大学の後期の授業が始まりました。
後期に担当している授業のひとつがサービス・ラーニングなので、それに関する論文を色々見ていたら興味深い内容こちらでまとめたいと思います。
引用した論文はこちら(被引用数:697件 (2024年9月27日時点)
Morton, K. (1995). The irony of service: Charity, project and social change in service-learning. Ann Arbor, MI: Michigan Publishing, University of Michigan Library.
こちらの論文に「サービスの3つのパラダイムにおける重要な要素」としてまとめられています。(FIGURE 1)

この図の通り、「関係構築への投資」と「根本原因の理解と解決へのコミットメントの度合い」の2軸で、サービス・ラーニングを3つのモデルに分類しています。
◆チャリティーモデル
・サービスの計画と提供は限定的・断片的
・意思決定プロセスは閉ざされている
・問題の構造的原因を理解したり影響を与えたりする試みはほぼない
◆プロジェクトモデル
・問題とその解決策を定義し、その解決策を達成するための綿密に練られた計画を実施することに重点を置く
・実施する活動と期限を提示し、 パフォーマンスを評価するために使用する測定基準を明記する
・プロジェクトモデルの3つの批判:①予期せぬ結果、②専門家の役割、③計画と行動の関係
①過去の成功モデルが新たな問題を引き起こす可能性がある
②専門家に依存する状況を作り出す可能性がある
③専門家は、主に理論を後から状況に適用することで、問題を定義しすが、それは与えられた現実の一部を照らし出すだけであり、この一部を全体と見誤る危険性がある
◆ソーシャルチェンジモデル
・チャリティーやプロジェクトのアプローチの限界を克服し、人々が自分自身で問題を解決できるようにすることで「ありのままの現実」に適応していくことを目指す
・ステークホルダーグループ間、またはステークホルダーグループとの関係構築、および「root causes」と呼ばれる玉ねぎの層を絶えずはぎ取っていく学習環境の創出
・「権力のない参加は詐欺である。それは皮肉屋を生み出す」
・実際、ほとんどの社会変革や社会変容のモデルは、直接的にも間接的にも、権力を持たない人々を政治的に強化することに焦点を当てている
質の高いサービス・ラーニングを設計し、実践していきたいと思っている自分にとって大きな気づきのある内容でした。
このチャリティモデルは、ロジャー・ハートの参画のはしごモデルで言うところのおかざり参画と近いものがあるなと思いました。一見、学習者はプロジェクトに参画しているように見えるけども、それは自らの意思ではなく、ただ受動的に参加している状態。そこには、ステークホルダー等との関係性構築の働きかけも、根本問題を解決しようとする意思もなく、深い学びもない。
ここから一段レベルが上がるのがプロジェクトモデル。自分たちで問題を定義し、解決のための計画を立ててプロジェクト達成に向けて動いていく。PBLとして学びの幅や深さが広がる。
そして、そのプロジェクトが本質的な意味で社会の変革に繋がる内容にまで昇華した時、筆者が目指しているソーシャルチェンジモデルになるのだと思いました。
正に今、ソーシャル・ラーニングの各プロジェクトをステークホルダーと調整している段階ですが、上述のモデルに留意しつつ、チャリティーモデルにならないように深い学びに繋がる学習環境を設計していきたいなと思います。
後期に担当している授業のひとつがサービス・ラーニングなので、それに関する論文を色々見ていたら興味深い内容こちらでまとめたいと思います。
引用した論文はこちら(被引用数:697件 (2024年9月27日時点)
Morton, K. (1995). The irony of service: Charity, project and social change in service-learning. Ann Arbor, MI: Michigan Publishing, University of Michigan Library.
こちらの論文に「サービスの3つのパラダイムにおける重要な要素」としてまとめられています。(FIGURE 1)

この図の通り、「関係構築への投資」と「根本原因の理解と解決へのコミットメントの度合い」の2軸で、サービス・ラーニングを3つのモデルに分類しています。
◆チャリティーモデル
・サービスの計画と提供は限定的・断片的
・意思決定プロセスは閉ざされている
・問題の構造的原因を理解したり影響を与えたりする試みはほぼない
◆プロジェクトモデル
・問題とその解決策を定義し、その解決策を達成するための綿密に練られた計画を実施することに重点を置く
・実施する活動と期限を提示し、 パフォーマンスを評価するために使用する測定基準を明記する
・プロジェクトモデルの3つの批判:①予期せぬ結果、②専門家の役割、③計画と行動の関係
①過去の成功モデルが新たな問題を引き起こす可能性がある
②専門家に依存する状況を作り出す可能性がある
③専門家は、主に理論を後から状況に適用することで、問題を定義しすが、それは与えられた現実の一部を照らし出すだけであり、この一部を全体と見誤る危険性がある
◆ソーシャルチェンジモデル
・チャリティーやプロジェクトのアプローチの限界を克服し、人々が自分自身で問題を解決できるようにすることで「ありのままの現実」に適応していくことを目指す
・ステークホルダーグループ間、またはステークホルダーグループとの関係構築、および「root causes」と呼ばれる玉ねぎの層を絶えずはぎ取っていく学習環境の創出
・「権力のない参加は詐欺である。それは皮肉屋を生み出す」
・実際、ほとんどの社会変革や社会変容のモデルは、直接的にも間接的にも、権力を持たない人々を政治的に強化することに焦点を当てている
質の高いサービス・ラーニングを設計し、実践していきたいと思っている自分にとって大きな気づきのある内容でした。
このチャリティモデルは、ロジャー・ハートの参画のはしごモデルで言うところのおかざり参画と近いものがあるなと思いました。一見、学習者はプロジェクトに参画しているように見えるけども、それは自らの意思ではなく、ただ受動的に参加している状態。そこには、ステークホルダー等との関係性構築の働きかけも、根本問題を解決しようとする意思もなく、深い学びもない。
ここから一段レベルが上がるのがプロジェクトモデル。自分たちで問題を定義し、解決のための計画を立ててプロジェクト達成に向けて動いていく。PBLとして学びの幅や深さが広がる。
そして、そのプロジェクトが本質的な意味で社会の変革に繋がる内容にまで昇華した時、筆者が目指しているソーシャルチェンジモデルになるのだと思いました。
正に今、ソーシャル・ラーニングの各プロジェクトをステークホルダーと調整している段階ですが、上述のモデルに留意しつつ、チャリティーモデルにならないように深い学びに繋がる学習環境を設計していきたいなと思います。
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