ベーシックテキスト 人材開発論Lite
人材開発論について、関連する概念や理論をコンパクトにわかりやすくまとめてくれている一冊。
「ビジネスにおいて人を育てること、自分を成長させること」について以下のような点を中心に記載されています。(p.4)
・人を育てる企業の仕組み(教育訓練制度)
・人は経験から(経験学習論)、職場において(経営学習論)、どのように学習するのか
・人材をどのようにコーチしたり(コーチング)、ケアしたり(メンタリング)するのか
・大人をどのように学ばせるかを考えたり(成人学習)
・企業内の知識をどのようにマネジメントするのか(ナレッジ・マネジメント)
・企業のパラダイムをどのように転換させるのか(企業のパラダイム転換)
・組織はどのように学習するのか(組織学習論)
・研修の設計と実施方法を学んだり(インストラクショナルデザイン)
・現場での学びをとらえなおしたり(正統的周辺参加)
・共同体での学びのいいところを整理したり(共同体の学習)
・学習のためのコミュニティとはどのようなものかを考えたり(実践共同体)など
自分は大学の授業改善の参考にと思い手にとったのですが、正にピッタリの一冊だと思いました。
知っている概念もある程度ありましたが、何より人材開発の全体像を項目別に解説してくれている点が大変参考になりました。
組織内で人材育成・人材開発に携わる方に是非おすすめしたい一冊です。
各章毎のメモ
第1章 人材開発論とは
・一般的にいわれる「人材育成(Human resource development)」と同義
・人材育成とは「望ましい成果を達成するための行動に変化が生じるように、個人・チーム・組織の技能や知識および能力を強化するための学習活動を意図的に提供する手順とプロセス」(Bratton & Gold, 2003)
第2章 教育訓練
・企業における教育訓練において、事前におさえておくべきポイント
①企業の教育訓練は、あくまで企業が必要とする人材を養成するために行われる活動(今野, 2008)
②企業の教育訓練は、あくまで従業員の「自学」のプロセスのサポートである(伊丹・加護野, 2003)
③評価と教育訓練は車の両輪である(佐藤ほか, 2015)
・教育訓練の意義(守島・島貫, 2003)
①仕事に必要な能力と、従業員のその時点での能力のギャップを埋めること
②企業の競争力を高めること
③従業員のモティベーションを高めること
・従業員に求められる能力(今野, 2008)
①企業、部門の方針を理解し、自分が行うべき課題を設定できる「課題設定能力」
②その目的を達成するための「職務遂行能力」
③他の人と協力して目的を達成するための「対人能力」
④目的を達成する際に起こる問題を解決するための「問題解決能力」
・OJT・Off-JTのメリット・デメリット

・教育訓練の3つの方法:OJT・Off-JT・自己啓発
第3章 経験学習論
・70:20:10の法則(ロミンガーの法則):70(直接経験)、20(代理経験)、10(読書)
・困難な経験が人材開発の原動力となる(McCall, 1988)
・一皮向けた経験(金井, 2002)
・松尾(2011)の経験学習モデル:ストレッチ→リフレクション→エンジョイメント→ストレッチ(続)
第4章 心理的安全性と職場学習論
・組織社会化(organizational socialization):個人が組織の役割を担うために必要な社会的知識とプロセス(Van Maanen & Shein, 1979)
・組織社会化をうまく乗り越えるために必要な学習(Schein, 1978)
①人間組織の現実を受け入れる
②変化への対応に対処する
③(どこまでが自分の仕事かについて知って)働き方を学ぶ
④上司に対処し、報酬システムの仕組みを解明する
⑤組織における自分の位置を定め、アイデンティティを開発する
・心理的安全性の4段階(Clark, 2020)
①仲間として認められ(インクルージョン安全性)
②安全に学べ(学習者安全性)
③安全に貢献し(貢献者安全性)
④現状打破に安全に挑戦できる(挑戦者安全性)
・職場における能力向上(中原, 2010)
①業務能力向上
②他部門理解向上
③他部門調整能力向上
④視野拡大
⑤自己理解促進
⑥タフネス向上
・職場学習を促進する「互酬性規範」と「経験談の共有」
・互酬性規範:困ったときはお互い様の姿勢が職場学習を促進する
・経験談の共有:成功も失敗も積極的に共有することで学び合いが起こる
第5章 コーチング
・人材育成においては、ほとんどが命令と統制のコミュニケーションによって行われる一方的な育成だった(本間・松瀬, 2006)
→現代は、自ら主体的に考えて行動することが求められ、そのために「答えを見つけられる」人材育成から始めなければならない(伊藤, 2002)
・2つのコーチング(藤田ほか, 2002)
①メンタルコーチング:指導される側の中に答えがあり、コーチは答えを引き出す
②スキルコーチング:コーチは専門的スキルを保持する必要がある
・コーチに求められる要件(藤田ほか, 2002)
①型にはまらず具体的
②描写的でわかりやすい
③未来志向・建設的
④一貫性がある
⑤公平、公正
⑥肯定的・ポジティブ
⑦目標思考や解決思考ができる
⑧よきプランナー
・Co-active Coaching(双方が積極的に関与して、協力し合いながら関係を築く)(Whiworth et al., 2007)の4つのポイント
①クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている
②クライアントの人生全体を取り扱う
③主題はクライアントから(※最も重要)
④クライアントとともに、その瞬間瞬間から創り出す
・コーチングの前提条件(本間・松瀬, 2006)
①問題を解決できる形にフレームを転換する(リフレーミング)
・解決不可問題(性格・人格を変える、過去に起こった出来事を変える)を解決可能な問題に
②レパートリーを広げる
・コーチングの8段階プロセス(McKenna & Maister, 2002)
①現状をたずねる
②コーチを受ける気持ちがあることを確かめる
③状況を確認するための質問をし、支援と協力を申し出る
④必要に応じて情報を提供する
⑤よく話を聞く
⑥とるべき行動の選択肢を考える手助けをする
⑦次のステップを決める
⑧個人的な支援と信頼を提供する
第6章 メンタリング
・メンタリングとは、知識や経験の豊かな人々(メンター)がまだ未熟な人々(メンティー)に対してキャリアや心理・社会的側面から継続して行う、キャリア成功を目的とした支援行動(Kram, 1988)
・職場にメンタリングが必要な理由(渡辺・平田, 2006)
①人間関係の希薄化:
②年齢感の疎遠化:若手は面倒見のいい上司を求めている
③知的資源継承の困難さ:知恵や技能・経験の引き継ぎ
④中途採用の一般化:中途採用した企業もされた人材も適用のために必要
・メンタリングの2つの機能
①キャリア的機能(スポンサーシップ、ビジョニング、育成とコーチング、推薦とアピール、保護)
②心理・社会的機能(ロールモデル、受容と確認、カウンセリング、友好)
・メンターになるメリット(渡辺・平田, 2006)
①メンター経験が、メンター自身を成長させる
②人的ネットワークが広がる
③組織コミットメントが高まり、仕事の意義が明確になる
④メンター自身のキャリアを考えるきっかけになる
・メタリング関係の4段階(Kram, 1988)
①開始段階:メンターに対する称賛と尊敬に値するファンタジーが出現、メンティの期待が満ちる
②養成段階:キャリア的機能と心理・社会的機能が最大限に発揮される、関係性から恩恵
③分離段階:メンティの独り立ち、メンターの支援なしで仕事
④再定義段階:新しい関係性が構築(うまくいけば同僚同士の友好に)
第7章 成人学習論
・成人教育・学習を子どもの学校教育・学習の延長ととらえるべきではない(Knowles, 1980)
・生涯学習を前提として、「学び方の学習」と「自己決定的な探求(self-directed inquiry)の技能の学習」が重要
・ペダゴジーとアンドラゴジーの違い(Knowles, 1980)
①学習者の概念:ぺ(受動的)、ア(徐々に自己決定的に)
②学習者の経験の役割:ぺ(教科書等が基本の伝達的手法)、ア(経験をうまく用いる経験的手法)
③学習へのレディネス:ぺ(学校の教育内容をすべて受け入れる)、ア(現実世界の課題や問題によりうまく対応するための学習の必要性を感じたときに学習しようとする)
④学習への方向づけ:ア(「生活上の可能性を十分開いていく」プロセスへ導く課題達成中心型、およびそれを促進する能力開発型の考え方
・P-MARGE(中原, 2006)
P:Learners are practical.(大人の学習者は実利的である)
M:Learners needs Motivation.(大人の学習者は動機を必要とする)
A:Learners are Autonomous.(大人の学習者は自律的である)
R:Learners needs Relevancy.(大人の学習者はレリーヴァンスを必要とする)
G:Learners are Goal-oriented.(大人の学習者は目的志向性が高い)
E:Learners has life Experience.(大人の学習者には豊富な人生経験がある)
・Freire(1970)は、預金型教育(banking education:教師は知識を与え続け、生徒は忍耐を持って受け入れる)に代わって、問題解決型教育(problem-posing education)を主張
・成人学習とは「意味の枠組み(準拠枠:frame of reference)あるいはものの見方(意味パースペクティブ:meaning perspective)を変容させる学習」(Mejirow, 1991)
・物事を解釈する意味の枠組みと、その背後にあるものの見方の意味パースペクティブを変容させる「変容的学習(transformative leanring)」が成人特有
・変容的学習の4つの学習形態
①意味の枠組みの中での学び
②新たな意味の枠組みを学ぶ
③意味の枠組みの変容による学び
④パースペクティブ変容による学び
※変容的学習の原動力は省察(reflection)
第8章 組織学習
・組織学習とは「長期的な適応のために、組織およびその成員の行動を変容すること」
・組織で学習した方が良い理論的背景
①知識のプールを使える(三人寄れば文殊の知恵)
②1人では変えられない組織文化や価値・規範を変えることができ、それにより組織を変革、適応可
・組織がどのように学習するのか(開本, 2019)
①アンラーニング:古いものを捨てて新しいものを学ぶ
・アンラーニングは、外部環境、内部環境、組織(の考え方)の間に齟齬があることで生じる問題により引き起こされる(Hedberg, 1981)
・不完全な経験学習サイクル(March & Olsen, 1976)
①傍観者的経験学習(個人行動×組織行動):あいつ何やってんだと傍観
②迷信的経験学習(個人行動×個人の確信):これできっとうまくいく
③あいまいさのもとでの経験学習(個人の確信×環境の反応):なぜうまくいってるかわからない
④役割制約的経験学習(環境の反応×組織行動):やるべきことはわかっていてもまぁいいか
②ルーティン:組織内のルールや手続き・文化・行動様式を変える
・組織学習「組織と個人を包含するシステム全体における組織ルーティンの変化」(安藤, 2019)
・ルーティン例:形式、ルール、手続き、慣習、戦略、技術(Levitt & March, 1988)
③パラダイム:考え方の前提となる価値、規範を変える
④ナレッジ:知識を創造する
第9章 企業のパラダイム転換
・パラダイムとは組織文化の構成要素の1つであり(伊丹・加護野, 2003)、企業のメンバーが共通に持っている、企業それ自体、企業を取り巻く環境、企業の中で働く人々についてのイメージ(世界観)と、その中での共有された思考様式のこと(加護野, 1988)
・パラダイムが共有される利点
①コミュニケーションを容易にする
②行動に信頼性を与える
③人々への学習の効果
・パラダイム転換が難しい理由
①パラダイムが暗黙のうちにしか持たれていない、一種の思いこみになっている
②「なぜ変えなければならないのか」を説得しなければ人は変えようとしない
③トップ主導でやるのが難しい(トップは既存パラダイムでの成功体験がある)
④新しいパラダイムを導くような具体例が必要
⑤古いパラダイムをもとにした対応策は、短期的には通用する
・組織学習の3つのレベル(Argyris & Schön, 1978)
①シングル・ループ学習:パラダイム内学習
②ダブル・ループ学習:行動の背景にある価値観・パラダイムの修正を伴う
③二次的学習:状況に応じて、シングル/ダブルループ学習を使い分けて実行していくかを学習
・モデル1:自己防衛的な人材や組織
・モデル2:変化を歓迎する人材や組織
・パラダイム転換の4つのプロセス(加護野, 1988)
①トップによるゆさぶり
②ミドルによる突出
③変革の連鎖反応
④新しいパラダイムの確立
第10章 知識創造理論
・知識創造の4つのモード:SECIモデル(Nonaka & Takeuchi, 1995)
・組織的知識創造の5つの促進要件
①意図:目標への思い
②自律性:個人レベルで自由な行動を認める
③ゆらぎと創造的カオス:組織と外部環境との相互作用を刺激
④冗長性:現場の社員まで細かな情報を共有
⑤最小有効多様性:複雑多様な環境下での挑戦は、同じ程度の多様性を内部に持つ必要
・組織的知識創造のファイブ・フェイズ・モデル
①暗黙知の共有
②コンセプトの創造:メタファーやアナロジーが役立つ
③コンセプトの正当化:新コンセプトが組織にとって価値があるか
④原型(アーキタイプ)の構築:コンセプトを目に見える具体的なものに
⑤知識の転移:別の存在論的次元で知識創造の新たなサイクルを始める
第11章 学習する組織
・学習する組織とは、知識を創造・取得・解釈・伝達・保持するスキルを持ち、また新たな知識や洞察を反映させるよう意図的に行動を修正していくスキルを持った組織(Garvin, 2001)
・学習における3つの手法(Garvin, 2001)
①情報収集
②経験からの学習:「繰り返し」と「露出」により、理解の幅を広げる
③実験:実地踏査実験(新たな発見を導く)+仮説検証実験(既存の仮説や知識を確認)
・学習する組織の5つのディシプリン(Senge, 1990)
①システム思考
②自己練達:仕事だけでなく人生全体を豊かにするために事故を高めること
・ビジョンと現実を対置させた時に生じる想像的緊張をどう生み出し、維持するかが重要
③メンタル・モデル
④共有ビジョン
⑤チーム学習:メンバーが心から望む結果を出せるようチームの能力を揃え、伸ばすプロセス
・合致(メンバーの持つエネルギーの方向性が一致)が重要で、ダイアログとディスカッションが必要
・学習する組織構築に向けた10ステップ(Kline & Sauders, 1993)
①組織の学習レベルを評価する
②ポジティブ思考を奨励する
③考えることを認める職場作り
④リスクテイキングを評価する
⑤互いの資源となる手助けをする
⑥学習のパワーを仕事にいかす:学習を妨げる3つの壁(learning barrier)を破る
・論理の壁:学習する意味を理解できない
・倫理の壁:倫理的に受け入れられない
・気持ちの壁:直感的
⑦ビジョンを描く
⑧ビジョンを生きたものにする
⑨システムをつなぐ
⑩ショーを始める
第12章 インストラクショナルデザイン
・ARCSモデル(Keller, 2010)
Attention(注意)、Relevance(関連性)、Confidence(自信)、Satisfaction(満足感)
・ADDIEプロセス(Gagné et al, 2005)
Analysis(分析)、Design(設計)、Development(開発)、Implementation(実施)、Evaluation(評価)
・研修における教育目標4点(橋本, 2006)
①研修でできることとできないことを区別
②責任範囲の明確化(スタートとゴール地点を決める)
③ゴールイメージを描く(学習目標の明確化)
④スタート地点を明確にする(対象者分析)
・9つの教授事象(events of instruction)(Gagné et al, 2005)
①学習者の注意を獲得する
②授業の目標を知らせる
③前提条件を思い出させる
④新しい事項を提示する
⑤学習の指針を与える
⑥練習の機会を作る
⑦フィードバックを与える
⑧学習の成果を評価する
⑨保持と転移を高める
・4段階評価モデル(Kirkpatrick & Kirkpatrick, 2006)
①反応:受講者アンケート
②学習:事後テスト、パフォーマンステスト
③行動:フォローアップ調査、上長アンケート
④結果:効果測定チェックリスト、ROI指標
・効果的な研修環境(美馬・山内, 2005)
①空間:研修が行われる場
②活動:研修で取り組む内容
③共同体:研修にともに取り組む仲間
・ID美学第一原理(Parrish, 2009):おもしろい研修には美学的経験(日常的な経験とは一線を画す、楽しめて忘れられない経験がある)
①学習経験には、起承転結がある
②学習者は、自分の学習経験の主人公である
③教科ではなく、学習経験が教授テーマを設定する
④文脈が教授状況への没入感に貢献する
⑤教授者と教育設計者は、作者であり、脇役であり、モデル的主人公である
・ゲーミフィケーションが有効な理由(Burke, 2014)
関与(ゲームに関与したくなる)、実験(失敗しても何度もやり成せばよい)
・ゲーミフィケーションのツールキット(PBL)(Burke, 2014)
Point, Badge, Leaderboard
・ゲーミフィケーションの具体的なステップ(Burke, 2014)
①ビジネス目標を定義する:何ができるようになってほしいのか
②対象とする行動を詳しく説明する:何をやってもらいたいか、どう測定するか
③プレーヤーを詳しく説明する:何がやる気を引き出す/削ぐか
④アクティビティのサイクルを考案する:モティベーション、行動、フィードバック
⑤楽しさを忘れない:楽しいか、報酬がなくても自発的に参加するか
⑥適切なツールを活用する:ゲーム要素をうまく使う
第13章 正統的周辺参加
・「仕事の中での学びは、学校での学びとは違うのではないか」(Lave & Wenger, 1991)
・認知的徒弟制(cognitive apprenticeship):学習と認知は本質的に状況に埋め込まれていて、状況的な要因とうまく相互作用させることが、学習を進める上で重要だという考え方
・正統的周辺参加
・正統的(legitimate):そこに「いてもいい」と認められる
・周辺(peripheral):共同体の中心ではなく、周辺
・参加(participation):共同体に対して、参加を深めていく
・キャリアにおける3つのコンピタンシー(Arthur et al., 1995)
・Knowing why:個人の働くモティベーション、企業文化が思考する個人の信念と価値に由来するもの
・Knowing how:個人の技能と知識
・Knowing whom:企業のネットワーキング活動につながる人的ネットワーク
第14章 共同体の学習
・共同体学習の5つのメリット
①非公式性:仕事から離れているため、学習する事柄に集中でき、仕事や自身を客観視できる
②自発性:学びたいことが学べる
③相互作用性:同じ興味を持つ仲間と学べる
④越境性:境界を越えて仲間と出会える
⑤親和性:居心地がいい
・ラーニング・コミュニティは、いくつかの既存の学習過程を1つにつなげた、あるいは教育課程の教材全体を実質的に再構築した、様々な教育課程構造の1つ(Gabelnick et al., 1990)
・ラーニング・コミュニティは2つ以上の科目の意図的なつながりやまとまりについての様々なカリキュラムのアプローチ」(Smith et al., 2004)
・ラーニング・コミュニティの基本的特徴(Shapiro & Levine, 1999)
①学生と教員をより小さな集団に組織化する
②カリキュラムの統合を奨励する
③学生が教育的・社会的支援ネットワークを設立するのを支援する
④学生が大学の期待に社会化されるための環境を用意する
⑤教員がより意味のあるやり方で集まる
⑥教員と学生を学習結果に注目させる
⑦学習支援プログラムをコミュニティベースで提供するための環境を用意する
⑧学生の初年度の体験を検討する上での批判的な視点を提供する
・ピア・ラーニング・コミュニティの特徴(Tosey, 2006)
①スタッフと学習者の区別よりも、人間の平等性が優先される
②コース目標の参加的評価
③2つ平等性:考慮(提起したことは全て考慮)と機会(いつでもプロセスに貢献介入可)の平等
④全人格の教育
⑤力を分かちあう協同的かつ自律的な様式への発展
・プロフェッショナル・ラーニング・コミュにティ(PLC):学校の教職員の集まりで、教員の学習のためのコミュニティを基盤にした学びの場
・PLCを可能にする5つの要素(Hord, 2008)
①共有された信念、価値観、ビジョン
②分散的・支援的リーダーシップ
③構造的・関係的に支援された状態
④集合的な・意図的学習とその応用
⑤共有された個人の実践
・PLCを発展させる方法(Stoll et al., 2006)
①学習プロセスに焦点を当てる
②人的・社会的資源を作り出す
③構造的資源を管理する
④外部の関係者と相互作用し活用する
・持続的なPLCの7つの条件(Hargreaves, 2007)
①問題を具体的にし学習と人間関係を深めるという「深さ」
②すべての生徒に恩恵をもたらすような学習について扱う問題の「広さ」
③短期的な結果を焦らず、時間をかけて世代をまたいでも価値ある学習を追求する「持久力」
④教師のみの利益ではなく生徒・教師・学校全体に権利が平等に与えられる「正しさ」
⑤目的中心のリーダーシップと効果的なネットワーキング、交配的な実践によって促進される教育的「多様性」
⑥資金や人々を無駄遣いせずエネルギーや資源を保持・再生する「資源の豊富さ」
⑦よりよい未来のために過去を尊重する「保持」
・サードプレイスから個人が受ける恩恵
①目新しさ
②人生観
③心の強壮剤
④社交性のパラドックス:職場に幼なじみの友人を乱入させてはならない
第15章 実践共同体
・あるテーマにかんする関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団(Wenger et al., 2002)
・3つの輪モデル(松本, 2019):組織で学べること、個人が学びたいこと、実践共同体で学べること
・実践共同体の学習スタイル(松本, 2019)
①熟達学習
②越境学習
③複眼的学習
④循環的学習
・実践共同体の構成要素
①領域:何について活動・学習するか
②共同体:相互作用する人の集まり
③実践:メンバーが共有する枠組み、アイデア、ツール、情報等 + 実際にやってみる
・実践共同体育成の7原則
①進化を前提とした設計を行う
②内部と外部それぞれの視点を取り入れる
③様々なレベルの参加を奨励する
④公と私それぞれのコミュニティ空間を作る
⑤価値に焦点を当てる
⑥親近さと刺激を組み合わせる
⑦コミュニティのリズムを生み出す
・実践共同体の2つのタイプ:「熟達型」「交流型」
その他、メモ
・もともと経営学は、企業や組織の現象を説明するために、基礎科学や他分野の知見を積極的に用いてきた、応用科学としての歴史があるのです(北居ほか, 2020) p.4
・「どうやって企業の中で成長するか」は本来とても重要なのに、そのやり方の大部分は本人任せなのです。 p.5
・学習は「経験による行動の比較的永続的な変容」で、熟達とは「経験による高次のスキルや知識の獲得」であるとされます(佐伯・渡部, 2010)
人材開発論について、関連する概念や理論をコンパクトにわかりやすくまとめてくれている一冊。
「ビジネスにおいて人を育てること、自分を成長させること」について以下のような点を中心に記載されています。(p.4)
・人を育てる企業の仕組み(教育訓練制度)
・人は経験から(経験学習論)、職場において(経営学習論)、どのように学習するのか
・人材をどのようにコーチしたり(コーチング)、ケアしたり(メンタリング)するのか
・大人をどのように学ばせるかを考えたり(成人学習)
・企業内の知識をどのようにマネジメントするのか(ナレッジ・マネジメント)
・企業のパラダイムをどのように転換させるのか(企業のパラダイム転換)
・組織はどのように学習するのか(組織学習論)
・研修の設計と実施方法を学んだり(インストラクショナルデザイン)
・現場での学びをとらえなおしたり(正統的周辺参加)
・共同体での学びのいいところを整理したり(共同体の学習)
・学習のためのコミュニティとはどのようなものかを考えたり(実践共同体)など
自分は大学の授業改善の参考にと思い手にとったのですが、正にピッタリの一冊だと思いました。
知っている概念もある程度ありましたが、何より人材開発の全体像を項目別に解説してくれている点が大変参考になりました。
組織内で人材育成・人材開発に携わる方に是非おすすめしたい一冊です。
各章毎のメモ
第1章 人材開発論とは
・一般的にいわれる「人材育成(Human resource development)」と同義
・人材育成とは「望ましい成果を達成するための行動に変化が生じるように、個人・チーム・組織の技能や知識および能力を強化するための学習活動を意図的に提供する手順とプロセス」(Bratton & Gold, 2003)
第2章 教育訓練
・企業における教育訓練において、事前におさえておくべきポイント
①企業の教育訓練は、あくまで企業が必要とする人材を養成するために行われる活動(今野, 2008)
②企業の教育訓練は、あくまで従業員の「自学」のプロセスのサポートである(伊丹・加護野, 2003)
③評価と教育訓練は車の両輪である(佐藤ほか, 2015)
・教育訓練の意義(守島・島貫, 2003)
①仕事に必要な能力と、従業員のその時点での能力のギャップを埋めること
②企業の競争力を高めること
③従業員のモティベーションを高めること
・従業員に求められる能力(今野, 2008)
①企業、部門の方針を理解し、自分が行うべき課題を設定できる「課題設定能力」
②その目的を達成するための「職務遂行能力」
③他の人と協力して目的を達成するための「対人能力」
④目的を達成する際に起こる問題を解決するための「問題解決能力」
・OJT・Off-JTのメリット・デメリット

・教育訓練の3つの方法:OJT・Off-JT・自己啓発
第3章 経験学習論
・70:20:10の法則(ロミンガーの法則):70(直接経験)、20(代理経験)、10(読書)
・困難な経験が人材開発の原動力となる(McCall, 1988)
・一皮向けた経験(金井, 2002)
・松尾(2011)の経験学習モデル:ストレッチ→リフレクション→エンジョイメント→ストレッチ(続)
第4章 心理的安全性と職場学習論
・組織社会化(organizational socialization):個人が組織の役割を担うために必要な社会的知識とプロセス(Van Maanen & Shein, 1979)
・組織社会化をうまく乗り越えるために必要な学習(Schein, 1978)
①人間組織の現実を受け入れる
②変化への対応に対処する
③(どこまでが自分の仕事かについて知って)働き方を学ぶ
④上司に対処し、報酬システムの仕組みを解明する
⑤組織における自分の位置を定め、アイデンティティを開発する
・心理的安全性の4段階(Clark, 2020)
①仲間として認められ(インクルージョン安全性)
②安全に学べ(学習者安全性)
③安全に貢献し(貢献者安全性)
④現状打破に安全に挑戦できる(挑戦者安全性)
・職場における能力向上(中原, 2010)
①業務能力向上
②他部門理解向上
③他部門調整能力向上
④視野拡大
⑤自己理解促進
⑥タフネス向上
・職場学習を促進する「互酬性規範」と「経験談の共有」
・互酬性規範:困ったときはお互い様の姿勢が職場学習を促進する
・経験談の共有:成功も失敗も積極的に共有することで学び合いが起こる
第5章 コーチング
・人材育成においては、ほとんどが命令と統制のコミュニケーションによって行われる一方的な育成だった(本間・松瀬, 2006)
→現代は、自ら主体的に考えて行動することが求められ、そのために「答えを見つけられる」人材育成から始めなければならない(伊藤, 2002)
・2つのコーチング(藤田ほか, 2002)
①メンタルコーチング:指導される側の中に答えがあり、コーチは答えを引き出す
②スキルコーチング:コーチは専門的スキルを保持する必要がある
・コーチに求められる要件(藤田ほか, 2002)
①型にはまらず具体的
②描写的でわかりやすい
③未来志向・建設的
④一貫性がある
⑤公平、公正
⑥肯定的・ポジティブ
⑦目標思考や解決思考ができる
⑧よきプランナー
・Co-active Coaching(双方が積極的に関与して、協力し合いながら関係を築く)(Whiworth et al., 2007)の4つのポイント
①クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている
②クライアントの人生全体を取り扱う
③主題はクライアントから(※最も重要)
④クライアントとともに、その瞬間瞬間から創り出す
・コーチングの前提条件(本間・松瀬, 2006)
①問題を解決できる形にフレームを転換する(リフレーミング)
・解決不可問題(性格・人格を変える、過去に起こった出来事を変える)を解決可能な問題に
②レパートリーを広げる
・コーチングの8段階プロセス(McKenna & Maister, 2002)
①現状をたずねる
②コーチを受ける気持ちがあることを確かめる
③状況を確認するための質問をし、支援と協力を申し出る
④必要に応じて情報を提供する
⑤よく話を聞く
⑥とるべき行動の選択肢を考える手助けをする
⑦次のステップを決める
⑧個人的な支援と信頼を提供する
第6章 メンタリング
・メンタリングとは、知識や経験の豊かな人々(メンター)がまだ未熟な人々(メンティー)に対してキャリアや心理・社会的側面から継続して行う、キャリア成功を目的とした支援行動(Kram, 1988)
・職場にメンタリングが必要な理由(渡辺・平田, 2006)
①人間関係の希薄化:
②年齢感の疎遠化:若手は面倒見のいい上司を求めている
③知的資源継承の困難さ:知恵や技能・経験の引き継ぎ
④中途採用の一般化:中途採用した企業もされた人材も適用のために必要
・メンタリングの2つの機能
①キャリア的機能(スポンサーシップ、ビジョニング、育成とコーチング、推薦とアピール、保護)
②心理・社会的機能(ロールモデル、受容と確認、カウンセリング、友好)
・メンターになるメリット(渡辺・平田, 2006)
①メンター経験が、メンター自身を成長させる
②人的ネットワークが広がる
③組織コミットメントが高まり、仕事の意義が明確になる
④メンター自身のキャリアを考えるきっかけになる
・メタリング関係の4段階(Kram, 1988)
①開始段階:メンターに対する称賛と尊敬に値するファンタジーが出現、メンティの期待が満ちる
②養成段階:キャリア的機能と心理・社会的機能が最大限に発揮される、関係性から恩恵
③分離段階:メンティの独り立ち、メンターの支援なしで仕事
④再定義段階:新しい関係性が構築(うまくいけば同僚同士の友好に)
第7章 成人学習論
・成人教育・学習を子どもの学校教育・学習の延長ととらえるべきではない(Knowles, 1980)
・生涯学習を前提として、「学び方の学習」と「自己決定的な探求(self-directed inquiry)の技能の学習」が重要
・ペダゴジーとアンドラゴジーの違い(Knowles, 1980)
①学習者の概念:ぺ(受動的)、ア(徐々に自己決定的に)
②学習者の経験の役割:ぺ(教科書等が基本の伝達的手法)、ア(経験をうまく用いる経験的手法)
③学習へのレディネス:ぺ(学校の教育内容をすべて受け入れる)、ア(現実世界の課題や問題によりうまく対応するための学習の必要性を感じたときに学習しようとする)
④学習への方向づけ:ア(「生活上の可能性を十分開いていく」プロセスへ導く課題達成中心型、およびそれを促進する能力開発型の考え方
・P-MARGE(中原, 2006)
P:Learners are practical.(大人の学習者は実利的である)
M:Learners needs Motivation.(大人の学習者は動機を必要とする)
A:Learners are Autonomous.(大人の学習者は自律的である)
R:Learners needs Relevancy.(大人の学習者はレリーヴァンスを必要とする)
G:Learners are Goal-oriented.(大人の学習者は目的志向性が高い)
E:Learners has life Experience.(大人の学習者には豊富な人生経験がある)
・Freire(1970)は、預金型教育(banking education:教師は知識を与え続け、生徒は忍耐を持って受け入れる)に代わって、問題解決型教育(problem-posing education)を主張
・成人学習とは「意味の枠組み(準拠枠:frame of reference)あるいはものの見方(意味パースペクティブ:meaning perspective)を変容させる学習」(Mejirow, 1991)
・物事を解釈する意味の枠組みと、その背後にあるものの見方の意味パースペクティブを変容させる「変容的学習(transformative leanring)」が成人特有
・変容的学習の4つの学習形態
①意味の枠組みの中での学び
②新たな意味の枠組みを学ぶ
③意味の枠組みの変容による学び
④パースペクティブ変容による学び
※変容的学習の原動力は省察(reflection)
第8章 組織学習
・組織学習とは「長期的な適応のために、組織およびその成員の行動を変容すること」
・組織で学習した方が良い理論的背景
①知識のプールを使える(三人寄れば文殊の知恵)
②1人では変えられない組織文化や価値・規範を変えることができ、それにより組織を変革、適応可
・組織がどのように学習するのか(開本, 2019)
①アンラーニング:古いものを捨てて新しいものを学ぶ
・アンラーニングは、外部環境、内部環境、組織(の考え方)の間に齟齬があることで生じる問題により引き起こされる(Hedberg, 1981)
・不完全な経験学習サイクル(March & Olsen, 1976)
①傍観者的経験学習(個人行動×組織行動):あいつ何やってんだと傍観
②迷信的経験学習(個人行動×個人の確信):これできっとうまくいく
③あいまいさのもとでの経験学習(個人の確信×環境の反応):なぜうまくいってるかわからない
④役割制約的経験学習(環境の反応×組織行動):やるべきことはわかっていてもまぁいいか
②ルーティン:組織内のルールや手続き・文化・行動様式を変える
・組織学習「組織と個人を包含するシステム全体における組織ルーティンの変化」(安藤, 2019)
・ルーティン例:形式、ルール、手続き、慣習、戦略、技術(Levitt & March, 1988)
③パラダイム:考え方の前提となる価値、規範を変える
④ナレッジ:知識を創造する
第9章 企業のパラダイム転換
・パラダイムとは組織文化の構成要素の1つであり(伊丹・加護野, 2003)、企業のメンバーが共通に持っている、企業それ自体、企業を取り巻く環境、企業の中で働く人々についてのイメージ(世界観)と、その中での共有された思考様式のこと(加護野, 1988)
・パラダイムが共有される利点
①コミュニケーションを容易にする
②行動に信頼性を与える
③人々への学習の効果
・パラダイム転換が難しい理由
①パラダイムが暗黙のうちにしか持たれていない、一種の思いこみになっている
②「なぜ変えなければならないのか」を説得しなければ人は変えようとしない
③トップ主導でやるのが難しい(トップは既存パラダイムでの成功体験がある)
④新しいパラダイムを導くような具体例が必要
⑤古いパラダイムをもとにした対応策は、短期的には通用する
・組織学習の3つのレベル(Argyris & Schön, 1978)
①シングル・ループ学習:パラダイム内学習
②ダブル・ループ学習:行動の背景にある価値観・パラダイムの修正を伴う
③二次的学習:状況に応じて、シングル/ダブルループ学習を使い分けて実行していくかを学習
・モデル1:自己防衛的な人材や組織
・モデル2:変化を歓迎する人材や組織
・パラダイム転換の4つのプロセス(加護野, 1988)
①トップによるゆさぶり
②ミドルによる突出
③変革の連鎖反応
④新しいパラダイムの確立
第10章 知識創造理論
・知識創造の4つのモード:SECIモデル(Nonaka & Takeuchi, 1995)
・組織的知識創造の5つの促進要件
①意図:目標への思い
②自律性:個人レベルで自由な行動を認める
③ゆらぎと創造的カオス:組織と外部環境との相互作用を刺激
④冗長性:現場の社員まで細かな情報を共有
⑤最小有効多様性:複雑多様な環境下での挑戦は、同じ程度の多様性を内部に持つ必要
・組織的知識創造のファイブ・フェイズ・モデル
①暗黙知の共有
②コンセプトの創造:メタファーやアナロジーが役立つ
③コンセプトの正当化:新コンセプトが組織にとって価値があるか
④原型(アーキタイプ)の構築:コンセプトを目に見える具体的なものに
⑤知識の転移:別の存在論的次元で知識創造の新たなサイクルを始める
第11章 学習する組織
・学習する組織とは、知識を創造・取得・解釈・伝達・保持するスキルを持ち、また新たな知識や洞察を反映させるよう意図的に行動を修正していくスキルを持った組織(Garvin, 2001)
・学習における3つの手法(Garvin, 2001)
①情報収集
②経験からの学習:「繰り返し」と「露出」により、理解の幅を広げる
③実験:実地踏査実験(新たな発見を導く)+仮説検証実験(既存の仮説や知識を確認)
・学習する組織の5つのディシプリン(Senge, 1990)
①システム思考
②自己練達:仕事だけでなく人生全体を豊かにするために事故を高めること
・ビジョンと現実を対置させた時に生じる想像的緊張をどう生み出し、維持するかが重要
③メンタル・モデル
④共有ビジョン
⑤チーム学習:メンバーが心から望む結果を出せるようチームの能力を揃え、伸ばすプロセス
・合致(メンバーの持つエネルギーの方向性が一致)が重要で、ダイアログとディスカッションが必要
・学習する組織構築に向けた10ステップ(Kline & Sauders, 1993)
①組織の学習レベルを評価する
②ポジティブ思考を奨励する
③考えることを認める職場作り
④リスクテイキングを評価する
⑤互いの資源となる手助けをする
⑥学習のパワーを仕事にいかす:学習を妨げる3つの壁(learning barrier)を破る
・論理の壁:学習する意味を理解できない
・倫理の壁:倫理的に受け入れられない
・気持ちの壁:直感的
⑦ビジョンを描く
⑧ビジョンを生きたものにする
⑨システムをつなぐ
⑩ショーを始める
第12章 インストラクショナルデザイン
・ARCSモデル(Keller, 2010)
Attention(注意)、Relevance(関連性)、Confidence(自信)、Satisfaction(満足感)
・ADDIEプロセス(Gagné et al, 2005)
Analysis(分析)、Design(設計)、Development(開発)、Implementation(実施)、Evaluation(評価)
・研修における教育目標4点(橋本, 2006)
①研修でできることとできないことを区別
②責任範囲の明確化(スタートとゴール地点を決める)
③ゴールイメージを描く(学習目標の明確化)
④スタート地点を明確にする(対象者分析)
・9つの教授事象(events of instruction)(Gagné et al, 2005)
①学習者の注意を獲得する
②授業の目標を知らせる
③前提条件を思い出させる
④新しい事項を提示する
⑤学習の指針を与える
⑥練習の機会を作る
⑦フィードバックを与える
⑧学習の成果を評価する
⑨保持と転移を高める
・4段階評価モデル(Kirkpatrick & Kirkpatrick, 2006)
①反応:受講者アンケート
②学習:事後テスト、パフォーマンステスト
③行動:フォローアップ調査、上長アンケート
④結果:効果測定チェックリスト、ROI指標
・効果的な研修環境(美馬・山内, 2005)
①空間:研修が行われる場
②活動:研修で取り組む内容
③共同体:研修にともに取り組む仲間
・ID美学第一原理(Parrish, 2009):おもしろい研修には美学的経験(日常的な経験とは一線を画す、楽しめて忘れられない経験がある)
①学習経験には、起承転結がある
②学習者は、自分の学習経験の主人公である
③教科ではなく、学習経験が教授テーマを設定する
④文脈が教授状況への没入感に貢献する
⑤教授者と教育設計者は、作者であり、脇役であり、モデル的主人公である
・ゲーミフィケーションが有効な理由(Burke, 2014)
関与(ゲームに関与したくなる)、実験(失敗しても何度もやり成せばよい)
・ゲーミフィケーションのツールキット(PBL)(Burke, 2014)
Point, Badge, Leaderboard
・ゲーミフィケーションの具体的なステップ(Burke, 2014)
①ビジネス目標を定義する:何ができるようになってほしいのか
②対象とする行動を詳しく説明する:何をやってもらいたいか、どう測定するか
③プレーヤーを詳しく説明する:何がやる気を引き出す/削ぐか
④アクティビティのサイクルを考案する:モティベーション、行動、フィードバック
⑤楽しさを忘れない:楽しいか、報酬がなくても自発的に参加するか
⑥適切なツールを活用する:ゲーム要素をうまく使う
第13章 正統的周辺参加
・「仕事の中での学びは、学校での学びとは違うのではないか」(Lave & Wenger, 1991)
・認知的徒弟制(cognitive apprenticeship):学習と認知は本質的に状況に埋め込まれていて、状況的な要因とうまく相互作用させることが、学習を進める上で重要だという考え方
・正統的周辺参加
・正統的(legitimate):そこに「いてもいい」と認められる
・周辺(peripheral):共同体の中心ではなく、周辺
・参加(participation):共同体に対して、参加を深めていく
・キャリアにおける3つのコンピタンシー(Arthur et al., 1995)
・Knowing why:個人の働くモティベーション、企業文化が思考する個人の信念と価値に由来するもの
・Knowing how:個人の技能と知識
・Knowing whom:企業のネットワーキング活動につながる人的ネットワーク
第14章 共同体の学習
・共同体学習の5つのメリット
①非公式性:仕事から離れているため、学習する事柄に集中でき、仕事や自身を客観視できる
②自発性:学びたいことが学べる
③相互作用性:同じ興味を持つ仲間と学べる
④越境性:境界を越えて仲間と出会える
⑤親和性:居心地がいい
・ラーニング・コミュニティは、いくつかの既存の学習過程を1つにつなげた、あるいは教育課程の教材全体を実質的に再構築した、様々な教育課程構造の1つ(Gabelnick et al., 1990)
・ラーニング・コミュニティは2つ以上の科目の意図的なつながりやまとまりについての様々なカリキュラムのアプローチ」(Smith et al., 2004)
・ラーニング・コミュニティの基本的特徴(Shapiro & Levine, 1999)
①学生と教員をより小さな集団に組織化する
②カリキュラムの統合を奨励する
③学生が教育的・社会的支援ネットワークを設立するのを支援する
④学生が大学の期待に社会化されるための環境を用意する
⑤教員がより意味のあるやり方で集まる
⑥教員と学生を学習結果に注目させる
⑦学習支援プログラムをコミュニティベースで提供するための環境を用意する
⑧学生の初年度の体験を検討する上での批判的な視点を提供する
・ピア・ラーニング・コミュニティの特徴(Tosey, 2006)
①スタッフと学習者の区別よりも、人間の平等性が優先される
②コース目標の参加的評価
③2つ平等性:考慮(提起したことは全て考慮)と機会(いつでもプロセスに貢献介入可)の平等
④全人格の教育
⑤力を分かちあう協同的かつ自律的な様式への発展
・プロフェッショナル・ラーニング・コミュにティ(PLC):学校の教職員の集まりで、教員の学習のためのコミュニティを基盤にした学びの場
・PLCを可能にする5つの要素(Hord, 2008)
①共有された信念、価値観、ビジョン
②分散的・支援的リーダーシップ
③構造的・関係的に支援された状態
④集合的な・意図的学習とその応用
⑤共有された個人の実践
・PLCを発展させる方法(Stoll et al., 2006)
①学習プロセスに焦点を当てる
②人的・社会的資源を作り出す
③構造的資源を管理する
④外部の関係者と相互作用し活用する
・持続的なPLCの7つの条件(Hargreaves, 2007)
①問題を具体的にし学習と人間関係を深めるという「深さ」
②すべての生徒に恩恵をもたらすような学習について扱う問題の「広さ」
③短期的な結果を焦らず、時間をかけて世代をまたいでも価値ある学習を追求する「持久力」
④教師のみの利益ではなく生徒・教師・学校全体に権利が平等に与えられる「正しさ」
⑤目的中心のリーダーシップと効果的なネットワーキング、交配的な実践によって促進される教育的「多様性」
⑥資金や人々を無駄遣いせずエネルギーや資源を保持・再生する「資源の豊富さ」
⑦よりよい未来のために過去を尊重する「保持」
・サードプレイスから個人が受ける恩恵
①目新しさ
②人生観
③心の強壮剤
④社交性のパラドックス:職場に幼なじみの友人を乱入させてはならない
第15章 実践共同体
・あるテーマにかんする関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団(Wenger et al., 2002)
・3つの輪モデル(松本, 2019):組織で学べること、個人が学びたいこと、実践共同体で学べること
・実践共同体の学習スタイル(松本, 2019)
①熟達学習
②越境学習
③複眼的学習
④循環的学習
・実践共同体の構成要素
①領域:何について活動・学習するか
②共同体:相互作用する人の集まり
③実践:メンバーが共有する枠組み、アイデア、ツール、情報等 + 実際にやってみる
・実践共同体育成の7原則
①進化を前提とした設計を行う
②内部と外部それぞれの視点を取り入れる
③様々なレベルの参加を奨励する
④公と私それぞれのコミュニティ空間を作る
⑤価値に焦点を当てる
⑥親近さと刺激を組み合わせる
⑦コミュニティのリズムを生み出す
・実践共同体の2つのタイプ:「熟達型」「交流型」
その他、メモ
・もともと経営学は、企業や組織の現象を説明するために、基礎科学や他分野の知見を積極的に用いてきた、応用科学としての歴史があるのです(北居ほか, 2020) p.4
・「どうやって企業の中で成長するか」は本来とても重要なのに、そのやり方の大部分は本人任せなのです。 p.5
・学習は「経験による行動の比較的永続的な変容」で、熟達とは「経験による高次のスキルや知識の獲得」であるとされます(佐伯・渡部, 2010)
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