問題解決型学習(Problem-based learning)の実施内容を評価するための尺度開発論文をレビューします。

論文はこちら(被引用数:15件 (2025年3月27日時点))
Patria, B. (2015). The validity and reliability of a problem-based learning implementation questionnaire. Journal of Educational Evaluation for Health Professions, 12(22).

内容をざっとまとめます。

【目的】
・問題解決型学習(Problem-based learning)の実施内容を評価するための質問票の妥当性と信頼性を証明すること

【方法】
・インドネシアの医学部を卒業した225名を対象に過去に受講したPBLについてのアンケート調査を実施
 ※2009年2月5日から2011年7月8日までに医学の学位を取得した卒業生
・確認的因子分析により、質問票の妥当性を評価

【尺度】
・尺度は、PBLの6つの特徴(Barrows, 1996)に基づく
 ①生徒中心の学習(student-centered learning)
 ②小グループでの学習(learning in small groups)
 ③ファシリテーターとしての教師(teacehr as facilitator)
 ④学習の刺激としての問題(problems as stimulus for learning)
 ⑤現実世界を反映した問題(problems that reflect the real world)
 ⑥自己主導型学習(self-directed learning)
・リッカート尺度:1(「まったく一致しない」)〜5(「非常に一致する」)
・各要因の指標は、ファシリテーターとしての教師を除き、本研究のために特別に開発された

(下位尺度の作成方法)
①学生中心の学習:PBLのいくつかの定義(Brandes & Ginnis, 1986)に基づく
②小グループでの学習:グループは5〜9人の学生で構成されるべきという考え方に基づく(Barrows, 1996)
 ・その他、小集団にはいくつかの特徴があるべきであると主張した研究に基づく(肯定的で非脅迫的な雰囲気、学生の積極的な参加とグループでの相互作用、グループ目標の遵守、臨床との関連性と統合、思考と問題解決を促進する特定の教育的教材(例:ケース)の効果的な使用)(Steinert)
③ファシリテーターとしての教師:Dolmans and Ginns(2005)のチューターの有効性に関する質問票を参考(この質問表は、建設的または能動的な学習、自己主導的な学習、文脈的な学習、協調的な学習、個人内行動という5つの基本的な要素を表す11の項目から構成)
・自己主導型学習因子については、本研究でも同じ因子があるため除外
④学習の刺激としての問題:問題の4つの基準に基づく(Majoor et al., 1990)
 1. PBLの問題は、学生の知識レベルにマッチしていること
 2. 学生のさらなる学習活動への動機付けとなること
 3. 適用される分析プロセスに適していること
 4. 学部の教育目標に適合するよう学生を導くものであること
⑤現実世界を反映した問題:PBL(Marchais, 1999)における問題構築の基準から開発
 ・構造化されていない問題でなければならないという提案に基づき、追加の項目が構成された(Savery, 2006)
⑥自己主導型学習:SDLの定義に基づき作成
・SDLとは、個人が主体的に学習ニーズを診断し、学習目標を立て、学習のための資源を特定し、学習戦略を選択・実行し、学習成果を評価するプロセスである(Brockett, 1982)
・SDLには自己モニタリングと自己評価の要素が含まれるという考え方に基づき、付加的な指標が作成(Barrows, 2000)
table2

【統計分析】
・尺度の因子と指標の関係を確認的因子分析(CFA)で検証
・構造方程式モデリングでは、AMOS 20とR(Lavaan・semパッケージ)を用いて実施
・全ての因子モデルが良好な適合度(CFI ≥ 0.97、RMSEA < 0.08)を示した

【結果】
・CFAモデル(図1)を207名のデータに当てはめた結果以下の結果が得られた
 ・χ²(384) = 713.564, P = 0.000
 ・RMSEA = 0.065(< 0.08で良好)
 ・CFI = 0.923(≥ 0.92で良好)

・モデルは30の観察変数で構成され、サンプル数が250未満の条件において、推奨される適合指標の基準を満たしていた。

 →このモデルは再構成せずにPBL質問票の最終的な測定モデルとして採用された

fig1


・構成概念妥当性を評価するために、以下の指標を算出(表3)

 ・因子間相関の二乗値
 ・平均抽出分散(AVE)
 ・複合信頼性(CR)
 ・平均共有二乗分散(ASV)

table3

・内的一貫性を確認するために信頼性分析を実施

 ・各因子のCronbachのαは0.787~0.921で、すべて0.70を上回った
 ・質問紙全体のα係数は0.963で非常に高く、内的一貫性が高いことを示した


【考察】
・CFAの結果、PBL実施質問票の適合度は良好で、測定モデルがデータに適合していることが示された
・適合度に加えて、構成概念妥当性のエビデンスを提供することが必要
・構成概念妥当性は、表面的妥当性、収束的妥当性、判別的妥当性を確立することが必要

【表面的妥当性(Face Validity)】
測定項目が「見た目として」妥当であるかを評価
・PBL実施質問票の草案は、以下の専門家によってチェックされた

【収束的妥当性(Convergent Validity)】
・構成要素の指標が高い割合で分散を共有している状態
・妥当性を満たす条件:
 ・標準化因子負荷が0.5以上(理想は0.7以上)
 ・平均抽出分散(AVE)が0.5以上
 ・複合信頼性(CR)が0.7以上
・本研究の結果:
 ・3項目のみが0.7未満だったが、すべて0.5以上を満たした
 ・AVEは0.581〜0.661の範囲で、全因子で0.5以上
 ・CRは0.804(学生中心の学び)〜0.906(自己主導学習)で、全因子で0.7以上
・これらの結果は、項目が測定誤差よりも潜在構成概念をよく反映していることを示す

【判別的妥当性(Dscriminant Validity)】
・構成要素が他の構成要素から真に区別される程度
・妥当性の確認方法:
 ・各因子のAVEが、他因子との2乗相関よりも高いこと
 ・AVEが**平均共有2乗分散(ASV)**よりも高いこと
 ・クロスローディング(1項目が複数因子に関連すること)がないこと
・本研究の結果:
 ・全ての因子で、AVE > 他因子との2乗相関およびASV
 ・例:学生中心の学習(SCL)のAVE 0.581 > 他因子との2乗相関最大値 0.477
 ・図1により、すべての項目が1つの因子のみにローディング(クロスローディングなし)

【まとめ】
・PBLの個々の構造モデルはすべて許容可能な適合度を有しており、PBL測定モデルの適合度は十分なものであることが示された
・すべての構造モデルは、良好なモデル適合の要件を満たしており、理論モデルがデータによく適合していることを示している
・構成要素妥当性のエビデンスは、因子負荷量、AVE、二乗構成要素間相関、複合信頼性の許容値によって支持された。さらに、クロスローディング因子はなかった
・以上の結果から、PBL実施質問票は妥当で信頼性が高く、評価目的に適している
・この質問票は、PBLの実施に関する卒業生の見解を評価するために使用することができる

ここまで。
なかなか見つからなかった問題解決型学習(PBL)の尺度開発論文。非常に大きな発見でした。
実施したPBLについて、学術的に重要だとされているポイントをどれだけ実施できていたかを計測できるので、実際に授業でも活用してみたいと思います。
ただ、内容が医学部を対象としたものなので、医学以外の分野で使用する際には修正が必要かと思います。

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