School Engagementという概念について、行動・感情・認知の三側面から総覧し、測定方法・先行要因・成果と限界を整理し、今後の課題と方向性を提案している論文をレビューします。
約2万件も引用されており、スクールエンゲージメントを調べる上で土台となるような論文です。
論文はこちら(被引用数:19,867件(2025年10月8日時点))
Fredricks, J. A., Blumenfeld, P. C., & Paris, A. H. (2004). School engagement: Potential of the concept, state of the evidence. Review of educational research, 74(1), 59-109.
まず、当論文の目的からまとめます。
・行動的・感情的・認知的エンゲージメントに関する既存文献の強み・弱み・欠落を批判的に評価し、この概念の潜在力をいかに実証的に明らかにできるかを検討すること
・関連文献を網羅的に再検討することではなく、それらから得られた洞察がエンゲージメントの理解および教育実践への応用にどのように寄与し得るかを示唆すること
・現在のエンゲージメント研究の質を全体的に評価し、その強みと限界を明らかにしたうえで、今後の研究に向けたいくつかの提案を提示すること
続いて、背景やタイプ、既存の構成概念との重なりなどについてです。
【背景】
・多くの学生は学校教育を退屈なもの、あるいは可能な限り少ない努力で切り抜ける「成績ゲーム(grade game)」として見なしている(Burkett, 2002; Pope, 2002)。
・学年が上がるにつれて動機づけが大きく低下する(Eccles, Midgley, & Adler, 1984; Fredricks & Eccles, 2002)
・これらの問題が特にマイノリティの学生において深刻で、その集団では中退率が最も高い(Rumberger, 1987)
→これらは、知識を統合し、批判的に考え、問題を解決できる労働者を必要とする新しいグローバル経済の主張を踏まえると、特に懸念すべきものである。義務教育が存在するとはいえ、若者が学校の提供する機会を活かし、将来成功するために必要な能力を獲得するためには、教育へのコミットメントを確立することが不可欠である
・スクール・エンゲージメントは、このような学生の疎外に対する解毒剤として見なされている。この用語は、研究と教育実践の双方において、今日の学生に欠けているとされる特性を包括するものとして用いられている。
【Engagementの意味・定義】
・Engagementの一般的な意味の一つとして「commitment」を挙げている(『Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary(第11版)』
・Being actively committed(積極的に関与していること)と定義(『The American Heritage College Dictionary(第4版)』
・to involve oneself or become occupied; to participate(自ら関与、従事、参加すること)
・to attract or involve(惹きつけること、巻き込むこと)(『New Oxford American Dictionary』)
【エンゲージメントの多面的な性質(3つのタイプ)】
・行動的エンゲージメント(Behavioral engagement):参加という概念に基づき、学業・社会的・課外活動への関与を含む。学業的成果を促進し、ドロップアウトを防ぐ上で重要な要素とみなされている
・感情的エンゲージメント(Emotional engagement):教師・クラスメート・学問・学校に対する肯定的・否定的感情反応を含み、学校への愛着や帰属意識を生み、努力意欲に影響を与える
・認知的エンゲージメント(Cognitive engagement)は、投資(investment)の概念に基づき、深い理解や複雑なスキルを習得するために必要な努力を惜しまない姿勢や熟慮を含む
【過去に研究された構成概念との重なり】
・行動的エンゲージメント:生徒の行動規範や授業中の課題行動に関する研究と関連(Karweit, 1989; Peterson, Swing, Stark, & Wass, 1984)
・感情的エンゲージメント:生徒の態度(Epstein & McPartland, 1976; Yamamoto, Thomas, & Karns, 1969)や興味・価値観(Eccles et al., 1983)に関する研究と関連
・認知的エンゲージメント:動機づけ目標や自己調整学習に関する研究(Boekarts, Pintrich, & Zeidner, 2000; Zimmerman, 1990)と関連
→著者らはこれら3つの要素をメタ構成概念として統合することに大きな可能性があると主張
・チーム・エンゲージメントの研究のように、複数の要素を統合的に捉える必要があると主張(Guthrie & Anderson, 1999; Guthrie & Wigfield, 2000)
・行動・感情・認知の要素は相互に関連しており、独立したプロセスではない。したがって、エンゲージメントを多次元的に捉えることは、行動・感情・認知の要因を同時かつ動的に検討し、それらの加算的・相互作用的効果を検証する上で有効であると考えられる。
【エンゲージメントの各側面における質的なレベルの違い】
・行動的エンゲージメント:「課題を行い、規律に従う」という表層的な関与〜「生徒会活動に参加する」という積極的関与まで
・感情的エンゲージメント:「学校や教員に対して好意を持つ」という軽い愛着〜「学校を深く価値づける」「学校と自己を同一視する」といった深い愛着まで
・認知的エンゲージメント:「暗記的学習」〜「深い理解や専門性を促す自己調整的学習方略の使用」まで
→このような各側面内の質的差異は、エンゲージメントの強度や持続時間に多様性があることを示唆
・エンゲージメントそのものが自己を強化する自己循環的性質を持ち、より遠い結果変数(例:学業達成や学校適応)における改善を促進する可能性があると推察される
・エンゲージメントへの関心が高まっているもう一つの理由:可塑的(malleable)
・エンゲージメントは個人と環境の相互作用によって形成され、環境変化に応答するもの(Connell, 1990; Finn & Rock, 1997)
・エンゲージメントへの経路は、社会的なもの、学業的なもののいずれでもあり得る。学校や教室における参加機会、人間関係、知的活動への関与などが、その形成要因となる。現在、多くの教育介入(たとえば学校風土の改善、カリキュラムや教育基準の変更など)は、明示的または暗示的に、エンゲージメントの向上を学習促進やドロップアウト減少の媒介経路として想定している。 たとえば、Guthrie と Wigfield(2000)は、エンゲージメントがカリキュラムおよび教授法改革の成果を媒介していると主張している
・多面的なアプローチは、文脈を変える試みが3つのエンゲージメント要素(行動的・感情的・認知的)にどのような影響を与え、その結果が一つまたは複数の要素の変化を通じて媒介されているかを探ることの重要性を強調する。
・エンゲージメントを、個人と環境との相互作用的・多次元的構成概念として研究することは、子どもたちの学校における経験の複雑性をより深く理解し、より的を絞った精緻な介入策を設計する上で有望である。
続いて、以下の4つのセクションに分けて記載されています。
①エンゲージメントの定義および、3タイプ(行動的・感情的・認知的)の前提
②エンゲージメントの測定
③エンゲージメントの成果
④エンゲージメントの先行要因
以下、セクション毎にざっくりまとめます。
・行動的エンゲージメントの三つの方法での定義
・定義①:肯定的な行動(positive conduct)に焦点を当て、ルールを守り、授業内の規範に従うこと、ならびに欠席や問題行動(例:授業をサボる、トラブルを起こす)の欠如を含む(Finn, 1993; Finn, Pannozzo, & Voelkl, 1995; Finn & Rock, 1997)
・定義②:学習および学業課題への関与を指し、努力、持続、集中、注意、質問、授業討論への参加などの行動を含む(Birch & Ladd, 1997; Finn et al., 1995; Skinner & Belmont, 1993)。
・定義③:スポーツや生徒会など、学校関連活動への参加を指す(Finn, 1993; Finn et al., 1995)
・例外:Finn(1989)は行動的エンゲージメントを四つのレベルに区分しており、教師の指示に従うことから、生徒自身の主体的な活動(例:課外活動や生徒会参加)までを含んでおり、このモデルでは、上位レベルの活動への参加は、学校組織へのより強いコミットメントを示す質的な違いを意味するとされている
Emotional Engagement (感情的エンゲージメント)
・感情的エンゲージメントとは、教室における生徒の感情的反応を指し、興味・退屈・幸福感・悲しみ・不安などを含む(Connell & Wellborn, 1991; Skinner & Belmont, 1993)
・一部の研究者は、学校や教師に対する感情的反応を測定することで感情的エンゲージメントを評価(Lee & Smith, 1995; Stipek, 2002)
・学校への同一化(identification)として概念化する研究者もいる(Finn, 1989; Voelkl, 1997)
・Finnは、同一化を「帰属(belonging:学校にとって自分が重要であると感じること)」および「価値(value:学校関連の成果に成功することへの評価)」と定義
・既存研究では、学校に対する感情を測るため、「学校・教師・学習に対して好きか嫌いか」「学校や授業で楽しいか、悲しいか」「課題に対して退屈か興味があるか」などの質問項目が用いられてきた(Epstein & McPartland, 1976; Yamamoto et al., 1969)
・感情的エンゲージメントに含まれる感情(興味や価値等)は、動機づけ研究の構成概念とも大きく重複
・『Engaging Schools』(National Research Council & Institute of Medicine, 2004)では、「動機づけ(motivation)」と「エンゲージメント(engagement)」を同義語として扱っている
・エンゲージメント研究で用いられる定義は、動機づけ研究と比べ単純化され、精緻化されていない
(動機づけ研究)
・「興味(interest)」を状況的興味(situational interest)と個人的興味(personal interest)に区別(Hidi & Renninger, 1992)
・前者は新奇性など、活動の特定の特徴によって一時的に喚起されるもので、一過的
・後者は安定的志向で、特定の活動やテーマに対し持続的関与や挑戦的課題への取組み意欲を伴う
・価値(value)の4要素(Eccles et al., 1983)
・①興味(interest):活動を楽しむこと
・②達成価値(attainment value):活動を遂行することが自己概念を確認するうえでどれだけ重要か
・③有用価値/重要性(utility value / importance):活動が将来の目標にとってどれだけ重要か
・④コスト(cost):活動に伴う否定的側面
(エンゲージメント研究)
・興味の概念化は、特定の領域や活動によらず一般的に扱われる傾向があり、そのため感情反応の源泉が曖昧(感情が学習内容か友人関係や教師に向けられているのかが不明等)
・感情的エンゲージメントの定義の多くは、ポジティブな感情と高い関与(involvement)または投資(investment)との質的な違いを明確にしていない
・「フロー(flow)」「個人が活動に完全に没入し、時間や空間の感覚を失う主観的状態」(Csikszentmihalyi, 1988)という定義は、高い感情的関与や心理的投資を伴う状態を示す概念化の一形態と見なせる
Cognitive Engagement (認知的エンゲージメント)
(認知的エンゲージメントの出発点となる2つの研究領域)
・スクール・エンゲージメント研究:学習への心理的投資(investment)を重視
・学習理論・自己調整学習研究:学習方略とメタ認知を重視
(スクール・エンゲージメント研究における定義)
・学習への心理的投資、要求を超えて学ぶ意欲、挑戦への嗜好といった特徴に焦点(Connell & Wellborn, 1991; Newmann et al., 1992; Wehlage et al., 1989)
・認知的エンゲージメント:問題解決における柔軟性、努力を好む傾向、失敗への積極的対処を含む(Connell & Wellborn, 1991)
・学業上のエンゲージメント:「学生が学習・理解・知識・スキル・職人的技術を身につけるために向ける心理的投資と努力」(Newmann et al., 1992, p.12)
・エンゲージメント:「学校で教えられる知識やスキルを理解し、習得するために必要な心理的投資」と定義(Wehlage et al., 1989, p.17)
・動機づけ研究との関連
・学習動機づけ(Brophy, 1987):知識や熟達を追求する学生を動機づけられた学習者と説明
・学習目標(Ames, 1992; Dweck & Leggett, 1988):学習目標(learning goals)を持つ学生は、成果そのものよりも、課題の理解や達成を重視する傾向
・内発的動機づけ(Harter, 1981):内発的動機づけ(intrinsic motivation)の高い学生は、挑戦を好み、困難に直面しても粘り強く取り組む
(学習理論における定義)
・文献での認知的エンゲージメントの定義:「戦略的で自己調整的であること(being strategic or self-regulating)」
・認知的または自己調整的エンゲージメントを示す学生は、メタ認知的方略を用いて、課題遂行の際に計画・モニタリング・評価を行う(Pintrich & De Groot, 1990; Zimmerman, 1990)
・リハーサル、要約、精緻化といった学習方略を使用して、教材の記憶・整理・理解を行う(Corno & Mandinach, 1983; Weinstein & Mayer, 1986)
・課題遂行中の努力を管理・制御し、集中を維持するために持続的努力(persistence)や気晴らし抑制(suppression of distractions)を行う(Corno, 1993; Pintrich & De Groot, 1990)
・深い学習方略と表層的学習方略の区別
・深い方略を使う学生は、より精神的努力を注ぎ、概念間の繋がりを構築し、高い理解を得る(Weinstein & Mayer)
・「努力(effort)」という用語は、認知的および行動的エンゲージメントの両方の定義に含まれているため、問題(単に行動としての努力と、学習や理解に焦点を当てた努力を区別する必要)
・動機づけ理論では、意志(volition)とは、「集中を維持し、外的・内的な妨害の中でも学習やパフォーマンスを支える心理的統制過程」である(Corno, 1993, p.16)
・「要求を超えて学ぶ(going beyond requirements)」概念も行動的努力と精神的努力を区別する上で重要
・認知的エンゲージメントの定義は二つの異なる文献系統に由来
・一方は、学習への心理的投資(動機づけ研究)
・もう一方は、認知的方略と自己調整(学習理論)
→理解を深めるためにはこの双方を統合して捉えることが重要
まとめ
・現在の行動的・感情的・認知的エンゲージメントの概念化には、いくつかの強みと限界がある。
・エンゲージメントの定義は非常に広範であり、多様な構成概念を含んでいる
・行動的エンゲージメント:「課題の遂行」「規律の遵守」
・感情的エンゲージメント:「興味・価値・感情」
・認知的エンゲージメント:「動機づけ・努力・方略使用」
・この包括性は利点である一方で、定義の多くが先行研究(学校への態度、教師による行動評価など)とほぼ重複しているという代償も伴う
・エンゲージメント研究の多くの定義は一般的すぎる傾向があり、概念の重複や差異の欠如が見られる
・多くの研究は、三つのタイプのうち一つまたは二つのみに焦点を当て、統合的視点を欠いている
・行動的エンゲージメントは、教師評価・自己報告・観察によって測定される
・主な指標は、宿題の遂行、規律遵守、授業参加、努力・粘り強さなど
・肯定的行動(例:課題への努力)に加えて、否定的行動(例:欠席、トラブル)を「disengagement」として扱う研究もある
・観察法では「課題への集中度」などが評価されるが、観察からは思考の質が読み取りにくく、高い認知的関与を見落とす危険がある点が課題とされる
感情的エンゲージメントの測定
・感情的エンゲージメントは主に自己報告尺度で測定され、学校・教師・学習に対する感情(喜び・興味・退屈・怒りなど)を問う
・Finnらはこれを「学校への同一化」と定義し、教師との関係や学習の価値意識を指標化した
・ただし以下の問題が指摘されている
・行動的項目と混在しているため、構成概念の区別が曖昧
・感情の原因(人間関係か学習体験か)を特定していない
・「興味」「価値」といった関連概念よりも粗い
・感情の変化が文脈依存である
→これに対し、経験サンプリング法は文脈変動を捉える有効な手法とされる
認知的エンゲージメントの測定
・認知的エンゲージメントは、学習への心理的投資や深い学習方略の使用として測定されるが、研究は少ない
・測定には、内発的動機づけ・目標理論・自己調整学習の概念が応用される
・代表的指標は、精緻化・メタ認知・努力管理・深層/表層方略の区別など
・観察法も用いられるが、行動から思考過程を正確に推測するのは困難
・特に小学生以下ではメタ認知の発達が未熟で、自己報告が難しい点も指摘されている
・より包括的な測定には、努力・挑戦志向と実際の思考過程を併せた複合的尺度が求められる。
共通する測定上の課題
・多くの研究は三タイプを明確に区別せず統合的に扱うため、概念的な混同が生じやすい
・「粘り強さ」「勤勉さ」などの項目が複数タイプに重複して使用されている
・測定対象が曖昧で、社会的側面と学業的側面を区別していない
・教科横断的な一般尺度が多く、領域特異的な理解(例:数学・理科・読解ごとの特徴)が捉えにくい
・多くの尺度は特定の課題や文脈に結びついておらず、エンゲージメントの質や強度の差を把握できない
・各タイプは複数の構成概念を含むが、個別概念の測定精度は十分でない
・研究目的に応じて、包括的尺度と精緻な概念測定のトレードオフを考慮する必要がある
まとめ
・エンゲージメントの測定は多様な手法で進められてきたが、概念の重複・対象の曖昧さ・領域依存性の欠如といった課題が残る
・今後の研究では、以下が求められる
・行動・感情・認知の相互関係を明確に区別し、
・教科・活動文脈に即した領域特異的測定を導入し、
・深層的な心理的投資や思考の質を捉える包括的尺度を開発すること
・行動的エンゲージメント(参加・努力・規律遵守など)は、小中高を通じて学力テスト・評定と一貫して正の関連。ただし相関の強さはサンプルや達成指標(教師評定/標準化テスト/州テスト等)の違いで変動。教師評定は行動要素を加味するため相関が過大になり得る。
・深い理解を要するテストでは、行動指標よりも認知的エンゲージメント(方略使用・メタ認知・努力管理)がより強く関連。授業談話の「実質的エンゲージメント」も理解・統合を測る得点と正の関係。
・感情的エンゲージメントのエビデンスは限定的で、特に興味・価値など特定構成概念を含む場合に達成と関連が見られる。ただし因果方向は未確定(多くが横断研究で双方向の可能性)。
・まとめ:行動は基礎技能系・教師評定に、認知は高次理解系に強く効く傾向。タイプ間の固有効果は測定の混同により分離が難しい。
中退
・低い行動的エンゲージメント(欠席・課題未遂行・規律問題・不参加など)は中退の前兆。課外活動への参加は中退リスクを低減(特に低所得層・学業リスク群)
・初期学年の行動はその後の中退に縦断的に関連(1年生の行動適応→成績・出席→中退決定)
・感情的エンゲージメント(帰属感・教師や学校との感情的つながり)は民族誌的研究で保護因子として示唆。
・認知的エンゲージメントと中退の実証研究はほぼ無し
・理論モデル:Finnの「参加―同一化モデル」では、不参加→学業不成功→感情的離脱→さらなる不参加…という循環で中退に至る可能性を想定
・学校間で中退率は大きく異なり、人口統計を統制しても差が残るため、学校・教室のどの側面がエンゲージメントを促進するかの同定が今後の課題。
まとめ
・学業達成の向上には、行動(参加・努力)と認知(深い方略・メタ認知)を目的の評価に合わせて育成・測定する設計が有効
・中退予防には、初期段階からの行動支援(出席・課題遂行)と帰属感の醸成、および課外参加の機会提供が鍵。
・研究面では、タイプ間の測定混同を避け、縦断・媒介モデルでプロセスを検証することが求められる
・家族・地域・文化も影響するが、本稿は教育的文脈に焦点
・学校レベル → 教室レベル → 個人のニーズ(関係性・自律性・有能感)の順に、エンゲージメント(行動・感情・認知)への影響を整理
・エビデンスは不均一で、縦断研究と媒介(mediation)検証が不足
学校レベル要因
・小規模校・共同体的学校(共通目標、水平的意思決定、教職員と生徒の協働、成果物を伴う学習)は行動的エンゲージメントを高めやすい
・規律・公平性:明確で一貫した基準は中退率低下と関連。ただし「厳格さ」の効果は一貫せず、公平性欠如の知覚はディスエンゲージメントを招きやすい
・学校改革モデル(First Things First、ComerのSchool Development Program)で、出席・粘り強さ・規範的行動や学校へのポジ感情が改善
・課題:学校要因が感情・認知に及ぼす効果のエビデンスは少なく、改革→エンゲージメント→達成の媒介経路の検証が未整備
教室文脈
教師による支援
・学術的支援+対人的支援は、行動的エンゲージメント(参加・集中・問題行動減)と広く正関連。中退リスクの低下も
・支援的で理解重視・自律性を認める授業は、認知的エンゲージメント(方略使用・メタ認知)と感情的充実を高める。
・ただし多くは横断研究で、双方向性(生徒の高エンゲージメント→教師の関与増)も示唆。
仲間(Peers)
・似た関与度で同質的集団化が起き、所属するグループの水準が個人の行動的・感情的エンゲージメントを強化
・受容は満足感・努力と関連、拒絶は問題行動・参加低下・興味低下と関連
・少数派青年では、仲間規範が学校離れを助長する場合あり。一方で、差別への対処資源や社会的支援があると関与は維持
・課題:認知的エンゲージメントへの仲間の影響は研究が不足
教室構造(期待の明確さ・一貫性)
・明確な期待と一貫した対応は行動的エンゲージメントを高める
・風土研究とも合致し、管理が行き届くほど課題集中・懲戒問題減(=行動的指標)
・さらなる検討が望まれる領域
自律性支援
・選択肢・意思決定共有・外的統制の抑制はエンゲージメントを高めうるが、実地の効果は混在
・低学年の識字での自由選択は認知的エンゲージメントを促進。一方、中学校移行期では統制増大が興味低下に関与の可能性
・年齢・文化・人種による効果差と、構造×自律性支援の最適組合せの特定が課題
課題特性
・学校で一般的な反復・記憶型課題は表層方略で達成可能で、認知的エンゲージメントを促しにくい
・真正性・挑戦性・主体性・協働・多様な才能の発揮・楽しさを備えた課題は、行動・感情・認知のエンゲージメントを高める
・実証では真正学習の機会認知や課題の挑戦度がエンゲージメントの強力な予測因子
個人のニーズ(媒介の可能性)
関係性(Relatedness)
・教師・仲間・親との温かな関係や所属感は、行動・感情的エンゲージメントを一貫して促進
・所属感が教師関係→学校感情を媒介した例はあるが、三者同時測定は稀
自律性(Autonomy)
・内的理由(興味・楽しさ)で活動するほど、行動・感情的エンゲージメントが高い
・ただし、自律性支援文脈→自律性欲求充足→エンゲージメントの媒介テストは未着手
有能感(Competence)
・統制・方略・能力の信念(期待・自己概念含む)は、行動・感情、そして認知的エンゲージメント(学習・メタ認知方略)と関連
・強い統制信念は学年進行に伴うエンゲージメント低下を緩和
研究上のギャップと示唆
・媒介モデル不足:文脈 →(ニーズ充足)→ エンゲージメント → 達成 の因果連鎖の実証が不足
・三タイプ同時検証の欠如:同一文脈要因が行動・感情・認知にどう同時作用するか不明
・相互作用の未解明:教師支援×課題特性×構造×自律性支援など複合効果の検証が必要
・縦断・多様サンプルの不足(中高・大学、少数派・低所得者層、文化差)
・実装示唆:小規模/共同体的運営、支援的で理解重視の授業、真正で挑戦的な課題+選択肢、明確で一貫した期待設定、仲間相互作用の設計が有望。ニーズ(関係性・自律性・有能感)を意図的に満たす設計が鍵
・エンゲージメントは行動・感情・認知の多次元概念で、学業成果や継続性と正に関連し、学校・教室の設計で可塑的に高められる有望ターゲット
・ただし定義・測定の混線、縦断・介入・媒介モデルの不足が大きな壁
・今後は三次元同時検証×縦断×多方法で、文脈→(ニーズ)→エンゲージメント→成果の因果連鎖を明確化する必要
多次元概念としての含意
・三タイプ(行動・感情・認知)を同時に扱う研究は少ない。文脈要因の組合せ効果やタイプ間の相互作用(例:感情→行動・認知→達成の媒介)は未解明
・しきい値(threshold)や非線形の可能性、タイプの相補関係(一部低くても他で補えるか)を検討すべき
・変数中心からパターン中心分析へ(個人ごとのエンゲージメント構成の類型化と予測力の比較)
定義と測定の明確化
・三タイプの概念重複(例:興味・価値・感情/努力・方略)が多く、精密さに欠ける
・単一合成スコアは予測力を高める一方、因果特定や媒介検証を困難にする。目的に応じて精緻尺度と合成尺度を使い分ける設計が必要
・学校レベル項目と教室レベル項目の混在は前因・結果の違いを覆い隠すため、レベル分離した測定が求められる
発達的課題と縦断
・年齢段階で焦点が偏在(小学校=仲間支援/中高=課題特性など)。エンゲージメントは学齢で形と源泉が変化する可能性
・必要な問い:①どのタイプが初期に優勢か、②三タイプの発達的軌跡、③年齢群ごとに有効な文脈要因
・「エンゲージメント=コミットメント」の観点(平均高得点が真のコミットメントか)を縦断で再検討
可塑性と個人×文脈の相互作用
・エンゲージメントが文脈変化にどの程度反応するかの実証が不足
・学校・教室介入が三タイプに及ぼす効果、そして文脈→(関係性・自律性・有能感)→エンゲージメントの媒介パスの検証が必要
・個人特性(不安、能力など)との交互作用をモデル化し、「どの文脈がどの生徒に効くか」を特定する
方法論:多方法アプローチの拡充
・質問紙依存から、観察・談話分析・民族誌・経験サンプリング等を組み合わせた厚い記述へ
・教師支援の「どの要素が効くか」、課題の「どの設計が認知的関与を生むか」を細部まで可視化
・サンプルの多様化(マイノリティ・移民・低所得者層・ティーンマザー等)は急務
実装に向けた含意
・支援的な教師・仲間、真正かつ挑戦的で選択肢のある課題、明確で一貫した構造を備えた教室がエンゲージメントを高める
・介入研究では、エンゲージメントを主要アウトカム/媒介変数として直接測定し、達成への伝播を検証すること
研究アジェンダ(実行可能な次ステップ)
・三タイプ同時の測定モデル(学級レベル分離、合成+下位因子の二層構造)
・縦断パネル+交差遅延でタイプ間の因果方向としきい値をテスト
・媒介・調整統合モデル:文脈→(関係性/自律性/有能感)→三タイプ→達成・継続
・パターン中心(潜在プロファイル・潜在遷移)で構成類型の変化と成果予測を検証
・多方法混合法(観察・談話・ESM+量的)でメカニズムを同定
・多様サンプルで一般化可能性と文化差を評価
ここまで。
すごく長い論文でしたが、School Engagementの全体像を知る上では非常に得るものが多かったように思います。再度、ポイントをまとめます。
・School Engagementは、行動・感情・認知の3つのタイプがあり、以下のような概念を含む
・行動的エンゲージメント:「課題の遂行」「規律の遵守」
・感情的エンゲージメント:「興味・価値・感情」
・認知的エンゲージメント:「動機づけ・努力・方略使用」
・エンゲージメントの測定:概念の重複・対象の曖昧さ・領域依存性の欠如といった課題がある
・エンゲージメントの成果:学業達成と中退防止
・エンゲージメントの先行要因:学校レベル → 教室レベル → 個人のニーズの順に整理
・学校レベル
・小規模校・共同体的学校は行動的エンゲージメントを高めやすい
・規律・公平性:明確で一貫した基準は中退率低下と関連
・学校改革モデルで、出席・粘り強さ・規範的行動や学校へのポジ感情が改善
・教室レベル
・教師による支援
・学術的支援+対人的支援は、行動的エンゲージメントと広く正関連。中退リスクの低下も
・支援的で理解重視・自律性を認める授業は、認知的エンゲージメントと感情的充実を高める
・仲間(Peers)
・似たエンゲージメント度で同質的集団化が起き、個人の行動的・感情的エンゲージメントを強化
・受容は満足感・努力と関連、拒絶は問題行動・参加低下・興味低下と関連
・教室構造(期待の明確さ・一貫性)
・明確な期待と一貫した対応は行動的エンゲージメントを高める
・風土研究とも合致し、管理が行き届くほど課題集中・懲戒問題減(=行動的指標)
・自律性支援
・選択肢・意思決定共有・外的統制の抑制はエンゲージメントを高めうるが、実地の効果は混在
・低学年の識字での自由選択は認知的エンゲージメントを促進
・一方、中学校移行期では統制増大が興味低下に関与の可能性
・課題特性
・反復・記憶型課題は表層方略で達成可能で、認知的エンゲージメントを促しにくい
・真正性・挑戦性・主体性・協働・多様な才能の発揮・楽しさを備えた課題は、行動・感情・認知のエンゲージメントを高める
・真正学習の認知や課題の挑戦度がエンゲージメントの強力な予測因子
・個人のニーズ(関係性・自律性・有能感)
・関係性(Relatedness)
・教師・仲間・親との温かな関係や所属感は、行動・感情的エンゲージメントを一貫して促進
・自律性(Autonomy)
・内的理由(興味・楽しさ)で活動するほど、行動・感情的エンゲージメントが高い
・有能感(Competence)
・統制・方略・能力の信念は、行動・感情・認知的エンゲージメントと関連
・強い統制信念は学年進行に伴うエンゲージメント低下を緩和
こうやって概観すると、学生のエンゲージメントを高めるためにできることはまだまだあるなと気付かされました。また、PBLとの相性の良さも非常に感じました。エンゲージメントを高める課題特性のほとんど全てをPBLは含んでいるんじゃないかと思います。今後の研究の方向性にも色々な気づきが得られた良き論文でした。
「若者が学校の提供する機会を活かし、将来成功するために必要な能力を獲得するためには、教育へのコミットメントを確立することが不可欠であり、スクール・エンゲージメントはその解毒剤である」
約2万件も引用されており、スクールエンゲージメントを調べる上で土台となるような論文です。
論文はこちら(被引用数:19,867件(2025年10月8日時点))
Fredricks, J. A., Blumenfeld, P. C., & Paris, A. H. (2004). School engagement: Potential of the concept, state of the evidence. Review of educational research, 74(1), 59-109.
まず、当論文の目的からまとめます。
・行動的・感情的・認知的エンゲージメントに関する既存文献の強み・弱み・欠落を批判的に評価し、この概念の潜在力をいかに実証的に明らかにできるかを検討すること
・関連文献を網羅的に再検討することではなく、それらから得られた洞察がエンゲージメントの理解および教育実践への応用にどのように寄与し得るかを示唆すること
・現在のエンゲージメント研究の質を全体的に評価し、その強みと限界を明らかにしたうえで、今後の研究に向けたいくつかの提案を提示すること
続いて、背景やタイプ、既存の構成概念との重なりなどについてです。
【背景】
・多くの学生は学校教育を退屈なもの、あるいは可能な限り少ない努力で切り抜ける「成績ゲーム(grade game)」として見なしている(Burkett, 2002; Pope, 2002)。
・学年が上がるにつれて動機づけが大きく低下する(Eccles, Midgley, & Adler, 1984; Fredricks & Eccles, 2002)
・これらの問題が特にマイノリティの学生において深刻で、その集団では中退率が最も高い(Rumberger, 1987)
→これらは、知識を統合し、批判的に考え、問題を解決できる労働者を必要とする新しいグローバル経済の主張を踏まえると、特に懸念すべきものである。義務教育が存在するとはいえ、若者が学校の提供する機会を活かし、将来成功するために必要な能力を獲得するためには、教育へのコミットメントを確立することが不可欠である
・スクール・エンゲージメントは、このような学生の疎外に対する解毒剤として見なされている。この用語は、研究と教育実践の双方において、今日の学生に欠けているとされる特性を包括するものとして用いられている。
【Engagementの意味・定義】
・Engagementの一般的な意味の一つとして「commitment」を挙げている(『Merriam-Webster’s Collegiate Dictionary(第11版)』
・Being actively committed(積極的に関与していること)と定義(『The American Heritage College Dictionary(第4版)』
・to involve oneself or become occupied; to participate(自ら関与、従事、参加すること)
・to attract or involve(惹きつけること、巻き込むこと)(『New Oxford American Dictionary』)
【エンゲージメントの多面的な性質(3つのタイプ)】
・行動的エンゲージメント(Behavioral engagement):参加という概念に基づき、学業・社会的・課外活動への関与を含む。学業的成果を促進し、ドロップアウトを防ぐ上で重要な要素とみなされている
・感情的エンゲージメント(Emotional engagement):教師・クラスメート・学問・学校に対する肯定的・否定的感情反応を含み、学校への愛着や帰属意識を生み、努力意欲に影響を与える
・認知的エンゲージメント(Cognitive engagement)は、投資(investment)の概念に基づき、深い理解や複雑なスキルを習得するために必要な努力を惜しまない姿勢や熟慮を含む
【過去に研究された構成概念との重なり】
・行動的エンゲージメント:生徒の行動規範や授業中の課題行動に関する研究と関連(Karweit, 1989; Peterson, Swing, Stark, & Wass, 1984)
・感情的エンゲージメント:生徒の態度(Epstein & McPartland, 1976; Yamamoto, Thomas, & Karns, 1969)や興味・価値観(Eccles et al., 1983)に関する研究と関連
・認知的エンゲージメント:動機づけ目標や自己調整学習に関する研究(Boekarts, Pintrich, & Zeidner, 2000; Zimmerman, 1990)と関連
→著者らはこれら3つの要素をメタ構成概念として統合することに大きな可能性があると主張
・チーム・エンゲージメントの研究のように、複数の要素を統合的に捉える必要があると主張(Guthrie & Anderson, 1999; Guthrie & Wigfield, 2000)
・行動・感情・認知の要素は相互に関連しており、独立したプロセスではない。したがって、エンゲージメントを多次元的に捉えることは、行動・感情・認知の要因を同時かつ動的に検討し、それらの加算的・相互作用的効果を検証する上で有効であると考えられる。
【エンゲージメントの各側面における質的なレベルの違い】
・行動的エンゲージメント:「課題を行い、規律に従う」という表層的な関与〜「生徒会活動に参加する」という積極的関与まで
・感情的エンゲージメント:「学校や教員に対して好意を持つ」という軽い愛着〜「学校を深く価値づける」「学校と自己を同一視する」といった深い愛着まで
・認知的エンゲージメント:「暗記的学習」〜「深い理解や専門性を促す自己調整的学習方略の使用」まで
→このような各側面内の質的差異は、エンゲージメントの強度や持続時間に多様性があることを示唆
・エンゲージメントそのものが自己を強化する自己循環的性質を持ち、より遠い結果変数(例:学業達成や学校適応)における改善を促進する可能性があると推察される
・エンゲージメントへの関心が高まっているもう一つの理由:可塑的(malleable)
・エンゲージメントは個人と環境の相互作用によって形成され、環境変化に応答するもの(Connell, 1990; Finn & Rock, 1997)
・エンゲージメントへの経路は、社会的なもの、学業的なもののいずれでもあり得る。学校や教室における参加機会、人間関係、知的活動への関与などが、その形成要因となる。現在、多くの教育介入(たとえば学校風土の改善、カリキュラムや教育基準の変更など)は、明示的または暗示的に、エンゲージメントの向上を学習促進やドロップアウト減少の媒介経路として想定している。 たとえば、Guthrie と Wigfield(2000)は、エンゲージメントがカリキュラムおよび教授法改革の成果を媒介していると主張している
・多面的なアプローチは、文脈を変える試みが3つのエンゲージメント要素(行動的・感情的・認知的)にどのような影響を与え、その結果が一つまたは複数の要素の変化を通じて媒介されているかを探ることの重要性を強調する。
・エンゲージメントを、個人と環境との相互作用的・多次元的構成概念として研究することは、子どもたちの学校における経験の複雑性をより深く理解し、より的を絞った精緻な介入策を設計する上で有望である。
続いて、以下の4つのセクションに分けて記載されています。
①エンゲージメントの定義および、3タイプ(行動的・感情的・認知的)の前提
②エンゲージメントの測定
③エンゲージメントの成果
④エンゲージメントの先行要因
以下、セクション毎にざっくりまとめます。
①What Is Engagement? (エンゲージメントとは何か)
Behavioral Engagement (行動的エンゲージメント)・行動的エンゲージメントの三つの方法での定義
・定義①:肯定的な行動(positive conduct)に焦点を当て、ルールを守り、授業内の規範に従うこと、ならびに欠席や問題行動(例:授業をサボる、トラブルを起こす)の欠如を含む(Finn, 1993; Finn, Pannozzo, & Voelkl, 1995; Finn & Rock, 1997)
・定義②:学習および学業課題への関与を指し、努力、持続、集中、注意、質問、授業討論への参加などの行動を含む(Birch & Ladd, 1997; Finn et al., 1995; Skinner & Belmont, 1993)。
・定義③:スポーツや生徒会など、学校関連活動への参加を指す(Finn, 1993; Finn et al., 1995)
・例外:Finn(1989)は行動的エンゲージメントを四つのレベルに区分しており、教師の指示に従うことから、生徒自身の主体的な活動(例:課外活動や生徒会参加)までを含んでおり、このモデルでは、上位レベルの活動への参加は、学校組織へのより強いコミットメントを示す質的な違いを意味するとされている
Emotional Engagement (感情的エンゲージメント)
・感情的エンゲージメントとは、教室における生徒の感情的反応を指し、興味・退屈・幸福感・悲しみ・不安などを含む(Connell & Wellborn, 1991; Skinner & Belmont, 1993)
・一部の研究者は、学校や教師に対する感情的反応を測定することで感情的エンゲージメントを評価(Lee & Smith, 1995; Stipek, 2002)
・学校への同一化(identification)として概念化する研究者もいる(Finn, 1989; Voelkl, 1997)
・Finnは、同一化を「帰属(belonging:学校にとって自分が重要であると感じること)」および「価値(value:学校関連の成果に成功することへの評価)」と定義
・既存研究では、学校に対する感情を測るため、「学校・教師・学習に対して好きか嫌いか」「学校や授業で楽しいか、悲しいか」「課題に対して退屈か興味があるか」などの質問項目が用いられてきた(Epstein & McPartland, 1976; Yamamoto et al., 1969)
・感情的エンゲージメントに含まれる感情(興味や価値等)は、動機づけ研究の構成概念とも大きく重複
・『Engaging Schools』(National Research Council & Institute of Medicine, 2004)では、「動機づけ(motivation)」と「エンゲージメント(engagement)」を同義語として扱っている
・エンゲージメント研究で用いられる定義は、動機づけ研究と比べ単純化され、精緻化されていない
(動機づけ研究)
・「興味(interest)」を状況的興味(situational interest)と個人的興味(personal interest)に区別(Hidi & Renninger, 1992)
・前者は新奇性など、活動の特定の特徴によって一時的に喚起されるもので、一過的
・後者は安定的志向で、特定の活動やテーマに対し持続的関与や挑戦的課題への取組み意欲を伴う
・価値(value)の4要素(Eccles et al., 1983)
・①興味(interest):活動を楽しむこと
・②達成価値(attainment value):活動を遂行することが自己概念を確認するうえでどれだけ重要か
・③有用価値/重要性(utility value / importance):活動が将来の目標にとってどれだけ重要か
・④コスト(cost):活動に伴う否定的側面
(エンゲージメント研究)
・興味の概念化は、特定の領域や活動によらず一般的に扱われる傾向があり、そのため感情反応の源泉が曖昧(感情が学習内容か友人関係や教師に向けられているのかが不明等)
・感情的エンゲージメントの定義の多くは、ポジティブな感情と高い関与(involvement)または投資(investment)との質的な違いを明確にしていない
・「フロー(flow)」「個人が活動に完全に没入し、時間や空間の感覚を失う主観的状態」(Csikszentmihalyi, 1988)という定義は、高い感情的関与や心理的投資を伴う状態を示す概念化の一形態と見なせる
Cognitive Engagement (認知的エンゲージメント)
(認知的エンゲージメントの出発点となる2つの研究領域)
・スクール・エンゲージメント研究:学習への心理的投資(investment)を重視
・学習理論・自己調整学習研究:学習方略とメタ認知を重視
(スクール・エンゲージメント研究における定義)
・学習への心理的投資、要求を超えて学ぶ意欲、挑戦への嗜好といった特徴に焦点(Connell & Wellborn, 1991; Newmann et al., 1992; Wehlage et al., 1989)
・認知的エンゲージメント:問題解決における柔軟性、努力を好む傾向、失敗への積極的対処を含む(Connell & Wellborn, 1991)
・学業上のエンゲージメント:「学生が学習・理解・知識・スキル・職人的技術を身につけるために向ける心理的投資と努力」(Newmann et al., 1992, p.12)
・エンゲージメント:「学校で教えられる知識やスキルを理解し、習得するために必要な心理的投資」と定義(Wehlage et al., 1989, p.17)
・動機づけ研究との関連
・学習動機づけ(Brophy, 1987):知識や熟達を追求する学生を動機づけられた学習者と説明
・学習目標(Ames, 1992; Dweck & Leggett, 1988):学習目標(learning goals)を持つ学生は、成果そのものよりも、課題の理解や達成を重視する傾向
・内発的動機づけ(Harter, 1981):内発的動機づけ(intrinsic motivation)の高い学生は、挑戦を好み、困難に直面しても粘り強く取り組む
(学習理論における定義)
・文献での認知的エンゲージメントの定義:「戦略的で自己調整的であること(being strategic or self-regulating)」
・認知的または自己調整的エンゲージメントを示す学生は、メタ認知的方略を用いて、課題遂行の際に計画・モニタリング・評価を行う(Pintrich & De Groot, 1990; Zimmerman, 1990)
・リハーサル、要約、精緻化といった学習方略を使用して、教材の記憶・整理・理解を行う(Corno & Mandinach, 1983; Weinstein & Mayer, 1986)
・課題遂行中の努力を管理・制御し、集中を維持するために持続的努力(persistence)や気晴らし抑制(suppression of distractions)を行う(Corno, 1993; Pintrich & De Groot, 1990)
・深い学習方略と表層的学習方略の区別
・深い方略を使う学生は、より精神的努力を注ぎ、概念間の繋がりを構築し、高い理解を得る(Weinstein & Mayer)
・「努力(effort)」という用語は、認知的および行動的エンゲージメントの両方の定義に含まれているため、問題(単に行動としての努力と、学習や理解に焦点を当てた努力を区別する必要)
・動機づけ理論では、意志(volition)とは、「集中を維持し、外的・内的な妨害の中でも学習やパフォーマンスを支える心理的統制過程」である(Corno, 1993, p.16)
・「要求を超えて学ぶ(going beyond requirements)」概念も行動的努力と精神的努力を区別する上で重要
・認知的エンゲージメントの定義は二つの異なる文献系統に由来
・一方は、学習への心理的投資(動機づけ研究)
・もう一方は、認知的方略と自己調整(学習理論)
→理解を深めるためにはこの双方を統合して捉えることが重要
まとめ
・現在の行動的・感情的・認知的エンゲージメントの概念化には、いくつかの強みと限界がある。
・エンゲージメントの定義は非常に広範であり、多様な構成概念を含んでいる
・行動的エンゲージメント:「課題の遂行」「規律の遵守」
・感情的エンゲージメント:「興味・価値・感情」
・認知的エンゲージメント:「動機づけ・努力・方略使用」
・この包括性は利点である一方で、定義の多くが先行研究(学校への態度、教師による行動評価など)とほぼ重複しているという代償も伴う
・エンゲージメント研究の多くの定義は一般的すぎる傾向があり、概念の重複や差異の欠如が見られる
・多くの研究は、三つのタイプのうち一つまたは二つのみに焦点を当て、統合的視点を欠いている
②エンゲージメントの測定
行動的エンゲージメントの測定・行動的エンゲージメントは、教師評価・自己報告・観察によって測定される
・主な指標は、宿題の遂行、規律遵守、授業参加、努力・粘り強さなど
・肯定的行動(例:課題への努力)に加えて、否定的行動(例:欠席、トラブル)を「disengagement」として扱う研究もある
・観察法では「課題への集中度」などが評価されるが、観察からは思考の質が読み取りにくく、高い認知的関与を見落とす危険がある点が課題とされる
感情的エンゲージメントの測定
・感情的エンゲージメントは主に自己報告尺度で測定され、学校・教師・学習に対する感情(喜び・興味・退屈・怒りなど)を問う
・Finnらはこれを「学校への同一化」と定義し、教師との関係や学習の価値意識を指標化した
・ただし以下の問題が指摘されている
・行動的項目と混在しているため、構成概念の区別が曖昧
・感情の原因(人間関係か学習体験か)を特定していない
・「興味」「価値」といった関連概念よりも粗い
・感情の変化が文脈依存である
→これに対し、経験サンプリング法は文脈変動を捉える有効な手法とされる
認知的エンゲージメントの測定
・認知的エンゲージメントは、学習への心理的投資や深い学習方略の使用として測定されるが、研究は少ない
・測定には、内発的動機づけ・目標理論・自己調整学習の概念が応用される
・代表的指標は、精緻化・メタ認知・努力管理・深層/表層方略の区別など
・観察法も用いられるが、行動から思考過程を正確に推測するのは困難
・特に小学生以下ではメタ認知の発達が未熟で、自己報告が難しい点も指摘されている
・より包括的な測定には、努力・挑戦志向と実際の思考過程を併せた複合的尺度が求められる。
共通する測定上の課題
・多くの研究は三タイプを明確に区別せず統合的に扱うため、概念的な混同が生じやすい
・「粘り強さ」「勤勉さ」などの項目が複数タイプに重複して使用されている
・測定対象が曖昧で、社会的側面と学業的側面を区別していない
・教科横断的な一般尺度が多く、領域特異的な理解(例:数学・理科・読解ごとの特徴)が捉えにくい
・多くの尺度は特定の課題や文脈に結びついておらず、エンゲージメントの質や強度の差を把握できない
・各タイプは複数の構成概念を含むが、個別概念の測定精度は十分でない
・研究目的に応じて、包括的尺度と精緻な概念測定のトレードオフを考慮する必要がある
まとめ
・エンゲージメントの測定は多様な手法で進められてきたが、概念の重複・対象の曖昧さ・領域依存性の欠如といった課題が残る
・今後の研究では、以下が求められる
・行動・感情・認知の相互関係を明確に区別し、
・教科・活動文脈に即した領域特異的測定を導入し、
・深層的な心理的投資や思考の質を捉える包括的尺度を開発すること
③エンゲージメントの成果
学業達成・行動的エンゲージメント(参加・努力・規律遵守など)は、小中高を通じて学力テスト・評定と一貫して正の関連。ただし相関の強さはサンプルや達成指標(教師評定/標準化テスト/州テスト等)の違いで変動。教師評定は行動要素を加味するため相関が過大になり得る。
・深い理解を要するテストでは、行動指標よりも認知的エンゲージメント(方略使用・メタ認知・努力管理)がより強く関連。授業談話の「実質的エンゲージメント」も理解・統合を測る得点と正の関係。
・感情的エンゲージメントのエビデンスは限定的で、特に興味・価値など特定構成概念を含む場合に達成と関連が見られる。ただし因果方向は未確定(多くが横断研究で双方向の可能性)。
・まとめ:行動は基礎技能系・教師評定に、認知は高次理解系に強く効く傾向。タイプ間の固有効果は測定の混同により分離が難しい。
中退
・低い行動的エンゲージメント(欠席・課題未遂行・規律問題・不参加など)は中退の前兆。課外活動への参加は中退リスクを低減(特に低所得層・学業リスク群)
・初期学年の行動はその後の中退に縦断的に関連(1年生の行動適応→成績・出席→中退決定)
・感情的エンゲージメント(帰属感・教師や学校との感情的つながり)は民族誌的研究で保護因子として示唆。
・認知的エンゲージメントと中退の実証研究はほぼ無し
・理論モデル:Finnの「参加―同一化モデル」では、不参加→学業不成功→感情的離脱→さらなる不参加…という循環で中退に至る可能性を想定
・学校間で中退率は大きく異なり、人口統計を統制しても差が残るため、学校・教室のどの側面がエンゲージメントを促進するかの同定が今後の課題。
まとめ
・学業達成の向上には、行動(参加・努力)と認知(深い方略・メタ認知)を目的の評価に合わせて育成・測定する設計が有効
・中退予防には、初期段階からの行動支援(出席・課題遂行)と帰属感の醸成、および課外参加の機会提供が鍵。
・研究面では、タイプ間の測定混同を避け、縦断・媒介モデルでプロセスを検証することが求められる
④エンゲージメントの先行要因
全体像・家族・地域・文化も影響するが、本稿は教育的文脈に焦点
・学校レベル → 教室レベル → 個人のニーズ(関係性・自律性・有能感)の順に、エンゲージメント(行動・感情・認知)への影響を整理
・エビデンスは不均一で、縦断研究と媒介(mediation)検証が不足
学校レベル要因
・小規模校・共同体的学校(共通目標、水平的意思決定、教職員と生徒の協働、成果物を伴う学習)は行動的エンゲージメントを高めやすい
・規律・公平性:明確で一貫した基準は中退率低下と関連。ただし「厳格さ」の効果は一貫せず、公平性欠如の知覚はディスエンゲージメントを招きやすい
・学校改革モデル(First Things First、ComerのSchool Development Program)で、出席・粘り強さ・規範的行動や学校へのポジ感情が改善
・課題:学校要因が感情・認知に及ぼす効果のエビデンスは少なく、改革→エンゲージメント→達成の媒介経路の検証が未整備
教室文脈
教師による支援
・学術的支援+対人的支援は、行動的エンゲージメント(参加・集中・問題行動減)と広く正関連。中退リスクの低下も
・支援的で理解重視・自律性を認める授業は、認知的エンゲージメント(方略使用・メタ認知)と感情的充実を高める。
・ただし多くは横断研究で、双方向性(生徒の高エンゲージメント→教師の関与増)も示唆。
仲間(Peers)
・似た関与度で同質的集団化が起き、所属するグループの水準が個人の行動的・感情的エンゲージメントを強化
・受容は満足感・努力と関連、拒絶は問題行動・参加低下・興味低下と関連
・少数派青年では、仲間規範が学校離れを助長する場合あり。一方で、差別への対処資源や社会的支援があると関与は維持
・課題:認知的エンゲージメントへの仲間の影響は研究が不足
教室構造(期待の明確さ・一貫性)
・明確な期待と一貫した対応は行動的エンゲージメントを高める
・風土研究とも合致し、管理が行き届くほど課題集中・懲戒問題減(=行動的指標)
・さらなる検討が望まれる領域
自律性支援
・選択肢・意思決定共有・外的統制の抑制はエンゲージメントを高めうるが、実地の効果は混在
・低学年の識字での自由選択は認知的エンゲージメントを促進。一方、中学校移行期では統制増大が興味低下に関与の可能性
・年齢・文化・人種による効果差と、構造×自律性支援の最適組合せの特定が課題
課題特性
・学校で一般的な反復・記憶型課題は表層方略で達成可能で、認知的エンゲージメントを促しにくい
・真正性・挑戦性・主体性・協働・多様な才能の発揮・楽しさを備えた課題は、行動・感情・認知のエンゲージメントを高める
・実証では真正学習の機会認知や課題の挑戦度がエンゲージメントの強力な予測因子
個人のニーズ(媒介の可能性)
関係性(Relatedness)
・教師・仲間・親との温かな関係や所属感は、行動・感情的エンゲージメントを一貫して促進
・所属感が教師関係→学校感情を媒介した例はあるが、三者同時測定は稀
自律性(Autonomy)
・内的理由(興味・楽しさ)で活動するほど、行動・感情的エンゲージメントが高い
・ただし、自律性支援文脈→自律性欲求充足→エンゲージメントの媒介テストは未着手
有能感(Competence)
・統制・方略・能力の信念(期待・自己概念含む)は、行動・感情、そして認知的エンゲージメント(学習・メタ認知方略)と関連
・強い統制信念は学年進行に伴うエンゲージメント低下を緩和
研究上のギャップと示唆
・媒介モデル不足:文脈 →(ニーズ充足)→ エンゲージメント → 達成 の因果連鎖の実証が不足
・三タイプ同時検証の欠如:同一文脈要因が行動・感情・認知にどう同時作用するか不明
・相互作用の未解明:教師支援×課題特性×構造×自律性支援など複合効果の検証が必要
・縦断・多様サンプルの不足(中高・大学、少数派・低所得者層、文化差)
・実装示唆:小規模/共同体的運営、支援的で理解重視の授業、真正で挑戦的な課題+選択肢、明確で一貫した期待設定、仲間相互作用の設計が有望。ニーズ(関係性・自律性・有能感)を意図的に満たす設計が鍵
結論と今後の方向性(要約)
全体像・エンゲージメントは行動・感情・認知の多次元概念で、学業成果や継続性と正に関連し、学校・教室の設計で可塑的に高められる有望ターゲット
・ただし定義・測定の混線、縦断・介入・媒介モデルの不足が大きな壁
・今後は三次元同時検証×縦断×多方法で、文脈→(ニーズ)→エンゲージメント→成果の因果連鎖を明確化する必要
多次元概念としての含意
・三タイプ(行動・感情・認知)を同時に扱う研究は少ない。文脈要因の組合せ効果やタイプ間の相互作用(例:感情→行動・認知→達成の媒介)は未解明
・しきい値(threshold)や非線形の可能性、タイプの相補関係(一部低くても他で補えるか)を検討すべき
・変数中心からパターン中心分析へ(個人ごとのエンゲージメント構成の類型化と予測力の比較)
定義と測定の明確化
・三タイプの概念重複(例:興味・価値・感情/努力・方略)が多く、精密さに欠ける
・単一合成スコアは予測力を高める一方、因果特定や媒介検証を困難にする。目的に応じて精緻尺度と合成尺度を使い分ける設計が必要
・学校レベル項目と教室レベル項目の混在は前因・結果の違いを覆い隠すため、レベル分離した測定が求められる
発達的課題と縦断
・年齢段階で焦点が偏在(小学校=仲間支援/中高=課題特性など)。エンゲージメントは学齢で形と源泉が変化する可能性
・必要な問い:①どのタイプが初期に優勢か、②三タイプの発達的軌跡、③年齢群ごとに有効な文脈要因
・「エンゲージメント=コミットメント」の観点(平均高得点が真のコミットメントか)を縦断で再検討
可塑性と個人×文脈の相互作用
・エンゲージメントが文脈変化にどの程度反応するかの実証が不足
・学校・教室介入が三タイプに及ぼす効果、そして文脈→(関係性・自律性・有能感)→エンゲージメントの媒介パスの検証が必要
・個人特性(不安、能力など)との交互作用をモデル化し、「どの文脈がどの生徒に効くか」を特定する
方法論:多方法アプローチの拡充
・質問紙依存から、観察・談話分析・民族誌・経験サンプリング等を組み合わせた厚い記述へ
・教師支援の「どの要素が効くか」、課題の「どの設計が認知的関与を生むか」を細部まで可視化
・サンプルの多様化(マイノリティ・移民・低所得者層・ティーンマザー等)は急務
実装に向けた含意
・支援的な教師・仲間、真正かつ挑戦的で選択肢のある課題、明確で一貫した構造を備えた教室がエンゲージメントを高める
・介入研究では、エンゲージメントを主要アウトカム/媒介変数として直接測定し、達成への伝播を検証すること
研究アジェンダ(実行可能な次ステップ)
・三タイプ同時の測定モデル(学級レベル分離、合成+下位因子の二層構造)
・縦断パネル+交差遅延でタイプ間の因果方向としきい値をテスト
・媒介・調整統合モデル:文脈→(関係性/自律性/有能感)→三タイプ→達成・継続
・パターン中心(潜在プロファイル・潜在遷移)で構成類型の変化と成果予測を検証
・多方法混合法(観察・談話・ESM+量的)でメカニズムを同定
・多様サンプルで一般化可能性と文化差を評価
ここまで。
すごく長い論文でしたが、School Engagementの全体像を知る上では非常に得るものが多かったように思います。再度、ポイントをまとめます。
・School Engagementは、行動・感情・認知の3つのタイプがあり、以下のような概念を含む
・行動的エンゲージメント:「課題の遂行」「規律の遵守」
・感情的エンゲージメント:「興味・価値・感情」
・認知的エンゲージメント:「動機づけ・努力・方略使用」
・エンゲージメントの測定:概念の重複・対象の曖昧さ・領域依存性の欠如といった課題がある
・エンゲージメントの成果:学業達成と中退防止
・エンゲージメントの先行要因:学校レベル → 教室レベル → 個人のニーズの順に整理
・学校レベル
・小規模校・共同体的学校は行動的エンゲージメントを高めやすい
・規律・公平性:明確で一貫した基準は中退率低下と関連
・学校改革モデルで、出席・粘り強さ・規範的行動や学校へのポジ感情が改善
・教室レベル
・教師による支援
・学術的支援+対人的支援は、行動的エンゲージメントと広く正関連。中退リスクの低下も
・支援的で理解重視・自律性を認める授業は、認知的エンゲージメントと感情的充実を高める
・仲間(Peers)
・似たエンゲージメント度で同質的集団化が起き、個人の行動的・感情的エンゲージメントを強化
・受容は満足感・努力と関連、拒絶は問題行動・参加低下・興味低下と関連
・教室構造(期待の明確さ・一貫性)
・明確な期待と一貫した対応は行動的エンゲージメントを高める
・風土研究とも合致し、管理が行き届くほど課題集中・懲戒問題減(=行動的指標)
・自律性支援
・選択肢・意思決定共有・外的統制の抑制はエンゲージメントを高めうるが、実地の効果は混在
・低学年の識字での自由選択は認知的エンゲージメントを促進
・一方、中学校移行期では統制増大が興味低下に関与の可能性
・課題特性
・反復・記憶型課題は表層方略で達成可能で、認知的エンゲージメントを促しにくい
・真正性・挑戦性・主体性・協働・多様な才能の発揮・楽しさを備えた課題は、行動・感情・認知のエンゲージメントを高める
・真正学習の認知や課題の挑戦度がエンゲージメントの強力な予測因子
・個人のニーズ(関係性・自律性・有能感)
・関係性(Relatedness)
・教師・仲間・親との温かな関係や所属感は、行動・感情的エンゲージメントを一貫して促進
・自律性(Autonomy)
・内的理由(興味・楽しさ)で活動するほど、行動・感情的エンゲージメントが高い
・有能感(Competence)
・統制・方略・能力の信念は、行動・感情・認知的エンゲージメントと関連
・強い統制信念は学年進行に伴うエンゲージメント低下を緩和
こうやって概観すると、学生のエンゲージメントを高めるためにできることはまだまだあるなと気付かされました。また、PBLとの相性の良さも非常に感じました。エンゲージメントを高める課題特性のほとんど全てをPBLは含んでいるんじゃないかと思います。今後の研究の方向性にも色々な気づきが得られた良き論文でした。
「若者が学校の提供する機会を活かし、将来成功するために必要な能力を獲得するためには、教育へのコミットメントを確立することが不可欠であり、スクール・エンゲージメントはその解毒剤である」
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