メタ認知(特に汎用性のある一般的メタ認知)の促進方法についてまとめられた論文をレビューします。
論文はこちら(被引用数:2,968件 (2025年1月27日時点))
Schraw, G. (1998). Promoting general metacognitive awareness. Instructional science, 26(1), 113-125.
本論文では、メタ認知の二つの主要な要素(知識と調整)を概説し、それを活用するための教育戦略についてまとめられています。
そして、タイトルにもあるように、一般的(general)なメタ認知の重要性についても強調されています。特定のメタ認知の知識やスキルは、特定の状況や課題に限定されて効果を発揮しますが、一般的なメタ認知は幅広い状況に応用可能という違いがあります。そして、どのような状況でも適用可能な一般的メタ認知を育むことが、持続可能な学習成功につながると述べています。
以下、簡単に内容をまとめます。
まずは、メタ認知の二つの主要な構成要素(メタ認知の知識と調整)についての解説から入ります。
これは昨日読んだ論文でも同様のことが書かれていたのでスムーズに頭に入り、良い復習にもなりました。
メタ認知の知識(Metacognitive Knowledge) 自分の学習に関する知識を指し、以下の3種類がある
①宣言的知識:事実や概念についての知識(例:学習方法の種類)
②手続き的知識:学習スキルや戦略を実行する方法についての知識
③条件的知識:特定の戦略をいつ、どのように使うべきかを理解する能力
メタ認知の調整(Metacognitive Regulation) 学習の計画、モニタリング、評価のプロセスを指す
①計画:学習の目標を設定し、適切な戦略を選択する
②モニタリング:学習の進捗状況をチェックし、理解を確認する
③評価:学習の成果を評価し、必要に応じて戦略を修正する
後半部分では、これらメタの知識と調整を促進するためのツールとして、Strategy evaluation matrix (SEM)とRegulatory checklist (RC)が紹介されていて、これが非常に参考になりました。
続いて、Regulatory checklist (RC)について。
【教室でメタ認知を高める一般的な4つの方法】(Hartman & Sternberg, 1993)
①メタ認知の重要性を認識させる
②認知に関する知識を向上させる
③認知の調整を向上させる
④メタ認知の認識を促す環境を整える
【メタ認知学習の参考となるモデル】以下はまた読みたいと思います。
・Brown, A.L. & Palincsar, A.S. (1989). Guided, cooperative learning and individual knowledge acquisition. In L.B. Resnick, ed., Knowing and Learning: Essays in Honor of Robert Glaser (pp. 393–451). Hillsdale, NJ: Erlbaum.
・Brown, R. & Pressley, M. (1994). Self-regulated reading and getting meaning from text: The Transactional Strategies Instruction model and its ongoing validation. In D.H. Schunk & B.J. Zimmerman, eds., Self-Regulation of Learning and Performance: Issues and Educa- tional Applications (pp. 155–180). Hillsdale, NJ: Erlbaum.
・Cross, D.R., & Paris, S.G. (1988). Developmental and instructional analyses of children’s metacognition and reading comprehension. Journal of Educational Psychology 80: 131– 142.
ここまで。
学生のメタ認知を高める手法を詳しく学びたいと思っていたので、2つのツール(SEMとRC)や、教育手法・ステップなどはとても参考になりました。
ツールは日本語訳して、授業にも取り入れてみたいと思います。
論文はこちら(被引用数:2,968件 (2025年1月27日時点))
Schraw, G. (1998). Promoting general metacognitive awareness. Instructional science, 26(1), 113-125.
本論文では、メタ認知の二つの主要な要素(知識と調整)を概説し、それを活用するための教育戦略についてまとめられています。
そして、タイトルにもあるように、一般的(general)なメタ認知の重要性についても強調されています。特定のメタ認知の知識やスキルは、特定の状況や課題に限定されて効果を発揮しますが、一般的なメタ認知は幅広い状況に応用可能という違いがあります。そして、どのような状況でも適用可能な一般的メタ認知を育むことが、持続可能な学習成功につながると述べています。
以下、簡単に内容をまとめます。
まずは、メタ認知の二つの主要な構成要素(メタ認知の知識と調整)についての解説から入ります。
これは昨日読んだ論文でも同様のことが書かれていたのでスムーズに頭に入り、良い復習にもなりました。
メタ認知の知識(Metacognitive Knowledge) 自分の学習に関する知識を指し、以下の3種類がある
①宣言的知識:事実や概念についての知識(例:学習方法の種類)
②手続き的知識:学習スキルや戦略を実行する方法についての知識
③条件的知識:特定の戦略をいつ、どのように使うべきかを理解する能力
メタ認知の調整(Metacognitive Regulation) 学習の計画、モニタリング、評価のプロセスを指す
①計画:学習の目標を設定し、適切な戦略を選択する
②モニタリング:学習の進捗状況をチェックし、理解を確認する
③評価:学習の成果を評価し、必要に応じて戦略を修正する
後半部分では、これらメタの知識と調整を促進するためのツールとして、Strategy evaluation matrix (SEM)とRegulatory checklist (RC)が紹介されていて、これが非常に参考になりました。
まずSEMから。
SEMの縦列がそれぞれメタ認知の知識である、①宣言的知識(第1列)、②手続き的知識(第2列)、③条件付き知識(第3列および第4列)と対応した形となっており、戦略の使用方法、戦略が最も役立つ条件、そして戦略を使用したいと思う理由についての簡潔な根拠が記載されています。

SEMの縦列がそれぞれメタ認知の知識である、①宣言的知識(第1列)、②手続き的知識(第2列)、③条件付き知識(第3列および第4列)と対応した形となっており、戦略の使用方法、戦略が最も役立つ条件、そして戦略を使用したいと思う理由についての簡潔な根拠が記載されています。

(SEMの長所)
・①戦略の使用(すなわち、認知スキル)を促進し、パフォーマンスを大幅に向上させる
・②SEMが低学年の生徒(幼稚園から6年生)でも明示的なメタ認知の意識を促進すること
・③SEMが生徒に、いつ、どこで、どのように戦略を使用するのかについての知識を積極的に構築することを促す
・①戦略の使用(すなわち、認知スキル)を促進し、パフォーマンスを大幅に向上させる
・②SEMが低学年の生徒(幼稚園から6年生)でも明示的なメタ認知の意識を促進すること
・③SEMが生徒に、いつ、どこで、どのように戦略を使用するのかについての知識を積極的に構築することを促す
(使用方法)※様々な使い方ができる
・生徒に個人またはグループで、年度を通じてマトリックスの各行を完成させるよう求める
・例:教師は生徒たちに、毎月1つの新しい戦略に焦点を当て、SEMに含まれる年間4つの追加戦略を練習するよう伝える。生徒には、各自または小グループで、戦略の使用について考える時間を毎週与える。振り返りの時間には、他の生徒と戦略を使用するタイミングや状況について意見を交換するなどする。同じ学年の生徒や年上の生徒に戦略の使用についてインタビューすると、追加の評価を得ることができる。生徒は、ミニポートフォリオを作成するようにSEMを修正することが期待される。
・SEMのような要約マトリックスを使用することで、学習効果が大幅に向上する可能性があることが示唆されている(Jonassen, Beissner & Yacci, 1993)。
・例:教師は生徒たちに、毎月1つの新しい戦略に焦点を当て、SEMに含まれる年間4つの追加戦略を練習するよう伝える。生徒には、各自または小グループで、戦略の使用について考える時間を毎週与える。振り返りの時間には、他の生徒と戦略を使用するタイミングや状況について意見を交換するなどする。同じ学年の生徒や年上の生徒に戦略の使用についてインタビューすると、追加の評価を得ることができる。生徒は、ミニポートフォリオを作成するようにSEMを修正することが期待される。
・SEMのような要約マトリックスを使用することで、学習効果が大幅に向上する可能性があることが示唆されている(Jonassen, Beissner & Yacci, 1993)。
続いて、Regulatory checklist (RC)について。
RCの目的は、認知の調整を促進する包括的な発見的手法を提供するです。
問題解決プロンプトカード(King, 1991)をモデルとしたRCの例がこちら。

問題解決プロンプトカード(King, 1991)をモデルとしたRCの例がこちら。

メタ認知の調整(Metacognitive Regulation)主要カテゴリーである、計画、モニタリング、評価が示しされています。
RCは、初学者が体系的な調整手順を実行することを可能にし、それによって学習者のパフォーマンスを調整・向上させることが期待されています。
RCは、初学者が体系的な調整手順を実行することを可能にし、それによって学習者のパフォーマンスを調整・向上させることが期待されています。
・King(1991)は、図2と同様のチェックリストを使用した5年生の生徒が、文章による問題解決、戦略的な質問、情報の詳細化など、複数の評価基準において、対照群の生徒よりも高い成績を収めた
・Kingは、チェックリスト形式の明示的な指示は、生徒が問題解決を行う際に、より戦略的かつ体系的に取り組むことを助けると結論づけた
・関連研究では、DelclosとHarrington(1991)が、3つの条件の1つに割り当てられた後の5年生と6年生のコンピュータ問題解決能力を調査した。第1のグループは特定の問題解決トレーニングを受け、第2のグループは問題解決に加えて自己モニタリングのトレーニングを受け、第3のグループはトレーニングを受けなかった。第2グループは、残りの2つのグループよりも多くの難しい問題を解決し、その所要時間も短縮した。
最後に、SEMやRCを活用しつつ、メタ認知を育む教育的示唆についてまとめられています。・Kingは、チェックリスト形式の明示的な指示は、生徒が問題解決を行う際に、より戦略的かつ体系的に取り組むことを助けると結論づけた
・関連研究では、DelclosとHarrington(1991)が、3つの条件の1つに割り当てられた後の5年生と6年生のコンピュータ問題解決能力を調査した。第1のグループは特定の問題解決トレーニングを受け、第2のグループは問題解決に加えて自己モニタリングのトレーニングを受け、第3のグループはトレーニングを受けなかった。第2グループは、残りの2つのグループよりも多くの難しい問題を解決し、その所要時間も短縮した。
【教室でメタ認知を高める一般的な4つの方法】(Hartman & Sternberg, 1993)
①メタ認知の重要性を認識させる
②認知に関する知識を向上させる
③認知の調整を向上させる
④メタ認知の認識を促す環境を整える
【メタ認知を促進するステップ】
①学習者にメタ認知が存在し、認知とは異なり、学業の成功を高めるものであることを認識させる
②戦略を教え、学生がいつどこで戦略を使うべきかについて、明確な知識を構築できるようにすること
③柔軟な戦略レパートリーを活用して、個人が学習を計画、モニタリング、評価できるように、慎重に調整上の決定する
【生徒の批判的思考力や科学的思考力を向上させる3条件】(Kuhn, 1989; Rogoff, 1990)。
①対象となるスキルを意味のある文脈で十分な時間をかけて適用すること
②そのスキルを熟練した専門家が使用している様子を観察する機会があること
③メタ認知の意識を高める上で特に重要なことだが、専門家が自分自身が何をしているのか、またそれがどの程度うまくできているのかを振り返る機会があること
①学習者にメタ認知が存在し、認知とは異なり、学業の成功を高めるものであることを認識させる
②戦略を教え、学生がいつどこで戦略を使うべきかについて、明確な知識を構築できるようにすること
③柔軟な戦略レパートリーを活用して、個人が学習を計画、モニタリング、評価できるように、慎重に調整上の決定する
【生徒の批判的思考力や科学的思考力を向上させる3条件】(Kuhn, 1989; Rogoff, 1990)。
①対象となるスキルを意味のある文脈で十分な時間をかけて適用すること
②そのスキルを熟練した専門家が使用している様子を観察する機会があること
③メタ認知の意識を高める上で特に重要なことだが、専門家が自分自身が何をしているのか、またそれがどの程度うまくできているのかを振り返る機会があること
【メタ認知学習の参考となるモデル】以下はまた読みたいと思います。
・Brown, A.L. & Palincsar, A.S. (1989). Guided, cooperative learning and individual knowledge acquisition. In L.B. Resnick, ed., Knowing and Learning: Essays in Honor of Robert Glaser (pp. 393–451). Hillsdale, NJ: Erlbaum.
・Brown, R. & Pressley, M. (1994). Self-regulated reading and getting meaning from text: The Transactional Strategies Instruction model and its ongoing validation. In D.H. Schunk & B.J. Zimmerman, eds., Self-Regulation of Learning and Performance: Issues and Educa- tional Applications (pp. 155–180). Hillsdale, NJ: Erlbaum.
・Cross, D.R., & Paris, S.G. (1988). Developmental and instructional analyses of children’s metacognition and reading comprehension. Journal of Educational Psychology 80: 131– 142.
ここまで。
学生のメタ認知を高める手法を詳しく学びたいと思っていたので、2つのツール(SEMとRC)や、教育手法・ステップなどはとても参考になりました。
ツールは日本語訳して、授業にも取り入れてみたいと思います。
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