ベトナムの高校生が英語学習におけるプロジェクト型学習(PBL)に対して示す認知的・感情的・行動的な態度を調査した論文をレビューします。
論文はこちら(被引用数:30件 (2025年4月3日時点))
Quoc, T. T., & Phan, T. T. N. (2020). Attitudes toward the use of project-based learning: A case study of Vietnamese high school students. Journal of Language and Education, 6(3 (23)), 140-152.
ベトナムの高校におけるPBL型の英語学習において生徒がPBLをどのように受け止めているかを量質両面の混合研究により明らかにすることを目的とした論文です。
ベトナムの高等教育レベルでは、PBLに関する研究や教育実践が進んでいるものの、高等学校レベルでは、英語学習において生徒がPBLを通して学ぶ機会はほとんどなく、高校生を対象としたPBLに関する研究もあまり行われていないという背景から、当研究を実施することになったそうです。
内容をざっとまとめます。
【方法】
質問紙調査と半構造化インタビューを用いた混合研究法(Quantitative + Qualitative)
2018-2019年度の4月末から5月初めにかけて実施
・質問紙(60項目)
・A:性別、年齢、英語学習経験、プロジェクト実施に費やした時間などの人口統計学的情報
・B:PBLに対する生徒の態度を調査(強く同意する~強く同意しないの5段階リッカート尺度)
・クロンバックα係数は0.905で、質問票の信頼性は高かった
・半構造化インタビュー
・ベトナム語から英語に翻訳し、内容分析アプローチ(content analysis approach)を用いて分析
・馴れ合いと整理、コード化と再コード化、要約と解釈という3つのステップが採用された
・5つのグループのインタビュー対象者は、S1からS40までコード化された
・生徒はPBLに対して3つの態度要素(平均値M=3.83; SD=.42)で肯定的な態度を示した(Table 2)
・認知的態度、感情的態度、行動的態度に分けられた各構成要素に対する生徒の態度は比較的高かった
◆認知的態度(Cognitive)(M=3.86)
スピーキング能力、自己調整学習(SRLL)、21世紀型スキル(創造性・意思決定・批判的思考など)の向上を実感
◆感情的態度(Affective)(M=3.99)
チーム作業の責任感、クラス活動への興味、自信の向上
◆行動的態度(Behavioral)(M=3.59)
自主学習時間の増加、スピーキング練習の機会、フィードバック提供の意欲

【結果】
生徒のPBLに対する態度は全体的にポジティブであり、以下の3つの観点から評価されています:
◆認知的態度(Cognitive)(平均値 M=3.86)
スピーキング能力、自己調整学習(SRLL)、21世紀型スキル(創造性・意思決定・批判的思考など)の向上を実感
◆感情的態度(Affective)(M=3.99)
チーム作業の責任感、クラス活動への興味、自信の向上
◆行動的態度(Behavioral)(M=3.59)
自主学習時間の増加、スピーキング練習の機会、フィードバック提供の意欲
【考察】
・本研究では、ベトナムのEFL(外国語として英語を学ぶ)高校生が、認知的・感情的・行動的な側面すべてにおいてPBLに対して肯定的な態度を持っていることが明らかになった
◆認知的態度: 生徒は、PBLを通じて自己調整学習(SRLL)、スピーキング能力、および21世紀型スキル(創造性、意思決定、批判的思考、問題解決、コミュニケーション、技術活用、時間管理、自己評価)などが向上したと感じており、英語教科書へのPBL導入の意義も認識していた
◆感情的態度: PBLにより、生徒の自信・親切心・責任感・学習への関心が高まり、より能動的な学習環境に参加しやすくなったと考えていた
◆行動的態度: 生徒たちはPBLに積極的に取り組み、自己調整スキルの応用やスピーキング練習への時間投入が増えたことで成果を実感していた。また、自己評価スキルの向上や、他者への建設的なフィードバックにも注意を払うようになったと述べている。
・本研究の結果は、PBLが高校生の語学力だけでなく、学習方法や21世紀型スキルの育成にも効果的であることを示し、これにより生徒たちはより積極的に英語学習に取り組むようになったことが示されている
【教育学的示唆】
PBL - ベトナムの高校における必修活動・PBLを実施することで、教師と生徒の双方にメリットがあることは明らかなため、PBLを全生徒の必修活動にしなければならない
高校教師と生徒の役割におけるポジティブな変化
・目標を達成するためには、生徒が必要不可欠なスキルを身につけ、新しい学習方法にシフトする準備ができていることが重要
・生徒が新しい能動的な役割にシフトし、革新的な教育法を活用し、さらには個人的な信念を変える準備ができていれば、PBLを効果的かつ成功裏に実施することができる(Truong, 2017)
・教師が劣悪な学校インフラや利用可能な資源や時間の不足などの問題を克服することができれば、PBLで生徒の創造性と熱意を育むことができる(Tran & Tran, 2019)
PBLに対する生徒の肯定的態度
・PBLに対する生徒の肯定的な態度も、生徒の意欲や関心を引き出す重要な要因である
・生徒が実生活に関連したプロジェクトに対して積極的な姿勢を示すことで、知識を習得し、それを実生活の問題解決により効果的かつ効率的に応用することが可能になる
高校教師と生徒への十分なトレーニング
・インストラクター、ファシリテーター、スーパーバイザー、モニターという新たな役割を担うベトナムの高校教師に、政府機関による適切な研修を提供することが不可欠である
・適切なスキルを身につけるだけでなく、教師はプロジェクトの実施プロセスや生徒の評価方法についても学ぶ必要がある(Nguyen, 2017)
・プロジェクトを実施する教師は、生徒にプロジェクトを行うよう指導した経験があることが重要
・学習プロセスの中心にいるベトナムの高校生も、PBLを効果的に実施するための基本的な知識とソフトスキルを十分に備えるべきである(Tran & Tran, 2019)
ステークホルダーからの支援
・高校でのPBL実施には、関係者全員を巻き込むことが不可欠である
・Tran and Tran (2019)は、さまざまな情報源を通じて、生徒と教師のための情報を更新し、供給するべきだと提案している
・ベトナムの各都市や省庁のMOETやDOETは、プロジェクトの実施や評価に関する必要不可欠な情報を教師に提供するために、より多くの研修コースを企画したり、フォーラムを設計したりすべき
【限界】
・調査対象が1校のみで、結果の一般化には限界あり
・プレテスト・ポストテストが行われなかった
ここまで。
英語学習にPBLを取り入れることについて、生徒がどのように捉えるのかという態度を3つの視点(認知・感情・行動)から考察した内容でした。
量質両面から考察した結果、生徒のPBLに対する態度は3つの視点どれも肯定的なものでした。
加えて、自己調整学習スキルや21世紀型スキルも高まるという効果も。
PBLは学業成績の向上にも繋がるというのは多くの研究で示唆されていますが、その理由は、「得た知識と実践を結びつけることで記憶の定着に繋がるため」というのが自分の持っている印象でした。
しかし、当論文から、自分にはなかった成績向上に繋がる新たな視点を得ることができました。
具体的には、以下のようなスキルが成績向上に役立ったと生徒自身が述べています。
「時間管理スキル、テクノロジースキル、プレゼンテーションスキル、問題解決スキル、創造的スキル、批判的思考スキル、自己評価スキルなどのスキル向上、SRLLのパフォーマンス、チームワークへの関与、知識の拡大など」
時間管理や自己調整学習スキルというのがその他代表格的なところかなと思いますが、PBLを通してそれらのスキルが身につくことで、学業成績の向上にも繋がっていくんですね。
英語学習をどのようにPBL化したのかをもっと知りたかったのですが、具体的な授業内容についてはほとんど触れられていなかったのでその点は少し残念でした。
以下、メモ
・PBLの先駆者の一人であるデューイ(Dewey, 1959)によると、生徒が実社会の状況における問題に関連した意味のある課題を実施することで、より深い理解を達成することができる
・Brown(2001)は、学習者の学習プロセスにおける態度の重要性を強調している
論文はこちら(被引用数:30件 (2025年4月3日時点))
Quoc, T. T., & Phan, T. T. N. (2020). Attitudes toward the use of project-based learning: A case study of Vietnamese high school students. Journal of Language and Education, 6(3 (23)), 140-152.
ベトナムの高校におけるPBL型の英語学習において生徒がPBLをどのように受け止めているかを量質両面の混合研究により明らかにすることを目的とした論文です。
ベトナムの高等教育レベルでは、PBLに関する研究や教育実践が進んでいるものの、高等学校レベルでは、英語学習において生徒がPBLを通して学ぶ機会はほとんどなく、高校生を対象としたPBLに関する研究もあまり行われていないという背景から、当研究を実施することになったそうです。
内容をざっとまとめます。
調査方法
【調査地】
ベトナムのラムドン省の3つの高校のうちの1校として選ばれたBui Thi Xuan高校
【参加者】
Bui Thi Xuan高校の10~12年生の5クラスに所属するEFLの生徒155名
・アンケート回答者:147名
・インタビュー回答者:40名
・アンケート回答者:147名
・インタビュー回答者:40名
【方法】
質問紙調査と半構造化インタビューを用いた混合研究法(Quantitative + Qualitative)
2018-2019年度の4月末から5月初めにかけて実施
・質問紙(60項目)
・A:性別、年齢、英語学習経験、プロジェクト実施に費やした時間などの人口統計学的情報
・B:PBLに対する生徒の態度を調査(強く同意する~強く同意しないの5段階リッカート尺度)
・クロンバックα係数は0.905で、質問票の信頼性は高かった
・半構造化インタビュー
・各戦略に関する質問を事前に準備するために実施
・インタビューの質問はベトナム語に翻訳され、生徒もベトナム語で回答
・意図した情報が得られるかどうかを確認するため、パイロット・インタビューを実施
・4人の生徒から成る無作為に選ばれた10グループがインタビューに答えた
・インタビューの質問はベトナム語に翻訳され、生徒もベトナム語で回答
・意図した情報が得られるかどうかを確認するため、パイロット・インタビューを実施
・4人の生徒から成る無作為に選ばれた10グループがインタビューに答えた
【データ分析手順】
・混合研究法は、質的データと量的データの両方を作成
・アンケートから得られた量的データ
・SPSS 21.0を用いて(平均値、標準偏差、度数)で分析
・PBLに対する生徒の態度の平均値の意味は以下のように解釈された
・半構造化インタビューから収集された質的データ・アンケートから得られた量的データ
・SPSS 21.0を用いて(平均値、標準偏差、度数)で分析
・PBLに対する生徒の態度の平均値の意味は以下のように解釈された
1-1.80: strongly disagree
1.81-2.60: disagree
2.61-3.40: neutral
3.41- 4.20: agree
4.21 – 5.00: strongly agree
・ベトナム語から英語に翻訳し、内容分析アプローチ(content analysis approach)を用いて分析
・馴れ合いと整理、コード化と再コード化、要約と解釈という3つのステップが採用された
・5つのグループのインタビュー対象者は、S1からS40までコード化された
【結果】
・PBLに対する生徒の態度の総平均点はやや高かった(M=3.83; SD=.42)(Table 1)
→高校生のPBLに対する態度が比較的肯定的であることを意味している

→高校生のPBLに対する態度が比較的肯定的であることを意味している

・認知的態度、感情的態度、行動的態度に分けられた各構成要素に対する生徒の態度は比較的高かった
◆認知的態度(Cognitive)(M=3.86)
スピーキング能力、自己調整学習(SRLL)、21世紀型スキル(創造性・意思決定・批判的思考など)の向上を実感
◆感情的態度(Affective)(M=3.99)
チーム作業の責任感、クラス活動への興味、自信の向上
◆行動的態度(Behavioral)(M=3.59)
自主学習時間の増加、スピーキング練習の機会、フィードバック提供の意欲

【結果】
生徒のPBLに対する態度は全体的にポジティブであり、以下の3つの観点から評価されています:
◆認知的態度(Cognitive)(平均値 M=3.86)
スピーキング能力、自己調整学習(SRLL)、21世紀型スキル(創造性・意思決定・批判的思考など)の向上を実感
◆感情的態度(Affective)(M=3.99)
チーム作業の責任感、クラス活動への興味、自信の向上
◆行動的態度(Behavioral)(M=3.59)
自主学習時間の増加、スピーキング練習の機会、フィードバック提供の意欲
認知的態度
・PBLに対する認知的態度は、肯定的(M=3.86; SD=.432)であった(Table 3)
・ほとんどの生徒は、新しい英語教科書でPBLを実施する際に、PBLがスピーキング能力を高めること(M=4.16; SD=.794)とコミュニケーション能力を高めること(M=4.03; SD=.939)に同意
・生徒は、英語教科書のプロジェクトを行うことの重要性(M=3.79; SD=.796)、英語教科書のプロジェクトを行うことで知識を広げることの重要性(M=3.96; SD=.906)を見出した。
(自己調整学習)
・生徒はPBLが自己調整学習のパフォーマンスを高めるのに役立ったことに同意(M=3.95; SD=847)。
(21世紀型スキルに対する生徒の態度)
・創造的スキル(M=3.88; SD=.784)、意思決定スキル(M=3.80; SD=.852)、批判的思考スキル(M=3.90; SD=.830)、問題解決スキル(M=3.84; SD=.860)、コミュニケーションスキル(M=4.03; SD=.939)が向上
(学習評価)
・生徒は、自身の学習プロセスを評価する能力(M=3.57; SD=.929)と、クラスメートの学習成果を自分自身で評価する能力(M=3.70; SD=.895)が向上
・教科書のプロジェクトを行った後、学習成果が向上した(M=3.76; SD=.855)

・ほとんどの生徒は、新しい英語教科書でPBLを実施する際に、PBLがスピーキング能力を高めること(M=4.16; SD=.794)とコミュニケーション能力を高めること(M=4.03; SD=.939)に同意
・生徒は、英語教科書のプロジェクトを行うことの重要性(M=3.79; SD=.796)、英語教科書のプロジェクトを行うことで知識を広げることの重要性(M=3.96; SD=.906)を見出した。
(自己調整学習)
・生徒はPBLが自己調整学習のパフォーマンスを高めるのに役立ったことに同意(M=3.95; SD=847)。
(21世紀型スキルに対する生徒の態度)
・創造的スキル(M=3.88; SD=.784)、意思決定スキル(M=3.80; SD=.852)、批判的思考スキル(M=3.90; SD=.830)、問題解決スキル(M=3.84; SD=.860)、コミュニケーションスキル(M=4.03; SD=.939)が向上
(学習評価)
・生徒は、自身の学習プロセスを評価する能力(M=3.57; SD=.929)と、クラスメートの学習成果を自分自身で評価する能力(M=3.70; SD=.895)が向上
・教科書のプロジェクトを行った後、学習成果が向上した(M=3.76; SD=.855)

(インタビュー結果)
・生徒全員が、PBLが英語学習において重要な役割を果たしていることに同意。以下のように説明した:
・生徒全員が、PBLが英語学習において重要な役割を果たしていることに同意。以下のように説明した:
「PBLは、EFL高校生の将来のキャリアに必要なスキルを向上させるので、重要である」(S2)
「PBLは、生徒のさまざまなソフトスキルを活用する能力を形成するため、必須である。(S11)
「PBLを行うことは、スキルや自己調整学習を向上させるために重要である。"(S22)
・PBLが様々な形で生徒の学業向上に役立っていることが顕著であり、その一部として、時間管理スキル、テクノロジースキル、プレゼンテーションスキル、問題解決スキル、創造的スキル、批判的思考スキル、自己評価スキルなどのスキル向上、SRLLのパフォーマンス、チームワークへの関与、知識の拡大などが挙げられた。
・例「PBLをすることで、時間管理能力が向上し、期限までにプロジェクトを遂行する方法がわかるようになった 」(S10)
・その他、自己調整学習スキルや、21世紀型スキルの向上も確認された
・最も向上したスキルは、協調的スキルとテクノロジースキルであることは明らかであった
・例「PBLをすることで、時間管理能力が向上し、期限までにプロジェクトを遂行する方法がわかるようになった 」(S10)
・その他、自己調整学習スキルや、21世紀型スキルの向上も確認された
・最も向上したスキルは、協調的スキルとテクノロジースキルであることは明らかであった
【感情的態度】
・PBLに対する生徒の感情的態度を6つの測定項目で評価した(Table 4)
・生徒はPBLにおける様々な活動の実施に対して肯定的な態度を示した(M=3.99; SD=.558)
・ほとんどの生徒は、実践的な活動の中で、以下の内容に同意した
・チームで活動することに責任を持つようになった(M=4.14, SD=.799)
・友達と協力して問題を解決することが役に立つと感じる(M=4.12; SD=.835)
・自分自身で様々な情報源から情報を探すことに自信がついた(M=4.03; SD=.860)
・クラスの前で自分の考えを表現することに自信がついた(M=3.80; SD=.899)
・クラスメートと協力して教科書のプロジェクトを行うことが楽しい(M=3.87; SD=.974)
・教室での活動により興味を持つようになった(M=4.00; SD=.868)

・生徒はPBLにおける様々な活動の実施に対して肯定的な態度を示した(M=3.99; SD=.558)
・ほとんどの生徒は、実践的な活動の中で、以下の内容に同意した
・チームで活動することに責任を持つようになった(M=4.14, SD=.799)
・友達と協力して問題を解決することが役に立つと感じる(M=4.12; SD=.835)
・自分自身で様々な情報源から情報を探すことに自信がついた(M=4.03; SD=.860)
・クラスの前で自分の考えを表現することに自信がついた(M=3.80; SD=.899)
・クラスメートと協力して教科書のプロジェクトを行うことが楽しい(M=3.87; SD=.974)
・教室での活動により興味を持つようになった(M=4.00; SD=.868)

(インタビュー結果)
・生徒はPBLに対して肯定的な感情的態度を持っていることが明らかになった。次のような肯定的なコメントもあった:
・生徒はPBLに対して肯定的な感情的態度を持っていることが明らかになった。次のような肯定的なコメントもあった:
「PBLを導入したおかげで、グループで作業するときに責任感を持つようになった。PBLを導入したおかげで、グループワークをするときに責任感が強くなりました。」(S33)
「PBLを実施したことで、グループワークの際に、より役に立てるようになった。必要であれば、友達を助けたいと思うようになった。」(S21) (S21)
・PBLを実施することで、彼らはより自信を持ち、助け合い、楽しみ、興奮するようになった
【行動的態度】
・高校生のPBLに対する行動的態度を5つの項目で測定(Table 5)
・行動的態度の平均値は認知的・感情的態度よりも低かったが、肯定的であった(M=3.59; SD=.648)
・PBLを実施した場合、スピーキングスキル(M=3.80; SD=.926)や自己調整学習方略(M=3.61; SD=1.017)を練習する時間が増えたことに多くの生徒が同意していることが明らかになった
・自己調整学習の時間がより増加した(M=3.41; SD=1.004)
(21世紀型スキル)
・教科書でPBLを行った際に21世紀型の様々なスキルを活用した(M=3.60; SD=.881)
・友人への建設的なフィードバックをより集中的に行った(M=3.59; SD=1.039)などがあった

(インタビュー結果)
PBLに対して肯定的な行動的態度を示していた。ほとんどのインタビュイーがこれに同意した:
・行動的態度の平均値は認知的・感情的態度よりも低かったが、肯定的であった(M=3.59; SD=.648)
・PBLを実施した場合、スピーキングスキル(M=3.80; SD=.926)や自己調整学習方略(M=3.61; SD=1.017)を練習する時間が増えたことに多くの生徒が同意していることが明らかになった
・自己調整学習の時間がより増加した(M=3.41; SD=1.004)
(21世紀型スキル)
・教科書でPBLを行った際に21世紀型の様々なスキルを活用した(M=3.60; SD=.881)
・友人への建設的なフィードバックをより集中的に行った(M=3.59; SD=1.039)などがあった

(インタビュー結果)
PBLに対して肯定的な行動的態度を示していた。ほとんどのインタビュイーがこれに同意した:
「プロジェクトを行うために、より多くの時間を学習に費やすことで、より自己統制的な学習者になる。自宅での自己学習に3時間から5時間費やしています。」(S18)
「以前は友人の作品や製品を評価するのは難しかったが、今は友人へのフィードバックの仕方がわかるようになった。」(S35)
・肯定的な兆候として、自己調整学習のパフォーマンス、自己調整学習ストラテジー、スピーキングスキルの練習に費やす時間が増えたことが挙げられた
・生徒たちはプロジェクト実施中に21世紀型スキルを幅広く応用し、特に、生徒が友人に対して生産的なフィードバックをすることに集中していた
・生徒たちはプロジェクト実施中に21世紀型スキルを幅広く応用し、特に、生徒が友人に対して生産的なフィードバックをすることに集中していた
【考察】
・本研究では、ベトナムのEFL(外国語として英語を学ぶ)高校生が、認知的・感情的・行動的な側面すべてにおいてPBLに対して肯定的な態度を持っていることが明らかになった
◆認知的態度: 生徒は、PBLを通じて自己調整学習(SRLL)、スピーキング能力、および21世紀型スキル(創造性、意思決定、批判的思考、問題解決、コミュニケーション、技術活用、時間管理、自己評価)などが向上したと感じており、英語教科書へのPBL導入の意義も認識していた
◆感情的態度: PBLにより、生徒の自信・親切心・責任感・学習への関心が高まり、より能動的な学習環境に参加しやすくなったと考えていた
◆行動的態度: 生徒たちはPBLに積極的に取り組み、自己調整スキルの応用やスピーキング練習への時間投入が増えたことで成果を実感していた。また、自己評価スキルの向上や、他者への建設的なフィードバックにも注意を払うようになったと述べている。
・本研究の結果は、PBLが高校生の語学力だけでなく、学習方法や21世紀型スキルの育成にも効果的であることを示し、これにより生徒たちはより積極的に英語学習に取り組むようになったことが示されている
【教育学的示唆】
PBL - ベトナムの高校における必修活動・PBLを実施することで、教師と生徒の双方にメリットがあることは明らかなため、PBLを全生徒の必修活動にしなければならない
高校教師と生徒の役割におけるポジティブな変化
・目標を達成するためには、生徒が必要不可欠なスキルを身につけ、新しい学習方法にシフトする準備ができていることが重要
・生徒が新しい能動的な役割にシフトし、革新的な教育法を活用し、さらには個人的な信念を変える準備ができていれば、PBLを効果的かつ成功裏に実施することができる(Truong, 2017)
・教師が劣悪な学校インフラや利用可能な資源や時間の不足などの問題を克服することができれば、PBLで生徒の創造性と熱意を育むことができる(Tran & Tran, 2019)
PBLに対する生徒の肯定的態度
・PBLに対する生徒の肯定的な態度も、生徒の意欲や関心を引き出す重要な要因である
・生徒が実生活に関連したプロジェクトに対して積極的な姿勢を示すことで、知識を習得し、それを実生活の問題解決により効果的かつ効率的に応用することが可能になる
高校教師と生徒への十分なトレーニング
・インストラクター、ファシリテーター、スーパーバイザー、モニターという新たな役割を担うベトナムの高校教師に、政府機関による適切な研修を提供することが不可欠である
・適切なスキルを身につけるだけでなく、教師はプロジェクトの実施プロセスや生徒の評価方法についても学ぶ必要がある(Nguyen, 2017)
・プロジェクトを実施する教師は、生徒にプロジェクトを行うよう指導した経験があることが重要
・学習プロセスの中心にいるベトナムの高校生も、PBLを効果的に実施するための基本的な知識とソフトスキルを十分に備えるべきである(Tran & Tran, 2019)
ステークホルダーからの支援
・高校でのPBL実施には、関係者全員を巻き込むことが不可欠である
・Tran and Tran (2019)は、さまざまな情報源を通じて、生徒と教師のための情報を更新し、供給するべきだと提案している
・ベトナムの各都市や省庁のMOETやDOETは、プロジェクトの実施や評価に関する必要不可欠な情報を教師に提供するために、より多くの研修コースを企画したり、フォーラムを設計したりすべき
【限界】
・調査対象が1校のみで、結果の一般化には限界あり
・プレテスト・ポストテストが行われなかった
ここまで。
英語学習にPBLを取り入れることについて、生徒がどのように捉えるのかという態度を3つの視点(認知・感情・行動)から考察した内容でした。
量質両面から考察した結果、生徒のPBLに対する態度は3つの視点どれも肯定的なものでした。
加えて、自己調整学習スキルや21世紀型スキルも高まるという効果も。
PBLは学業成績の向上にも繋がるというのは多くの研究で示唆されていますが、その理由は、「得た知識と実践を結びつけることで記憶の定着に繋がるため」というのが自分の持っている印象でした。
しかし、当論文から、自分にはなかった成績向上に繋がる新たな視点を得ることができました。
具体的には、以下のようなスキルが成績向上に役立ったと生徒自身が述べています。
「時間管理スキル、テクノロジースキル、プレゼンテーションスキル、問題解決スキル、創造的スキル、批判的思考スキル、自己評価スキルなどのスキル向上、SRLLのパフォーマンス、チームワークへの関与、知識の拡大など」
時間管理や自己調整学習スキルというのがその他代表格的なところかなと思いますが、PBLを通してそれらのスキルが身につくことで、学業成績の向上にも繋がっていくんですね。
英語学習をどのようにPBL化したのかをもっと知りたかったのですが、具体的な授業内容についてはほとんど触れられていなかったのでその点は少し残念でした。
以下、メモ
・PBLの先駆者の一人であるデューイ(Dewey, 1959)によると、生徒が実社会の状況における問題に関連した意味のある課題を実施することで、より深い理解を達成することができる
・Brown(2001)は、学習者の学習プロセスにおける態度の重要性を強調している
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