前回に続き、Pulse of PBL: Cultivating Equity Through Social Emotional Learningの第4章をレビューしていきます。
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1. Introduction(イントロダクション)
2. Transformative Social and Emotional Learning(変容的SEL)
3. Components of Project Based Learning(PBLの構成要素)
4. Developing Self-Awareness(自己認識の育成)
5. Building Self-Management(自己管理の構築)
6. Sharpening Social Awareness(社会的認識の向上)
7. Forging Relationship Skills(人間関係スキルの養成)
8. Exercising Responsible Decision-Making(責任ある意思決定のエクササイズ)
9. Assessing SEL Comptetencies(SEL能力の評価)
10. How Will You Revolutionize the World(あなたはどのように世界を変革するか)
4. Developing Self-Awareness(自己認識の育成)
第4章はCASELの社会情動的スキルの5つの要素の1番目である自己認識の育成について書かれています。
・自己認識(Self-Awareness)とは、自分が何者であるかを正確に把握し、自分の強みに基づいて自信を持つこと
・伝統的な教室においては学業以外のスキルが軽視され、多くの生徒は、自らの価値や能力を疑っている
・PBLは、すべての生徒に、学業と非学業スキルを橋渡しする意味のある学びを通して、自信を育む機会を提供する
上記のような自己認識を育むためのPBLを如何に実践するかということについて、以下の7つの観点からまとめられています。
1. 教室文化(Classroom Culture)
2. グループの役割(Group Roles)
3. 生徒のアイデンティティ(Student Identity)
4. 声と選択(Voice and Choice)
5. 振り返り(Reflection)
6. 公開プレゼンテーション(Public Presentations)
7. 自律的学習(Self-Directed Learning)
では、ひとつづつまとめていきます。
・生徒が自己認識を育てるには、教室で「ありのままの自分」でいても安心できる環境が必要
・自己認識の育成を始める第一歩は、生徒が自分のアイデンティティを正確に捉え、自分の感情とどう向き合うかを理解すること
・そのためのSEL版のチェックイン・ルーチンとして「ムードメーター(Mood Meter)」が活用できる

・ムードメーターとは、色分けされた4色のスピナーで、生徒がその日の気分を色で表現する
・教室の入り口付近に掲示し、生徒に「今どの色の気分か?」と問いかけることにより、生徒の準備状況を教師が視覚的に把握でき、授業開始前に内容を調整する必要があるかを判断できる
・赤・青・黄・緑のゴム製ブレスレットでも代用できる(一日の中で気分が変わった場合、生徒は自由に別の色に交換することができる)
・感情に名前を付けることを終えた後は、怒りや悲しみといった困難な感情を健康的・建設的に扱うためのスキルを身につける必要がある
・教師は、学年初めから教室文化を構築しておく必要がある。単に授業計画を配布して「やるべきこと/やってはいけないこと」を説明するのではなく、Mattinga教師は新しい職場に入る新人研修を参考にした、生徒向けのオリエンテーションを設計した。彼女の最初の数週間は、社会人が新しい職に就いたときに受ける研修の慣習に倣ったものであった。職場では、新入社員が役割を十分に理解し、適切に遂行できるように訓練されることが期待されている。
・学業上の役割を果たすためにも、単にクラスでの期待行動を口頭で伝えるのではなく、生徒に自己反省・自己方向づけ・自己管理のスキルを教え、継続的にそれらを実践するよう指導
・時間をかけて生徒に明確なレッスンを行うことで、彼らの自己認識を育み、さらに状況分析のための普遍的な枠組み(スキャフォルド)を用いることで、教室全体に共通の理解をもたらすことができる。
Tチャート・スキャフォルド
①生徒は「control」という語の名詞と動詞の両方の定義を調べ、教室に掲示する
②小グループでこの語が人に対してどのように適用されるかを議論し、Talking Circle(第6章で登場)を用いて、「control」という語の名詞・動詞としての定義を共に作成していく
③「control(コントロール)」という語が生徒たちの生活にどう関わっているかを、「実行可能(Actionable) vs. 状況依存(Circumstantial)」のTチャートを使って検討する
・この活動では以下のように定義
・実行可能(Actionable):自分がコントロールできること
・状況依存(Circumstantial):自分がコントロールできないこと
In2Outプロトコル
①生徒は自分自身の生活の中における「実行可能」な面と「状況依存」な面をそれぞれリスト化(In)
②生徒はパートナー(2)と共有し、共通点を見出してリストに加える
③全体での「トーキング・サークル」(Out)に移る
・バスケットに入れた質問プロンプトやシナリオから1枚ずつ取り出し、話し合いのきっかけとして使用
以下、プロンプト例:
・自分の力の及ばない状況に直面したとき、あなたは普段どのように感じるか?
・自分ではどうにもできなかった出来事や経験を1つ共有せよ。そのときどう反応したか? 今になって、違う対応ができたと思うか?
・この活動を通じて生徒は「世界全体は変えられないが、自分の行動や反応にはコントロールできることがたくさんある」という事実に気づく
・教師は、生徒が「自分でできること(Tチャートの左側)」に焦点を当て、建設的な反応の意義や効果を話し合うよう導くべき
・プロジェクト中に、生徒が困難や不安に直面したときには、「実行可能 vs. 状況依存」のTチャートを参照することで、視点を整理し思考を導くことができる
・状況が「状況依存的」であり、それを乗り越える手段が存在しない場合には、撤退の選択肢もある
・生徒の悩みに対応する際は、以下のような簡潔な問いを投げかけることが有効:
・「それは実行可能か? それとも状況依存か?」
・「もし状況依存なら、なぜその話を続けているのか?」
・「もし実行可能なら、その問題を解決するためにどんな戦略をとれるか?」
・生徒が自分なりの解決策を提示した場合には、教師はその戦略が実行可能かどうかを一緒に検討する
・こうしたプロセスを繰り返すうちに、生徒は教師を「問題解決してくれる人」ではなく、「伴走するメンター」や「ファシリテーター」として認識するようになる
・オリエンテーションの残りの部分は、生徒個々に合わせてカスタマイズ
・生徒たちがよく欠けていると感じるコーピングスキル(対処能力)をリストアップし、それぞれのスキルの目的を説明するための対話型レッスン、スキャフォルド(足場)、アクティビティを設計
・オリエンテーションでは、ゲーム、ロールプレイ、映画のクリップ、ディスカッション、特別講師の招待などを用い、学習内容に入る前に、望ましい教室文化と高いパフォーマンス基準を確立することを目指す
・著者らのクラスでは、学年初めに自分の関心とスキルを記入するインベントリー(アンケート)を実施
・プロジェクトを開始するたびに、生徒はその情報をもとに自分の役割を選ぶ
・生徒は自ら役割を選び、管理する中で、自己主導的なエージェンシーを発揮する
・MattingaとMikeは、生徒が自分の強みを最も発揮できる役割からスタートすることを推奨
・そうすることで、自分がグループにどんな価値をもたらすかを理解し、その後、段階的により挑戦的な役割へと移行しながら能力を伸ばしていく
・多くの生徒にとって、「自分が他の人とどう違うか」を考えたことはほとんどない
・Myers-Briggsタイプ指向性テスト(MBTI)は、自分の特性や傾向を客観的に振り返る簡便な手段である
・Mattingaは、Personality Diagnostic ILeva(人格診断スキル)を用いて、生徒がまず自分自身を理解し、それから他者との関係構築の計画を立てられるように支援する。
・Mattingaは、この議論を呼びやすいテストを、生徒の性格を断定するためではなく、若者たちとの間に「自分にとってのストレス要因は何か」という会話を生み出すために活用する
・これにより、生徒は自分の「感情の引き金」を理解し、それを避けたり、避けられない場合にはどう対処するかを学ぶことができる。目的は、対立が起きたときにどう行動するかを生徒が事前に判断できるようにすることである。
・MBTIの各タイプを振り返った後、生徒は「同じタイプ」の者同士で集まり、自分たちに共通する強みやストレス要因、潜在的な対立領域についてリスト化する。続いて、生徒たちは「異なるタイプ」の混合グループを作り、より多様な視点で強みと課題の比較を行う。

・Personality Diagnostic ILevaにおける生徒の振り返りプロセスを活用し、各チームの「グループ契約(Group Contract)」を完成
・自己認識(Self-Awareness)を促すために、生徒一人ひとりが自らの個性やスキルセットを理解し、それをプロジェクトの課題に持ち込めるようになることが重要
・実社会でのチームづくりでは、それぞれ異なるスキルを持った人材を選び、雇用することが重要とされているため、グループの全員に、同じタスクをやり遂げたことを証明させるのは誤った考え
・真の協働的なグループは互いに依存し合っており、各メンバーがそれぞれの才能を発揮することで、最終的な成果物を完成させていく
・生徒が自分の最も得意なスキルをプロジェクトに貢献できるようになると、質の高い協働作業に取り組む可能性が高まる
・生徒が自己認識を高めるためには、パーソナルプロジェクトから始めることもできる(以下、様々なアイデンティティに関する手法)
セルフィー・ミニプロジェクト(テンプレートはPulseofPBL.comに掲載)
①生徒が自分の写真(セルフィー)を撮り、いくつかのスライドを用いて自分の強みや関心を紹介
②生徒たちは互いのことを知ることができ、また、自分の強みに気づくことができる
③この情報は、教員がその後に設計するプロジェクトや、生徒がグループ内で担う役割を考えるうえで貴重な材料となる
アイデンティティ・インベントリ
①生徒は自分自身を表す画像を描くか探して、中央の枠に配置する
②自分のアイデンティティの中で重要だと考える要素をリストアップ
③以下の問いに基づいて振り返りを行い、これらの要素が自己認識にどう影響しているか考察する
・自分の世界観を最も形成しているアイデンティティ要素は何か?
・他者がまったく異なる視点を持っているとき、どのように対立を解決するか?
・それらのアイデンティティ要素は、自分の選択や行動にどのように影響しているか?
年初における「ライフストーリー」の共有
・学年の早い段階で、生徒に自分の人生のストーリーを語らせる活動を行う
・目的:生徒が他者の経験を通して共通点を見出し、つながりを感じることである
・他者の人生や状況、価値観をより深く知ることで、「思いやりのある共感(compassionate empathy)」が育まれやすくなる
・生徒が互いのことをよく知るようになると、人間関係の質が変わり、教室内での交流の仕方も大きく変わっていく
①最初に教師自身が、自分のアイデンティティ・ストーリーを共有し、自分がどのようにして現在の自分になったのか、個人的な詳細を交えて語る(教師が自ら脆弱性を見せるモデルとなる行為)
※アイデンティティ・インベントリを活用することで、話がぶれずに済む
②教師の話に触発されて、生徒たちも自分自身のストーリーを語るようになる
③小グループに分け、アイデンティティ・インベントリやPersonality Diagnostic ILevaを併用して、生徒がストーリーを構築・共有する場を設ける
アイデンティティ・セルフポートレート(自己肖像画)
・多くの若者は最初、目に見える特性(肌の色、性別、髪型など)に注目するが、本当に重要なアイデンティティの指標の多くは、内面にあり、目には見えにくい
→この眼に見える・見えないアイデンティティの特性の違いを理解することが重要な学び
①「セルフポートレートが教室の壁に掲示される予定である」ことを生徒に事前に伝える
→「安心して共有できる情報」だけを開示するよう促す
②生徒たちは紙の上に頭と肩の輪郭を描く(カラーペン、鉛筆、クレヨンなどを使用)
③紙の中央に線を引き、左側には自分の顔や服を着色、右側には「クラスに共有したいアイデンティティの特徴」を書き出す
ヒューマン・ギャラリー・ウォーク(Human Gallery Walk)
目的:他者からの視点で記述してもらう
①5〜10人の生徒ボランティアを募り、壁や窓の前に立たせる
②他の生徒には付箋を15〜20枚ずつ配布し、各生徒の前に均等にグループ分けして並ばせる
③生徒達は各ボランティア生徒に向けてポジティブな特徴を一つ付箋に書き、ボランティアの周囲の壁に貼っていく
※これらの特徴は、身体的な特徴ではなく、性格特性、志、インスピレーション、ポジティブ等の資質とする
④全員が特徴を出し終えたら、観客グループは時計回りに次のボランティアの前へと移動
⑤このプロセスを、すべてのボランティアの周囲に付箋が貼られるまで繰り返す
⑥付箋に囲まれたボランティアの生徒たちを一人ずつ写真に収める
⑦数日後、別の生徒グループでこのプロセスを繰り返し、最終的にすべての生徒の写真を集める
⑧最後のサプライズとして、それぞれの写真を印刷し、100円ショップなどで購入したフレームに入れてプレゼントするのもよい
その他のアクティビティ
・小学生:「What makes me unique?(私をユニークにしているものは何?)」というDriving Question(探究の問い)に取り組む(様々なキャラクターやアイデンティティにまつわる絵本を全体読みする活動と組み合わせるとよい)
・中学生:エリー・ヴィーゼルの『夜』やアンネの日記を読みながら、「不正に直面したとき、私はどうするだろう?」「困難な状況にどう対処するか?」という問いについて考察する
・高校生:自分自身について考えながらスラムポエトリー(即興詩)を作ったり、発表したりすることで、「What makes me, me?(私を私たらしめているものは何か?)」という問いに答えようとする活動が可能

・この問題を解消するため、生徒にさまざまな方法で学びの成果を示すことを認める(漫画を描く、寸劇、口頭発表等)
・これは生徒の「自己認識(Self-Awareness)」を高め、自尊心を支えることにつながる
・マイクとマティンガは、その後さらにこの成功体験を土台に、ライティングスキルの育成へと発展させていった。
・初めてのリサーチでも、生徒たちは選択肢があったことで探究に夢中になる
・PBLは、全員に自分の強みを生かしながら学びにアクセスし、自己肯定感を高める機会を提供する
・ただし、生徒がPBLに初めて触れる場合、「選択肢の多さ」がかえって負担になることもある
・目的や期待が明確でないと、生徒たちは混乱し、教師へ助けを求める
生徒「やるべき内容はわかったけど、どういうふうに仕上げればいいのかが分かりません。」
マイク:「どうすべきか、僕にも分からないんだ。もし僕が見本を見せたら、みんな同じものを作ってしまう。これは君たちのプロジェクトだ。形式や表現は自由に選んでいい。これは君たちの作品なんだ」
・この瞬間、生徒たちは「自分たちにも学びをコントロールする力がある」と気づいた
・生徒がプロジェクトに取り組む中で、教師は適切なスキャフォルディングを提供し、PBLに不慣れな生徒が安心して取り組めるように支援する必要がある
・生徒は、自信をつけ、準備が整った段階で、段階的にVoice and Choiceへと導かれるべきである
・実際には、リフレクションは5つのすべてのコンピテンシーに絡むものである
・ハーバード大学のDavid PerkinsやGavriel Salomonらは、リフレクションによって新しい状況に学びを転移させる「High Road Transfer)」の条件が生まれることを発見
・リフレクションはプロジェクトの終わりに限定されがちだが、PBLのプロセス全体を通じてリフレクションを行うことは、生徒が自らの成長を実感する上で極めて重要
・生徒が自身の感情、強み、成長を振り返ることで自己認識が高まり、学びの過程全体をより深く捉えられるようになる
・「リフレクションは、学びが定着する“Velcro(マジックテープ)”の瞬間を創り出す」(Jim Bentley: PBL専門家)
・PBLにおける精神の一つは、生徒が探究、試行、発見の道を歩むことであり、生徒は道中で必然的に失敗を経験する。これはまさに学びの本質
・教育において「失敗(fail)」という言葉には否定的な意味が付きまとうが、むしろ学びの過程での失敗は不可欠であり、それを受け入れる文化とマインドセットの転換が必要
・PBL教師のネイト・ランゲル(Nate Langel)は、予測通りの結果が出なかったときには「やったな!最高だ!」とハイタッチをしながら声をかけ、「失敗は歓迎されるものである」という文化を築いている
・PBLでは、生徒は初稿、失敗、フィードバック、修正というサイクルの中で学ぶ。この思考の転換によって、生徒はリスクを取ることを恐れず、最初の試みに対して改善の機会があることを理解する
・その他の内省手法:各生徒に割り当てられたSELのグループ役割に基づく内省カードを持たせる
・生徒は日誌や週次の記録をつけ、プロジェクト作業中の自分たちのグループの機能やSELの強みと弱みに関して内省する
・低学年の生徒は、他グループのパートナーと意見を交換するターン・アンド・トーク法を用いて考えを深める
・生徒は継続的な振り返りを通して自己認識を高め、自身の仕事やスキルの改善を図る
・公開プレゼンテーションを成功させるには、実用的なコミュニケーション能力が必要であり、これは、PBLにおいて最も重要なスキルの一つであり、PBLを通して養われる
・成果を公開することで、自分の仕事が聴衆の目を通して評価されるため、自己認識(Self-Awareness)に前向きな影響を与える
→その解決策には意味があり、自らの成果物が社会に変化をもたらす可能性を持つという実感を持つ
・専門家による評価やフィードバックは、PBLにおける生徒の努力を正当に評価する手段となり、生徒の自己信頼感を高める
・プレゼンテーション能力は、PBLによって最も顕著な成長が見られる領域の一つ
・生徒は自分の学びをクラスメートや社会に向けて発表し続けることで、内向的な生徒でも自信を持ち、自己主張できるようになる

・「学習性無力感は、希望喪失の別のかたちにすぎない」 ザレッタ・ハモンド
・PBLにおいて教師の仕事は、生徒の関心と学習内容を結びつけるあらゆる方法を見出すこと
・PBLは、生徒がどのようにリサーチし、整理し、プロジェクトを管理するかというスキルを教える
・すべての生徒は、これらの社会情動スキルを高めることで依存から自立へと移行できる
・「置いていかれる」経験に慣れた生徒の心構えを変えるため、生徒主導または教師主導のワークショップを要請する文化を醸成する(参加は任意)
・ワークショップとは、プロジェクト作業中に静かなスペースで行われるミニ情報セッション
・生徒がワークショップに出るかどうかは任意である
・参加が必要だと思われた生徒が参加しなかった場合のフォロー
「〜(課題や内容)の進捗はどう?ちょっと困ってるように見えるけど、さっきそのためのワークショップをやったんだ。君も参加すべきだったよ。」この声かけの後はすぐに立ち去る。
・参加すべきだった生徒全員にこのやりとりをしたら、次のように全体に伝える:
「いまのワークショップをもう一度やることにしました。参加できなかった人のためです。」
・生徒主導のワークショップも効果的(生徒は、自分のスキルを見せびらかすのが好き)
「フェミ、君の主張文は本当に素晴らしかった。読者を引き込む要素が全部入っていた。5〜10分で、その書き方をみんなに教えてくれないか?」
Reflection Questions(省察のための問い)
・各生徒の感情状態を毎日どのように把握するか?
・生徒が自分の感情を自己評価できるよう、どのように教えるか?
・生徒が自らのアイデンティティがグループ内での相互作用に与える影響を理解できるよう、どのように支援するか?
・カリキュラムの中でどの分野において、生徒がアイデンティティを探求するプロジェクトを立ち上げることができるか?
・生徒の強みに基づいて、どのようにVoice and Choice(発言権と選択権)を活用するか?
・プロジェクト計画の中で、意図的な省察の時間をどこに設けるか?
・生徒がプレゼンテーションや他者との対話を通じて、効果的なコミュニケーション能力を身につけるために、どのような実践を行うか?
・生徒が自信を育み、自律的な学習者となるために、どのように支援するか?
ここまで。
第4章は、自己認識を育むため「教室文化」「グループの役割」「生徒のアイデンティティ」「声と選択」「振り返り」「公開プレゼンテーション」「自律的学習」という7つの観点から様々な取り組みが紹介されていました。このように俯瞰してみると、PBLの様々な場面において、学習者の自己認識を深めることができるのだと改めて実感させられました。同時に、自分自身が行なっているPBLについても、まだまだ改善の余地があると気付かされました。
特に、自分の授業では、学生が自身のアイデンティティについて理解するプロセスが薄いまま、グループワークをスタートしてしまっていたように感じました。グループメンバーの強みなどをお互いが知っていれば、より適切に役割分担ができるはずなので、これは早速取り入れてみたいと思います。急がば回れじゃないですが、情報のインプットやタスクをこなすことを急ぐのではなく、まずはじっくりと自己・他者を知り、チームを作るところからですね。アイデンティティに関しては、様々なワークが紹介されていたので色々試してみようと思います。ムードメーターや色付きのブレスレットなど、今日の感情をグループで話し合うところから授業を開始するということはすぐにでもできそうです。
また、自律的学習(Self-directed learning)で紹介されていた生徒主導のワークショップも、もっと取り入れていきたいと思いました。ワークショップを実施する側の生徒にとって自尊心が育まれるでしょうし、聴く側の生徒にとっても、教員が話すよりもしっかり聞いてくれるんじゃないかと思います。
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1. Introduction(イントロダクション)
2. Transformative Social and Emotional Learning(変容的SEL)
3. Components of Project Based Learning(PBLの構成要素)
4. Developing Self-Awareness(自己認識の育成)
5. Building Self-Management(自己管理の構築)
6. Sharpening Social Awareness(社会的認識の向上)
7. Forging Relationship Skills(人間関係スキルの養成)
8. Exercising Responsible Decision-Making(責任ある意思決定のエクササイズ)
9. Assessing SEL Comptetencies(SEL能力の評価)
10. How Will You Revolutionize the World(あなたはどのように世界を変革するか)
4. Developing Self-Awareness(自己認識の育成)
第4章はCASELの社会情動的スキルの5つの要素の1番目である自己認識の育成について書かれています。
・自己認識(Self-Awareness)とは、自分が何者であるかを正確に把握し、自分の強みに基づいて自信を持つこと
・伝統的な教室においては学業以外のスキルが軽視され、多くの生徒は、自らの価値や能力を疑っている
・PBLは、すべての生徒に、学業と非学業スキルを橋渡しする意味のある学びを通して、自信を育む機会を提供する
上記のような自己認識を育むためのPBLを如何に実践するかということについて、以下の7つの観点からまとめられています。
1. 教室文化(Classroom Culture)
2. グループの役割(Group Roles)
3. 生徒のアイデンティティ(Student Identity)
4. 声と選択(Voice and Choice)
5. 振り返り(Reflection)
6. 公開プレゼンテーション(Public Presentations)
7. 自律的学習(Self-Directed Learning)
では、ひとつづつまとめていきます。
1. 教室文化(Classroom Culture)
・教師がチェックインやチェックアウトの時間を日常に取り入れることで、生徒の状態を把握し、安心感のある教室文化を築くことができる・生徒が自己認識を育てるには、教室で「ありのままの自分」でいても安心できる環境が必要
・自己認識の育成を始める第一歩は、生徒が自分のアイデンティティを正確に捉え、自分の感情とどう向き合うかを理解すること
・そのためのSEL版のチェックイン・ルーチンとして「ムードメーター(Mood Meter)」が活用できる

・ムードメーターとは、色分けされた4色のスピナーで、生徒がその日の気分を色で表現する
・教室の入り口付近に掲示し、生徒に「今どの色の気分か?」と問いかけることにより、生徒の準備状況を教師が視覚的に把握でき、授業開始前に内容を調整する必要があるかを判断できる
・赤・青・黄・緑のゴム製ブレスレットでも代用できる(一日の中で気分が変わった場合、生徒は自由に別の色に交換することができる)
・感情に名前を付けることを終えた後は、怒りや悲しみといった困難な感情を健康的・建設的に扱うためのスキルを身につける必要がある
・教師は、学年初めから教室文化を構築しておく必要がある。単に授業計画を配布して「やるべきこと/やってはいけないこと」を説明するのではなく、Mattinga教師は新しい職場に入る新人研修を参考にした、生徒向けのオリエンテーションを設計した。彼女の最初の数週間は、社会人が新しい職に就いたときに受ける研修の慣習に倣ったものであった。職場では、新入社員が役割を十分に理解し、適切に遂行できるように訓練されることが期待されている。
・学業上の役割を果たすためにも、単にクラスでの期待行動を口頭で伝えるのではなく、生徒に自己反省・自己方向づけ・自己管理のスキルを教え、継続的にそれらを実践するよう指導
・時間をかけて生徒に明確なレッスンを行うことで、彼らの自己認識を育み、さらに状況分析のための普遍的な枠組み(スキャフォルド)を用いることで、教室全体に共通の理解をもたらすことができる。
Tチャート・スキャフォルド
①生徒は「control」という語の名詞と動詞の両方の定義を調べ、教室に掲示する
②小グループでこの語が人に対してどのように適用されるかを議論し、Talking Circle(第6章で登場)を用いて、「control」という語の名詞・動詞としての定義を共に作成していく
③「control(コントロール)」という語が生徒たちの生活にどう関わっているかを、「実行可能(Actionable) vs. 状況依存(Circumstantial)」のTチャートを使って検討する
・この活動では以下のように定義
・実行可能(Actionable):自分がコントロールできること
・状況依存(Circumstantial):自分がコントロールできないこと
In2Outプロトコル
①生徒は自分自身の生活の中における「実行可能」な面と「状況依存」な面をそれぞれリスト化(In)
②生徒はパートナー(2)と共有し、共通点を見出してリストに加える
③全体での「トーキング・サークル」(Out)に移る
・バスケットに入れた質問プロンプトやシナリオから1枚ずつ取り出し、話し合いのきっかけとして使用
以下、プロンプト例:
・自分の力の及ばない状況に直面したとき、あなたは普段どのように感じるか?
・自分ではどうにもできなかった出来事や経験を1つ共有せよ。そのときどう反応したか? 今になって、違う対応ができたと思うか?
・この活動を通じて生徒は「世界全体は変えられないが、自分の行動や反応にはコントロールできることがたくさんある」という事実に気づく
・教師は、生徒が「自分でできること(Tチャートの左側)」に焦点を当て、建設的な反応の意義や効果を話し合うよう導くべき
・プロジェクト中に、生徒が困難や不安に直面したときには、「実行可能 vs. 状況依存」のTチャートを参照することで、視点を整理し思考を導くことができる
・状況が「状況依存的」であり、それを乗り越える手段が存在しない場合には、撤退の選択肢もある
・生徒の悩みに対応する際は、以下のような簡潔な問いを投げかけることが有効:
・「それは実行可能か? それとも状況依存か?」
・「もし状況依存なら、なぜその話を続けているのか?」
・「もし実行可能なら、その問題を解決するためにどんな戦略をとれるか?」
・生徒が自分なりの解決策を提示した場合には、教師はその戦略が実行可能かどうかを一緒に検討する
・こうしたプロセスを繰り返すうちに、生徒は教師を「問題解決してくれる人」ではなく、「伴走するメンター」や「ファシリテーター」として認識するようになる
・オリエンテーションの残りの部分は、生徒個々に合わせてカスタマイズ
・生徒たちがよく欠けていると感じるコーピングスキル(対処能力)をリストアップし、それぞれのスキルの目的を説明するための対話型レッスン、スキャフォルド(足場)、アクティビティを設計
・オリエンテーションでは、ゲーム、ロールプレイ、映画のクリップ、ディスカッション、特別講師の招待などを用い、学習内容に入る前に、望ましい教室文化と高いパフォーマンス基準を確立することを目指す
2. グループの役割(Group Roles)
・「生徒がどのようにグループで働き、どんな役割を担うか」を明確にすることはオリエンテーションの重要な要素・著者らのクラスでは、学年初めに自分の関心とスキルを記入するインベントリー(アンケート)を実施
・プロジェクトを開始するたびに、生徒はその情報をもとに自分の役割を選ぶ
・生徒は自ら役割を選び、管理する中で、自己主導的なエージェンシーを発揮する
・MattingaとMikeは、生徒が自分の強みを最も発揮できる役割からスタートすることを推奨
・そうすることで、自分がグループにどんな価値をもたらすかを理解し、その後、段階的により挑戦的な役割へと移行しながら能力を伸ばしていく
・多くの生徒にとって、「自分が他の人とどう違うか」を考えたことはほとんどない
・Myers-Briggsタイプ指向性テスト(MBTI)は、自分の特性や傾向を客観的に振り返る簡便な手段である
・Mattingaは、Personality Diagnostic ILeva(人格診断スキル)を用いて、生徒がまず自分自身を理解し、それから他者との関係構築の計画を立てられるように支援する。
・Mattingaは、この議論を呼びやすいテストを、生徒の性格を断定するためではなく、若者たちとの間に「自分にとってのストレス要因は何か」という会話を生み出すために活用する
・これにより、生徒は自分の「感情の引き金」を理解し、それを避けたり、避けられない場合にはどう対処するかを学ぶことができる。目的は、対立が起きたときにどう行動するかを生徒が事前に判断できるようにすることである。
・MBTIの各タイプを振り返った後、生徒は「同じタイプ」の者同士で集まり、自分たちに共通する強みやストレス要因、潜在的な対立領域についてリスト化する。続いて、生徒たちは「異なるタイプ」の混合グループを作り、より多様な視点で強みと課題の比較を行う。

・Personality Diagnostic ILevaにおける生徒の振り返りプロセスを活用し、各チームの「グループ契約(Group Contract)」を完成
・自己認識(Self-Awareness)を促すために、生徒一人ひとりが自らの個性やスキルセットを理解し、それをプロジェクトの課題に持ち込めるようになることが重要
・実社会でのチームづくりでは、それぞれ異なるスキルを持った人材を選び、雇用することが重要とされているため、グループの全員に、同じタスクをやり遂げたことを証明させるのは誤った考え
・真の協働的なグループは互いに依存し合っており、各メンバーがそれぞれの才能を発揮することで、最終的な成果物を完成させていく
・生徒が自分の最も得意なスキルをプロジェクトに貢献できるようになると、質の高い協働作業に取り組む可能性が高まる
3. 生徒のアイデンティティ(Student Identity)
・アイデンティティの探究は、自己認識を深める入り口であることから、学年初めに生徒のことを知り、教室のコミュニティを形成するための導入アクティビティを行うことが有用である・生徒が自己認識を高めるためには、パーソナルプロジェクトから始めることもできる(以下、様々なアイデンティティに関する手法)
セルフィー・ミニプロジェクト(テンプレートはPulseofPBL.comに掲載)
①生徒が自分の写真(セルフィー)を撮り、いくつかのスライドを用いて自分の強みや関心を紹介
②生徒たちは互いのことを知ることができ、また、自分の強みに気づくことができる
③この情報は、教員がその後に設計するプロジェクトや、生徒がグループ内で担う役割を考えるうえで貴重な材料となる
アイデンティティ・インベントリ
①生徒は自分自身を表す画像を描くか探して、中央の枠に配置する
②自分のアイデンティティの中で重要だと考える要素をリストアップ
③以下の問いに基づいて振り返りを行い、これらの要素が自己認識にどう影響しているか考察する
・自分の世界観を最も形成しているアイデンティティ要素は何か?
・他者がまったく異なる視点を持っているとき、どのように対立を解決するか?
・それらのアイデンティティ要素は、自分の選択や行動にどのように影響しているか?
年初における「ライフストーリー」の共有
・学年の早い段階で、生徒に自分の人生のストーリーを語らせる活動を行う
・目的:生徒が他者の経験を通して共通点を見出し、つながりを感じることである
・他者の人生や状況、価値観をより深く知ることで、「思いやりのある共感(compassionate empathy)」が育まれやすくなる
・生徒が互いのことをよく知るようになると、人間関係の質が変わり、教室内での交流の仕方も大きく変わっていく
①最初に教師自身が、自分のアイデンティティ・ストーリーを共有し、自分がどのようにして現在の自分になったのか、個人的な詳細を交えて語る(教師が自ら脆弱性を見せるモデルとなる行為)
※アイデンティティ・インベントリを活用することで、話がぶれずに済む
②教師の話に触発されて、生徒たちも自分自身のストーリーを語るようになる
③小グループに分け、アイデンティティ・インベントリやPersonality Diagnostic ILevaを併用して、生徒がストーリーを構築・共有する場を設ける
アイデンティティ・セルフポートレート(自己肖像画)
・多くの若者は最初、目に見える特性(肌の色、性別、髪型など)に注目するが、本当に重要なアイデンティティの指標の多くは、内面にあり、目には見えにくい
→この眼に見える・見えないアイデンティティの特性の違いを理解することが重要な学び
①「セルフポートレートが教室の壁に掲示される予定である」ことを生徒に事前に伝える
→「安心して共有できる情報」だけを開示するよう促す
②生徒たちは紙の上に頭と肩の輪郭を描く(カラーペン、鉛筆、クレヨンなどを使用)
③紙の中央に線を引き、左側には自分の顔や服を着色、右側には「クラスに共有したいアイデンティティの特徴」を書き出す
ヒューマン・ギャラリー・ウォーク(Human Gallery Walk)
目的:他者からの視点で記述してもらう
①5〜10人の生徒ボランティアを募り、壁や窓の前に立たせる
②他の生徒には付箋を15〜20枚ずつ配布し、各生徒の前に均等にグループ分けして並ばせる
③生徒達は各ボランティア生徒に向けてポジティブな特徴を一つ付箋に書き、ボランティアの周囲の壁に貼っていく
※これらの特徴は、身体的な特徴ではなく、性格特性、志、インスピレーション、ポジティブ等の資質とする
④全員が特徴を出し終えたら、観客グループは時計回りに次のボランティアの前へと移動
⑤このプロセスを、すべてのボランティアの周囲に付箋が貼られるまで繰り返す
⑥付箋に囲まれたボランティアの生徒たちを一人ずつ写真に収める
⑦数日後、別の生徒グループでこのプロセスを繰り返し、最終的にすべての生徒の写真を集める
⑧最後のサプライズとして、それぞれの写真を印刷し、100円ショップなどで購入したフレームに入れてプレゼントするのもよい
その他のアクティビティ
・小学生:「What makes me unique?(私をユニークにしているものは何?)」というDriving Question(探究の問い)に取り組む(様々なキャラクターやアイデンティティにまつわる絵本を全体読みする活動と組み合わせるとよい)
・中学生:エリー・ヴィーゼルの『夜』やアンネの日記を読みながら、「不正に直面したとき、私はどうするだろう?」「困難な状況にどう対処するか?」という問いについて考察する
・高校生:自分自身について考えながらスラムポエトリー(即興詩)を作ったり、発表したりすることで、「What makes me, me?(私を私たらしめているものは何か?)」という問いに答えようとする活動が可能

4. 声と選択(Voice and Choice)
・従来型の教育では、生徒が自分の学びの成果をどのように示すかについて発言権がなく、ほとんどが「書くこと」によって評価されるため、書くのが苦手な生徒は自信をなくし、「自分はバカだ」と感じてしまうことがある・この問題を解消するため、生徒にさまざまな方法で学びの成果を示すことを認める(漫画を描く、寸劇、口頭発表等)
・これは生徒の「自己認識(Self-Awareness)」を高め、自尊心を支えることにつながる
・マイクとマティンガは、その後さらにこの成功体験を土台に、ライティングスキルの育成へと発展させていった。
・初めてのリサーチでも、生徒たちは選択肢があったことで探究に夢中になる
・PBLは、全員に自分の強みを生かしながら学びにアクセスし、自己肯定感を高める機会を提供する
・ただし、生徒がPBLに初めて触れる場合、「選択肢の多さ」がかえって負担になることもある
・目的や期待が明確でないと、生徒たちは混乱し、教師へ助けを求める
生徒「やるべき内容はわかったけど、どういうふうに仕上げればいいのかが分かりません。」
マイク:「どうすべきか、僕にも分からないんだ。もし僕が見本を見せたら、みんな同じものを作ってしまう。これは君たちのプロジェクトだ。形式や表現は自由に選んでいい。これは君たちの作品なんだ」
・この瞬間、生徒たちは「自分たちにも学びをコントロールする力がある」と気づいた
・生徒がプロジェクトに取り組む中で、教師は適切なスキャフォルディングを提供し、PBLに不慣れな生徒が安心して取り組めるように支援する必要がある
・生徒は、自信をつけ、準備が整った段階で、段階的にVoice and Choiceへと導かれるべきである
5. 振り返り(Reflection)
・CASELは、リフレクション(振り返り)を「責任ある意思決定(Responsible Decision Making)」の下位カテゴリーとして位置付けている・実際には、リフレクションは5つのすべてのコンピテンシーに絡むものである
・ハーバード大学のDavid PerkinsやGavriel Salomonらは、リフレクションによって新しい状況に学びを転移させる「High Road Transfer)」の条件が生まれることを発見
・リフレクションはプロジェクトの終わりに限定されがちだが、PBLのプロセス全体を通じてリフレクションを行うことは、生徒が自らの成長を実感する上で極めて重要
・生徒が自身の感情、強み、成長を振り返ることで自己認識が高まり、学びの過程全体をより深く捉えられるようになる
・「リフレクションは、学びが定着する“Velcro(マジックテープ)”の瞬間を創り出す」(Jim Bentley: PBL専門家)
・PBLにおける精神の一つは、生徒が探究、試行、発見の道を歩むことであり、生徒は道中で必然的に失敗を経験する。これはまさに学びの本質
・教育において「失敗(fail)」という言葉には否定的な意味が付きまとうが、むしろ学びの過程での失敗は不可欠であり、それを受け入れる文化とマインドセットの転換が必要
・PBL教師のネイト・ランゲル(Nate Langel)は、予測通りの結果が出なかったときには「やったな!最高だ!」とハイタッチをしながら声をかけ、「失敗は歓迎されるものである」という文化を築いている
・PBLでは、生徒は初稿、失敗、フィードバック、修正というサイクルの中で学ぶ。この思考の転換によって、生徒はリスクを取ることを恐れず、最初の試みに対して改善の機会があることを理解する
・その他の内省手法:各生徒に割り当てられたSELのグループ役割に基づく内省カードを持たせる
・生徒は日誌や週次の記録をつけ、プロジェクト作業中の自分たちのグループの機能やSELの強みと弱みに関して内省する
・低学年の生徒は、他グループのパートナーと意見を交換するターン・アンド・トーク法を用いて考えを深める
・生徒は継続的な振り返りを通して自己認識を高め、自身の仕事やスキルの改善を図る
6. 公開プレゼンテーション(Public Presentations)
・生徒がフィードバックをもとに自身の成果物を洗練させた後、次はそれを公に発表する準備を行う・公開プレゼンテーションを成功させるには、実用的なコミュニケーション能力が必要であり、これは、PBLにおいて最も重要なスキルの一つであり、PBLを通して養われる
・成果を公開することで、自分の仕事が聴衆の目を通して評価されるため、自己認識(Self-Awareness)に前向きな影響を与える
→その解決策には意味があり、自らの成果物が社会に変化をもたらす可能性を持つという実感を持つ
・専門家による評価やフィードバックは、PBLにおける生徒の努力を正当に評価する手段となり、生徒の自己信頼感を高める
・プレゼンテーション能力は、PBLによって最も顕著な成長が見られる領域の一つ
・生徒は自分の学びをクラスメートや社会に向けて発表し続けることで、内向的な生徒でも自信を持ち、自己主張できるようになる

7. 自律的学習(Self-Directed Learning)
・教師の役割は答えを与えることではなく、生徒の自立学習への旅路における味方となること・「学習性無力感は、希望喪失の別のかたちにすぎない」 ザレッタ・ハモンド
・PBLにおいて教師の仕事は、生徒の関心と学習内容を結びつけるあらゆる方法を見出すこと
・PBLは、生徒がどのようにリサーチし、整理し、プロジェクトを管理するかというスキルを教える
・すべての生徒は、これらの社会情動スキルを高めることで依存から自立へと移行できる
・「置いていかれる」経験に慣れた生徒の心構えを変えるため、生徒主導または教師主導のワークショップを要請する文化を醸成する(参加は任意)
・ワークショップとは、プロジェクト作業中に静かなスペースで行われるミニ情報セッション
・生徒がワークショップに出るかどうかは任意である
・参加が必要だと思われた生徒が参加しなかった場合のフォロー
「〜(課題や内容)の進捗はどう?ちょっと困ってるように見えるけど、さっきそのためのワークショップをやったんだ。君も参加すべきだったよ。」この声かけの後はすぐに立ち去る。
・参加すべきだった生徒全員にこのやりとりをしたら、次のように全体に伝える:
「いまのワークショップをもう一度やることにしました。参加できなかった人のためです。」
・生徒主導のワークショップも効果的(生徒は、自分のスキルを見せびらかすのが好き)
「フェミ、君の主張文は本当に素晴らしかった。読者を引き込む要素が全部入っていた。5〜10分で、その書き方をみんなに教えてくれないか?」
Reflection Questions(省察のための問い)
・各生徒の感情状態を毎日どのように把握するか?
・生徒が自分の感情を自己評価できるよう、どのように教えるか?
・生徒が自らのアイデンティティがグループ内での相互作用に与える影響を理解できるよう、どのように支援するか?
・カリキュラムの中でどの分野において、生徒がアイデンティティを探求するプロジェクトを立ち上げることができるか?
・生徒の強みに基づいて、どのようにVoice and Choice(発言権と選択権)を活用するか?
・プロジェクト計画の中で、意図的な省察の時間をどこに設けるか?
・生徒がプレゼンテーションや他者との対話を通じて、効果的なコミュニケーション能力を身につけるために、どのような実践を行うか?
・生徒が自信を育み、自律的な学習者となるために、どのように支援するか?
ここまで。
第4章は、自己認識を育むため「教室文化」「グループの役割」「生徒のアイデンティティ」「声と選択」「振り返り」「公開プレゼンテーション」「自律的学習」という7つの観点から様々な取り組みが紹介されていました。このように俯瞰してみると、PBLの様々な場面において、学習者の自己認識を深めることができるのだと改めて実感させられました。同時に、自分自身が行なっているPBLについても、まだまだ改善の余地があると気付かされました。
特に、自分の授業では、学生が自身のアイデンティティについて理解するプロセスが薄いまま、グループワークをスタートしてしまっていたように感じました。グループメンバーの強みなどをお互いが知っていれば、より適切に役割分担ができるはずなので、これは早速取り入れてみたいと思います。急がば回れじゃないですが、情報のインプットやタスクをこなすことを急ぐのではなく、まずはじっくりと自己・他者を知り、チームを作るところからですね。アイデンティティに関しては、様々なワークが紹介されていたので色々試してみようと思います。ムードメーターや色付きのブレスレットなど、今日の感情をグループで話し合うところから授業を開始するということはすぐにでもできそうです。
また、自律的学習(Self-directed learning)で紹介されていた生徒主導のワークショップも、もっと取り入れていきたいと思いました。ワークショップを実施する側の生徒にとって自尊心が育まれるでしょうし、聴く側の生徒にとっても、教員が話すよりもしっかり聞いてくれるんじゃないかと思います。
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