自己調整学習(Self-Regulated Learning, SRL)を促進するための介入が、小学生および中高生にどのような効果をもたらすかを検討したメタ分析の論文レビューです。
論文はこちら(被引用数:1,696件 (2025年1月21日時点))
Dignath, C., & Büttner, G. (2008). Components of fostering self-regulated learning among students. A meta-analysis on intervention studies at primary and secondary school level. Metacognition and learning, 3, 231-264.
初等・中等教育段階で実施される自己調整学習を促進するさまざまな介入が、生徒の学業成績(数学、読解力/作文力、その他の科目)、認知およびメタ認知方略の使用、動機づけの側面に与える影響について調査した研究です。1992年から2006年の基準に適合する論文をメタ分析し、自己調整学習のトレーニングの特性(理論的背景、方略の種類、トレーニングの実施者など)と特徴(評価手段、サンプルサイズなど)がトレーニングの効果に及ぼす影響について考察しています。
ポイントを抜粋してざっとまとめます。
基準を満たさない研究を除外した結果、74件の研究が抽出された。
生徒数は全体で8,691人であった。
357の効果量が抽出され、以下の3カテゴリーに分類された。

ここまで。
自己調整学習に関する多くの論文をレビューした内容だけあり、多くの気づきをいただきました。
印象的だったことがいくつかメモします。
まず、小学生と中学生では方略のベースが異なるということ。つまり、中学生はある程度方略を身につけていますが、小学生はそうではないということです。これについては、
・中学生は、メタ認知の知識と方略を身につけているため、メタ認知的な側面を重視したトレーニングが最も効果が高く、メタ認知的省察を含むトレーニングプログラムの方が効果がより高くなる
・既に身につけている方略の応用を詳しく説明することで、より洗練された方略の使用レベルに達する可能性が高い(Schneider and Sodian 1997)
との記載が印象的でした。一方、小学生は、
・まだメタ認知的方略を身につけていないため、メタ認知的方略をトレーニングした場合に効果がより高くなる
・メタ認知的およびメタ方略的知識がまだ発達段階にある幼い子ども(Kuhn 1999)は、方略レパートリーを広げるためには、純粋なメタ認知的方略の指導からより多くの恩恵を受ける可能性がある
成長するつれて、どの方略をいつどのように使用するかについてのメタ認知的な振り返りが独立して行われるようになるが、それができるようになるまでは学生により多くのサポートが必要(Zimmerman 2002)とのことで、自分なりの方略を身につけていくためのサポートは幼いうちから実施すべきだな感じました。
一方、達成観の違いについても興味深かったです。
「一般的に、生徒の達成に関する信念は年齢が上がるにつれて否定的になり、特に思春期初期に否定的になる」(Wigfield, 1994)とも言われていて、動機づけの方略や方略使用の動機づけは、中学生よりも小学生の方が効果があると考察されていました。ただ、これは年齢を重ねた学習者のFixed Mindset自体を変えていく必要性も同時に感じました。
最後に、すごく意外だったのは、小学生に対するグループワーク等の介入にネガティブな結果が見られということ。これについては、
・ネガティブな効果の理由として考えられるのは、児童たちがグループでの作業に慣れておらず、協調学習に関する十分な指導を受けていなかったことである
・効果が上がるのは、生徒たちがグループで作業を行う際の行動規範を知っている場合のみであり、生徒たちに体系的な指導を行わずに小グループでテーブルを囲ませるだけでは不十分である
と考察されています。
グループワーク慣れしていない学習者を対象とする場合には、行動規範や協調学習の指導も合わせて行うことを肝に銘じておこうと思います。一方、児童は幼年期中頃に協調性を身につけるため(Cooper et al. 1982)、高学年の生徒は協調的な作業についてすでに知っている可能性が高いという研究もあるので、学習者の状況を見ながら、必要に応じて実施することが良さそうです。
また、学校の先生よりも研究者による介入の方が効果が高い結果になっていた点も印象的でした。これは、自己調整学習についての理論や介入方法について先生方が十分に理解しておらず、研修等が不十分であることが挙げられていました。自己調整学習に限らず、様々な効果的な指導・介入が学校現場で展開されるよう、研究者と先生方の協力・連携が今後より求められるのだろうなと思いました。
以下、メモ
メタ認知的省察の促進(Butler 2002; Schraw 1998など)
・方略の使用方法を理解することが重要
・方略トレーニングでは、複数の方略の使用方法に関する情報、およびこれらの方略が最も有用となる状況に関する情報を統合し、それらを使用することの利点を説明すべきで
・生徒は、いつ、なぜ、どこで、これらの方略を適用するのかの知識も習得すべき(Veenman et al. 2006)。
論文はこちら(被引用数:1,696件 (2025年1月21日時点))
Dignath, C., & Büttner, G. (2008). Components of fostering self-regulated learning among students. A meta-analysis on intervention studies at primary and secondary school level. Metacognition and learning, 3, 231-264.
初等・中等教育段階で実施される自己調整学習を促進するさまざまな介入が、生徒の学業成績(数学、読解力/作文力、その他の科目)、認知およびメタ認知方略の使用、動機づけの側面に与える影響について調査した研究です。1992年から2006年の基準に適合する論文をメタ分析し、自己調整学習のトレーニングの特性(理論的背景、方略の種類、トレーニングの実施者など)と特徴(評価手段、サンプルサイズなど)がトレーニングの効果に及ぼす影響について考察しています。
ポイントを抜粋してざっとまとめます。
RQ
本メタ分析の目的は、自己調整学習に関する介入研究をレビューし、以下の研究課題を調査すること
1. 小中学生は、自己調整学習を促進することを目的とした介入から利益を得るか、また、両グループのうちどちらがパフォーマンス、方略の使用、または動機づけに関してより大きな利益を得るか?
2. 介入プログラムを特に効果的なものにするトレーニングの特徴はあるか、また、その特徴はどのようなものか?
a. 介入プログラムがどの理論的根拠に基づいて開発されたかによって違いが生じるか?
b. 認知的、メタ認知的、または動機づけ的な方略の指導の方がより効果的か?
c. メタ認知的省察も促進する場合、介入プログラムはより成功するか?
d. 介入が実施される教科の範囲によって違いが生じるか?
e. 介入は、研究者または教師によって指導された場合、より成功するか?
f. 介入の期間は効果に影響を与えるか?
g. 介入の評価に用いられた評価手段は効果の大きさに影響を与えるか?
3. これらのトレーニングの特徴は、小学校と中学校のレベルで同じように機能するか?
データ収集
文献検索
・1992年から2006年の間に出版された、初等・中等教育レベルでの研究に限定して調査
・自己調整学習とその要素を説明する45の語句が包括的な検索用語として選択(Dickersin 1994)
・Hattie ら(1996)のメタ分析に基づき、以下のキーワードを使用した:学習スキル、学習方略、自己調整方略、自己調整スキル、メタ認知、メタ認知スキル、メタ認知的方略、自己調整学習、動機づけ スキル、自己動機づけ、生涯学習、学習の学習、思考スキル、学習プロセス、認知スタイル、認知方略、学習習慣、学習スタイル、認知プロセス、目標指向行動、自己モニタリング、目標設定、自己制御、自己決定、自己調整、組織スキル
・Hattie ら(1996)のレビューによると、サンプルに研究を含めるための以下の基準が適用された。
・自己調整学習とその要素を説明する45の語句が包括的な検索用語として選択(Dickersin 1994)
・Hattie ら(1996)のメタ分析に基づき、以下のキーワードを使用した:学習スキル、学習方略、自己調整方略、自己調整スキル、メタ認知、メタ認知スキル、メタ認知的方略、自己調整学習、動機づけ スキル、自己動機づけ、生涯学習、学習の学習、思考スキル、学習プロセス、認知スタイル、認知方略、学習習慣、学習スタイル、認知プロセス、目標指向行動、自己モニタリング、目標設定、自己制御、自己決定、自己調整、組織スキル
・Hattie ら(1996)のレビューによると、サンプルに研究を含めるための以下の基準が適用された。
a) 研究は自己調整学習に関するものでなければならない
b) 効果量の算出が可能でなければならない
c) なんらかのトレーニングでなければならない
d) 成果はパフォーマンス、自己調整方略、または感情/動機でなければならない
適格基準(Eligibility criteria)
1. 期間:1992年から2006年:Hattieら(1996)のメタ分析(~1992年)以降を対象
2. 研究の目的:
・学校という文脈における自己調整学習の育成に焦点を当てた研究
・実験室での設定は含まない
・介入は1回以上のセッションにわたって行われなければならない
・自己調整学習の促進を目的とした明確な方略指導のない介入(例:教室での協調学習の実施のみ)は含まない
・学校という文脈における自己調整学習の育成に焦点を当てた研究
・実験室での設定は含まない
・介入は1回以上のセッションにわたって行われなければならない
・自己調整学習の促進を目的とした明確な方略指導のない介入(例:教室での協調学習の実施のみ)は含まない
3. トレーニング内容:
・学生の自己調整学習(学生が自ら生み出した思考、感情、行動が、自身の目標達成に役立つ影響を及ぼすこと)の育成を目指すべきもの
・介入に学業における自己調整の1つ以上の要素を含める必要がある
・より広範なカテゴリーである認知、メタ認知、または動機づけの方略に分類できる(Boekaerts, 1999)
・学生の自己調整学習(学生が自ら生み出した思考、感情、行動が、自身の目標達成に役立つ影響を及ぼすこと)の育成を目指すべきもの
・介入に学業における自己調整の1つ以上の要素を含める必要がある
・より広範なカテゴリーである認知、メタ認知、または動機づけの方略に分類できる(Boekaerts, 1999)
4. 生徒の特徴:
・小学校または中学9年生までの生徒を対象
・異なる国々の学年番号は、1年生が5歳から6歳、10年生が15歳から16歳になるように調整
5. 研究デザイン:
・事前事後対照群デザインで研究を実施する必要があった
・事前テストの結果が報告されていない場合、研究は介入開始前にグループ間に有意な差異がないことを検証している場合のみ対象とした
・効果量の計算を行うために、研究ではサンプルサイズ、平均および標準偏差、またはそれぞれの F 値を報告しなければならなかった
・介入と単発の実験を区別するため、少なくとも1週間継続した介入のみが対象(Slavin, 1996)
・小学校または中学9年生までの生徒を対象
・異なる国々の学年番号は、1年生が5歳から6歳、10年生が15歳から16歳になるように調整
5. 研究デザイン:
・事前事後対照群デザインで研究を実施する必要があった
・事前テストの結果が報告されていない場合、研究は介入開始前にグループ間に有意な差異がないことを検証している場合のみ対象とした
・効果量の計算を行うために、研究ではサンプルサイズ、平均および標準偏差、またはそれぞれの F 値を報告しなければならなかった
・介入と単発の実験を区別するため、少なくとも1週間継続した介入のみが対象(Slavin, 1996)
6. 出版物の種類:査読付きの学術誌またはERIC文書(会議論文)として出版された研究のみ
基準を満たさない研究を除外した結果、74件の研究が抽出された。
生徒数は全体で8,691人であった。
357の効果量が抽出され、以下の3カテゴリーに分類された。
成果測定:3つの結果カテゴリーを定義し、成果指標を分類
①学業成績(生徒の学力を測定するもの):136個
②認知・メタ認知方略の使用/知識(生徒の方略の使用を測定するもの):167個
③動機づけ(生徒の動機づけおよび関連する情動を評価するもの):54個
②認知・メタ認知方略の使用/知識(生徒の方略の使用を測定するもの):167個
③動機づけ(生徒の動機づけおよび関連する情動を評価するもの):54個
効果量と3つの結果カテゴリーを重回帰分析した結果をカテゴリー別にまとめます。
①学業成績
学業成績全般
・介入がメタ認知的方略と動機づけ方略の指導を含んでいる場合、含まない場合よりも効果量は高くなる
・介入が社会的認知理論や動機理論ではなく、メタ認知的理論的背景に基づいている場合、より高い効果
・介入が認知方略よりもメタ認知的省察または動機づけ方略に焦点を当てた場合、より高い効果
・ただし、メタ認知的方略よりも認知的方略を促進する介入の方がより高い効果
・ただし、メタ認知的方略よりも認知的方略を促進する介入の方がより高い効果
・グループワークが教授法として用いられた場合、より高い効果
・介入が通常の教師ではなく研究者によって実施された場合、より高い効果
・数学ではなく、読解/作文またはその他の文脈で実施された介入の場合、より高い効果
学業成績(数学)
小学校
・メタ認知的省察よりも認知的方略指導に焦点を当てた介入の方が効果が高い
・セッションの回数が多かった介入の方が効果が高い
中等教育
・介入の理論的背景がメタ認知学習理論よりも動機づけ理論に重点を置いている場合、より高い
・社会的認知理論との比較では有意差は認められなかった
・社会的認知理論との比較では有意差は認められなかった
・グループワークが教授法として用いられていない場合よりも、用いられている場合、より高い
・トレーニングセッションの回数が増加するにつれて高くなる
学業成績(読み書き)
小学校
・介入がメタ認知的理論よりも社会的認知的理論に基づいている場合の方が高い
・介入がメタ認知的理論よりも社会的認知的理論に基づいている場合の方が高い
中等教育
・予測因子を用いたメタ分析回帰分析を実施するには十分ではなかった
・予測因子を用いたメタ分析回帰分析を実施するには十分ではなかった
②方略の使用
・介入がメタ認知的理論ではなく、動機づけ理論または社会認知理論に基づいている場合、方略使用の効果量は高い
・トレーニングが認知的方略指導ではなく、動機づけ方略指導に重点を置く場合、効果量は高い
・認知的方略指導とメタ認知的方略指導との間には違いは見られなかった。
・認知的方略指導とメタ認知的方略指導との間には違いは見られなかった。
・介入が認知方略の指導(参照カテゴリー)に焦点を当てるのではなく、メタ認知的省察を提供した場合(B=0.22)
・グループワークが教授法として用いられなかった場合、効果が高い
・通常の教師ではなく、研究者が研修を実施した場合、効果が高い
・読解/作文ではなく、数学の文脈で実施された介入は効果が高い
・数学とその他のカテゴリーとの間に有意な差は認められなかった
・数学とその他のカテゴリーとの間に有意な差は認められなかった
・認知方略の指導よりも、動機づけ方略やメタ認知的省察に焦点を当てた介入の方が効果的
・メタ認知的方略の使用を促す介入と、認知方略を重視する介入との間に有意な差は認められなかった
・メタ認知的方略の使用を促す介入と、認知方略を重視する介入との間に有意な差は認められなかった
・研究者が通常の教師ではなく、トレーニングを担当した場合に効果が高い
・数学指導ではなく、読解/作文または他の科目で行われた介入の方が効果が高い
③動機づけ
・グループワークが教授法として用いられなかった場合、より高い
・トレーニングが通常の教師ではなく研究者によって実施された場合、より高い
・トレーニングがより多くのセッションで構成されていた場合、より高い
・読解/作文やその他の科目ではなく、算数の授業内で実施されたトレーニングプログラムを対象とした場合、より高い
中等教育
・生徒のモチベーションに関する結果を報告した研究が1件のみであったため、分析不可
・生徒のモチベーションに関する結果を報告した研究が1件のみであったため、分析不可
・小学校と中学校における平均効果量は、すべての学業成績を合わせた全体的な測定値を考慮した場合、加重平均効果量は小学校と中学校の間で有意な差は認められなかったが、より細分化されたすべての結果カテゴリーでは、効果量は小学校と中学校の間で有意に異なっていた
・算数・数学の成績については小学校の方が中学校よりも効果量が大きい
・読み書きの成績については中学校の方が小学校よりも効果量が大きい
・生徒の学習方略の使用については中学校の方が効果量がわずかに大きい
・動機づけの成果については小学校の方が中学校よりもはるかに大きい
・算数・数学の成績については小学校の方が中学校よりも効果量が大きい
・読み書きの成績については中学校の方が小学校よりも効果量が大きい
・生徒の学習方略の使用については中学校の方が効果量がわずかに大きい
・動機づけの成果については小学校の方が中学校よりもはるかに大きい
予測因子の相関分析
3つのカテゴリーの下に、より詳細なサブカテゴリーがコード化され、理論的背景の種類と相関させた
さらに詳細な分析を行うため、各理論的背景を各方略タイプのサブカテゴリーと相関させた(Table 9)

(メタ認知的理論を背景とするトレーニングプログラム)
・主に問題解決方略とメタ認知的省察の組み合わせに焦点を当てている
・メタ認知的方略の指導には基本的に重点を置いておらず、動機づけ方略にはさらに重点を置いていない
(動機づけ理論を背景とするトレーニングプログラム)
・メタ認知的省察を除外し、認知的、メタ認知的、動機づけ方略の指導を重視していた
(社会的認知理論を背景とするトレーニングプログラム)
・相関関係は見られなかった
予測因子の理論的背景の種類と指導された方略の種類との相関分析を実施
・メタ認知的理論的背景に基づくトレーニングプログラムは、問題解決方略の指導およびメタ認知的省察との間に有意な相関が見られた
・動機づけ方略の指導との間には負の相関が見られた
・動機づけに理論的観点が置かれている場合には、認知的、メタ認知的、動機づけ方略の指導との間に有意な相関が見られたが、メタ認知的省察との間には負の相関が見られた
・社会認知理論的背景と認知的およびメタ認知的方略の指導との間には負の相関があることが示唆された
・メタ認知的理論的背景に基づくトレーニングプログラムは、問題解決方略の指導およびメタ認知的省察との間に有意な相関が見られた
・動機づけ方略の指導との間には負の相関が見られた
・動機づけに理論的観点が置かれている場合には、認知的、メタ認知的、動機づけ方略の指導との間に有意な相関が見られたが、メタ認知的省察との間には負の相関が見られた
・社会認知理論的背景と認知的およびメタ認知的方略の指導との間には負の相関があることが示唆された
さらに詳細な分析を行うため、各理論的背景を各方略タイプのサブカテゴリーと相関させた(Table 9)

(メタ認知的理論を背景とするトレーニングプログラム)
・主に問題解決方略とメタ認知的省察の組み合わせに焦点を当てている
・メタ認知的方略の指導には基本的に重点を置いておらず、動機づけ方略にはさらに重点を置いていない
(動機づけ理論を背景とするトレーニングプログラム)
・メタ認知的省察を除外し、認知的、メタ認知的、動機づけ方略の指導を重視していた
(社会的認知理論を背景とするトレーニングプログラム)
・相関関係は見られなかった
考察
小・中学校レベルにおけるトレーニングの特徴の効果について74件の研究を調査した(Table 10)。

【生徒の学業成績に関して】
①
・小学校レベルでは、自己調整学習に関する社会認知理論に基づいて開発されたトレーニングプログラムが、動機づけの側面やメタ認知を強調する理論に基づくプログラムよりも高い効果を上げた
・中学校レベルでは、メタ認知理論に基づくプログラムが最も高い効果を上げた
・中学生はすでにメタ認知の知識と方略を身につけているため、これらのメタ認知的な側面を重視したトレーニングが有効
・まだ方略レパートリーを身につけていない低学年の生徒には、動機づけ理論に基づくトレーニングの方が効果的である可能性がある
・小学校レベルでは、自己調整学習に関する社会認知理論に基づいて開発されたトレーニングプログラムが、動機づけの側面やメタ認知を強調する理論に基づくプログラムよりも高い効果を上げた
・中学校レベルでは、メタ認知理論に基づくプログラムが最も高い効果を上げた
・中学生はすでにメタ認知の知識と方略を身につけているため、これらのメタ認知的な側面を重視したトレーニングが有効
・まだ方略レパートリーを身につけていない低学年の生徒には、動機づけ理論に基づくトレーニングの方が効果的である可能性がある
②
・小学校レベルでは、メタ認知的方略をトレーニングした場合に効果の大きさがより高くなるが、中学校レベルでは、メタ認知的省察を含む訓練プログラムの方が効果の大きさがより高くなる
・これは、生徒の学業成績と方略の利用の両方について同じ
・Alexanderら(1998)によると、子どもたちは、科目についてより経験豊富になり、能力が高まるにつれて、より効果的で柔軟かつ洗練された方略的行動を取るようになる
・メタ認知的およびメタ方略的知識がまだ発達段階にある幼い子ども(Kuhn 1999)は、方略レパートリーを広げるためには、純粋なメタ認知的方略の指導からより多くの恩恵を受ける可能性がある
・年長の生徒は、すでに持っているかもしれない方略の応用を詳しく説明することで、より洗練された方略の使用レベルに達する可能性が高い(Schneider and Sodian 1997)
・自己調整学習の発達に関するZimmermanのモデル(2002)に従うと、学習者はまず模倣や見よう見まねから学習を始めるため、依然として外部からのフィードバックに依存している
・学習者の発達レベルが高まると、学習者は他者から独立して自身の学習プロセスを管理・調整できるようになる
・これらの段階では、どの方略をいつどのように使用するかについてのメタ認知的な振り返りが独立して行われるようになるが、初期の段階では学生にはより多くのサポートが必要となる(Zimmerman 2002)
・小学校レベルでは、メタ認知的方略をトレーニングした場合に効果の大きさがより高くなるが、中学校レベルでは、メタ認知的省察を含む訓練プログラムの方が効果の大きさがより高くなる
・これは、生徒の学業成績と方略の利用の両方について同じ
・Alexanderら(1998)によると、子どもたちは、科目についてより経験豊富になり、能力が高まるにつれて、より効果的で柔軟かつ洗練された方略的行動を取るようになる
・メタ認知的およびメタ方略的知識がまだ発達段階にある幼い子ども(Kuhn 1999)は、方略レパートリーを広げるためには、純粋なメタ認知的方略の指導からより多くの恩恵を受ける可能性がある
・年長の生徒は、すでに持っているかもしれない方略の応用を詳しく説明することで、より洗練された方略の使用レベルに達する可能性が高い(Schneider and Sodian 1997)
・自己調整学習の発達に関するZimmermanのモデル(2002)に従うと、学習者はまず模倣や見よう見まねから学習を始めるため、依然として外部からのフィードバックに依存している
・学習者の発達レベルが高まると、学習者は他者から独立して自身の学習プロセスを管理・調整できるようになる
・これらの段階では、どの方略をいつどのように使用するかについてのメタ認知的な振り返りが独立して行われるようになるが、初期の段階では学生にはより多くのサポートが必要となる(Zimmerman 2002)
③
・生徒の数学の成績を測定した効果量は小学校の生徒の方が高く、読解力/作文力を測定した効果量は中学校レベルの方が高い
・中学校での読み書きにおけるより高い効果の大きさに関しては、メタ認知の発達に関する研究により、特に読み書きの文脈において、経験の浅い生徒は、読み書きという難しい課題に加えてメタ認知的方略を用いるための認知能力が十分に残されていないため、メタ認知的方略の使用に問題を抱えていることが明らかになっている(Alexander et al. 1998)
・読み書きのプロセスを自動化している高学年の生徒は、メタ認知的プロセスにまだ余裕があり、この文脈では方略トレーニングからより多くの恩恵を受けることができる
・生徒は小学校低学年の間にすでに数学の方略を習得していますが、文章理解の方略を適用し始めるのは高学年になってからである。
・生徒の数学の成績を測定した効果量は小学校の生徒の方が高く、読解力/作文力を測定した効果量は中学校レベルの方が高い
・中学校での読み書きにおけるより高い効果の大きさに関しては、メタ認知の発達に関する研究により、特に読み書きの文脈において、経験の浅い生徒は、読み書きという難しい課題に加えてメタ認知的方略を用いるための認知能力が十分に残されていないため、メタ認知的方略の使用に問題を抱えていることが明らかになっている(Alexander et al. 1998)
・読み書きのプロセスを自動化している高学年の生徒は、メタ認知的プロセスにまだ余裕があり、この文脈では方略トレーニングからより多くの恩恵を受けることができる
・生徒は小学校低学年の間にすでに数学の方略を習得していますが、文章理解の方略を適用し始めるのは高学年になってからである。
・Wigfield(1994)は、生徒の達成観が年齢を重ねるにつれて否定的に変化し、その傾向は数学の分野においてより顕著であると報告している
・生徒は小学校では高校よりも数学をより高く評価するが、高学年の生徒は言語科目をより高く評価する(Wigfield 1994)
・期待と成績には強い関連性があるため(Pintrich & De Groot 1990; Wigfield 1994)、生徒の低い有能性信念は、それぞれの科目における介入プログラムの有効性の低下につながる可能性がある
・一方、生徒の達成信念が高い科目は、トレーニングプログラムにより効果的である可能性がある。
④
・生徒は小学校では高校よりも数学をより高く評価するが、高学年の生徒は言語科目をより高く評価する(Wigfield 1994)
・期待と成績には強い関連性があるため(Pintrich & De Groot 1990; Wigfield 1994)、生徒の低い有能性信念は、それぞれの科目における介入プログラムの有効性の低下につながる可能性がある
・一方、生徒の達成信念が高い科目は、トレーニングプログラムにより効果的である可能性がある。
④
・介入は、学校レベルの両方において、その期間が長いほど効果的である
・子どもたちは方略の使用を新しい状況に一般化しないことが多い(Alexander et al. 1998)が、学習者に方略の使用を練習する機会を与えることで、メタ方略的知識を実際の学習状況に転移させることができる
・介入は、自己調整学習方略の集中的な習得と実践を可能にするために、より長い期間にわたって実施されるべきである(例えば、Pressley et al. 2006; Veenman et al. 2006)。
・子どもたちは方略の使用を新しい状況に一般化しないことが多い(Alexander et al. 1998)が、学習者に方略の使用を練習する機会を与えることで、メタ方略的知識を実際の学習状況に転移させることができる
・介入は、自己調整学習方略の集中的な習得と実践を可能にするために、より長い期間にわたって実施されるべきである(例えば、Pressley et al. 2006; Veenman et al. 2006)。
【学生の方略使用に関して】
①
・学生の方略使用の効果の大きさは、中等教育段階でより高いという結果は、以前の研究と一致しており、すでに年長の学生はより方略的に学習することが示されている(Paris & Newman 1990; Zimmerman 1990)
・中学校の生徒はすでに複雑な方略レパートリーを身につけているが、小学校の生徒は自動化されたバックアップ方略をまだ持っていないという事実によるものかもしれない(Alexander et al. 1995)
・学生の方略使用の効果の大きさは、中等教育段階でより高いという結果は、以前の研究と一致しており、すでに年長の学生はより方略的に学習することが示されている(Paris & Newman 1990; Zimmerman 1990)
・中学校の生徒はすでに複雑な方略レパートリーを身につけているが、小学校の生徒は自動化されたバックアップ方略をまだ持っていないという事実によるものかもしれない(Alexander et al. 1995)
②
・小学校の生徒は、動機づけの結果に関して、中学校の生徒よりも高い効果を達成した
・幼い子どもたちは学校に入学した時点で既に学習意欲を持っていることを示している
・しかし、この意欲は学校教育を受ける間に低下していく(例えば、Helmke 1993; Krapp 1998; Spinath and Spinath 2005)
・一般的に、生徒の達成に関する信念は年齢が上がるにつれて否定的になり、特に初期の思春期には否定的になる(Wigfield 1994)
・小学校の生徒は、動機づけの結果に関して、中学校の生徒よりも高い効果を達成した
・幼い子どもたちは学校に入学した時点で既に学習意欲を持っていることを示している
・しかし、この意欲は学校教育を受ける間に低下していく(例えば、Helmke 1993; Krapp 1998; Spinath and Spinath 2005)
・一般的に、生徒の達成に関する信念は年齢が上がるにつれて否定的になり、特に初期の思春期には否定的になる(Wigfield 1994)
③
・生徒の方略使用に関しては、自己調整型学習の動機づけの側面を強調する理論を背景に介入プログラムが開発された場合、小学校レベルでの効果の大きさはより高くなる。
・幼い子どもは成功や失敗を努力の賜物と考えることが多いが、12歳以上の子どもはそれを固定された能力と考えることが多い(Dweck and Elliot, 1983)
・したがって、動機づけの方略や方略使用の動機づけは、幼い子どもにとってより身近なものである可能性がある
・生徒の方略使用に関しては、自己調整型学習の動機づけの側面を強調する理論を背景に介入プログラムが開発された場合、小学校レベルでの効果の大きさはより高くなる。
・幼い子どもは成功や失敗を努力の賜物と考えることが多いが、12歳以上の子どもはそれを固定された能力と考えることが多い(Dweck and Elliot, 1983)
・したがって、動機づけの方略や方略使用の動機づけは、幼い子どもにとってより身近なものである可能性がある
④
・中等教育レベルでは、メタ認知理論に基づいたトレーニングプログラムが最も高い効果を示した
・3つの理論的志向のすべてにおいて、メタ認知的方略の指導は比較的均等に行われていた
・社会認知的背景に基づくトレーニングプログラムは、フィードバックとリソース管理方略を組み合わせたあらゆる方略の指導に重点を置いていた
・この方略と方略関連のフィードバックに焦点を当てたトレーニングは、低年齢の生徒にとって最も学習しやすく、最も効率的な方法であるようだ(Schunk 1994, 1996, 1997など)
・メタ認知に理論的観点から焦点を当てたトレーニングプログラムには、問題解決方略やメタ認知的省察など、多くの異なるタイプの高度思考方略が含まれる
・メタ認知的方略と複雑な認知的方略、メタ認知的省察を組み合わせることに焦点を当てたこれらのトレーニングプログラムは、中等教育レベルにおいて最も高い効果を示した(低学年の生徒には難しすぎるかもしれない)(Zimmerman 1990)
・動機づけを理論的背景とするプログラムは、多くの異なるタイプの方略(認知的方略、メタ認知的方略、およびいくつかのタイプの動機づけ方略)を統合した
・これらの介入は、低学年の生徒にとって有益なフィードバックを提供しておらず(Schunk 1997)、また、高学年の生徒向けのプログラムを改善するメタ認知的省察(Schraw 1998; Butler 2002)を促すものでもなかった
・中等教育レベルでは、メタ認知理論に基づいたトレーニングプログラムが最も高い効果を示した
・3つの理論的志向のすべてにおいて、メタ認知的方略の指導は比較的均等に行われていた
・社会認知的背景に基づくトレーニングプログラムは、フィードバックとリソース管理方略を組み合わせたあらゆる方略の指導に重点を置いていた
・この方略と方略関連のフィードバックに焦点を当てたトレーニングは、低年齢の生徒にとって最も学習しやすく、最も効率的な方法であるようだ(Schunk 1994, 1996, 1997など)
・メタ認知に理論的観点から焦点を当てたトレーニングプログラムには、問題解決方略やメタ認知的省察など、多くの異なるタイプの高度思考方略が含まれる
・メタ認知的方略と複雑な認知的方略、メタ認知的省察を組み合わせることに焦点を当てたこれらのトレーニングプログラムは、中等教育レベルにおいて最も高い効果を示した(低学年の生徒には難しすぎるかもしれない)(Zimmerman 1990)
・動機づけを理論的背景とするプログラムは、多くの異なるタイプの方略(認知的方略、メタ認知的方略、およびいくつかのタイプの動機づけ方略)を統合した
・これらの介入は、低学年の生徒にとって有益なフィードバックを提供しておらず(Schunk 1997)、また、高学年の生徒向けのプログラムを改善するメタ認知的省察(Schraw 1998; Butler 2002)を促すものでもなかった
⑤
・両学校レベルにおいて、メタ認知的省察がトレーニングに含まれている場合、効果はより高い
・メタ認知的方略の指導、すなわち学習プロセスを計画、監視、評価するといった指導自体は、学習成果、方略の使用、動機づけを向上させるものではない(自己調整学習の促進を効果的なものにするには、いくつかの補足的な要素が必要)
・学生は、自身の方略の使用に関するフィードバックを必要としている(Zimmerman 2002)
・方略やその使用による利益に関する知識も必要である(Schraw 1998)
・両学校レベルにおいて、メタ認知的省察がトレーニングに含まれている場合、効果はより高い
・メタ認知的方略の指導、すなわち学習プロセスを計画、監視、評価するといった指導自体は、学習成果、方略の使用、動機づけを向上させるものではない(自己調整学習の促進を効果的なものにするには、いくつかの補足的な要素が必要)
・学生は、自身の方略の使用に関するフィードバックを必要としている(Zimmerman 2002)
・方略やその使用による利益に関する知識も必要である(Schraw 1998)
⑥
・両学校タイプにおいて、読解や作文よりも算数の範囲内で実施された場合により高い効果を上げた
・読解や作文のプロセスは、経験の浅い生徒にとっては非常に難しいため、方略の使用に必要な追加の認知能力は限られている(Alexander et al. 1998)
・学生は数学を国語や社会科よりも重要で、有用で、興味深いと見なす傾向にあると報告しており(Wolters and Pintrich, 1998)、これは学生が数学に対してより高い意欲を示す可能性がある
・したがって、Wolters and Pintrich(1998)は、数学では他の科目よりも方略が多用されているとは認めなかった
・科目によって違いはあるかもしれないが、動機づけと認知の関係は、科目が異なっても安定しているように思われる(Wolters and Pintrich 1998)
・両学校タイプにおいて、読解や作文よりも算数の範囲内で実施された場合により高い効果を上げた
・読解や作文のプロセスは、経験の浅い生徒にとっては非常に難しいため、方略の使用に必要な追加の認知能力は限られている(Alexander et al. 1998)
・学生は数学を国語や社会科よりも重要で、有用で、興味深いと見なす傾向にあると報告しており(Wolters and Pintrich, 1998)、これは学生が数学に対してより高い意欲を示す可能性がある
・したがって、Wolters and Pintrich(1998)は、数学では他の科目よりも方略が多用されているとは認めなかった
・科目によって違いはあるかもしれないが、動機づけと認知の関係は、科目が異なっても安定しているように思われる(Wolters and Pintrich 1998)
⑦
・両学校タイプにおいて、通常のクラス担任ではなく研究者によってトレーニングが提供された場合、効果の大きさがより高い
・Waeytens et al.(2002)によると、教師は自己調整学習の概念に関する知識が不足している
・教師が指導時間のほとんどを方略指導に費やしていないことが示されている(Hamman et al. 2000)
・教師による自己調整学習を促進するための介入を実施する際には、大規模な教師研修が必要となる
・しかし、教師は全体的な指導計画、方略指導に必要な準備時間、方略指導の実施に関するサポート、および教師や管理職がこれらの方略を効果的に実施するために必要なスキルを欠いている(Kline et al., 1992)
・教師が指導の変化に気づいているかどうかは、彼らの以前の信念や価値観の方向性に依存しているため、情報を提供するだけでは不十分であり、その情報を教師が実際に使えるツールに変換し、教師を研究プロジェクトに巻き込むことが必要である(De Corte 2000)
・教師による介入の効果が低いのは、教師向けの研修が不適切または不十分であることが原因である可能性がある
⑧
・小学校では、指導方法としてグループワークを含まない場合、方略使用により高い効果をもたらした
・協同学習(cooperative learning)が生徒の成績、学習方略の使用、動機づけにプラスの影響を与えることを示す研究もいくつかある(例えば、Guthrie et al. 1998; Slavin 1996)
・非常に若い生徒でも、協同学習の環境から恩恵を受けることが分かっている(Whitebread 2007)
・グループワークにおける協調学習のポジティブな効果は、生徒たちがグループで作業を行う際の行動規範を知っている場合にのみ現れることは明らかであるため、生徒たちに体系的な指導を行わずに小グループでテーブルを囲ませるだけでは不十分である
・小学校レベルでのグループワークのネガティブな効果の理由として考えられるのは、児童たちがグループでの作業に慣れておらず、協調学習に関する十分な指導を受けていなかったことである
・児童は幼年期中頃に協調性を身につけるため(Cooper et al. 1982)、高学年の生徒は協調的な作業についてすでに知っている可能性が高い
・この予備知識がさまざまな年齢における協調学習に与える影響については研究されていない(Slavin 1987)
・協力者がすでに十分な知識とスキルを身につけている場合、方略開発は協調学習からより多く得られる可能性が高いため(Alexander et al. 1998)、協調スキルの詳細な指導が必要となる可能性がある
・Veenmanら(2000)は、教師が協調的なスキルの指導に割く時間はごくわずかであり、協調学習の実践は、効果的な協調学習に関する文献で推奨されている特徴を満たしていないことを観察
・したがって、特に学習の責任を学生に多く負わせる場合には、教室での協調的な作業スキルを含むトレーニングの実施に、より重点を置いたさらなる研究が必要である
・Waeytens et al.(2002)によると、教師は自己調整学習の概念に関する知識が不足している
・教師が指導時間のほとんどを方略指導に費やしていないことが示されている(Hamman et al. 2000)
・教師による自己調整学習を促進するための介入を実施する際には、大規模な教師研修が必要となる
・しかし、教師は全体的な指導計画、方略指導に必要な準備時間、方略指導の実施に関するサポート、および教師や管理職がこれらの方略を効果的に実施するために必要なスキルを欠いている(Kline et al., 1992)
・教師が指導の変化に気づいているかどうかは、彼らの以前の信念や価値観の方向性に依存しているため、情報を提供するだけでは不十分であり、その情報を教師が実際に使えるツールに変換し、教師を研究プロジェクトに巻き込むことが必要である(De Corte 2000)
・教師による介入の効果が低いのは、教師向けの研修が不適切または不十分であることが原因である可能性がある
⑧
・小学校では、指導方法としてグループワークを含まない場合、方略使用により高い効果をもたらした
・協同学習(cooperative learning)が生徒の成績、学習方略の使用、動機づけにプラスの影響を与えることを示す研究もいくつかある(例えば、Guthrie et al. 1998; Slavin 1996)
・非常に若い生徒でも、協同学習の環境から恩恵を受けることが分かっている(Whitebread 2007)
・グループワークにおける協調学習のポジティブな効果は、生徒たちがグループで作業を行う際の行動規範を知っている場合にのみ現れることは明らかであるため、生徒たちに体系的な指導を行わずに小グループでテーブルを囲ませるだけでは不十分である
・小学校レベルでのグループワークのネガティブな効果の理由として考えられるのは、児童たちがグループでの作業に慣れておらず、協調学習に関する十分な指導を受けていなかったことである
・児童は幼年期中頃に協調性を身につけるため(Cooper et al. 1982)、高学年の生徒は協調的な作業についてすでに知っている可能性が高い
・この予備知識がさまざまな年齢における協調学習に与える影響については研究されていない(Slavin 1987)
・協力者がすでに十分な知識とスキルを身につけている場合、方略開発は協調学習からより多く得られる可能性が高いため(Alexander et al. 1998)、協調スキルの詳細な指導が必要となる可能性がある
・Veenmanら(2000)は、教師が協調的なスキルの指導に割く時間はごくわずかであり、協調学習の実践は、効果的な協調学習に関する文献で推奨されている特徴を満たしていないことを観察
・したがって、特に学習の責任を学生に多く負わせる場合には、教室での協調的な作業スキルを含むトレーニングの実施に、より重点を置いたさらなる研究が必要である
示唆
・自己調整学習は効果的な方法で促進できることが結論づけられる(初等でも中等教育でも同様)
・小学校レベルでの今後の介入においては、生徒の励ましや動機づけのサポートが必要であることを考慮すべき
・中学校レベルでは、生徒がそれまでに習得した方略レパートリーを基盤とした介入を行うべきである
・両学校レベルにおいて、長期にわたる介入では、他の学習状況への転移を促進するために、方略の使用を練習し自動化する機会を十分に提供すべきであり、メタ認知的省察の影響を認識すべきである
・小学校レベルでの今後の介入においては、生徒の励ましや動機づけのサポートが必要であることを考慮すべき
・中学校レベルでは、生徒がそれまでに習得した方略レパートリーを基盤とした介入を行うべきである
・両学校レベルにおいて、長期にわたる介入では、他の学習状況への転移を促進するために、方略の使用を練習し自動化する機会を十分に提供すべきであり、メタ認知的省察の影響を認識すべきである
・教師のトレーニングと教室での介入の実施を改善するためには、研究者と実務家の緊密な協力体制のもとで、徹底的な研究が必要である
・読み書きの文脈における自己調整プログラムに取り組むことで、数学の分野と同等の効果を達成するという課題に、さらなる研究が取り組むべきである
・グループワークが小学生の方略の使用と動機づけに及ぼす負の影響は、教師を重要な協力者として統合し、研究を実際の教室環境にどのように導入するかという分野において、さらなる研究が必要である
・読み書きの文脈における自己調整プログラムに取り組むことで、数学の分野と同等の効果を達成するという課題に、さらなる研究が取り組むべきである
・グループワークが小学生の方略の使用と動機づけに及ぼす負の影響は、教師を重要な協力者として統合し、研究を実際の教室環境にどのように導入するかという分野において、さらなる研究が必要である
ここまで。
自己調整学習に関する多くの論文をレビューした内容だけあり、多くの気づきをいただきました。
印象的だったことがいくつかメモします。
まず、小学生と中学生では方略のベースが異なるということ。つまり、中学生はある程度方略を身につけていますが、小学生はそうではないということです。これについては、
・中学生は、メタ認知の知識と方略を身につけているため、メタ認知的な側面を重視したトレーニングが最も効果が高く、メタ認知的省察を含むトレーニングプログラムの方が効果がより高くなる
・既に身につけている方略の応用を詳しく説明することで、より洗練された方略の使用レベルに達する可能性が高い(Schneider and Sodian 1997)
との記載が印象的でした。一方、小学生は、
・まだメタ認知的方略を身につけていないため、メタ認知的方略をトレーニングした場合に効果がより高くなる
・メタ認知的およびメタ方略的知識がまだ発達段階にある幼い子ども(Kuhn 1999)は、方略レパートリーを広げるためには、純粋なメタ認知的方略の指導からより多くの恩恵を受ける可能性がある
成長するつれて、どの方略をいつどのように使用するかについてのメタ認知的な振り返りが独立して行われるようになるが、それができるようになるまでは学生により多くのサポートが必要(Zimmerman 2002)とのことで、自分なりの方略を身につけていくためのサポートは幼いうちから実施すべきだな感じました。
一方、達成観の違いについても興味深かったです。
「一般的に、生徒の達成に関する信念は年齢が上がるにつれて否定的になり、特に思春期初期に否定的になる」(Wigfield, 1994)とも言われていて、動機づけの方略や方略使用の動機づけは、中学生よりも小学生の方が効果があると考察されていました。ただ、これは年齢を重ねた学習者のFixed Mindset自体を変えていく必要性も同時に感じました。
最後に、すごく意外だったのは、小学生に対するグループワーク等の介入にネガティブな結果が見られということ。これについては、
・ネガティブな効果の理由として考えられるのは、児童たちがグループでの作業に慣れておらず、協調学習に関する十分な指導を受けていなかったことである
・効果が上がるのは、生徒たちがグループで作業を行う際の行動規範を知っている場合のみであり、生徒たちに体系的な指導を行わずに小グループでテーブルを囲ませるだけでは不十分である
と考察されています。
グループワーク慣れしていない学習者を対象とする場合には、行動規範や協調学習の指導も合わせて行うことを肝に銘じておこうと思います。一方、児童は幼年期中頃に協調性を身につけるため(Cooper et al. 1982)、高学年の生徒は協調的な作業についてすでに知っている可能性が高いという研究もあるので、学習者の状況を見ながら、必要に応じて実施することが良さそうです。
また、学校の先生よりも研究者による介入の方が効果が高い結果になっていた点も印象的でした。これは、自己調整学習についての理論や介入方法について先生方が十分に理解しておらず、研修等が不十分であることが挙げられていました。自己調整学習に限らず、様々な効果的な指導・介入が学校現場で展開されるよう、研究者と先生方の協力・連携が今後より求められるのだろうなと思いました。
以下、メモ
認知方略の指導(Mayer and Wittrock, 1996)
(1) 書き写しや下線引きなどのリハーサル方略
(2) 言い換えや要約などの精緻化方略
(3) アウトライン作成や階層化などの組織化方略、および問題解決方略
(1) 書き写しや下線引きなどのリハーサル方略
(2) 言い換えや要約などの精緻化方略
(3) アウトライン作成や階層化などの組織化方略、および問題解決方略
メタ認知的方略の指導(Schraw, 1998)
・メタ認知的方略を計画(適切な方略の選択とリソースの割り当てを含む)
・モニタリング(例:自己テストなどによって、理解度やパフォーマンスをチェックする等)
・評価(学習の成果や効率性について判断すること)
・メタ認知的方略を計画(適切な方略の選択とリソースの割り当てを含む)
・モニタリング(例:自己テストなどによって、理解度やパフォーマンスをチェックする等)
・評価(学習の成果や効率性について判断すること)
メタ認知的省察の促進(Butler 2002; Schraw 1998など)
・方略の使用方法を理解することが重要
・方略トレーニングでは、複数の方略の使用方法に関する情報、およびこれらの方略が最も有用となる状況に関する情報を統合し、それらを使用することの利点を説明すべきで
・生徒は、いつ、なぜ、どこで、これらの方略を適用するのかの知識も習得すべき(Veenman et al. 2006)。
動機づけ方略の指導
・学生には自己調整を行うスキルと意志が必要(McCombs and Marzano, 1990)
・自己調整学習の構成要素に関連する可能性があるモチベーションの3つの構成要素(Pintrich, 1999)
・学生には自己調整を行うスキルと意志が必要(McCombs and Marzano, 1990)
・自己調整学習の構成要素に関連する可能性があるモチベーションの3つの構成要素(Pintrich, 1999)
1. 期待の要素:課題を遂行する能力に対する学生の信念
2. 価値の要素:課題の重要性や興味に対する学生の目標や信念
3. 情動の要素:課題に対する学生の感情的な反応
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