「チーム内省性(team reflexivity)」がチームパフォーマンスに与える影響についてメタ分析した論文をレビューします。

論文はこちら(被引用数:9件 (2025年6月29日時点))
Leblanc, P. M., Harvey, J. F., & Rousseau, V. (2024). A meta-analysis of team reflexivity: Antecedents, outcomes, and boundary conditions. Human Resource Management Review, 101042.

昨年、2024年に出たばかりのメタ分析論文。
チームの内省性に関する従来の前提を問い直すとともに、チームの効果性における内省性の役割をさらに理解するために一石を投じてくれた内容です。
まずは、ざっくりとポイントだけをまとめます。

研究目的
「チーム内省性(team reflexivity)」がチームのイノベーションおよびパフォーマンスにどのような影響を与えるかを体系的に明らかにし、同時にその影響を調整・媒介する要因を特定する

方法
・メタ分析対象: 65件の独立した研究(N = 約11,000チーム)
・目的変数:チーム・パフォーマンス、チーム・イノベーション、創造性、満足度など
・調整変数(モデレーター): チームサイズ、チームの在籍期間(tenure) 心理的安全性、リーダーシップスタイル、業界特性など

選定基準
(a)実証的かつ定量的であること
(b)チームメンバーによって完了されたリファレント・シフト・コンセンサスに基づくチーム内省性の尺度を使用していること
(c)分析の単位がチームレベルであり、少なくとも2人の回答者が存在すること
(d)大学院生および大学卒業後の大人で構成されるチームで実施されていること
(e)効果量(たとえば相関係数)を計算するために十分な情報を報告していること

以下の研究を除外
(a)概念的、レビュー的、または質的な研究
(b)高校のスポーツチームや学級のような高校生のサンプルを使用した研究
・「デブリーフィング」(内省性を誘発することを目的とした事後レビューやガイド付き内省)を扱った研究も除外(Konradt et al., 2016;Leblanc et al., 2022;Lyubovnikova et al., 2017;Schippers, West, & Edmondson, 2018)
※内省性はチームのデブリーフィングの重要な側面であるが、それでも概念的には異なる(Allen et al., 2018, p.511):「…デブリーフィングは、内省性を誘発することを意図している」
・結果、合計で171件の独立した研究(N=13,568チーム)が得られた。

結果
・チーム・内省性は、チームパフォーマンス(r=.30)およびイノベーション(=.45)に中程度以上の正の影響を及ぼす

(特に効果が高い状況)
・心理的安全性が高い
・チームの在籍期間が長い(学習機会が蓄積される)
・チームサイズが適度(大きすぎない)
・リーダーがタスク志向または変革型リーダーシップをとっている

(ネガティブ要因)
・チーム間の葛藤が高い場合、内省性の効果は減弱する傾向

仮説と結果
H1:チーム内省性は、チームパフォーマンスと正の関係がある
H2:チームサイズは、チーム内省性とチームパフォーマンスの間の正の関係を増加させる
H3:チーム在籍期間は、チーム内省性とチームパフォーマンスとの正の関係を高める
H4:チーム心理的安全性はチーム内省性と正の関係にある
H5:チーム心理的安全性は、チーム内省性とチームパフォーマンスの関係を媒介する
H6:参加支援型リーダーシップはチームの心理的安全性に正の関連をもつ
H7:心チームの心理的安全性は、参加支援型リーダーシップがチーム内省性に与える影響を媒介する
H8:参加支援型リーダーシップは、心理的安全性を高めることで内省性を促進し、チームパフォーマンスを向上させる
※H1~8は全て支持

理論的貢献
・チーム学習理論の文脈において、内省性が明確なパフォーマンス要因であることを実証
・チームが「戦略的に自らを振り返る能力」を持つことで、外部環境への適応力や革新性が高まるという仮説を支持

実務的示唆
・チームに定期的なリフレクションの時間・枠組みを設けることは、業務効率や創造性の向上に繋がる
・リーダーは心理的安全性を確保し、振り返りの文化を醸成することが重要

限界と今後
・文化的背景の影響は十分に検討されていない
・多くの研究が自己報告データに依存しており、客観的パフォーマンスとの関連の検討も必要
・介入研究による因果関係の検討が求められる

以下、各章をより詳細にまとめます。

1. はじめに
(チームが直面する課題とその影響)
・今日のワークチームは、タスクの複雑性や責任の拡大、技術的知識の急増などにより、目標や作業プロセスを振り返り、適応する時間が必要(Harvey, Bresman, Edmondson, & Pisano, 2022)
・これを怠ると、確証バイアスに陥り、客観的な情報処理が困難になる
・情報の誤解・読み違い、情報過多や囲い込み、集団浅慮(groupthink)といった問題が生じやすい(Schippers & Rus, 2021)。
(チーム内省性の意義と効果)
・チーム内省性(team reflexivity)がチームパフォーマンスにおいて中心的な役割を果たす(Schippers, Edmondson, & West, 2014;Aubé, Francoeur, Sponem, & Séguin, 2021;Harvey & Green, 2022)
・ただし、一部の研究ではチーム内省性とパフォーマンスの間に否定的な関連が示されている(Breugst, Preller, Patzelt, & Shepherd, 2018;De Dreu, 2002;Hirst & Mann, 2004;Ji & Yan, 2020)
 →チーム内省性の価値は一貫していないという課題がある
(リーダーシップの役割)
・チームの議論や意思決定への積極的参加を促すリーダーは、リフレクションの増加と心理的安全性の向上を通じて、チームパフォーマンス向上に貢献する
(本研究の特徴と貢献)
・先行のメタ分析は、チーム学習行動を包括的に扱うか、チームパフォーマンスを十分に評価していなかった
・本研究は、West(2000)の定義に基づくチームリフレクションのみに焦点を当て、その効果を明確に評価
・Harvey et al.(2022)の示すように、包括的アプローチではなく、特定の構成概念(リフレクション)に焦点を当てることが妥当である
(実務・理論への貢献)
・チーム内省性の先行要因・成果、リーダーシップの役割に関する理論的知見を提供
・明確な構成概念の定義により、HR実務家やリーダーが介入戦略を立てる際の実践的示唆となる
・メタ分析により、研究デザインやサンプル特性が効果量に及ぼすばらつきを精査でき、より完全な理解を提供
(理論モデルと心理的安全性)
・本研究では、リーダーシップ→チームリフレクション→心理的安全性→チームパフォーマンスとうい逐次的媒介モデルを検証
・議論への積極的参加を促すリーダーが、リフレクションの文脈を築くことで、心理的安全性が中核的なメカニズムとして働くくとを理論的に補強する

2. 理論と仮説
・チームの内省性(team reflexivity)の定義(West, 2000, p. 296)
 「チームメンバーが、集団の目的、戦略(たとえば意思決定)およびプロセス(たとえばコミュニケーション)について明示的に振り返り、意見を交わし、それらを現在または予想される状況に適応させる程度」 
・チームの内省性の相互に関連する3つのサブプロセス
 ①振り返り(reflection)
 ②計画(planning)
 ③適応(adaptation)
 ※これらのサブプロセス間の関係性はほとんど検討されてこなかった(例外 Wiedig & Konradt, 2011)
・多くの研究はチームの内省性を一次元の構成概念として捉え、主に振り返りに焦点を当てている(Harvey & Green, 2022;Lyubovnikova, Legood, Turner, & Mamakouka, 2017;Schippers et al., 2013)
・これには主としてチーム内での情報探索活動および情報評価活動が含まれる(Konradt et al., 2015)
・チームの内省性は、Edmondson(1999)が提唱するチーム学習の概念化と非常に類似している
・Edmondson の定義「質問を投げかけ、フィードバックを求め、実験し、結果を振り返り、行動のエラーや予期せぬ成果について議論するという、振り返りと行動の継続的なプロセス」(p. 353)

2.1 チーム内省性とチームパフォーマンス
・「チームを情報処理者として捉える視点」(Hinss et al., 1997)は、チームの内省性(reflexivity)がいかにしてパフォーマンスに寄与するかを理解するための有用なレンズを提供する
・個人と同様に、チームも情報処理において失敗することがある
・メンバーのバイアス(例:ベースレートの誤謬、Nagao, Tindale, Hinsz, & Davis, 1985;コミットメントのエスカレーション、Whyte, 1993)は、チーム内のコミュニケーションが不適切であると、より増幅される傾向がある(Hinsz et al., 1997)
・適切なバイアス除去技術を用いない場合、情報処理の優位性は個人よりも損なわれる可能性がある
・Schippers et al.(2014)は、内省性が効果的なパフォーマンス向上の基盤を整えると主張
【典型的な情報処理の失敗を防ぐ3つの効果】
(a)関連情報の検索および共有の失敗
(b)含意を抽出し、そこから結論を導くことの失敗
(c)過去の結論を更新することの失敗

・個人と異なり、チームは多様な情報アクセスがある(Edmondson & Harvey, 2018;Hollenbeck et al., 1995)
・チームは、意思決定時に主に共有された情報に依存している(Stasser, 1999;Stasser & Titus, 1985)
・関連情報の探索や共有の失敗は、チームの重要な視点を欠くことに繋がり、こうした失敗は、動機づけが低い(Schippers et al., 2014)か、チーム内の圧力により同調的になることで起こる可能性がある(Janis, 1982;Schippers & Rus, 2021)
・結果として、非機能的な作業プロセスの維持や複雑な課題への対応力低下に繋がる(Brodbeck et al., 2007;Hart, 1991)
・チーム内省性は、こうした焦点を拡張するために活用されうる。たとえば、メンバーが意見の違いを重視するチームでは、単に多数派意見に従うのではなく、共有されていない情報に基づいてより高品質な意思決定がなされる可能性が高い(Postmes et al., 2001)
・異なる視点を統合することが困難な場合、チームは全体像を把握することができず(Homan et al., 2007)、多様な知識の統合にも失敗することがある(Kooij-de Bode et al., 2008)
・チームの内省性は、表象のズレにチームが気づき、解消に導く手段ともなり得る(Schippers et al., 2014)
・外的環境を克服しても、過去の推論や仮説を更新しないままに意思決定を行ってしまうこともある(Schippers & Rus, 2021)
・チームがルーチンに慣れすぎると、それを続ける傾向が生まれ、誤りの修正が難しくなる(Gersick & Hackman, 1990)
・Schippers et al.(2014)の研究もまた、結果責任を求めるのではなく、意思決定の質を問うことによって、チームが情報の再評価や結論の見直しを行う契機になると主張
・要するに、内省性が情報処理に関するエラーの脆弱性を減少させる限り、それはチームのパフォーマンスに正の寄与をもたらすと考えられる。このように考え、以下の仮説を提示する。

仮説1:チーム内省性は、チームパフォーマンスと正の関係がある

2.2.1 チームサイズ
・多くの研究者にとって、チームの構成メンバー数はその認知的能力と同義(Haleblian & Finkelstein, 1993;Hill, 1982)
・チームが大きくなるほど、活用できる情報資源の幅が広がるため(Gallupe et al., 1992)、複雑な課題の達成において小規模チームよりも有利となる可能性がある(Wuchty et al., 2007)
・一方、メンバー数が増加することで、チーム内のコミュニケーションはより困難となる(Campion et al., 1996)
・メンバーが増えれば、個々人の発言への注意が困難となり(Yuan & Van Knippenberg, 2022)、共通認識の形成も難しくなる
・チーム内のコミュニケーションチャネルの増加は、一部のメンバーが議論を乗っ取る条件を生み出しうり(Carroll et al., 2001)、少数派の知識が共有されなくなったり、モチベーションの低下が起こる可能性がある(Stasser et al., 1989)
・チームが大きくなると、サブグループの形成が起こりやすくなり(Shaw, 2004)、認知的表象の分断や表象的ギャップが発生する恐れがあり、グループ間の理解や評価が困難になる(Cronin & Weingart, 2007;Edmondson & Harvey, 2018)
・一方で、小規模チームでは、メンバー同士が知識を簡単に共有しやすいため、内省の必要性が相対的に低く、効果が薄れる可能性がある(Schmutz et al., 2018)
・場合、内省性は冗長であると見なされるか、メンバーのモチベーションを損なう恐れがある(Moreland & McMinn, 2010)
・小規模チームではモニタリングが容易であるため(Yuan & Van Knippenberg, 2022)、熟慮的な振り返りを行う必要性は低い

仮説2.チームサイズは、チーム内省性とチームパフォーマンスの間の正の関係を増加させる。

2.2. チーム在籍期間(Team tenure)
・チーム在籍期間は、チームパフォーマンスに影響する重要な設計要因(Harvey et al., 2022;Kozlowski, Gully, Nason, & Smith, 1999)
・長く一緒に働いているチームは、
 ・強固なルーティンを作ることで安心感を得ようとし(Gersick & Hackman, 1990)、外部の情報源を排除する傾向があり(Katz, 1982)、問題について内省が表面的なレベルにとどまる可能性が高く(Schippers et al., 2014;West, 2000)、パフォーマンスを最大限に発揮する能力を妨げる(Otte, Konradt, Garbers, & Schippers, 2017)
 ・蓄積された知識とスキルにより、パフォーマンス向上に貢献する可能性も高い(Becker, 1962)
 ・チームタスクに精通し、それらを助けたり妨げたりする条件に敏感になる(Gonzalez-Mulé et al., 2020)
・過去にチーム内で何が機能し、何が機能しなかったのかを認識することで、パフォーマンスの問題を理解する能力は新人よりも高くなる(Hass, 2006)
・同様に、より経験のあるメンバーはチーム内の役割の内実について深い理解を持っている(Edmondson & Harvey, 2018)
・これは、彼らが過去にその役割保持者と緊密に連携していたため、あるいは自らその役割を担った経験があるためである(Mumford, Van Iddekinge, Morgeson, & Campion, 2008)。
・在籍期間が長いチームは、
 ・最も重要な問題にチームの注意を集中させることができる
 ・現在進行中の行動の可能な帰結を詳細に述べたり、過去の経験に基づく教訓を共有したりすることで、問題点を明らかにすることに寄与する(Grouti et al., 2023)
 ・各メンバーが持つ独自の専門性への理解が深いため、チームごとに有益な意見や視点を引き出すことができる(Edmondson & Harvey, 2018)
・在籍期間が短いチームは、
 ・パフォーマンスのばらつきの原因を発見したり、どの情報が共有されるべきかの判断において経験が不足している可能性(Chen, Bamberger, Song, & Vashdi, 2018)
 ・チーム内の役割分担が未成熟で(Kozlowski et al., 1999)、知識が異なるメンバーをどのように活用すべきか分からずに混乱することもある(Wegner, 1987)
 ・結果として、情報統合し共通の解決策に結びつける能力が制限される(Moreland, 1999)。

仮説3:チーム在籍期間は、チーム内省性とチームパフォーマンスとの正の関係を高める

2.3. チーム心理的安全性、チーム内省性、およびチームパフォーマンス
・チーム内省性に関する議論は、チームタスクやチーム状態(team emergent states)に影響を与える信念に関係
・チーム状態とは、チームメンバー間の相互作用を通じて初期の段階で進化し、後にチーム形成や学習に影響を与えるとされるもの(Cronin et al., 2011;Harvey, Leblanc, & Cronin, 2019)
・チーム状態はチーム内省性の中核的要素(Edmondson, 1999;Schippers et al., 2017)
・Marks et al.(2001)によると、チーム状態は以下の3分類に分けれる
 ・感情的側面(例:チーム凝集性、Wong, 2004)
 ・認知的側面(例:チームのメンタルモデル;Konradt et al., 2015)
 ・動機づけ的側面(例:目標達成への努力の方向づけ:Ortega, Sánchez-Manzanares, Gil, & Rico, 2013)
・チーム心理的安全性は、チーム状態の中でも最も一般的に研究されてきた感情的状態
・ScheinとBennis(1965)は、この概念を導入し、心理的安全性が変化に対する反応として学習を可能にするための基本条件であると主張
・Kahn(1990)はさらにこの考えを発展させ、心理的に安全だと感じる個人は、仕事においてより積極的に自己を表出することができると述べた
・このような心理的安全性の感覚は、「自らの自己を他者の前で見せることができる、あるいは否定的な結果(例:自己評価、地位、キャリア)を恐れずに示すことができる」という意味する
・心理的安全性は、チームメンバーが比較的自由に話し合えるという共有信念を反映しており、個人の対人リスクに関する認識の違いに依存しない(Edmondson, 1999)
・心理的安全性に関する個人差は大きく、心理的安全性が低いと感じる人ほど、リスク回避傾向が強い(Edmondson, 2002;Edmondson, 2003;Harvey, Johnson, Roloff, & Edmondson, 2019)
・チーム内省性における心理的安全性の中心的主張は「自己開示」
 ・チーム学習プロセスでは、既存の前提を疑い、より良い方法を模索することが求められるが、これはリスクを伴うものであり、反発を招く恐れもある(Edmondson & Lei, 2014)
・チーム機能やサービス問題の原因を特定するためには、個人が批判される恐れなく自分の考えを共有できる必要がある。
・心理的に安全なチームでは、否定的な評価を恐れず、自分の思考を率直に表明することができるため、チームパフォーマンスが向上する(Edmondson & Harvey, 2017)
・Edmondson(1999)以降の多くの研究は、心理的安全性とチーム内省性、さらにチームパフォーマンスとの正の関係を実証している(研究志向のチーム(Chen, Zhang, Zhang, & Xu, 2016)、Six Sigmaプロジェクト(Arumugam, Antony, & Kumar, 2013)、看護チーム(Gersbach, Van den Bossche, Sánchez-Manzanares, Rico, & Gil, 2014)、およびサービス業チーム(Brueuller & Carmeli, 2011))

仮説4:チーム心理的安全性はチーム内省性と正の関係にある。
仮説5:チーム心理的安全性は、チーム内省性とチームパフォーマンスの関係を媒介する。心理的安全性が高いチームほど、反省性の向上によってチームパフォーマンスが高まる傾向がある。

2.4. チーム・リフレクションのために心理的安全性のある環境を育むこと:チーム・リーダーシップの役割
リーダーの役割は重要:心理的安全を整え、メンバーのリフレクション参加を促す(Carmeli, Tishler, & Edmondson, 2012;Edmondson & Harvey, 2017;Schippers, Den Hartog, Koopman, & Van Knippenberg, 2008)
・リーダーは全メンバーのリフレクション参加を促す集団的信念を形成する立場にある(Morgeson et al., 2010;Harvey, Leblanc, & Cronin, 2019;Zaccaro, Rittman, & Marks, 2001)
・機能的リーダーシップ理論(Hackman & Walton, 1986)では、リーダーは「グループのニーズを満たすために不足部分を補う存在(completers) 」(Schutz, 1961, p. 61)。
・チームにおけるリーダーシップは、心理的安全といった重要なチームニーズを満たすことを目的とする問題解決プロセスと捉えられる
・心理的安全性を高めるリーダーシップの例
 ・チャレンジ指向または変革型リーダーシップ(Ortega et al., 2014;Zhou & Pan, 2015)
 ・サーバントリーダーシップ(Schaubroeck, Lam, & Peng, 2011)
 ・倫理的リーダーシップ(Tu, Lu, Choi, & Guo, 2019)
・チームの意思決定および議論にメンバーの参加を促すリーダーは、心理的安全を促進する傾向がある(Edmondson, 1996, 2002;Edmondson & Harvey, 2017;Hirak et al., 2012)
・権力の不均衡を緩和する行動が重要:地位の低いメンバーでも安心して発言できるようになる(Estrada et al., 1995)
・このようなリーダーシップの心理的安全への影響は、ある研究で示されており、そこでは外科医が看護師や人工心肺技師の貢献を明確に認識することで、彼らの役割がチームの成功においていかに重要かを強調していた(Edmondson, 2003)。
・参加支援型リーダーシップ:メンバーにチームの進捗状況を話し合うミーティングの開始など、チーム機能向上のための提案を行う機会を提供(Edmondson, 1999;Veltrop et al., 2021)
 ・リーダーが対人リスクのある話題に対してメンバーの意見を歓迎する姿勢を示すことが重要
・参加支援的リーダーシップは、メンバーのアイデアや提案に感謝し、それを公に称賛することで達成される(Hu et al., 2017;Owens et al., 2013)
・Edmondson and Harvey (2017) は、リーダーが異なる見解を歓迎し、それらを資産とみなすことが、メンバーが安全に意見を述べられる環境につながることを示した。

仮説6. 参加を促すリーダーシップはチームの心理的安全性に正の関連をもつ。
仮説7. チームの心理的安全性は、参加支援型リーダーシップがチーム内省性に与える影響を媒介する
すなわち、psychological safety に関する共有信念が高まることで、participation-supportive leadership によって reflexivity が促進される。

2.5. シリアル媒介モデル
・I-M-O フレームワーク(Input-Process-Outputモデル)に基づいたシリアル媒介モデルを提案(Ilgen et al., 2005;Marks et al., 2001)
・リーダーシップが、メンバーの感情・動機・チーム内プロセスを通して、アウトプットに影響を与えると仮定
・本研究では、以下のプロセス経路を検証
 ・参加支援型リーダーシップ→心理的安全→チーム内省性→チームパフォーマンス向上

仮説5:チーム内省性は、心理的安全性とチームパフォーマンスを媒介する
仮説7:参加支援型リーダーシップは心理的安全を高め、内省性を促進する
仮説8:参加支援型リーダーシップは、心理的安全性を高めることで内省性を促進し、チームパフォーマンスを向上させる

3. 方法
3.1 文献検索

①文献データベース検索(2022年5月までに実施)
・使用データベース:PsycINFO、Business Source Premier、Google Scholar、ABI/INFORM(ProQuest)、Web of Science
・対象:公開・未公開を問わない
・検索キーワード:中心となる構成概念(team または group)と reflexivity、reflection、learning、empowering leadership、participative leadership、leader humility、humble leadership、coaching、inclusive leadership、leader inclusion、psychological safety、safety climate のいずれかの組み合わせ
②参考文献リストレビュー
・最近の主要な論文およびメタ分析の文献リストをレビュー(例:Frazier et al., 2017;Harvey et al., 2022;Kelemen, Matthews, Matthews, & Henry, 2023;Koeslag-Kreunen et al., 2018;Konradt, Otte, Schippers, & Steenfatt, 2016;Lee, Willis, & Tian, 2018;Schippers et al., 2014;Wiese et al., 2022)
③未発表データの収集
・出版バイアスを最小限に抑える目的で、以下の学会で発表経験のある研究者に連絡(Academy of Management、European Association of Work and Organizational Psychology(EAWOP)、Interdisciplinary Network for Group Research(INGRoup)、 Society for Industrial and Organizational Psychology(SIOP))
・連絡を取った56人の著者のうち、9人が所望のデータを提供

3.2. 選定基準
このメタ分析に含めるために、研究は以下の基準を満たす必要があった:
(a)実証的かつ定量的であること
(b)チームメンバーによって完了されたリファレント・シフト・コンセンサスに基づくチーム内省性の尺度を使用していること
(c)分析の単位がチームレベルであり、少なくとも2人の回答者が存在すること
(d)大学院生および大学卒業後の大人で構成されるチームで実施されていること
(e)効果量(たとえば相関係数)を計算するために十分な情報を報告していること

以下の研究を除外
(a)概念的、レビュー的、または質的な研究
(b)高校のスポーツチームや学級のような高校生のサンプルを使用した研究
・内省性に関連するが概念的には異なると考えられる「デブリーフィング」(内省性を誘発することを目的とした事後レビューやガイド付き内省)を扱った研究を除外(Konradt et al., 2016;Leblanc et al., 2022;Lyubovnikova et al., 2017;Schippers, West, & Edmondson, 2018)
・ここでいう「デブリーフィング」は、チームリーダーやファシリテーターによって典型的に開始・導かれる、体系的な介入または技法を指す(Keiser & Arthur, 2021;Lacerenza, Marlow, Tannenbaum, & Salas, 2016;Otte, Konradt, & Oldeweme, 2018;Tannenbaum & Greilich, 2023)
・内省性はチームのデブリーフィングの重要な側面であるが、それでも概念的には異なるものである(Allen et al., 2018, p.511):「…デブリーフィングは、内省性を誘発することを意図している」
・結果、合計で171件の独立した研究(N=13,568チーム)が得られた。

3.3.1 チーム内省性
・チーム内省性尺度は、West(2000)の定義と理論的に一致していると考えられるものに限定
・既存の確立された尺度(例:De Jong & Elfring, 2010;Schippers, Den Hartog, & Koopman, 2007)に加え、Edmondson(1999)によよる「内省と行動の継続的プロセスとしてのチーム学習」を測定する尺度も含めた
・ただし、それらのうち少なくとも半数の項目が内省性を明示的に扱っていることが条件(Van der Vegt, Bunderson, & Kuipers, 2010)
・一方で、知識や情報共有(Faraj & Sproull, 2000)、チーム構成、チーム共構成、チーム構成的対立(例:Van den Bossche, Gijselaers, Segers, & Kirschner, 2006)、およびチーム境界スパンニング(例:Ancona & Caldwell, 1992)など、内省性とは異なる、より浅いチーム行動を測る尺度は除外
・内省性の内容により尺度を分類する分析も行った(具体的には次の2タイプ)
 ①内省そのものを測定する尺度(例:Konradt & Eckardt, 2016)
 ②内省性に加え、計画や適応に関する項目を含む尺度(例:De Dreu, 2007)
・加えて、次の尺度も分析に含めた
 ・内省性を中心に測定する尺度(Hogeł & Parboteeah, 2006)
 ・内省行動を含むチーム学習行動尺度(Savelsbergh, Gevers, van der Heijden, & Poell, 2012)
 ・個人レベルの内省行動尺度(Edmondson, 1999)

3.3.2. チームのパフォーマンス
・チームレベルの成果に焦点を当て、個人の成果は除外
・パフォーマンス指標は2つ
 ・客観的指標(定量的データに基づいたスコア)
 ・主観的指標(判断に基づいたスコア)

3.3.3. チームの心理的安全性
・研究の採用条件:チームの心理的安全性を「チーム内の対人リスクが最小限に抑えられているという共有された信念」として概念化していること(Edmondson & Lei, 2014;Frazier et al., 2017)
・使用尺度:ほとんどの研究はEdmondson(1999)の尺度、またはそのバージョンを使用
・上記の定義に合致しているため、以下の尺度を用いた研究も対象に含めた
 ・Anderson and West(1994)
 ・Bauer(2008)(例:Hirak et al., 2012;Neumann, 2017)

3.3.4. 参加支援型リーダーシップ
以下のリーダーシップを含めた
(a) エンパワーメント型リーダーシップ
(b) 参加型リーダーシップ
(c) 謙虚なリーダーシップ
(d) チームリーダーによるコーチング
(e) 包括的リーダーシップ

3.4. メタ分析の手続き
・Schmidt and Hunter(2015)の心理計量メタ分析アプローチに従った(ランダム効果モデルに基づく)
・各一次研究をサンプルサイズに基づいて重みづけ
・Cronbachのαを用いて測定誤差を補正
 ・α未報告の研究には平均値を代用
 ・客観的パフォーマンス指標には完全信頼性(1.0)を割り当て
・効果量の算出にはPearsonの相関係数を使用
・各研究からは同一関係性に対して1つの効果量のみ使用
 ・複数の相関が報告されている場合は、合成指標を算出し、その信頼性をもとに補正
 ・2つ以上の研究が同じサンプルに基づいていた場合は、1つの研究として統合処理

仮説検証の手法
・母集団の平均相関推定値(ρ)に対する95%信頼区間(CI)で仮説を評価
 ・CIにゼロを含まない場合、ρの値が0とは統計的に異なる(p < .05)ことを示し、仮説支持
・モデレーター効果の検証のため、効果量の分散を評価
 ・推定誤差以外の要因での説明割合が75%未満ならモデレーターの可能性(Schmidt & Hunter, 2015)
・80%信頼区間(CV)も補助的に使用
・カテゴリー的モデレーター検証
 ・各サブサンプルにメタ分析を実施し、CIの重なりの有無で有意差を判断
 ・p < .05であり、かつCIが重ならない場合にモデレーター効果が有意

連続モデレーター(例:チームサイズ、チームの在籍期間)の検証
・加重最小二乗法(WLS)による回帰分析を実施
 ・分散の逆数を重みとして使用
 ・大規模サンプルの研究に大きな重みを与える
 ・量推定の精度が高まる

媒介仮説の検証
・メタ分析の相関マトリクスを構築(Viswesvaran & Ones, 1995)
・ランダム効果モデルに基づくメタ分析構造方程式モデリング(FIMASEM)を実施
 ・Frazier et al.(2017)の17研究(33効果量)のデータを使用し、心理的安全性とパフォーマンスとの関係性を分析
 ・2,000回のブートストラップ
 ・効果量の異質性を考慮しつつ、対応する標準偏差(SD)を使用して分析

出版バイアス「ファイルドロワー問題」への対応(Rosenthal, 1979)
・効果量の有意率:61.4%、非有意:38.6%(p < .05水準)
・各効果量とサンプルサイズとの相関(r = –0.05)はほぼゼロ→出版バイアスの証拠とはならない
・ファンネルプロットにより視覚的に確認
 ・効果量(Fisher’s z)と標準ボサの関係は対称的な分布を示し、外れ値は少なかった。

4. 結果
・チーム内省性(team reflexivity)とチームパフォーマンスとの間には79の独立した効果量が得られ、合計サンプルサイズは5,766チーム
・構成概念間の未補正サンプルサイズ加重平均相関は0.30
・測定誤差補正後の効果量推定値:p = 0.35(95%信頼区間がゼロを含まず、有意)
→仮説1(チーム内省性は、チームパフォーマンスと正の関係がある)を支持
table1
モデレーター分析の正当性
・効果量の分散の75%以上が研究アーティファクトによって説明できず
 →モデレーター分析は妥当と判断

カテゴリカルモデレーター
・横断的研究(ρ = 0.38, CI₉₅% = 0.33 〜 0.44)
・縦断的研究(ρ = 0.18, CI₉₅% = 0.06 〜 0.29)
・フィールド研究(ρ = 0.39, CI₉₅% = 0.333 〜 0.44)
・実験室 or 教室研究(ρ = 0.22, CI₉₅% = 0.11 〜 0.325)

コモンメソッドバイアス(common method variance)
・チーム内省性とチームの主観的パフォーマンス指標の両方を同一の情報源から得た研究と異なる情報源から得た研究に分けた
・同一情報源からの測定(ρ = 0.57, CI₉₅% = 0.47 〜 0.66)
・異なる情報源からの測定(ρ = 0.28, CI₉₅% = 0.22 〜 0.34)
→CMVの影響があることが示唆された

チーム特性・測定法による違い
・チームのタイプや業界による影響:なし
・パフォーマンス指標
 ・主観的パフォーマンス(ρ = 0.38, CI₉₅% = 0.32 〜 0.43)
 ・客観的パフォーマンス(ρ = 0.27, CI₉₅% = 0.15 〜 0.38)
 →信頼区間が重なっており、有意差なし

内省性尺度の内容による違い
・チーム内省性をチーム計画やチーム適応の要素と結合された尺度(ρ = 0.38, CI₉₅% = 0.32 〜 0.43)
・純粋なチームリフレクション尺度(ρ = 0.30, CI₉₅% = 0.19 〜 0.40)
 →有意差なし
・West(2000)による定義に一致する明示的尺度(ρ = 0.31, CI₉₅% = 0.24 〜 0.38)
・チーム学習行動のうち内省性から逸脱したものを含む尺度(ρ = 0.42, CI₉₅% = 0.35 〜 0.49)
 →有意差なし

連続モデレーター
・仮説2:チームサイズがチーム内省性とチームパフォーマンスとの関係を強める
 →支持(b = 0.02, SE = 0.002, p < .001)
・仮説3:チームの在籍期間は関係を強める
 →支持(b = 0.02, SE = 0.002, p < .001)
table2

3つのパスモデルを検証するためにFIMASEMを実施
第1モデル:チーム内省性の媒介モデル
・仮説:チーム内省性がチームの心理的安全性とチームパフォーマンスの関係を媒介する
 ・チーム心理的安全性はチーム内省性と正の関係(b = 0.45, p < .001)
 ・チーム内省性を介したチームパフォーマンスへの間接効果も有意(間接効果 = 0.14, BootSE = 0.02, CI = [0.10, 0.17])
 →仮説4(チーム心理的安全性はチーム内省性と正の関係にある)及び仮説5(チーム心理的安全性は、チーム内省性とチームパフォーマンスの関係を媒介する)は支持

第2モデル:チーム心理的安全性を介したリーダーシップの影響
・仮説:参加支援型リーダーシップ(participation-supportive leadership)→心理的安全性→チーム内省性の媒介効果
 ・参加支援型リーダーシップはチーム心理的安全性を有意に予測(b = 0.51, p < .001)
 ・このリーダーシップがチーム心理的安全性を通じてチーム内省性に与える間接効果も有意(間接効果 = 0.23, BootSE = 0.02, CI = [0.20, 0.26])
 →仮説6(参加支援型リーダーシップはチームの心理的安全性に正の関連をもつ)および7(心チームの心理的安全性は、参加支援型リーダーシップがチーム内省性に与える影響を媒介する)は支持

第3モデル:逐次媒介モデル(リーダーシップ→心理的安全性→内省性→パフォーマンス)
・仮説:参加支援型リーダーシップ→チーム心理的安全性→チーム内省性→チームパフォーマンスとの正の関係を媒介する
 ・間接効果は正で有意(間接効果 = 0.08, BootSE = 0.01, CI = [0.05, 0.09])
 →仮説8(参加支援型リーダーシップは、心理的安全性を高めることで内省性を促進し、チームパフォーマンスを向上させる)も支持
table3

4.1. 補足分析(Supplemental analyses)
Table 4 および Table 5 は、研究数(k)、チームの総数(N)、サンプルサイズ加重平均相関(r)、推定真の相関(ρ)、相関の周囲の95%信頼区間(95% CI)、およびアーティファクトによって説明される分散の割合(% var)を示しており、チーム内省性とチーム成果とのメタ分析的関連、ならびにチームリーダーシップ、チーム構成、構造的特徴、およびチームの創発的状態(emergent states)との関連を報告している。
table4
table5

チーム内省性と成果変数に関するメタ分析結果
・チーム内省性とチームパフォーマンスの相関
 ・チームパフォーマンス(ρ = 0.35):中程度の相関
 ・チームイノベーション(ρ = 0.45):やや強い相関
 ・チーム創造性(team creativity)(ρ = 0.48):強い相関
 ・チーム満足度(team satisfaction)(ρ = 0.55):非常に強い相関
 →チームパフォーマンスよりも満足度や創造性との関係が強く、内省活動の意義が示された

入力変数(インプット変数)に関する知見
・リーダーシップの影響
 ・参加支援型リーダーシップ(ρ = 0.49)
 ・変革型リーダーシップ(ρ = 0.52)
 ・タスク指向型リーダーシップ(ρ = 0.50)
 →いずれもチーム内省性と強い正の相関
・チーム構成(team composition)
 ・教育レベルの多様性(ρ = 0.14)
 ・チーム在籍期間の多様性(ρ = 0.13)
 ・チームの教育水準(ρ = 0.16)
 →他の多様性指標との相関はほとんどなし

・その他
 ・チームパフォーマンスの目標志向性(ρ = 0.33)
 ・チームの学習目標志向性(ρ = 0.43)
 →ともに中〜強い相関

構造的特徴(structural characteristics)との関係
・チーム自律性(team autonomy)(ρ = 0.54)
・チームの相互依存性(goal interdependence)(ρ = 0.48)
・組織的支援(リソース、人的資源、物理的環境等):正の関係
・ワークロード(業務量):唯一の負の関係だが、有意ではなかった

チーム創発的状態(emergent states)との関係:いずれも中程度以上の正の相関
・チーム凝集性(team cohesion)(ρ = 0.55)
・チーム信頼(team trust)(ρ = 0.53)
・チーム効力感(team efficacy)・チームポテンシー(team potency)(ρ = 0.45)

5. 考察
・内省性は、チームが困難な課題や混乱した環境で成功を収めるための主要なチーム学習プロセスと長らく見なされてきた(Schippers & Rus, 2021;West, 2000)
・近年の研究は、内省性を長期的なチーム学習の促進要因として位置づけている(Harvey et al., 2023)
・一方、他の研究では、チームパフォーマンスに及ぼす影響は曖昧で、恩恵の大きさはチームによって異なる可能性が示唆されている

本研究の目的とアプローチ:メタ分析を通して、以下の2点を明らかにすること
・内省性がチームパフォーマンスの向上に寄与するかどうか
・この関係に影響を与える境界条件(モデレーター)の特定

主な発見と仮説の支持
・情報処理装置としてのチームという視点(Hinsz et al., 1997)から、チーム内省性のパフォーマンスへの影響についての証拠を提示
・チームサイズや在籍期間が長いほど、内省性とパフォーマンスの関係が強化される
・研究デザインやサンプルの特性といった要素もこの関係を調整する要因であった

リーダーシップと心理的安全性の役割
・メンバーの参加を支援するリーダーシップが、チームの内省性を促進し、結果としてチームのパフォーマンスを高めるのかを調査
・この間接効果はチームの心理的安全性によって媒介された

5.1 理論的貢献
・本メタ分析は、チームの内省性に関する理論をいくつかの点で支持し、拡張するもの
・内省性は時間をかけてチームのパフォーマンスを向上させる有益なプロセスである
・チームは目標、戦略、過去のパフォーマンスを振り返ることで、情報処理の欠陥を回避し、意思決定の質を向上・エラーを減少させる→内省性はチーム成果に対して信頼できる影響を持つ

チーム特性の調整効果(モデレーター)
・チームの特性が内省的活動を含む情報処理活動の効果を左右しうる
・チームサイズが大きくなるほど、内省性のパフォーマンス効果が高まる
 ・大規模なチームは、情報処理の失敗(Kerr, Mac Coun, & Kramer, 1996)に陥りやすいため、内省性は特に重要
 ・多様な認知資源へのアクセスを通じて知識や視点を活用を促進する

在籍期間の影響
・勤続年数の長いメンバー:チームの業務、役割、ワークプロセスに関する深い知識を有しているため、内省活動において特に効果的である(Lippmann & Aldrich, 2016)
・経験豊富なメンバーは:チーム戦略の改善のための簡単に実行可能な提案や調整点を迅速に特定することで、内省性をより効果的に活用できる
・勤続年数が短い構成員:チーム機能への批判的視点や問いかけにより、チーム変革の契機を提供
 ・勤続年数の長いメンバーは単に内省的な活動を避けがちであるという従来の見解(Katz, 1982;Schippers et al., 2014;West, 2000)に挑戦するもの

まとめると、本研究の結果は、最近のチーム学習のレビュー研究(例:Harvey et al., 2022)を支持するものであり、チームサイズや勤続年数がともに高い場合には、内省的行動の費用を上回る利益が得られることを示している(Schippers et al., 2013)。

研究デザインやサンプル特性の影響
・内省性とパフォーマンスとの関係性の効果量は、以下の研究設計要因によって有意に異なる
(a) 横断的研究と縦断的研究の比較
(b) 単一情報源と複数情報源データの比較
(c) 現場研究と教室内研究の比較
コモンメソッドバイアスや過大評価の可能性があるため、研究成果の解釈には注意が必要

リーダーシップの役割と心理的安全性
・リーダーがメンバーの参加を促すと、心理的安全性が高まり、内省性が促進され、最終的にチームのパフォーマンスが向上する
・これは「リーダーの行動が、チームのニーズを満たすことを通じて、特定のチームプロセスや成果に変換される」というMorgeson et al.(2010)の主張を裏付けるエビデンスにもなる

5.2. 限界と今後の研究
限界①:研究デザインの限界(横断的・非実験的な研究が多い)
・多くの研究が時間差を設けた測定を用いており、因果関係を断定する前には慎重であるべき
・例:パフォーマンスが高いと、内省性や心理的安全性を後から促す可能性
・I-M-Oフレームワークには理論的整合があるが、縦断的または実験的な研究が今後必要

限界②:内省性の動的性質に関する検討不足
・内省性は反復的かつ他の学習活動と並行して進行することがある
・現在の研究では、時間的変化や段階的発展の視点が不足
・チームの構成要因(例:規模や任期等)と内省性の統合的関係のさらなる研究が必要

限界③:分析数の不足による結果の精度の限界
・一部の分析では研究数が少なく、精度に限界あり(チーム数:3、製造業:7等)
・チームの内省(team reflection)のみを測定した研究と、チーム計画やチーム適応などの要素も含む研究(例:Edmondson, 1999)との区別が不十分
・内省性の量、質、タイミング、焦点など、異なる観点の測定が統一されてない
 ・内省性の測定を改善または精緻化しようとする試みが行われている。例えば、成果とプロセスの内省の区別(Savelsbergh et al., 2009)、いつ内省性が起こるか(Carter & West, 1998)、内省の時間的焦点(Schmutz & Eppich, 2017)、量と質の両面からの評価(Otte et al., 2017, 2018)等
・今後は、これらの異なるアプローチによる影響や調整変数への理解を深めるメタ分析が求められる

限界④:リーダーシップアプローチの違いに関する未検討
・各リーダーシップスタイル(謙虚・支援型等)の違いを本研究では判別できず
・どのスタイルが内省性とパフォーマンスの関係に最も有効かは困難であった

限界⑤:心理的安全性の媒介としての限界
・チーム内で全員が自由に話せるとは限らず、心理的安全性の効果には限界がある
・リーダーの働きかけが逆に集団効力感の低下をも同時にもたらす可能性がある(Harvey, Leblanc, & Cronin, 2019)
・心理的安全性がリーダーと内省性の間の間接的関係の媒介変数であるとしても、その影響が主に直接的なものである可能性も否定できない
 ・今後の研究では、リーダーシップがこの学習プロセスを直接形成しているのか、心理的条件を創出しているのか、あるいはその両方かを明らかにする必要

限界⑥:高い効果量のバイアスの可能性
・サンプル研究の研究管理の弱さがある可能性も排除できない
・横断的研究、単一ソース、現場研究の方が、より高い効果量を示す傾向
・今後のメタ分析では、より厳密な実験デザインやレベルや質を測る操作チェックの導入が望まれる

5.3. 実践的示唆
・チームサイズおよびチームの在籍期間が長くなるにつれて、内省性の重要性が増す
・大規模なチームでは、認知的表象や一部メンバーによる議論のハイジャックなど、最も生じやすい情報処理の失敗が起こりやすく、内省が有効
・チームリーダーは質問や観察を共有することでメンバーの考えを引き出し、境界対象(例:図やプロトタイプ)を用いて共通理解を構築させることができる(Edmondson & Harvey, 2018)
 ・全メンバーが自身の知識や視点を共有できるよう参加規範を確立すべき(Schippers et al., 2014)
・在籍期間が長いメンバーの知識と専門性を称賛し、彼らの発言に注意深く耳を傾けることを推奨することで、その意見が新人メンバーにとっても価値あるものであることを伝えることができ(Tyler & Lind, 1992)、メンバーのリフレクシブな議論への積極的な参加を促す
・リーダーは心理的安全性を育むことで、間接的にチームメンバーのリフレクシブな行動への関与を促進する方法を知る必要がある
 ・これは、リーダーシップ研修やコーチング等の能力開発への実践的示唆を提供
・組織は、内省性に基づくリーダー行動を教育・モニタリングし、適切な行動判断を支援すべき
・内省性を促すリーダーシップスタイル(謙虚で、エンパワーメント志向で、包摂的なリーダーシップ)の育成が求められる
・人事部門は、適切な個人特性を持つ人をリーダーに選定することが重要
 ・権力距離が低い:エンパワーメント志向になりやすい(Tang, Chen, van Knippenberg, & Yu, 2020)
 ・自己認識が高い:参加型リーダーシップスタイルを採用しやすい傾向(Black, 2020)
 ・成長マインドセットと関係重視:謙虚な態度をとりやすい(Wang, Owens, Li, and Shi, 2018)

6. 結論
・チーム内省性がチームのパフォーマンスを高めることが示された
・この効果は、チーム規模が大きく、在籍期間の長いチームにおいて顕著であった
・チームリーダーがメンバーの内省を促進することで、対人的リスクテイクに対する心理的障壁が低下することが示された
・チームの内省性に関する多様な先行要因および成果を整理・統合し、文献全体に対する体系的理解を深めた
・本メタ分析は今後の研究の基礎となり、実務家や組織に対して、より効果的なチームを育成するための条件を整える手助けとなる


ここまで。
チーム内省性がチームパフォーマンスに与える影響を分析するにあたり、非常に緻密に他の関係する要素も考慮した上で分析された論文でした。内容がてんこ盛りだったので、仮説1~8を図式化してまとめてみました。
figure_all
チームパフォーマンスを高めるためには、チーム内省性を高めると良い。
チームの内省性には以下の要素が影響する
・チームサイズは大きいほど、チーム内省性にわずかに正の影響
・チーム在籍期間は長いほど、チーム内省性にわずかに正の影響
・心理的安全性が高いほど、チーム内省性に強い正の影響(参加支援型リーダーシップにより高められる)

意外だったのは、チームサイズの考察。グループワークにおいて、グループサイズが大きくなりすぎると学習効果は下がるというのが一般論という認識でした。
例えば、人数が増えると発言の機会が減る、他者の意見を深く聞けないといった相互作用の質が低下するという問題が発生します(Cohen, 1994)。しかし、当研究においては、以下のような視点から大人数の方がチーム内省性を高めると述べられています。
・より多様な視点 :大人数のチームでは、意見・知識・経験の多様性が高まりやすく、自然と議論や振り返りの必要性が生じる
・調整や共有の必要性:メンバーが多くなるほど、目標や進行状況の調整が重要になるため、内省的な対話やフィードバックが促される
つまり、チームで成果を出す上で、チームサイズが大きくなればなるほど、リフレクションの必要性が高くなるということなのだと思います。
一方、学校などで行うチームでの協働においては、チーム成果はあくまで手段であり、個人の成長に主眼を置くケースは少なくないと思います。この場合だと、チームサイズによって個人のリフレクションの学びの質は変わるような気がするので、注意した方が良いように思います。
これまでは、チームの成果を高めるためには心理的安全性が重要であるということは意識してきましたが、そこにプラスしてチーム内省性と参加支援型リーダーシップも重要だという気づきを得ることができました。これはチームワークに関する学びをお届けする上ではとても大きな収穫でした。
今後、チームの内省についてもっと掘り下げてみたいと思います。

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。