2016〜2023年のProject-Based Learning(PjBL)研究をシステマティック・レビュー(34本)し、最終的に新しいフレームワークを提案した論文をレビューします。
論文はこちら(被引用数:67件 (2026年5月5日時点))
Yusri, R., Yusof, A. M., & Latef, A. S. A. (2024). A systematic literature review of project-based learning: research trends, methods, elements, and frameworks. International Journal of Evaluation and Research in Education.
まず、レビューの内容をざっとまとめていきます。
PBLの主要掲載ジャーナル
・掲載されているジャーナルの1位は「Thinking Skills and Creatiity」
・2位が「Journal Pedidikan IPA Indonesia」で、インドネシアでPBLの研究が盛んなことがわかります

PjBLの主要な研究方法
・PjBL研究は多様な方法で行われており、量的研究が最も多いことがわかりました。
・量的研究:35.29%
・質的研究:26.47%
・記述研究:17.65%
・混合研究:8.82%
・アクションリサーチ・開発研究:5.88%
活発かつ影響力のある研究者
Yulia Muchnik-Rozanov、Afriana、Ai-Jou Pan、Akhsanul In’am、Alexander MacDonald、Alison Boardman、Anazifa、Ashley Seidel Potvin、Booyue Kim、Cheng-Huan Chen、Chin-Feng Lai、Dwi Dian Safitri、Dina Tsybulsky、Djukri、Dustin Van Orman、Dwi Listyorini、Eliana
PjBLにおける本質的要素
・日常生活の問題を解決するための技能を学生が発達させることを支援できるものであるという点で一致
・PjBLが体系的な学習方法として、学生を現実世界の課題に関与させ、成果物を生み出し、知識および技能を獲得させる
・PjBLは学生が実生活に適したプロジェクトに向けて知識および技能を向上させるのを支援する
・学生は意味のある学習を直接的に学ぶ
PjBLで育成されるスキル
主に以下の9つが中心で、特に21世紀型スキルに該当するものが多く含まれていることがわかりました。
・創造性(最多)
・協働
・批判的思考
・コミュニケーション
・概念理解
・革新的思考
・動機づけ
・問題解決
・自信

PjBLにおいて最も報告されている方法
①さまざまな学習メディアの活用
②学習の初期から最終段階に至るまでのプロジェクト評価手段の作成および評価の実施
③PjBLプロセスのオンライン実施
④PjBLの修正
⑤PjBLと科学・技術・工学・数学(STEM)の統合
⑥学習中の情報技術の活用
⑦PjBLを他の学習と適応的に統合・組み合わせる
※PjBLのさまざまな方法や手法が提案されてきたが、提案されたフレームワークがプロセスを最適化し、学生のスキルを向上させる真に有効なものであると明言した研究は存在しない
→プロセスを最適化し、学習の有効性および質を向上させるために、新たなPjBLフレームワークが必要
フレームワークの整理(5種類)
Williamsのフレームワーク(評価重視型)

・学生自身が評価プロセスを実施
・教員のグループ評価は学生の最終成果物に基づく
・評価は、プロジェクトに取り組む過程で学生が実施したハードワークおよび活動の観点から捉えられる
・この評価は、学生が自らの意思に基づいて評価することを可能にするため、主観的になる傾向がある
・オンラインメディアの活用は、学生の活動およびプロジェクトの進捗をモニタリングするのに有用
・評価は主観的であり完全ではないので、プロジェクトをモニタリングすると良い
・教員はプロジェクトプロセスに関するより多くの情報を収集し、自己評価、ピア評価、オンラインツールなど複数の評価手法を用いるべき
・評価を可視化することによって、公正な評価を確保し、評価プロセスおよび期待に対する学生の理解を高めることで、このプロセスはより効率的になる
Barak & Yuanのフレームワーク(創造性重視型)

・学生の革新的アイデアにより焦点を当てたフレームワーク
・学生は、実現可能な成果物を生み出すために、アイデアを交換し、問題を選択し、代替的解決策を探求することが奨励される
・学生は、仲間に対するフィードバックを構築し、自らのプロジェクトを洗練させることに関与
・その後、興味深く革新的な形でプロジェクトを発表する
・学生の革新的思考の差異は、学習における学生の態度および行動に依存している
・この5ステップは、さまざまな教育プログラムに適応可能
Wuのフレームワーク(認知・動機づけ型)

・SCAMPERとPjBLの指導活動を統合したモデル
・Substitute:置き換える
・Combine:組み合わせる
・Modify:変形する
・Put to another use:新しい使い方を考える
・Eliminate:削除する
・Rearrage/Reverse:再配置・逆転
・Moodleを学習プラットフォームとして採用
・認知能力、動機づけ、態度は、高創造性の学生が低創造性の学生よりも熟達し、作業を楽しむ
・議論、相互作用の過程において、動機づけとアイデア創出に重点
Mustaphaのフレームワーク(環境・資源重視型)

・PjBLを促進する八つの重要な要素・スキルを反映したモデル
①知識
②指導
③協働
④コミュニケーション
⑤創造性
⑥e-SOLMS:e-System for Online Learning Management/Support
⑦施設
⑧アクセス可能性
Panのフレームワーク(探究・主体性型)

・可能性思考(Possibility Thinking)とPjBLのフレームワーク(Gold Standard:オレンジ)を統合
・Panらは以下を重要な要素だと考え、統合した要素
①質問すること
②質問に答えること
③没入
④想像
⑤革新
⑥自己決定
⑦発展
⑧意図的行為
⑨ピア協働
・PTとPjBLの統合が学生の創造性および学習動機を高めることができる
レビューから見られるPjBLの弱点
①不適切な時間配分
②複雑な組織化
③結果測定の困難さ
④限られた資源
⑤教室管理上の課題
⑥ファシリテーターへの依存
⑦主観的評価
→これらの弱点を改善するために、「シミュレーション」をPjBLに統合したモデルを著者らは提案
新提案:PjBL+シミュレーション(PjBLS)
・レビューしたPjBLを縮減、適応し、そこにシミュレーションを統合した新たなモデルを提案
・PjBLとシミュレーションを統合することで、安全な環境で実践でき、理論と実践を接続できる
・これにより、学生は自信と確かな専門性をもって現実世界に立ち向かう準備が整う

ここまで。
システマティック・レビューから、PjBLの重要な要素を整理し、そこから既存モデルの弱点を改善するモデルとして「シミュレーション」という要素を統合した新たなモデルを提案。
個人的には、既存モデルの弱点の中でも「複雑な組織化」「限られた資源」の2点がPjBLならではの難しさを生み出しているのかなと感じました。
オーセンティックな学びを提供するためには、学外(校外)と接続した授業設計をするのがポイントとなります。そのためには、外部の人たちを見つけ、その方々を巻き込んだ授業設計をする必要があるのですが、この調整業務がなかなかに大変。いわゆるコーディネート業務なのですが、学外の連携先を見つけられなかったり、調整が難しかったりするわけです。
更にもう1点、資源も限られているので、やりたいことが制限されてしまうのも厄介です。特に費用面はそうかなと。予算がないと、遠方の企業訪問することも難しかったりしますし、実際に何かしらのビジネスを立ち上げて動かすことも難しくなります。ちょうど先日、某大学の友人の先生から、費用が出ないので本質的なビジネス体験を含んだPBLができないという話を伺ったばかりでした。
これらの厄介な問題点ですが、シミュレーションを導入することで解決されるというのにはある程度納得しました。シミュレーションであれば、新たに外部パートナーを探したり調整したりすることは不要ですし、コストもこそまでかかることもないでしょうから。また、シミュレーションを含んだPjBLは、PjBL初学者に良いモデルだとも思いました。アクティブラーニングや協働経験の少ない学生がいきなり高難易度のPjBLに挑戦すると、そこで躓いてしまうことも時々発生してしまうのですが、シミュレーションを挟むことでそのリスクは小さくできると思いました。そして、シミュレーションでPjBLに慣れてきたらリアルなパートナーと事業を行うという段階的に発展させていくモデルも描けるなと思いました。
論文はこちら(被引用数:67件 (2026年5月5日時点))
Yusri, R., Yusof, A. M., & Latef, A. S. A. (2024). A systematic literature review of project-based learning: research trends, methods, elements, and frameworks. International Journal of Evaluation and Research in Education.
まず、レビューの内容をざっとまとめていきます。
PBLの主要掲載ジャーナル
・掲載されているジャーナルの1位は「Thinking Skills and Creatiity」
・2位が「Journal Pedidikan IPA Indonesia」で、インドネシアでPBLの研究が盛んなことがわかります

PjBLの主要な研究方法
・PjBL研究は多様な方法で行われており、量的研究が最も多いことがわかりました。
・量的研究:35.29%
・質的研究:26.47%
・記述研究:17.65%
・混合研究:8.82%
・アクションリサーチ・開発研究:5.88%
活発かつ影響力のある研究者
Yulia Muchnik-Rozanov、Afriana、Ai-Jou Pan、Akhsanul In’am、Alexander MacDonald、Alison Boardman、Anazifa、Ashley Seidel Potvin、Booyue Kim、Cheng-Huan Chen、Chin-Feng Lai、Dwi Dian Safitri、Dina Tsybulsky、Djukri、Dustin Van Orman、Dwi Listyorini、Eliana
PjBLにおける本質的要素
・日常生活の問題を解決するための技能を学生が発達させることを支援できるものであるという点で一致
・PjBLが体系的な学習方法として、学生を現実世界の課題に関与させ、成果物を生み出し、知識および技能を獲得させる
・PjBLは学生が実生活に適したプロジェクトに向けて知識および技能を向上させるのを支援する
・学生は意味のある学習を直接的に学ぶ
PjBLで育成されるスキル
主に以下の9つが中心で、特に21世紀型スキルに該当するものが多く含まれていることがわかりました。
・創造性(最多)
・協働
・批判的思考
・コミュニケーション
・概念理解
・革新的思考
・動機づけ
・問題解決
・自信

PjBLにおいて最も報告されている方法
①さまざまな学習メディアの活用
②学習の初期から最終段階に至るまでのプロジェクト評価手段の作成および評価の実施
③PjBLプロセスのオンライン実施
④PjBLの修正
⑤PjBLと科学・技術・工学・数学(STEM)の統合
⑥学習中の情報技術の活用
⑦PjBLを他の学習と適応的に統合・組み合わせる
※PjBLのさまざまな方法や手法が提案されてきたが、提案されたフレームワークがプロセスを最適化し、学生のスキルを向上させる真に有効なものであると明言した研究は存在しない
→プロセスを最適化し、学習の有効性および質を向上させるために、新たなPjBLフレームワークが必要
フレームワークの整理(5種類)
Williamsのフレームワーク(評価重視型)

・学生自身が評価プロセスを実施
・教員のグループ評価は学生の最終成果物に基づく
・評価は、プロジェクトに取り組む過程で学生が実施したハードワークおよび活動の観点から捉えられる
・この評価は、学生が自らの意思に基づいて評価することを可能にするため、主観的になる傾向がある
・オンラインメディアの活用は、学生の活動およびプロジェクトの進捗をモニタリングするのに有用
・評価は主観的であり完全ではないので、プロジェクトをモニタリングすると良い
・教員はプロジェクトプロセスに関するより多くの情報を収集し、自己評価、ピア評価、オンラインツールなど複数の評価手法を用いるべき
・評価を可視化することによって、公正な評価を確保し、評価プロセスおよび期待に対する学生の理解を高めることで、このプロセスはより効率的になる
Barak & Yuanのフレームワーク(創造性重視型)

・学生の革新的アイデアにより焦点を当てたフレームワーク
・学生は、実現可能な成果物を生み出すために、アイデアを交換し、問題を選択し、代替的解決策を探求することが奨励される
・学生は、仲間に対するフィードバックを構築し、自らのプロジェクトを洗練させることに関与
・その後、興味深く革新的な形でプロジェクトを発表する
・学生の革新的思考の差異は、学習における学生の態度および行動に依存している
・この5ステップは、さまざまな教育プログラムに適応可能
Wuのフレームワーク(認知・動機づけ型)

・SCAMPERとPjBLの指導活動を統合したモデル
・Substitute:置き換える
・Combine:組み合わせる
・Modify:変形する
・Put to another use:新しい使い方を考える
・Eliminate:削除する
・Rearrage/Reverse:再配置・逆転
・Moodleを学習プラットフォームとして採用
・認知能力、動機づけ、態度は、高創造性の学生が低創造性の学生よりも熟達し、作業を楽しむ
・議論、相互作用の過程において、動機づけとアイデア創出に重点
Mustaphaのフレームワーク(環境・資源重視型)

・PjBLを促進する八つの重要な要素・スキルを反映したモデル
①知識
②指導
③協働
④コミュニケーション
⑤創造性
⑥e-SOLMS:e-System for Online Learning Management/Support
⑦施設
⑧アクセス可能性
Panのフレームワーク(探究・主体性型)

・可能性思考(Possibility Thinking)とPjBLのフレームワーク(Gold Standard:オレンジ)を統合
・Panらは以下を重要な要素だと考え、統合した要素
①質問すること
②質問に答えること
③没入
④想像
⑤革新
⑥自己決定
⑦発展
⑧意図的行為
⑨ピア協働
・PTとPjBLの統合が学生の創造性および学習動機を高めることができる
レビューから見られるPjBLの弱点
①不適切な時間配分
②複雑な組織化
③結果測定の困難さ
④限られた資源
⑤教室管理上の課題
⑥ファシリテーターへの依存
⑦主観的評価
→これらの弱点を改善するために、「シミュレーション」をPjBLに統合したモデルを著者らは提案
新提案:PjBL+シミュレーション(PjBLS)
・レビューしたPjBLを縮減、適応し、そこにシミュレーションを統合した新たなモデルを提案
・PjBLとシミュレーションを統合することで、安全な環境で実践でき、理論と実践を接続できる
・これにより、学生は自信と確かな専門性をもって現実世界に立ち向かう準備が整う

ここまで。
システマティック・レビューから、PjBLの重要な要素を整理し、そこから既存モデルの弱点を改善するモデルとして「シミュレーション」という要素を統合した新たなモデルを提案。
個人的には、既存モデルの弱点の中でも「複雑な組織化」「限られた資源」の2点がPjBLならではの難しさを生み出しているのかなと感じました。
オーセンティックな学びを提供するためには、学外(校外)と接続した授業設計をするのがポイントとなります。そのためには、外部の人たちを見つけ、その方々を巻き込んだ授業設計をする必要があるのですが、この調整業務がなかなかに大変。いわゆるコーディネート業務なのですが、学外の連携先を見つけられなかったり、調整が難しかったりするわけです。
更にもう1点、資源も限られているので、やりたいことが制限されてしまうのも厄介です。特に費用面はそうかなと。予算がないと、遠方の企業訪問することも難しかったりしますし、実際に何かしらのビジネスを立ち上げて動かすことも難しくなります。ちょうど先日、某大学の友人の先生から、費用が出ないので本質的なビジネス体験を含んだPBLができないという話を伺ったばかりでした。
これらの厄介な問題点ですが、シミュレーションを導入することで解決されるというのにはある程度納得しました。シミュレーションであれば、新たに外部パートナーを探したり調整したりすることは不要ですし、コストもこそまでかかることもないでしょうから。また、シミュレーションを含んだPjBLは、PjBL初学者に良いモデルだとも思いました。アクティブラーニングや協働経験の少ない学生がいきなり高難易度のPjBLに挑戦すると、そこで躓いてしまうことも時々発生してしまうのですが、シミュレーションを挟むことでそのリスクは小さくできると思いました。そして、シミュレーションでPjBLに慣れてきたらリアルなパートナーと事業を行うという段階的に発展させていくモデルも描けるなと思いました。
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