「生徒のメタ認知と社会情動的学習スキルとの関係」と「メタ認知が社会情動的学習スキルに与える影響を特定」した論文をレビューします。

論文はこちら(被引用数:24件 (2024年9月11日時点))
Yazgı Yanık, Z., & Afat, N. (2022). Metacognitive awareness as a predictor of social emotional learning skills in gifted and talented students. Gifted and Talented International, 37(2), 109-118.

内容をさらっとまとめます。

【目的】
・才能ある学生(gifted students)におけるメタ認知(metacognitive awareness)と社会情動的学習スキル(Social and emotional leaning skills)の関係を調査すること
・才能(Giftedness)の定義:「才能とは、高度な認知能力と高まった集中力が組み合わさった非同期性の発達である。この非同期性は、より高い知的能力とともに増加する」(Morelock, 1992, p. 14)

【対象】
・トルコのイスタンブールに住む才能ある中等教育段階の学生367人

【データ収集】
①メタ認知的意識尺度(Metacognitive Awareness Scale):メタ認知を測定
・開発者:Sperling et al., (2002)
・下位概念:認知知識と認知制御(この2つは関連しているため、単一の合計スコアで解釈)
・合計スコア:18から90の範囲(高スコア=MAが高いことを意味する)
②社会情動的学習スキル尺度(the Social Emotional Learning Skills Scale):SELスキルを評価
・開発者:Kabakçı and Owen (2010)
・下位概念:問題解決スキル、コミュニケーションスキル、自尊心向上スキル、ストレス対処
・リッカート尺度
・合計スコア:40〜160(高スコア=SELスキルが十分に高い)
③個人情報フォーム:スクリーンタイム、母親の教育レベル、学校での成功の認識に関するデータ収集

・メタ認知と社会情動的学習スキルの間に有意な正の関係があること、およびメタ認知的意識がこれらのスキルに対する予測力を持つことなど、研究の主な発見を強調
・母親の教育レベル、スクリーンタイム(デジタルデバイスを使用している時間)、学校での成功の認識など、いくつかの人口統計学的変数がメタ認知と社会情動的学習スキルの両方に与える影響について言及

【分析及び結果】
◆ANOVA および LSDテスト
・MA及びSELスキルレベルに有意な差を確認
・母親の教育レベル:高等教育レベルはMAおよびSELスキルが高いことと関連
table2

]・課外のスクリーンタイム:スクリーンタイムが短いことはMA及びSELスキルが高いことと関連
table3

・学校での成功の認識:成功の認識が高いことはMA及びSELスキルが高いことと関連
table4


◆ピアソン相関分析
・MAとSELスキルに有意な正の相関
table5

◆回帰分析
・SEL学習スキルの予測におけるMAの有効性が有意であることが判明
・MAはSELスキルのレベルの38%を説明→MAはSELスキルの重要な予測因子であると結論づけた
table6

【考察と結論】
・才能ある生徒のMAとSELスキルには高い正の相関があり、MAはSELスキルの有意な予測因子である
・スクリーンに費やす時間が短いこと、母親の学歴が高いこと、学校での成功に対する高い認識など、いくつかの要因が、才能ある生徒のメタ認知と社会情動的学習スキルに違いをもたらす結果となった

ここまで。
スクリーンタイムや母親の学歴、学校での成功に対する認識がメタ認知及び社会情動的スキルに与える影響については予想通りという感じでしたが、メタ認知と社会情動的スキルとの関連性がわかっただけでも大きな収穫でした。
社会情動的スキルを高めるために、メタ認知を高める要素を学びに含めると効果がありそうです。


【メモ】
「1990年代初頭にEQの概念が登場して以来、従来の知能の理解は限定的であり、認知的能力だけでなく、感情の経験、表現、制御も含めるよう拡大すべきであるという提案がなされた」(Zeidner & Matthews, 2017)
「ヴィゴツキーは、情動と認知の発達は関連していると説明した」(Silverman, 1997)

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