今日は、論文のレビューではありませんが、PBL(Project-based Learning)の基準を示したフレームワークについて考察します。
レビューするのは、HQPBLという団体が作成したHQPBL(High-Quality Project Based Learning)の6つの基準(criteria)についてです。ホームページの内容を翻訳してまとめます。

1. Intellectual Challenge and Accomplishment(知的挑戦と達成)
学生は深く学び、批判的に考え、卓越性を追求する
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・長期間にわたって、挑戦的な問題・問い・課題を探究しているか?
・教科領域や学問分野の中心となる概念・知識・技能に焦点を当てているか?
・学習やプロジェクトの成功に必要な研究に基づく指導や支援を受けているか?
・最高水準の成果を達成しようと努力しているか?
高品質なプロジェクトは単なる「楽しい活動」や「軽い実体験」ではなく、学生に批判的思考を求める。複雑な問題や問い、答えが一つではない論点を扱い、それを数日、数週間、数か月にわたって取り組む。プロジェクトを成功させるには重要な学問的内容や概念・技能を学ぶ必要があり、また最高品質の成果物を作るよう挑戦され、適切に導かれ、支援を受けることが求められる。
2. Authenticity(本物性)
学生は、自分の文化・生活・将来に関連する有意味なプロジェクトに取り組む。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・学校の外の世界や個人的関心とつながり、影響を与える仕事に取り組んでいるか?
・現実の世界で使われている道具・技術・デジタル技術を活用しているか?
・プロジェクトのトピック・活動・成果物について選択の余地を持っているか?
学びを動機づけ、学校で学ぶことの関連性を示すために、プロジェクトは「現実的」として体験される必要がある。高品質なプロジェクトは、現実社会で起きていることを反映し、そこで使われている道具や技術を活用する。地域やコミュニティに影響を与えることもあり、学生自身の興味や関心と結びつく。学生の声がプロジェクトに反映されるべきであり、学習者は自分の活動を選択できる必要がある。
3. Public Product(公開される成果物)
学生の成果は公開され、議論され、批判される。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・仲間・教師・他者と成果物の進行状況を共有し、フィードバックを得ているか?
・自分の成果や学びをクラス外の人に発表しているか?
・聴衆からフィードバックを受けたり対話を行っているか?
従来型教育では、学びは主に教師と生徒の私的関係の中で進み、成果物は教師だけが見る。高品質なPBLでは、学生は成果を公開し、仲間・専門家・教室外の人々と共有する。これはプロジェクトの途中でも最終発表でも行われる。公開プロセスと最終発表は、成果物の質を改善し、学生が何を知り何ができるかを示す。
4. Collaboration(協働)
学生は他の学生と対面またはオンラインで協働し、大人のメンターや専門家から指導を受ける。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・チームで複雑な課題を成し遂げているか?
・効果的なチームメンバーやリーダーになる方法を学んでいるか?
・大人のメンター・専門家・地域の人・組織と協働しているか?
今日の世界・職場では、協働スキルを学ぶことが重要。高品質なPBLでは、一部の仕事はチームで行われる。単なる役割分担や分業ではなく、全体を統合し、対話しながら行う必要がある。真の協働では、学生は個々の声・才能・技能を共有の仕事に生かし、他者の貢献を尊重する。場合によっては、他校の学生・専門家・地域の人々とも協働する。
5. Project Management(プロジェクト管理)
学生はプロジェクト開始から完了までを効果的に進める管理プロセスを活用する。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・複数ステップのプロジェクトを効率的・効果的に進めているか?
・プロジェクト管理のプロセス・ツール・戦略を学んでいるか?
・必要に応じてデザイン思考などのプロセスを用いているか?
現実社会では、時間・タスク・リソースを効率的に管理する力が求められる。高品質なPBLでは、学生はプロジェクト管理のプロセスやツールを学び、学校外の世界で使われているものと類似の方法を活用する。必要に応じてデザイン思考のステップを踏むこともある。
6. Reflection(リフレクション)
学生はプロジェクト期間中、自分の学びや仕事を振り返る。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・自分や他者の仕事の改善点を見出し、提案しているか?
・学んでいる学問内容・概念・スキルについて、書いたり話したり議論しているか?
・リフレクションを、自分の主体性を高める手段として使っているか?
学びは「知っていること・やっていること」を振り返ることで強化される。高品質なPBLでは、学生は自分の仕事の質を評価し、改善方法を考える。リフレクションは期末だけでなくプロセス全体で行われる。これにより学びの保持が深まり、自己効力感や自信が育まれる。
これらは、「PBLの各プロジェクトに少なくとも含まれるべき要素」として定義され、全てを含んでいることが高品質なPBLの条件とされています。
「挑戦的な探究であり、実世界と繋がり、公に発表する舞台があり、様々な人と協働があり、プロジェクトマネジメントを行い、リフレクションがある」
それが高品質なPBLであると。確かに的を得ているように感じます。
PBLの要素については、様々な研究者や団体が提唱するものが複数ありますが、この6項目も重複する部分も多いなという印象です。唯一、被っていないと思うのは、「プロジェクトマネジメント」。学習者はプロジェクトに取り組むので、そのプロセスで当然プロジェクトマネジメントも経験するのですが、確かにそれもPBLの特徴のひとつと言えそうです。
ガイディングクエスチョンは、授業設計のチェックに使えそうなので、早速後期の授業で活用してみようと思います。
レビューするのは、HQPBLという団体が作成したHQPBL(High-Quality Project Based Learning)の6つの基準(criteria)についてです。ホームページの内容を翻訳してまとめます。

1. Intellectual Challenge and Accomplishment(知的挑戦と達成)
学生は深く学び、批判的に考え、卓越性を追求する
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・長期間にわたって、挑戦的な問題・問い・課題を探究しているか?
・教科領域や学問分野の中心となる概念・知識・技能に焦点を当てているか?
・学習やプロジェクトの成功に必要な研究に基づく指導や支援を受けているか?
・最高水準の成果を達成しようと努力しているか?
高品質なプロジェクトは単なる「楽しい活動」や「軽い実体験」ではなく、学生に批判的思考を求める。複雑な問題や問い、答えが一つではない論点を扱い、それを数日、数週間、数か月にわたって取り組む。プロジェクトを成功させるには重要な学問的内容や概念・技能を学ぶ必要があり、また最高品質の成果物を作るよう挑戦され、適切に導かれ、支援を受けることが求められる。
2. Authenticity(本物性)
学生は、自分の文化・生活・将来に関連する有意味なプロジェクトに取り組む。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・学校の外の世界や個人的関心とつながり、影響を与える仕事に取り組んでいるか?
・現実の世界で使われている道具・技術・デジタル技術を活用しているか?
・プロジェクトのトピック・活動・成果物について選択の余地を持っているか?
学びを動機づけ、学校で学ぶことの関連性を示すために、プロジェクトは「現実的」として体験される必要がある。高品質なプロジェクトは、現実社会で起きていることを反映し、そこで使われている道具や技術を活用する。地域やコミュニティに影響を与えることもあり、学生自身の興味や関心と結びつく。学生の声がプロジェクトに反映されるべきであり、学習者は自分の活動を選択できる必要がある。
3. Public Product(公開される成果物)
学生の成果は公開され、議論され、批判される。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・仲間・教師・他者と成果物の進行状況を共有し、フィードバックを得ているか?
・自分の成果や学びをクラス外の人に発表しているか?
・聴衆からフィードバックを受けたり対話を行っているか?
従来型教育では、学びは主に教師と生徒の私的関係の中で進み、成果物は教師だけが見る。高品質なPBLでは、学生は成果を公開し、仲間・専門家・教室外の人々と共有する。これはプロジェクトの途中でも最終発表でも行われる。公開プロセスと最終発表は、成果物の質を改善し、学生が何を知り何ができるかを示す。
4. Collaboration(協働)
学生は他の学生と対面またはオンラインで協働し、大人のメンターや専門家から指導を受ける。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・チームで複雑な課題を成し遂げているか?
・効果的なチームメンバーやリーダーになる方法を学んでいるか?
・大人のメンター・専門家・地域の人・組織と協働しているか?
今日の世界・職場では、協働スキルを学ぶことが重要。高品質なPBLでは、一部の仕事はチームで行われる。単なる役割分担や分業ではなく、全体を統合し、対話しながら行う必要がある。真の協働では、学生は個々の声・才能・技能を共有の仕事に生かし、他者の貢献を尊重する。場合によっては、他校の学生・専門家・地域の人々とも協働する。
5. Project Management(プロジェクト管理)
学生はプロジェクト開始から完了までを効果的に進める管理プロセスを活用する。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・複数ステップのプロジェクトを効率的・効果的に進めているか?
・プロジェクト管理のプロセス・ツール・戦略を学んでいるか?
・必要に応じてデザイン思考などのプロセスを用いているか?
現実社会では、時間・タスク・リソースを効率的に管理する力が求められる。高品質なPBLでは、学生はプロジェクト管理のプロセスやツールを学び、学校外の世界で使われているものと類似の方法を活用する。必要に応じてデザイン思考のステップを踏むこともある。
6. Reflection(リフレクション)
学生はプロジェクト期間中、自分の学びや仕事を振り返る。
ガイディング・クエスチョン:学生はどの程度…
・自分や他者の仕事の改善点を見出し、提案しているか?
・学んでいる学問内容・概念・スキルについて、書いたり話したり議論しているか?
・リフレクションを、自分の主体性を高める手段として使っているか?
学びは「知っていること・やっていること」を振り返ることで強化される。高品質なPBLでは、学生は自分の仕事の質を評価し、改善方法を考える。リフレクションは期末だけでなくプロセス全体で行われる。これにより学びの保持が深まり、自己効力感や自信が育まれる。
これらは、「PBLの各プロジェクトに少なくとも含まれるべき要素」として定義され、全てを含んでいることが高品質なPBLの条件とされています。
「挑戦的な探究であり、実世界と繋がり、公に発表する舞台があり、様々な人と協働があり、プロジェクトマネジメントを行い、リフレクションがある」
それが高品質なPBLであると。確かに的を得ているように感じます。
PBLの要素については、様々な研究者や団体が提唱するものが複数ありますが、この6項目も重複する部分も多いなという印象です。唯一、被っていないと思うのは、「プロジェクトマネジメント」。学習者はプロジェクトに取り組むので、そのプロセスで当然プロジェクトマネジメントも経験するのですが、確かにそれもPBLの特徴のひとつと言えそうです。
ガイディングクエスチョンは、授業設計のチェックに使えそうなので、早速後期の授業で活用してみようと思います。
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