組織開発(Organizational Development: OD)におけるリーダーシップの重要性を示したレビュー論文の考察です。

論文はこちら(被引用数:2件 (2026年2月14日時点))
Analyn, A. (2023). Leadership for organizational development: A review of literature. HISTORICAL: Journal of History and Social Sciences, 2(4), 170-183.

リーダーシップと組織開発(OD)との関係性を探りたくざっくり読みました。
こちらはレビュー論文で、Google Scholar 等を用いたキーワード検索し、理論的基盤が強いと判断した39本をレビュー対象に選定し、要点を大きく3点でまとめています。

①リーダーシップは組織開発の中核である
リーダーシップは単なる管理機能(administrative function)ではなく、組織開発(OD)を推進する中核的要因であるというのが最初の主旨です。その理由が以下の4点でまとめられています。

・持続的競争優位の源泉としてのリーダーシップ
 持続的競争優位性を確立するためには、資源を動的に活用・再構成できる組織能力が必要である。
 リーダーシップは、「組織資源の方向づけ」「戦略の実行」「人材の動機づけ」を通して、その競争優位の形成に直接的に寄与する。

・学習する組織を作る鍵
 学習する組織とは、「知識共有が行われる」「フィードバックが循環する」「継続的改善が可能」「組織メンバーが成長する」などを指す。こうした環境を生み出すためには、信頼と心理的安全性が必要であり、リーダーがそれらを形成する。

・不確実な環境に対応するために必要
 急速な技術変化や市場変動に対応するためには、組織変革が不可欠である。
 リーダーは、「変革ビジョンを提示」「メンバーの動機づけ」「抵抗を乗り越える」「組織を再構築する」存在である。特に変革型リーダーシップは、環境適応能力と結びつけて議論されている。

・組織文化に影響を与える
 リーダーは、価値観・規範:行動様式を形成する存在である。「信頼文化」「支援的風土」「参加的文化」「協働志向」などは、リーダーの行動様式によって強く影響を受ける。
 リーダーは、制度設計者であるだけでなく、文化形成者でもある。

②ポジティブ感情が媒介メカニズムである
リーダーシップの効果は直接的ではなく、情動的プロセスを通して発揮されます。
リーダーとフォロワーの関係性が強化される鍵として、ポジティブ感情の生成を位置づけています。
ポジティブ感情は、以下を通して組織成果につながるとされています。
リーダーは指示を出す以外に、「承認」「支援」「鼓舞」「共感」によってフォロワーにポジティブな情動(安心感、信頼感、希望、モチベーション、帰属感)を生じさせる。
ポジティブ感情は、認知的・社会的・行動的機能を活性化する媒介要因である。
・問題解決能力向上:ポジティブ感情は、認知的柔軟性や創造性を高め、効果的な問題解決を可能に
・努力の承認:承認される経験は自己効力感を高め、内発的動機づけを強化
・情動状態のモニタリング:リーダーがフォロワーの情動に注意を払うことで、心理的安全性が形成
・信頼構築:ポジティブな情動経験の蓄積が、対人的信頼を形成

 つまり、以下のような媒介構造が示唆されています。
・リーダーシップ(特に変革型・オーセンティック)
 ↓
・ポジティブ感情(安心・信頼・希望・モチベーション・帰属感)
 ↓
・関係性・態度・行動の変化(上司への信頼、情緒的コミットメント、職務満足度、組織市民行動、パフォーマンス向上)

③ 主な理論的枠組み
当論文では、主に「オーセンティック・リーダーシップ」「変革型リーダーシップ」「取引型リーダーシップ」が扱われていました。それぞれのリーダーシップの構成要素についてもメモしておきます。

オーセンティック・リーダーシップ(García-Morales et al., 2008)
・自己認識(Self-Awareness)
・内在化された道徳観(Internalized Moral Perspective)
・バランス処理(Balanced-Processing)
・関係的透明性(Relational Transparency)

変革型リーダーシップ(Avolio et al., 1999)
・理想化された影響力(idealized influence)
・鼓舞的動機づけ(inspire inspiring motivation)
・知的刺激(give intellectual stimulation)
・個別的配慮(treat followers as individuals)

取引型リーダーシップ(Washington, 2007, Bass 1985, Bass & Avolio 1994, 2000)
・条件付き報酬(Contingent Reward)
・例外管理(Management by Exception)
 ・MBE-A(Active):問題が発生する前に、基準逸脱を監視し、早期に是正する
 ・MBE-P(Passive):重大な問題が発生するまで介入しない
・レッセフェール(Laissez-faire):≒ non-leadership(非リーダーシップ)


最後に、リーダーシップは組織成果の直接的要因であると同時に、他の組織要因と成果との関係を強化・媒介する重要なプロセス変数であるとも言われています。
・変革型リーダーシップは、チームおよび組織成果に重要な影響を与える(Bass, 1985; Lowe et al., 1996)
・リーダーシップは、成果に直接影響するだけでなく、調整変数として機能する
 ・管理統制と成果の関係を強化する(Doeleman et al., 2012)
 ・上司への信頼と情緒的コミットメントの関係を強める(Xiong et al., 2016)
 ・HRDと組織パフォーマンスの関係を調整する(Alagaraja et al., 2015)
・リーダーシップは、媒介変数としても機能する
 ・社会的関係と職務パフォーマンスの関係を媒介する(Yusof et al., 2020)
 ・組織市民行動と革新性の関係を媒介する(Ozsahin & Sudak, 2015)
・変革型リーダーシップは、ビジョン提示や鼓舞を通じて士気・満足度を高める
・取引型リーダーシップは、報酬や罰を通じて業績を管理する
・両リーダーシップ・スタイルは、状況に応じて組織成果に正または負の影響を及ぼす


ここまで。
リーダーシップが組織開発の中核的要素であり、そのポイントを端的にまとめてくれていた論文でした。
特に、リーダーシップが他の組織要因と成果との関係を強化・媒介するプロセス変数として整理されているのが印象的でした。
適切なリーダーシップがフォロワーの情動面に影響を与え、それがひいては関係性・態度・行動の変化(上司への信頼、情緒的コミットメント、職務満足度、組織市民行動、パフォーマンス向上)へと繋がる。
組織開発の手法には色々あります。中には痛みを伴ったり、気をつけないとハレーションを生む可能性のあるものもありますが、個々(特に管理職)のリーダーシップ開発を行うことで、それが組織内のメンバーにポジティブな感情を生み出し、その結果、組織変革に繋がっていくというやり方は、自分好みの組織開発のやり方なのかもしれないなと感じました。

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