人間関係を築き、仕事で成功し、身体の健康を維持するために重要
・感情を刺激するような遊びの状況で自分の感情体験を管理できる子どもは、仲間関係でより成功する(Hubbard and Coie, 1994)
・対照的に、そのような経験を建設的に管理する方法なしに、日常的に激しい感情を経験する子どもは、しばしば社会的に不適切な行動をとり、仲間内での地位が低くなる危険性がある(Eisenberg et al., 1995)
・学校生活においても、感情をコントロールできない生徒は、明晰に物事を考えることができず、成績も上がりにくい(Weissberg & Elias, 1993)
◆社会的認識
・他人の合図、感情を読み取り、適切に対応する能力のこと(Frey, Hirschstein, & Guzzo, 2000)
・共感と密接に結びついており、他者の感情状態を共有することで、その人とよりよく関わることができる能力である(Eisenberg, 1986)
・共感性とは、思考や感情を解釈する際に、他者の視点を理解し、複雑な問題の繊細さを認識し、あいまいさを明らかにしようとする能力
・研究によると、共感的な子どもは、注意集中力、知覚感受性、抑制的制御(Miller & Jansen op de Haar, 1997)、利他的行動(Ukegawa, 1996)、親社会的行動(Litvack-Miller, McDougall, & Romney, 1997)をより多く示す傾向がある
◆人間関係の管理
・仲間から拒絶され、孤独感や社会的孤立を経験し、より不仲な仲間に属する子どもは、それ自身が学業活動から離脱し、最終的には不登校になる可能性が高い(Sage & Kindermann, 1999; Wentzel, 1999)
・仲間との間に安心感を感じている中学1年生と中学2年生は、アイデンティティの統合と一般的な自尊心が高い(Ryan and colleagues, 1994)
◆責任ある意思決定
・倫理的、安全性、社会的要因を考慮して意思決定を行う能力のことで、日々の学業や社会的状況に責任を持って対処し、学校や地域社会の幸福に貢献できるようにすること(CASEL, 2003)
・メタ認知、意思決定スタイル、意思決定課題の成績の間には、有意な相関関係が見いだされている(Ormond et al., 1991)
・責任ある意思決定には、他者に対する社会的責任感の構築を重視した意思決定の訓練も必要である(CASEL, 2003)
・仲間から拒絶され、孤独感や社会的孤立を経験し、より不仲な仲間に属する子どもは、それ自身が学業活動から離脱し、最終的には不登校になる可能性が高い(Sage & Kindermann, 1999; Wentzel, 1999)
・仲間との間に安心感を感じている中学1年生と中学2年生は、アイデンティティの統合と一般的な自尊心が高い(Ryan and colleagues, 1994)
◆責任ある意思決定
・倫理的、安全性、社会的要因を考慮して意思決定を行う能力のことで、日々の学業や社会的状況に責任を持って対処し、学校や地域社会の幸福に貢献できるようにすること(CASEL, 2003)
・メタ認知、意思決定スタイル、意思決定課題の成績の間には、有意な相関関係が見いだされている(Ormond et al., 1991)
・責任ある意思決定には、他者に対する社会的責任感の構築を重視した意思決定の訓練も必要である(CASEL, 2003)
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