Qualitative data analysis a methods sourcebookのChapter 1のまとめです。
第1章はIntroductionで、本書の全体像についてまとめられています。
書籍はこちら(被引用数:2,705件 (2026年6月27日時点))
Miles, M. B., Huberman, A. M., & Saldaña, J. (2020). Qualitative data analysis: A methods sourcebook. 4th ed., International student ed. SAGE.
以下、端的にポイントをまとめます。
1. 本書の目的
本書は、質的データから信頼できる知見を導くための実践的な分析方法を提供することを目的としています。 著者らは、質的データ分析を単なる直感的な解釈ではなく、体系的で透明性のある分析プロセスとして位置づけています。
本書で紹介する分析方法は、「Miles & Huberman流」の質的データ分析法として知られるようになったそうです。そして、この分析の流れは、民族誌的手法とグラウンデッド・セオリーを融合したものだと考えられるそうです。つまり、
・分析は、一つの帰納的推論から次の帰納的推論へと進み、データを選択的に収集し、それらを比較・対照しながら規則性やパターンを探索する
・さらに、新たなデータを用いてそれらのパターンを支持または修正し、その後、蓄積された概念同士の関連から新たな推論を導いていく
といった特徴があります。
2. 質的データの特徴
質の高い質的データの最大の特徴は、自然な環境において日常的に起こる出来事を対象とすることであり、それによって現実の生活世界を強く捉えることができる点にあるとされます。その特徴として、以下のようなものがあると言及されています。
①:質的データには「ローカルな根拠性(local groundedness)」がある(特定の状況に密着して収集されたデータ)。そのため、分析対象は特定の事例に焦点を当てた境界の明確な現象であり、その文脈が分析から切り離されることはない。この特徴により、潜在的で目に見えにくい問題を理解する可能性が高まる。
②豊かさ(richness)と全体性(holism):複雑さを明らかにする大きな可能性を有している。こうしたデータは、Geertz(1973)の言う「厚い記述(thick descriptions)」を提供し、現実の文脈に根差した生き生きとした描写によって、読者に強い説得力を与える。
③:プロセスの研究に適している。「何が起こったか」だけではなく、「どのように」「なぜ」起こったのかを説明することができ、特定の状況において因果関係を評価することも可能である。
【質的データ例】
・インタビュー
・観察
・フィールドノート
・文書
・写真
・動画
【質的データの強み】
・文脈を保持できる
・行動の意味を理解できる
・新しい仮説を生み出せる
・理論構築に役立つ
3. 質的データ分析の考え方
著者らは、自らの立場を Pragmatic Realism(実践的リアリズム)と位置付けています。 つまり、
・社会には一定の現実が存在する
・しかしその理解は人間の解釈を通して行われる
・分析は現実をできるだけ説明できる理論を構築する営みである
としています。
【多くの質的分析アプローチに共通する代表的な流れ】
①フィールドノート、インタビュー逐語録、文書、視覚データなどにコードまたはテーマを付与する
②コード化された資料を整理・選別し、類似した表現、変数間の関係、パターン、カテゴリー、テーマ、下位集団間の相違、共通する系列を特定する
③それらのパターンやプロセス、共通点や相違点を抽出し、次回のデータ収集において現場で検証する
④メモ、分析メモ(analytic memos)、研究日誌などに、考察や気づきを記録する
⑤データベース全体から見出された一貫性を説明できるよう、命題、カテゴリー、テーマ、概念、一般化を徐々に洗練する
⑥得られた一般化を、概念や理論から成る既存の知識体系と比較する
4. 質的データ分析は3つの活動から成る
本書では分析とは次の三つの活動が同時並行で進行するプロセスであると考えられています。
① Data Condensation(データ凝縮)
大量のデータから「コーディング」「要約」「カテゴリー化」「テーマ化」などを行い、分析しやすい形へ整理する。 重要なのは、凝縮は分析そのものであるという点である。
② Data Display(データディスプレイ)
整理したデータを「マトリックス」「ネットワーク図」「フローチャート」「時系列図」などで可視化します。著者は、 ディスプレイは分析の補助ではなく、分析そのものであると強調しています。
ディスプレイによって、「パターン」「関係性」「相違点」「共通点」が見えやすくなります。
③ Conclusion Drawing / Verification(結論の導出・検証)
ディスプレイを見ながら「パターンを見つける」「仮説を立てる」「他のデータで確かめる」「修正する」 という作業を繰り返し、結論を導きます。
結論は最後に突然生まれるものではなく、 分析全体を通して徐々に形成・検証されるものです。
5. 3つの活動は循環する
本書で最も重要な考え方は、分析は一直線ではないということです。
分析は「データ収集→データ凝縮→データディスプレイ→結論導出」という順番ではなく、
・データを整理すると新しいコードが生まれる
・ディスプレイを見ると追加データが必要になる
・結論を検証するため再度データを見る
というように、 3つの活動を何度も往復する反復的(Iterative)プロセスとして進みます。
例:
①データをコーディングする(データ凝縮)ことによって、新たにマトリックスへ追加すべき項目(データディスプレイ)が見えてくる
②マトリックスへ情報を書き込むことで、暫定的な結論が導かれる
③その結論を検証するために、 「もう一列追加した方がよいのではないか」 という新たな判断が生まれ、再びマトリックスが修正される
※量的研究では分析が比較的直線的・順次的に進むのに対し、質的研究ではより流動的で循環的な意味生成のプロセスとして進行する
このプロセスがDisplay1.1で示されています。

ここまで。
「Miles & Huberman流」の質的データ分析法の概要がざっくり理解できたように思います。この手法は、民族誌的手法とGTAを統合して発展させたようなものであるとも述べられていて、この点も新たな気づきでした。
また、筆者らは、自分たちのことを「Pragmatic Realism」や「We are shamelessly eclectic.(遠慮なく折衷主義者)」と述べている点も興味深かったです。すなわち、特定の研究手法だけを使うのではなく、良いものは全部使うという立場を表明しています。
自分としても、一つの方法論に縛られることなく、広い視野で目的に応じて様々な分析方法を組み合わせたりといったことができるようになりたいとも思いました。
第1章はIntroductionで、本書の全体像についてまとめられています。
書籍はこちら(被引用数:2,705件 (2026年6月27日時点))
Miles, M. B., Huberman, A. M., & Saldaña, J. (2020). Qualitative data analysis: A methods sourcebook. 4th ed., International student ed. SAGE.
以下、端的にポイントをまとめます。
1. 本書の目的
本書は、質的データから信頼できる知見を導くための実践的な分析方法を提供することを目的としています。 著者らは、質的データ分析を単なる直感的な解釈ではなく、体系的で透明性のある分析プロセスとして位置づけています。
本書で紹介する分析方法は、「Miles & Huberman流」の質的データ分析法として知られるようになったそうです。そして、この分析の流れは、民族誌的手法とグラウンデッド・セオリーを融合したものだと考えられるそうです。つまり、
・分析は、一つの帰納的推論から次の帰納的推論へと進み、データを選択的に収集し、それらを比較・対照しながら規則性やパターンを探索する
・さらに、新たなデータを用いてそれらのパターンを支持または修正し、その後、蓄積された概念同士の関連から新たな推論を導いていく
といった特徴があります。
2. 質的データの特徴
質の高い質的データの最大の特徴は、自然な環境において日常的に起こる出来事を対象とすることであり、それによって現実の生活世界を強く捉えることができる点にあるとされます。その特徴として、以下のようなものがあると言及されています。
①:質的データには「ローカルな根拠性(local groundedness)」がある(特定の状況に密着して収集されたデータ)。そのため、分析対象は特定の事例に焦点を当てた境界の明確な現象であり、その文脈が分析から切り離されることはない。この特徴により、潜在的で目に見えにくい問題を理解する可能性が高まる。
②豊かさ(richness)と全体性(holism):複雑さを明らかにする大きな可能性を有している。こうしたデータは、Geertz(1973)の言う「厚い記述(thick descriptions)」を提供し、現実の文脈に根差した生き生きとした描写によって、読者に強い説得力を与える。
③:プロセスの研究に適している。「何が起こったか」だけではなく、「どのように」「なぜ」起こったのかを説明することができ、特定の状況において因果関係を評価することも可能である。
【質的データ例】
・インタビュー
・観察
・フィールドノート
・文書
・写真
・動画
【質的データの強み】
・文脈を保持できる
・行動の意味を理解できる
・新しい仮説を生み出せる
・理論構築に役立つ
3. 質的データ分析の考え方
著者らは、自らの立場を Pragmatic Realism(実践的リアリズム)と位置付けています。 つまり、
・社会には一定の現実が存在する
・しかしその理解は人間の解釈を通して行われる
・分析は現実をできるだけ説明できる理論を構築する営みである
としています。
【多くの質的分析アプローチに共通する代表的な流れ】
①フィールドノート、インタビュー逐語録、文書、視覚データなどにコードまたはテーマを付与する
②コード化された資料を整理・選別し、類似した表現、変数間の関係、パターン、カテゴリー、テーマ、下位集団間の相違、共通する系列を特定する
③それらのパターンやプロセス、共通点や相違点を抽出し、次回のデータ収集において現場で検証する
④メモ、分析メモ(analytic memos)、研究日誌などに、考察や気づきを記録する
⑤データベース全体から見出された一貫性を説明できるよう、命題、カテゴリー、テーマ、概念、一般化を徐々に洗練する
⑥得られた一般化を、概念や理論から成る既存の知識体系と比較する
4. 質的データ分析は3つの活動から成る
本書では分析とは次の三つの活動が同時並行で進行するプロセスであると考えられています。
① Data Condensation(データ凝縮)
大量のデータから「コーディング」「要約」「カテゴリー化」「テーマ化」などを行い、分析しやすい形へ整理する。 重要なのは、凝縮は分析そのものであるという点である。
② Data Display(データディスプレイ)
整理したデータを「マトリックス」「ネットワーク図」「フローチャート」「時系列図」などで可視化します。著者は、 ディスプレイは分析の補助ではなく、分析そのものであると強調しています。
ディスプレイによって、「パターン」「関係性」「相違点」「共通点」が見えやすくなります。
③ Conclusion Drawing / Verification(結論の導出・検証)
ディスプレイを見ながら「パターンを見つける」「仮説を立てる」「他のデータで確かめる」「修正する」 という作業を繰り返し、結論を導きます。
結論は最後に突然生まれるものではなく、 分析全体を通して徐々に形成・検証されるものです。
5. 3つの活動は循環する
本書で最も重要な考え方は、分析は一直線ではないということです。
分析は「データ収集→データ凝縮→データディスプレイ→結論導出」という順番ではなく、
・データを整理すると新しいコードが生まれる
・ディスプレイを見ると追加データが必要になる
・結論を検証するため再度データを見る
というように、 3つの活動を何度も往復する反復的(Iterative)プロセスとして進みます。
例:
①データをコーディングする(データ凝縮)ことによって、新たにマトリックスへ追加すべき項目(データディスプレイ)が見えてくる
②マトリックスへ情報を書き込むことで、暫定的な結論が導かれる
③その結論を検証するために、 「もう一列追加した方がよいのではないか」 という新たな判断が生まれ、再びマトリックスが修正される
※量的研究では分析が比較的直線的・順次的に進むのに対し、質的研究ではより流動的で循環的な意味生成のプロセスとして進行する
このプロセスがDisplay1.1で示されています。

ここまで。
「Miles & Huberman流」の質的データ分析法の概要がざっくり理解できたように思います。この手法は、民族誌的手法とGTAを統合して発展させたようなものであるとも述べられていて、この点も新たな気づきでした。
また、筆者らは、自分たちのことを「Pragmatic Realism」や「We are shamelessly eclectic.(遠慮なく折衷主義者)」と述べている点も興味深かったです。すなわち、特定の研究手法だけを使うのではなく、良いものは全部使うという立場を表明しています。
自分としても、一つの方法論に縛られることなく、広い視野で目的に応じて様々な分析方法を組み合わせたりといったことができるようになりたいとも思いました。
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